2017/07/11 のログ
ご案内:「クローデットの寝室」にクローデットさんが現れました。
クローデット > 何かが弾けるような音がして、周囲が炎に包まれる。
人々の怒号。子どもの泣き声。誰かの慟哭。
…それらは、記憶にはないのに、クローデットにとって既視感のあるものだった。

「………!」

自らの息を呑む音で、クローデットは目を覚ました。

クローデット > 「………。」
(………また、夢ですか………)

真っ暗な寝室。自らの二の腕に強く指を食い込ませていることに気付かないまま、クローデットはゆっくりと身体を起こす。

「あの日」から、何日か経って。
クローデットは、目に見えてやつれていた。

無論、「大切な人」がクローデットに干渉してくることはもうない。
ただ、「大切な人」の束縛が緩んだことによって、クローデットは、自らの人生の中で「見ないようにしてきた」ものを、夢の形で突きつけられる日々を過ごしていた。

クローデット > 自分のものではなかった、虚ろな憎悪、根拠のない敵意。
それらを元に、自分が何をしてきたのか。「誰」を、犠牲にしてきたのか。
………そして、それらから必死に目を背けてきたという自分の「罪」を、クローデットはいよいよ直視せざるを得なくなっていた。

「………ぁ………」

腕の感触に違和感を覚え、ここでようやく二の腕に食い込む自分の指に気付き、放す。
地震大国の近隣という事情を鑑みて装備している防御術式の恩恵がなければ、身体のあちこちに爪や指の跡がついて、醜い有様になっているだろう、と思った。

クローデット > 夢に迫られ、満足に休息を取れていない。
食欲も失せ、クローデットは消化のいいもの以外ほとんど受け付けなくなっていた。
頻繁に私宅に戻って体力を温存しながら、どうにか講義に出席しているが…卒業発表に向けた研究は、捗っていない。
カウンセリングも2回連続で遅刻しているし、委員会にはどう思われているだろうか。

(………しかし、わたしは………)

「彼」が望まない限り、クローデットはこの島で拘束されるつもりはなかった。

クローデット > 「あの」後、クローデットはジュリエットに曾祖母の「干渉」のこと、その過程で起こったこと…曾祖母が、あのとき共にいた青年のおかげで「解放」されたことを話し…そして、ジュリエットから、彼女が抱えていた秘密を聞き出したのだ。

ジュリエットは、彼女が慕っているアルベール…クローデットの父から、クローデットが【レコンキスタ】の理念のために暴走することがないよう、見守っていて欲しいと頼まれていたということを。
彼女は、力の及ばなさを、本当に申し訳なさそうにクローデットに詫びた。
…何も、悪いことなどしていないのに。

【レコンキスタ】の理念から距離を置いたところでも、クローデットの死を望まない者がいるのならば…民主主義・立憲主義の観点から見て法理の通らない場所で罰を受けたくはない。
それが、クローデットの、今一番の「我儘」だった。

クローデット > そのためには、卒業発表を滞りなく終え、祖国に帰らねばならない。
…それでもクローデットは、その「我儘」を通さない判断をすることを、あの青年に許していた。
自分が救えなかった「大切な人」を解放してみせた彼が、クローデットがこの島の理で裁かれることを望むのならば、受け入れるしかないと。

(…今のところ、その気配はありませんけれど)

情報を入手し、判断する技術に乏しい彼のことだ、【レコンキスタ】のことなどほとんど知らないに違いない。

クローデット > 少しずつ…丁寧に話していこうと思う。
この世界のあり方を知ることは、彼にとってもプラスになるはずだし。
それで彼が翻意するのならば、仕方がない。
…ジュリエットには、「いざという時のために、父の元に身を寄せる準備だけはしておいて欲しい」と伝えてあるが。

「………。」

ここまで考えて、クローデットは溜息を1つ吐く。

この数日の自らのコンディションから、白魔術が上手く行使出来ない理由を、クローデットは察しつつあった。
「大切な人」から「解放」されて。彼女の「想い」を、本当の意味では共有出来ていなかったことを知って。

白魔術の根源たる「祈り」が、揺らいでいるのだ。

クローデット > まだ、今までの「祈り」に代わりうる「何か」は見つからない。
白魔術のあり方が好きなのは変わりないので、捨てたくはないのだが…。

(…ひとまずは、休みましょう。試運転時のデータの検証が、まだ終わっておりませんし)

せめて、やりきるまでは、保たせなければ。この身体も、この精神も。

個人用冷蔵庫から水を取り出して、休養効率を上げる栄養剤と共に流し込むと、クローデットは再びベッドに横になって、目を閉じた。ジュリエットに、これ以上の心配はかけたくない。

自らの行いの報いのように見る夢を「悪夢」と呼びたくはないけれど、それらがクローデットを苛んでいるのは、事実だった。

ご案内:「クローデットの寝室」からクローデットさんが去りました。