2015/07/03 のログ
ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」に**と**さんが現れました。
**と** > 青垣山の上。

ここからは、島全体が見下ろせる。

「私/僕」の好きな景色。

いつも知らない景色が広がっている。

だって、「私/僕」は何も覚えていられないのだから。

覚えていられることは「彼/彼女」が教えてくれたことだけ。

**と** > しばし座って、その景色を眺める。

「彼/彼女」は私の背中で眠っている。

もうその目を覚ますことはないのだろう。


それに気づいたのは今朝のことだ。

冷たくなっていた体はもう息をしていなかった。

もうその体に血は巡っていなかった。

眠るように、「彼/彼女」は**でいた。

**と** > 「彼/彼女」はこの景色が好きだった。

「私/僕」の知らないことをみんな知っていた「彼/彼女」。

きっと、この場所を好いた理由も「私/僕」とは違うのだろう。


「彼/彼女」は何を思ってこの景色を見ていたのだろうか。

「私/僕」には、何一つ分からなかった。

**と** > 冷たい夜の風が頬を撫でる。

「私/僕」は思い出そうとする。

「彼/彼女」のことを。ふたりの思い出を。


それは、霧がかかったように徐々に薄れていく。

「彼/彼女」がいなくなった今、私は何一つ『識る』ことができない。

できることは、『忘れる』ことだけ。

**と** > 「私/僕」の知りうる全てを。

「私/僕」の覚えている全てを。


思い出す。


それはどんどん薄れていく。

頭の中から。手の隙間から。

「私/僕」の中から、零れ落ちていく。


消えていく。

**と** > どうしてだろう。

涙が止まらない。

寂しいのだろうか。

悲しいのだろうか。

もう、それすら「私/僕」にはわからない。


全てを忘れ去ったとき、後に残る記憶はひとつ。

忌まわしい記憶。

忘れたかった記憶。

それは、「彼/彼女」が「私/僕」に告げたこと。

ただひとつの、約束。

**と** > 浮かび上がる。

最後の記憶。

これを忘れたならば。

あとは、自分でも知らなかったものを忘れることになるだろう。


すなわち、『生きること』を。


息をすること。考えること。

血をめぐらせること。

心臓を動かすこと。


そのときが、「私/僕」の『終わる』とき。

**と** > 『もしも、「僕/私」が』



『「**/**」を残して』



『先に死ぬようなことがあったなら』



『そのときは』



『「僕/私」を』


『―――――――』

**と** > 『――――― 喰 べ て ほ し い』
**と** > 本能的な行動。


最後の約束。


それを、果たすために。

**と** > 「彼/彼女」の。

「**/**」の。


服を引き裂き。


その白い肌に。


歯を、立てる。

**と** > 頭が沸騰するように熱い。

涙が止まらない。


痛い。痛い。痛い。痛い。


心が痛い。頭が痛い。


それでも。

「私/僕」は。

「**/**」は。


「彼/彼女」との。

「**/**」との。


最後の約束を。

最後の契約を。

守るために。

**と** > 肉を食み、噛み千切る。

骨を噛み砕き、飲み込む。


嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。


「彼/彼女」が消えていく。

いなくなってしまう。

「**/**」は、もういない。

ここにいるのは。

「**/**」だけ。

**と** > そして。

「**/**」は。

初めて、『識る』ことを『識った』。

「**/**」の全てが。

今は、「**/**」の中にある。

**と** > ああ、なんということだろう。

「**/**」は、最初からこれを知っていた。

だから、あんなことを「**/**」に告げたのだ。


でも、どうして?

どうして、全てを知っていたのならば。



―――――なぜ、「**/**」が「**/**」を必要としていることを知ろうとしなかったのだろう?

**と** > 今の「**/**」は『識る』ことができる。

今の「**/**」は『行う』ことができる。


今、このときならば。

何もかも思うがまま。

「**/**」は。

何をしたらいい?

**と** > 『――――「キミ」は、どうしたい?』
**と** > 嗤う。

誰だ。

分からない。

知らない。

誰かが、嗤っている。

**と** > 知りたい。

分からない。

どうして?

**と** > 「「**/**」、は――――」

なんだ。

「**/**」にも、分からないことはあったんだ。

きっと、「**/**」のことを。

「**/**」は、知らなかったんだ。

**と** > 知りたい。

知りたい。

知りたい。知りたい。

知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。

知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。知りたい。

**と** > きっと、「**/**」も。

こんな気持ちだったんだろう。


だったら、簡単だ。


「**/**」の願うことは、ただひとつ。

**と** > 「**/**」は。

「僕/私」は。

これから《道化人形》を演じて見せよう。


「僕/私」は、「彼/彼女」の全てを知りたい。

「彼/彼女」の見ていた全てを。

「彼/彼女」の感じた全てを。


そのためなら、「僕/私」は。

「私/僕」を。

「**/**」を。

捨ててしまっても、かまわない。

**と** > そうだ。

今「僕/私」が見ているのは、「彼/彼女」の見ていたセカイ。

眼下に広がる、小さな島。

「彼/彼女」はここから見下ろす景色を好きだといった。

「僕/私」がそれを見下ろしても、何の感慨も浮かばない。


「彼/彼女」は嘘を言っていなかったはずなのに。


――――なぜ?どうして?

**と** > そして、気づいた。

まだ、足りない。

「彼/彼女」の見ていたセカイには、足りないものがある。



このセカイには。


「**/**」が。

「私/僕」が足りない。

**と** > いつからそこにあったのだろう。

ずっと持っていた。


『ソレ』を、手放す。


「**/**」の中から。

「僕/私」の中から。


《笑顔の仮面》を、投げ捨てた。

「**/**」は、「私/僕」を切り捨てて。

今、この瞬間。

「**/**」は、「僕/私」になった。

**と** > 「僕/私」の前には。

「彼女/彼」がいる。


やっとで分かった。


「彼女/彼」が愛した景色。

だから、「僕/私」はこの景色が好きだった。

**と** > でも。

「僕/私」がもうすでに、全てを『識る』ことができないこと。

それもまた、分かっていた。


「彼女/彼」と『再び』出会ったそのときから。

「僕/私」の中で何かが欠けた。

そこから、漏れ出していく。

なくなっていく。


『命』と、『識りたいこと』だけが。

「僕/私」の中から、消えていく。

**と** > 「彼/彼女」もまた、そうだったのだろう。

それならば、「僕/私」は。

「彼/彼女」が知らなかった分まで。

たくさんのことを知ろう。

たくさんのことを聞こう。


「僕/私」は、全てを『識りたい』。

だって、それが「彼/彼女」の。


「**/**」の望みなのだから。

**と** > 「…………どうした、の?」


「彼女/彼」が「僕/私」に問いかける。


「なんでもない、よ。」


ああ、そうだ。

その前に。

やることがある。

伝えておかなければいけないことがある。

これが。

「僕/私」と。

「彼女/彼」の。

「最初の/何度目かわからない」



約束だ。

**と** > 『もしも、「僕/私」が』



『「**/**」を残して』



『先に死ぬようなことがあったなら』



『そのときは』



『「僕/私」を』


『―――――――』

ご案内:「◆特殊Free(過激描写注意)3」から**と**さんが去りました。