2019/02/02 のログ
■上総 掠二 > 「……君は。別に敬語じゃなくていい。わざわざひと手間掛けるのは時間の無駄だ」
フ、と短く笑った。この学園において、年齢などというのは些細な問題だ。
人でないものを含めた、ありとあらゆるものを受け入れるこの学舎において、生きた年数などほとんど意味をなさない。
異能。魔術。そして、それを含めた個人。
学年や年齢にそう意味がないのに、――時間の無駄でも聞いてしまうのは、きっと本土にいた頃の癖なのだろう。
「つまり優秀ってことで違いないと。目算どおりだ。
君は何を学びに? 自己研鑽をする気があるならば、ここに"押し込まれた"わけではないのだろう。
やりたいことがあるのはいいことだ。正しいことだ。だから俺は評価する」
回りくどい男だった。彼の返事にも、「職員と思われていたなら光栄なことだ」と返す。
あくまで、本土のように専門家がやっているわけではない。全てが学生に任されている。
だからこそ、職員だと思われていたということは、彼にとって喜ぶべきことであった。
「……君こそ、頭脳労働には甘味は必要では?」
意地の悪い顔をして、わざとらしく口元を緩めてみせた。
■白鈴秋 > 「じゃあそうさせてもらう。敬語は使えないわけじゃねぇが、あんまり得意じゃねぇ」
使わなくていいと言われたなら敬語を消す。やっぱり好きではない。
優秀といわれるならば少しだけ目線をそらし。
「優秀ならここに態々学びにこねぇよ……異能や魔術の事だ。つっても、家が魔術の道具を作る家でな、ガキの時からその辺の教育されてきたから……まぁ2年で専門分野にはいらねぇと意味がねぇんだ」
基礎の内容はもうとっくに覚えている。というよりここの学費などを払うための職業にしているレベルなので必要ないということである。
「遠慮しとく、そんなに甘ったるいの飲んだら胸焼けがする」
意地の悪い顔には目線をそらしたままそう返す。
コーヒーを一口飲むが顔をしかめる。冷めはじめたようだ。
■上総 掠二 > 「君は…………。 まあ、学べる場所などここくらいだからな。
それは妥当だ。……魔道具の類か。それは珍しい、というよりも。
そういうものに触れていたのなら、ここに至るのも当然の帰結でもあるな。
良い悪いは度外視に、そういうものに触れてきたというのは、少し羨ましくもある」
使わなくていいとは言ったが、見事に一瞬で消えたものだから思わず声も出る。
が、それを咎めたりすることもなく、また小さく鼻を鳴らすに留まる。
「それなら、来年が楽しみだな。期待外れか、それとも期待通りに面白いのか。
きちんと訓練までしているような君だ。もしかすれば退屈かもしらんが――単位は、落とさぬように」
二年先にこの学舎に在籍する先輩としての助言だった。
こんなことを言わずとも、きっと彼は真面目に単位を落とすことはないのだろうな、とも思いながら。
「いつでも鉄道委員会は人員を募集している。いつでも声をかけてくれたまえ。
三年。鉄道委員会運行課の上総掠二だ。かずさの、りょうじ。覚えてくれたな」
胸焼けがする、と言われれば首を傾ぐ。どこがだ、という顔をしながら勢いよく呷って。
■白鈴秋 > 「そういうものか? 俺が小さいときは普通に遊べる奴らがうらやましく思ったものだが……下手に触ると家が吹き飛ぶ代物もいくつかあったからな」
隣の芝生は青く見えるというべきか。彼からすれば色々な意味で普通の人たちというのもうらやましく思っていたのも事実だ。それは今もあまり変わらないわけだが。
来年が楽しみだといわれると少しだけ笑い。
「そうだな、まぁ精々新しい学びがある事を期待するさ……まぁ一般教養に関してはたぶんヤバいけどな」
そう答えるにとどまった。
面白い以前にまずそのレベルからである。魔術や異能に関しては大学レベルでも対応できるが……逆にそれ以外は下手すれば一般以下である。
「悪いが遠慮しておく、鉄道委員に入って駅員の仕事をするつもりはねぇしな。まぁ痴漢とか事件とか。後は……空調設備とかの故障があれば呼んでくれ。前二つは解決してやるし、最後のは金取るが直してやるから」
と答えた後に少しだけ視線をそちらへ向けて。
「白鈴秋。好きに呼んでくれてかまわねぇよ」
■上総 掠二 > 「なに、普通の生活よりはそっちのほうが数段楽しそうだ。
……もちろん、家が吹き飛んでしまえばとんでもないがね。飛ばさなければいいのさ。
さては君、そういう。異能や魔術を学びにきた、と言いながら、一般科目で躓く性質か。
俺の同期にも、そういうやつは多い。そうならないようにしないと、本当に困るぞ」
脅すような口調。事実、彼の周りにそういう輩は非常に多い。
優れた異能を持っていても、魔術学をどれだけきちんと収めていても。
基本レベルの数学は無駄だ無駄だと言って切り捨て、テスト前に泣くような輩が。
先輩ぶったアドバイスに、ふ、と小さく笑って。
「そうか。それは残念だ。だが、いいパイプができた。自警学生の類か。
生活委員よりも先に動いてくれるのであれば、後者についても君に依頼しよう。
……それではね、白鈴君。書類の濡れない場所で、こいつを片付けるとしよう。
君は?」
君の暇潰しは、そろそろ終わりそうかい?と、言外にそう言って。
太腿に挟んでいたバインダーを引き抜いて、一気に飲み干した余ったるいコーヒーのペットボトルをごみ箱に放り投げる。
危うく外れそうになったが、無事にきちんとごみ箱の中に着地する。
「勉強に困ったら、いつでも頼ってくれていい。俺は生憎、そっちしかできないものでね」
■白鈴秋 > 「ご明察の通りだ。基礎魔術学、基礎異能学、応用魔術学は全部最高得点だが、英語と数学はなんとかギリギリセーフって所だったよ」
ククと笑う。笑いどころではないのだが。
「自警学生……そんなのもいたんだな。ただそういう輩が嫌いなのとまぁ知り合いを困らせるのを排除するって目的だったんだが」
ふむと頷く。自身のしている事ももう少し大っぴらにしてしまったも良いのかもしれない。
などと考えていると君は? と問いかけられ。
「あ? あぁ……」
ちらりと時計に目線を落とす。いい感じの時間になっている。そろそろ撤収した人たちも多いことだろう。
「そうだな、俺もそろそろ向かってみる……わかった、頼りにしてますよ。先輩」
勉強に困ったら頼れという言葉にそう答え、それから立ち上がる。
「それじゃあ行きましょうか。すぐに分かれることになりますけどね」
といいながら屋上を出る扉を開くのだった。
ご案内:「屋上」から白鈴秋さんが去りました。
■上総 掠二 > 「風紀委員会でもそうじゃなかろうが。
そういう仕事を誰かがやってくれてる、ってことだけは常々忘れんようにしなければな、と思うんだが。
君もそうなのだろう。ご苦労なこと。……過信に足元を掬われんようにな」
どこまでも当たり前のように維持されている、この学舎のすべてが学生の努力あってこそのものだ。
数年前、違法部活やら何やらで色々な事件があった頃。上総は入学したばかりであった。
そうしたものを踏まえて、自らの手で何かを為せる学生に対してはリスペクトを怠ることはない。
「なに、階段を降りるまでは道は一本だ」
屋上へと続く階段を降りて、別れて。上総は、振り返らずにひらひらと左手を振った。
ご案内:「屋上」から上総 掠二さんが去りました。
ご案内:「食堂」に蛭谷 エルさんが現れました。
■蛭谷 エル > 目の前に置かれたラーメン。
それを不満そうな表情で見つめれば、小さく溜息を吐く。
「不合理だ...。理解ができない。」
見ただけでも分かる塩分、脂肪、糖分...あらゆる栄養素のバランスが悪すぎる。
お盆の上にある箸を指でつまんでは、それを光に透かすように観察をすれば、周りと同じように割ってみる。
綺麗に割れた。
「栄養の全てにおいて俺の世界の配給より下回っている....。」
ますます不満げな表情でそう呟く。
使い慣れない箸を握り、まずは面の上に乗っているチャーシューを摘まみ、じっと見つめる。
初めて見る食べ物。これは豚肉だっただろうか?自分の世界では上層の人間が食べている嗜好品だったはずだが。
■蛭谷 エル > 不満と疑問を抱きながらチャーシューを口に頬張る。それがいけなかった。
一口、二口、噛みしめるごとに豚肉の旨味が下を刺激する。
程よく調節された塩分が口の中に、脳に、体に染みわたる。
「っ?! なんだこれは.....。」
思わずそう声を漏らしてしまう。こんなもの食べたことが無い。
旨い。栄養バランスがとれていないにも関わらず、この旨さ。
目を少し大きく開けば、もしやと思いスープを口にする。
「これは...。不合理だ....。」
時間を掛けて豚の骨で出汁を取り、各種調味料で味を調えるという手間のかかり過ぎる不合理なこのスープ。
栄養バランスは度外視のこんな液体が、こんなに旨いものなのか?
思考を巡らせる。なにがこの料理がここまで自分を夢中にさせるのかと。
■蛭谷 エル > チャーシューとスープの味は確認した。さて次は...。
麺。見た所穀物を粉砕し、細長く整形した物。火も通りやすく、まったくもって合理的だ。
さて...問題は味だが。
「もぐ....。」
ラーメンを一口啜れば、思考を巡らせる。
なるほど、スープに麺を絡め、各所に配置された具材を食べることで味への慣れを防いでいるということか。実に合理的だ。
旨い。この上ないくらいに。だが、しかし....。
「やはりこの栄養配分はなんだ...?」
眉間に皺を寄せそう口にする。
とくに塩分、脂質、炭水化物が暴力に等しい。
これだけはどう考えても非合理極まりない。
「だが...旨いな....。」
■蛭谷 エル > 食べている内に幾つか分かった。
こしょうをかけると味に変化が生じて飽きが来ない。
手間をかけた鳥類の卵を煮込んだものをスープに絡めて食べると非常に美味なこと。
米と呼ばれる穀物と共にラーメンを食べると驚くほど旨い。
「なるほど...これは旨いという感情を極限まで引き立てる為の食べ物か。」
だとしても栄養バランスが悪すぎる。
味は確かに美味なのだが、一口食べるごとに体に悪いものを取り込んでいることが分かる程だ。
だが...箸が止まらない。我ながら非合理極まりない。
「ん...。結論、らぁめんは非合理だ。」
完食すれば、テッシュで口を拭く。
おいしかった。
■蛭谷 エル > 「ん...。もうこんな時間か。」
ラーメンの入っていた器を名残惜しそうに見れば、ちいさく息を吐く。
腹は満たされたが、もう少しだけ食べていたかった。
あんな食べ物、最高等級の娯楽食以上のものだろう。
「また...食べに来るか。」
お盆を持って食器を返却口までもっていけば、そう呟いた。
合理主義を好む彼であったが、自身の呟いた非合理な言葉に気づいたのは数分後のことだった。
ご案内:「食堂」から蛭谷 エルさんが去りました。
ご案内:「屋上」に鈴ヶ森綾さんが現れました。
■鈴ヶ森綾 > 「ん……。」
屋上のベンチに横たわっていた少女の身体がむくりと起き上がる。
眠たげなまなこはしっかりと開かれておらず、まだ夢を見ているような様子だった。
「……あら。」
腕に巻いた時計で現在時刻を確かめてみると、短針が3を指し示していた。
だがこの場所にやってきたのは昼休みだったはず。
今日は日差しが気持ちいい日だったのでついうたた寝をしてしまったようだ。
「サボってしまったわね。」
テストが近いというのに、まったく良い身分と言えた。
ただでさえ熱意に欠ける生徒と見なされているのに、これ以上教師に睨まれるのは御免こうむりたいところだが
眠ってしまったものは仕方ないと開き直ることにした。
■鈴ヶ森綾 > 今から授業に出るのも億劫な事極まりない。
どうせならばともう少しこの場に居座る事を決め、脇に置いておいた手提げバッグを手元へと引き寄せて中身を漁る。
「さて…続きを。」
そうして取り出したのは毛糸の玉と編み棒、そしてその毛糸で編みかけになっている何かだった。
それを膝の上に置いて編み棒を器用に動かし糸を繰る。
手は淀み無く動き、手本もないのに特に迷うこともなく作業を進めていった。
■鈴ヶ森綾 > 本当なら昼食を摂った後、午後の授業が始まるまでのほんの僅かな時間やるだけのつもりであった作業だが
眠たくなってうとうとしてしまったのだから仕方ない。
結果的にこうして予定通り作業はしているのだからなんら問題はないはずだ。
「天気が良すぎるのが悪いのよね。」
そのおかげで気持ちよく昼寝ができたというのにそんな悪態をつくのだった。
そしてサボった授業の事は既に頭の片隅にも置かれていなかった。
そうする内にも編み物は続いてゆく。その様子はどこか楽しげで、口元には薄っすらと笑みを浮かべていた。
時折出来栄えを確かめるように編みかけのそれに指で触れ、また編み棒に意識を戻す、そんなふうにしばし時を過ごす。
■鈴ヶ森綾 > それから暫くの後、日が傾くにつれ徐々に気温が下がり始めたため荷物をまとめて屋上を後にした。
ご案内:「屋上」から鈴ヶ森綾さんが去りました。