2015/09/21 のログ
ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」に秋尾 鬨堂さんが現れました。
秋尾 鬨堂 > 夜の常世ハイウェイ環状外回りC2、葦ケ原サービスエリア。

広大な駐車場の一角、隅のほうでエンジン音。
『がぉぉぉん がぉぉぉん…ぷすん』
…なのだが、明らかに調子が悪い。
空ぶかしの音は、途中でトーンダウン。
困ったような顔で、開きっぱなしの運転席ドアから男が体を滑りだす。

秋尾 鬨堂 > 「ううん…代車に無理をさせすぎたかナ…」

『悪魔のL』と呼ばれたマシン。それは、ちょっとした事情――天空三連ループバンクガムテープデスマッチ――でのオーバーホールと、車検が重なり今は代車。

その代車の調子が、どうにも悪い。

秋尾 鬨堂 > ここまでの巡航速度は200km/h程度。
「エンジンブロー、までは回してない…冷却系…ポンプ?」

きゅるる、とエンジンはかかるが、回転数に対して引っかかりが大きい気がする。
ボンネットを開け、まだ熱いパイプラインを丁寧になぞる。
熱溜まりがあれば、そこが患部だ。
触診のようなもの。

秋尾 鬨堂 > 特徴的なフロント・ミドシップ寄りなエンジン配置。
ロードスター・タイプの、『ちょっとはやんちゃに走れるんだぜ』という心意気。
しかし熱でダウンしているそのエンジンルームと、1つ2つ会話を交わす。

ウォーターポンプが、やはり作動していない。
「全バラシは…ここじゃ無理だな。しょうがない」
一時休憩。気づけばもはやミッドナイト。
走るつもりで来たものだから、テンポを狂わされた空きっ腹がことさらに主張する。

「ここの名物は…焼きまんじゅう?」
まだ明るい食堂の、大きな宣伝看板が目に入る。

秋尾 鬨堂 > 「………」
この時間帯にこんな場所にいるのは…
疲れた顔の教師。
土木工事に向かう途中の勤労学生。
夜にしか生きられぬ異邦人。
その人々が、今。
深夜メニューにつき、極端に選択肢を制限された人々が今。
微妙な顔で…もそもそと、食っている…!

秋尾 鬨堂 > 少ない選択肢からソフトクリームを引き当てたものは、腹が冷えてもまだ幸せであることが見て取れる。
何せ甘い。ちゃんと甘い。
決してごはんの代わりにはならないが、安定して甘い。

野沢菜おやきの、暖かくそしてもっそりと野沢菜の味を包み込む表現し難い味に、ひたすらハテナを浮かべる顔はいっそ哀れ。

焼きまんじゅうの、まんじゅうであるべき水分をどこかに置き忘れたかのような熱された身。そして、焼きおにぎりにまぶされていればまだ染み込んでいたであろう身に弾かれた味噌。
片手のお茶が尽きて久しい、ノー・ライフ・キングはその牙に焼きまんじゅうを絡みつかせて苦悶の表情を浮かべるほどの罪を重ねたのだろうか。

「………」
回れ右したい。今、すごく。

秋尾 鬨堂 > ここまでの状況判断は一瞬。
安全運転の経験がここで生きた。
有り得るかもしれない可能性、この先はどこに進んでもクラッシュ必至。
だが、食堂に入った以上、何も食わずに出るのも失礼にあたる。
深夜のサービスエリアに敷かれた、暗黙のルール。

「参ったネ…だけど」
勝機はある。
クラッシュは避けられない、しかしその被害を最小限にする方法は―
自販機の間に隠された第三の選択肢、即席そば―!!

秋尾 鬨堂 > 『だめでした』

しばらくして、やや顔色を悪くしながらふらふらとクルマに戻る。
悪くない、悪くなかったが、ダシの味がなさすぎた。
醤油を薄めたような味気ないスープに、細切れ同然の麺。
そばではあるが、ギリギリベビースターラーメンのお湯戻しだったのかもしれない。

秋尾 鬨堂 > 「今は、キミと眠らせて欲しい…」
全ては明日、起きてから。
応急修理もレッカーも、今このモチベーションでは出来るはずもない。
なんとか運転席に戻ると、ばたんとドアを閉め。
大してリクライニングしない座席にもたれると、眠りに堕ちていく。

明日は良い日でありますように。

ご案内:「◆速度Free(違法描写注意)3」から秋尾 鬨堂さんが去りました。