2018/03/15 のログ
ご案内:「女子寮の一室」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
ご案内:「女子寮の一室」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「えっと、ここであってるはず…」

女子寮の廊下、部屋の入り口前で何度も部屋の番号を確認する。
寮だから仕方がないが、ドアには部屋の番号しか書かれていない。
彼女の部屋に遊びに来るのはこれが二度目であるが、
前回は案内してもらったのでちゃんとした部屋番号を確認し損ねてしまっていた。
記憶を頼りにここまで来て、恐る恐るベルを鳴らす。

「こんばんは、ラウラです。綾さん、いますか?」

これで違う人が出てきてしまったらどう対応しようかなんて考えながら>

鈴ヶ森 綾 > 「いらっしゃい、待っていたわ。さ、どうぞ。」

呼び鈴が鳴ってから鍵が開けられる音が小さく鳴り、ドアが開かれるまでにかかった時間はごく僅かだった。
部屋の主はドアの前でどこか不安そうな顔をした少女を微笑んで出迎え、中に入るように促した。

「今お茶を淹れるから、適当に座って待っていてちょうだい。」

彼女を部屋に通し、そう言い残して一度隣室のキッチンへと引っ込む。
部屋は以前に来た時と大きく変わった点はない。
違う点を上げるとすれば、図書館の本が別のものに変わっている事と、
前回は無かったクッション…ではなく、
ベッドにカーペットの部屋とはややミスマッチな座布団が二つ、座卓の傍に用意されている事ぐらいだ。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ありがとうございます。お邪魔しますね」

部屋から出てきたのが彼女であると確認すると、安堵の表情がわかりやすく出てくる。
促されるまま部屋に入ると、座布団に正座して彼女を待つ。
何気に座布団が増えていることをうれしく感じてニコニコとしている。
そして自分の傍らに小さな紙袋を置いて、それをいつ彼女に渡そうかと思案して>

鈴ヶ森 綾 > 程なくして、緑茶の入った湯呑を二つ盆に乗せて部屋へと戻ってくる。
見ればお客様は行儀よく座布団に正座して自分を待っており、それがなんだかおかしくて小さく笑みを溢す。

「お待ちどおさま。もっと楽にしていても良かったのよ?」

湯呑を座卓の上に並べ、自分も座布団の上に腰を下ろす。
そしてどこに隠し持っていたのか、小さな透明な包みを取り出すと、それを相手の前へと置いた。

「はい、ホワイトデーのお返し。寮のオーブンを借りて焼いてみたの。口に合うといいのだけど…。」

包みの中身はココアを使った市松模様のクッキーで、袋の入り口には小さなリボンでラッピングが施されていた。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「え?じゃ、じゃあ……」

もっと楽にしてもいいのに。

そう言われるとどうするべきだろうと考えて、とりあえず足を崩す。
そして目の前に差し出された緑茶を見て内心ワクワクする。
前回遊びに来て以来、緑茶を飲むようになったのだ。

「綾さんが作ったんですか!ありがとうございます!」

そして彼女が小さな包みを差し出すと、それを見て喜びの声を上げる。
まさか手作りのお返しがもらえるとは。
そして自分の用意した包みを見ては少し恥ずかしそうにする。

「えっとですね…私も作ってはみたんですけど、その、料理があまり得意ではなくてですね…」

取り出したのは透明な包みともう一つ、梱包された箱。
透明な方は彼女と同じくクッキーなのだが、同じお菓子とは思えない状態だった。
何を間違えたのか真っ黒。
それを渡すのが申し訳なくて、市販のチョコレートを買ったというわけだ。

「なんだかすみません…」>

鈴ヶ森 綾 > 「洋菓子は殆ど作ったことがないからあまり自信は無いのだけど…。
 でも、そんな風に喜んで貰えると作ったかいがあるわ。」

勿論味見はしているが、自作品はどうしても味の評価が甘くなってしまう。
見た目に関しても、市販品と比べるとどうしても模様が不揃いであった。

「あら、二つあるの?こっちは…ああ、あのお店の。」

箱の方はどこで買ったものかすぐに思い当たった。
それを一端脇に置き、もう一つの包みを手に取る。

「それでこっちは…ラウラの手作りなのね。ねぇ、今食べても構わないかしら?」

もう一つの包み、中身は真っ黒だが、それを見て笑ったりはしなかった。
相手の返事を待つより早くしゅるりと包みの封を解くと、中身のクッキーを一つつまみ上げて口へ運ぶ。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「綾さんの作るお菓子ならきっとなんでも美味しいですよ!
 えっと、無理して食べなくてもいいですよ!?」

少なくとも、料理が不得意な自分のクッキーよりもレベルが高いのは明らかである。
そしてこちらが返事をする前に彼女が真っ黒なそれを口に運んでしまう。
すこし慌てたように止めるが、もう食べてしまったようで、
彼女が咀嚼しているのを黙ってみているほかなかった。
その間が、なんとも言えない時間が、とても気まずい。

「あ、あの、ほんとに無理しなくていいですよ?
 自分で味見しても酷かったですし……」

それでも、初めから市販品を買っていくのもなんだか寂しいと思って、
少しだけ持ってきたというだけのもので、食べてもらうことは想定して無かったのだ>

鈴ヶ森 綾 > 「うん、見た目通りの味。でも、ラウラがせっかく作ってくれたんですもの、残すなんて勿体無いわ。」

さすがに、美味しいなどと見え透いたお世辞は使わなかった。
しかし嫌な顔の一つもせず、食べる手は止めず、そのまま二つ三つと続けて口へ運び、じっくりと味わう。
元々数が少なかった事もあり、あっという間に黒い物体は残らず口の中へと消えてしまった。

「ごちそうさま。ありがとう、とても嬉しかったわ。」

最後に一口お茶を啜り、ほぅと満足そうに吐息を漏らす。
それから柔らかく微笑んで、自分の渡したクッキー指し示して。

「私のも、良ければ感想を聞かせてもらえるかしら?」

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「う、うう……なんて言ったらいいんでしょう。
 ありがとうっていうのも違うし、ごめんなさいも違うし……」

食べてくれたことに対する感謝と、
不味いとわかっているものを食べてもらったという申し訳なさがごちゃごちゃになって、
なんとも言えない感情が渦巻いていた。
でもそれは不快感とも違っていて、どこか許された感じに近い。
明かなお世辞を言わずに、見た目通りと言ってくれたことも救いだった。 

「じゃあ、いただきますね。
 ……ふふ、美味しいです。ちょっと慣れてない感じが味からも伝わってきます」

自分のも食べて感想を聞かせてくれと言われれば、
包みから一つクッキーを取り出して咀嚼する。
続けて二つ、三つと食べていって、出てきた感想は素直においしいという感想。
いくつか市松模様の正方形が歪だったりもしたが、それでも確かにおいしかった。
慣れないながらも作ってくれたと思うと、
不安そうな表情が消えて、なんだか笑えてくる>