2016/07/08 のログ
ご案内:「クローデットの私宅」にクローデットさんが現れました。
■クローデット > 夜。
鏡台のある寝室に、何やら液体の入った瓶を携えて入って来たクローデット。
「…上手く出来ていると良いのですが」
瓶に入った液体は、透明感のない、粘度の高そうな濃い青。
控えめに言って、口に入れたいとは思わない色だ。
■クローデット > 先日から作っていたのは、委員会で要請された調べ物から発展して勉強した魔法薬学の産物。
性別と種族こそ変えられず、「ヒト」の範疇を大きく超える肉体的特性を持つ種族の者にはまともな効果を発揮しないものの、比較的安定して大きな変身を可能とする、魔法薬だ。
副作用は、用法・容量の限度を守りさえすれば変身時と解除時の軽い胸のむかつき・めまい・視界の歪み程度。
(…まあ、まずは軽く)
瓶の蓋に、10mlほどだろうか…その青い液体を注ぐと、クローデットは一気にそれを飲み干した。
強い苦みが、口の中に広がる。
クローデットは早速軽い目眩を覚えて、鏡台の椅子にふらつくように腰掛けると、瓶に蓋を被せて鏡台の上に置いた。
これで、手を滑らせて薬を駄目にする危険性を減らす。
■クローデット > 目眩に従って軽い胸のむかつきと、視界の歪みがやってくる。
鏡に目をやると、自分の顔がモンタージュのように歪んで…
…いや、周囲の背景の歪みと合わせても、自分の顔の歪みが大きい。
(…なるほど、これがこの薬の作用機序…
まともに見ていたら、副作用が酷くなったように感じてしまいそうですわね)
そう考え、クローデットは目を閉じる。
変身魔術には、その仕組みを幻術に頼るものがあるが、この薬は違う。
実際に肉体に干渉して、服用した者の肉体の形を、服用した薬の量に応じた時間だけ作り変えてしまうのだ。
「幻術破り」で正体が見破られることはない(とは言っても、魔術の解析に長けた者が見れば「魔術で変身している」ことくらいは悟られるだろうが)し、作用の範囲が肉体に留まるため、「周囲に纏う」形の術式と干渉し合うことがない。
各種防御魔術を併用して身に纏うクローデットが扱う変身魔術としては、副作用を踏まえてなお安定して使い得る手段だった。
■クローデット > そうして、歪む顔が、姿が、徐々に形を得ていく。
やや暗めの柔らかく巻いた銀髪は、烏の濡れ羽色に染まりながら、まっすぐ伸びていき。
西洋人らしく整った顔立ちは、徐々に幼く、陰影を浅くしていく。
陶器のように白く艶やかな肌が、若干黄色みを増す。
そして、女性としてはどちらかといえば長身に属するだろう背丈が縮み、その骨格が、徐々に華奢になっていく…
■クローデット > そうして、副作用が落ち着いた頃、クローデットが目を開けると…
鏡の中にいたのは、長くまっすぐな黒髪と、黒くつぶらな瞳を持った、いかにも日本人といった容姿の、10代前半から半ばに見える少女だった。
背丈も、150㎝前後だろうか。クローデットから見ると、頭半分以上背が低く、それに合わせるかのように、骨格も華奢になり、女性らしい体型の凹凸も引っ込んでいる。
…もっとも、室内着はそのままだ。この魔法薬の変身は、肉体の外には及ばない。
つまり、服飾はまた別に用意しなければならないのである。
室内着の時に実験をしたのも、体型の差異の影響が小さいためだ。
…それでも、背丈を縮めた分、袖は手の平をすっぽり覆い隠し、裾は床すれすれとなっているが。
「………成功、ですわね」
幼くなった分柔らかさより細さが際立つようになった声で、クローデットは満足げに鏡に向かって笑みかけた。
■クローデット > 故郷で破壊活動(本人に言わせれば「浄化」「断罪」だろうが)に勤しむクローデットが今まで変身魔術を嗜んでこなかったのは、防御や結界との相性の問題もあるが、「敵対的でない一般人を巻き込むことを良しとしない関係上多数の目撃者を想定していない」のと、「数少ない目撃者もついでに証言不可能にしてしまえば問題はない」という発想によるところが大きかった。
…しかし、今は事情が違う。
「敵」のただ中、懐で表向き忠誠を誓いながら、「奴らの内側の論理によって奴ら自身が食い破られる時を早めようとする」日々。
堂々と非公式の「断罪」をするわけにもいかない上、「表」での働きにより、「裏」でも避けられ、あるいは警戒されるようになった。
「裏」の世界の人間に脅威として認識されること、それ自体は望んでいたことでもある。
…しかし。
クローデットは、「クローデット・ルナン」の名を捨てた状態で、この島の「闇」に改めて身を投じてみたくなった。
「クローデット・ルナン」の名を捨てることで、何を見…何を為すことが出来るのか、試したくなったのだ。
■クローデット > (薬の生成成功は確認出来ました。
後は、引き続きの生成と…変身した時に身につける衣服の調達ですわね。
正体が暴かれることを防ぐためにも…変身に体型の縛りを設けないためにも)
そう考えてから、クローデットは鏡台から立ち上がる。
10mlほど服用した場合、変身の効果時間は1時間ほどだ。
変身が解除される瞬間をこれから会話する相手に見せるのは可哀想だし(なんといっても顔面がモンタージュよろしく物理的に歪むのである)、早めに話をつけなければならない。
■クローデット > 背丈が縮み、歩幅が小さくなった分いつもより少しだけ歩数をかけて歩いた先は…ハウスキーパーである、ジュリエットの部屋の前である。
ノックをし…
「ジュリエット、おりますか?
個人的なお願い事がありまして、相談に参ったのですが…」
いつもより細い、あどけなさの残る声でそう告げ、クローデットは彼女の部屋に迎え入れられた…
ご案内:「クローデットの私宅」からクローデットさんが去りました。