2020/06/09 のログ
ご案内:「【常世島の現在】」に六月の常世島についてさんが現れました。
六月の常世島について >
六月は学園としての公式行事が特に行われることのない月である。しかし、何かしらの行事は行われており、例年五月に行われていた「異能学会」「魔術学会」の春季学術大会が会場都合により延期となり、今年は六月開催となった。会場は研究地区の大小の研究棟であり、六月末日まで内外の研究者によるシンポジウムや研究発表が行われている。近年発足した「異世界学会」の学術大会も同時に開催される。
五月には常世島の気候も夏の様相を本格的に呈し始め、制服を着用している学生の夏服への衣替えも徐々に行われている(衣替えについては任意である)。六月上旬には常世島気象台・生活委員会による常世島の梅雨入りが発表され、雨の日が多く続いている。とはいえ気温が下がるわけではなく、梅雨の時期でもあるため海開きは行われていないものの、島内に存在するいくつかの屋内プールの利用者も増え始めている。
【『「異能学会」春季学術大会』紛糾】
上述したとおり、本来なら五月に開催されるはずの「異能学会」「魔術学会」の春季学術大会であるが、今年は会場となる研究地区の実験のために開催を延期し、六月の開催となった。両学会ともに六月末日まで学園内外の研究者による研究発表が行われる。学生や教員の発表も当然可能であり、研究発表を以て単位の一つとして申請することも可能である。
発表テーマとしては異能や魔術に関するものであれば全て可と言えるほどに幅広く、様々な学問領域――異能/魔術科学・化学、異能/魔術史学、異能/魔術文学、異能/魔術病理学、異能/魔術宗教学、異能/魔術哲学、大変容研究等々――から研究発表が行われる。学外の学会からの出席者も多く、常世学園のみならず国際的に意義のある学術大会であるといえる。
例年通り、アカデミックな大会として平和裏に行われていたものの、「異能学会」春季学術大会にて事件が発生した。
異能病理学会ではこれまで明確に「疾患」に相当すると判断される一部の異能に対する治療・制御の研究が行われおり、例年臨床試験などの研究成果が発表されていた。
全ての異能を「疾患」と判断するのではもちろんなく、明確に「疾患」と判断される異能(発現者に健康的被害を及ぼすもの)についての研究であり、極めて学術的で公共の福祉に寄与するものであり、差別的な意図などは一切存在しない発表であり、例年これが問題にされることはなかった。異能との共生を目指していく社会を構築していくためには必要なことであるためだ。
しかし、学会に出席していた「国際異能発現者連絡会議」の構成員が、発表中の「一部の異能を「疾患」と判断する」という文言を曲解・拡大解釈し、「異能を治療すべき疾患と判断し、異能者に対する差別的な発言を行った」などと感情的な批判を行い、異能病理学会に謝罪を要求する事態となった。
当然謝罪が必要されるような研究発表ではなく、批判は不当なものであったが、「国際異能発現者連絡会議」の批判は加熱し、異能を危険視する考えを持つ出席者が「国際異能発現者連絡会議」に対して「異能は全て治療されるべきだ」などの発言を行うなど、大会進行に支障をきたす結果となったため、その日の学術大会は中断された。異能学会に批判的な一部のメディアにもこの一件は偏向的に報道され、異能学会や異能病理学会に対するデモや脅迫文が届く事件に発展した。また、「国際異能発現者連絡会議」への抗議活動も行われた。
風紀委員や公安委員が警備・調査に出動するなど学術大会続行が危ぶまれたが、「国際異能発現者連絡会議」本部は一部構成員の誤解に基づく行き過ぎた発言であることを認め、正式に異能学会・異能病理学会に謝罪会見を行い、広くその様子も報道されたため事態は沈静化し、学術大会も予定通り六月末日まで開催されることとなった。
その後、特に学術大会への妨害は発生していないが、風紀委員や公安委員による学術大会の警備は引き続き行われることとなった。
ネットワーク上では、異能者や異能学会に批判的な者たちはこの事件をあえて利用し、全ての異能は治療すべきなどの過激な発言を行い、対してどのような異能も制御すべきではなく自由に解放すべきであるという常世学園の理念に反する極端な発言も行われ、異能学会・異能病理学会、および常世学園生徒会は公式に遺憾の意を表した。
世界で広く異能は受け入れられつつあるとはいえ、未だ異能の全ての社会的な問題が解決したわけではなく、常世学園の存在の意義がよりはっきり示された形となった。
この事件で新たにクローズアップされることになったのは、異能を病と捉えて「治療」すべきと主張する者、自ら異能の「治療」を望む者が存在するということである。常世学園としては異能発現者が異能を制御し、異能と共生していくことを理想としてはいるものの、未だ異能の全てが解明されたわけではなく、異能の種類に関わらず自らの異能を消し去りたいと考える者も少なからず存在している。
異能は本人の意志・努力や訓練、あるいは医学的な措置などによって制御可能であることは実証されている。しかし全ての異能が制御可能であるかどうかは不明であり、制御が可能であってもそれに必要な期間が非常に長い異能も存在しており、即座に異能の「治療」・消去を求める異能者の望みには答えられていないケースが多い。異能を強制的に停止させるなどの触れ込みで、人体に非常な悪影響を及ぼす薬物も一部では売買されており、それを買い求める者もおり、問題視されている。
異能を持つ学生の一部は、今回の事件を聞き、保健室に自らの異能が疾患であるかどうかという相談を行っていることも確認されている。異能を危険視され学園に逃げ込むように入学してきた学生も少なくなく、この事件でその過去を思い出した者もいるのである。なお、常世学園では異能は社会に深く根付き浸透しているため、異能の全てを疾患と捉えるような言説は主流ではない。常世学園内というよりは、学園の外で大きく問題にされた事件であった。
異能は人類の可能性の表れか、制御不能な危険な存在か、生物を蝕む疾患か、それとも個々人の個性として扱われるべきものか――様々な意見が、世界には渦巻いている。
【PL向け】
異能が疾患であるか否かというような重いテーマを扱いましたが、必ずしも深刻に捉えていただく必要はありません。
ご興味があるようでしたら上の内容を拾っていただくも、なければ拾わなくてもよいというようなものです。
話題の提供という程度にお捉えください。
風紀委員などとして学会に警備出動していただくことも可能です。学術大会への直接的な襲撃など、イベントの進行が不可能になるような行為はご遠慮ください。
ご案内:「【常世島の現在】」から六月の常世島についてさんが去りました。