2015/07/13 のログ
ご案内:「廃工場跡」に悦=フレイザーさんが現れました。
悦=フレイザー > (金糸が舞う――)
悦=フレイザー > (一人の自動小銃に目視すら危うい細さのワイヤーが絡みつくや、銃身から完全に断ち切る。男の首が捩れ、断面を晒した。血流に混じって微小なワイヤーが空中を撥ねた。毛細血管がぷつりとちぎれ、赤い液体を噴出する。
 肩から腰にかけて強化プレートで守られているはずの肉体でさえ、分断の魔の手を逃れることはできない。皮膚が分断し、サーモンピンクの断面を晒すことになる。内容物をすべてぶちまける。大分軽量化された肉体が崩れ落ちた)

「 ……」

(生真面目な顔も、恐怖も、一切を脱ぎ捨てた鉄仮面の少女が居た。
 組織のための抹殺任務。
 シリアルキラーでもなく、かといって戦闘を嫌うわけでもない。
 作業的に切り刻むのだ)

悦=フレイザー > (腕がぽとりと落ちる。網のように張り巡らされたワイヤーが伸張するや指ごと、腱ごとのレベルにまで千切る。
 三枚におろした男の体をむんずと掴んで横にどけると、長く深くため息を吐いた。
 両手は己の背中へ。俯き加減に工場内を闊歩する。)

「    ……はぁ~……」

(無表情だった。あまりに無表情どころか、機械的でさえあった。
 平素の性格とはまったく違う。まるで、暗示をかけられたかのように。
 少女はキルゾーンへと足を踏み入れていく。
 銃が、異能が、ありとあらゆるトラップの仕掛けられた廃工場の中央へ。)

「はー………」

(目は虚ろ。何も映していなかった。)

悦=フレイザー > (サイトを覗く男は思った。
 馬鹿な奴。無防備にも大集合しているさなかへとやってくるとは!
 サイトを覗き込み、最大の火力を発揮するために仲間に目配せをする。
 魔術による空間への拘束と各種ワイヤートラップ。9mmと5.56mm高速弾による一斉射撃は例え熟練の戦士と言えどミンチへと変貌するであろう。
 サイトを覗き込む。
 視界が突如として二つに分断した。
 右脳と左脳とが分裂していた。狂ったように振動するワイヤーが男の顔面を二つに引き裂いていた。鼻のあった部位から血液が噴出し、銃を染め上げる。
 廃工場のキャットウォークに隠れていた者たちが一斉に粉々にされていく。
 首が飛び、肉が飛び、ありとあらゆる生命が絶たれていく。
 サブマシンガンが天井に向けて放たれ無数の穴を穿った。)

悦=フレイザー > (少女の足が止まる。魔法陣。対象を拘束する仕掛けだった。
 足を強引に動かして一歩、二歩。すると、足が少女の作り上げるワイヤーとは別の――鋼鉄製ワイヤーに触れた。
 信管作動。大量のベアリングが吐き出され、空間を白く染め上げる。魔術的、意識、といった不確定な要素を含まずに淡々と作動する武器。クレイモア地雷。
 ワイヤーが姿を変える。風どころが電光が如く神速にて領域に割り込むと増大し壁と化して無数の鉄球を退けたのだった。数発が防御を突破し少女の前髪を掠めた。はらりと舞う黒い髪が床に落ちる。
 場には奇妙な赤いオブジェが量産されていた。
 少女は一番最初に殺めたターゲットへと近づいていく。
 瞳は虚ろ。口は半開き。およそ正気とは思えぬ無表情。
 対する死体は苦痛に歪んでいた)

悦=フレイザー > (表情がはっと点滅した。
 虚ろだった視線が元通りになる。唇がきゅっと結ばれ、目のピントが正常に回帰する。
 死体があった。
 戦闘は望んだことだ。殺しを望まないだけで。望んではいないが、任務を遂行しなければならない。故の処置。催眠術によって機械的に攻撃させる。レコンキスタという組織以前。大昔からある手である。
 少女の手はかたかたと震えていた。)

「……っ」

(一歩後ずさり、浅く息を吐く。
 口元を押さえ、片腕で体を抱きしめ擦った)

悦=フレイザー > (無線を開く。
 無線機に語りかけた)

「処分――いえ倒しました。はい。目撃者はいません。
 生存者もいません。
 はい。
 ありがとうございます」

(ありがとう。心にも無いことで場を締めくくる。
 無線機をしまいこむと、足がすくんで動けないことに気が付く。万力で足が地面に固定されてしまったように。あるいは重力異常であるかのように。拘束用の魔術は既に解除されている。ならば、自分の意思によるために)

悦=フレイザー > (場を後にする。ために足を無意味に揉み解して。
 呼吸を整えて。
 ようやく足が動き始めたのは数分後の話)

ご案内:「廃工場跡」から悦=フレイザーさんが去りました。