2020/06/13 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 校庭は薄暗く叢雲に覆われて月すらも出ていない夜。
昼間の活気も嘘のように灯りが消えている校舎の一室に眩い白色蛍光の光が溢れていた。
それは教室。もはや生徒どころか教師もいない閑散とした中で微かに耳障りなチョークが削れる音も聞こえる。
濃緑の黒板に白色で刻むのは少年の名前。そっとチョークを置いたのなら教卓に手を置いて。
静謐を乱さんばかりに嬉々とした声が響いた。

「ヤナセヨウスケって言います。よろしくね!」

屈託ない笑みで細めた黒瞳は誰もいない空席群を見て、にっ、と薄く開いた唇から白い歯を見せていた。
が、何も返ってこない返事に眉尻と口角を下げてゆき。かくり、と頭を項垂れた。

「って……こんな自己紹介の練習、ちょっと虚しいかも」

矢那瀬陽介 > 「むぅ、何度も練習するもんじゃないよね」
面白く無さそうに黒板に描かれた几帳面に角ばる文字を消していく。
乾いた音を立てて手を叩き、汚れを落としたのならとん、と軽やかに教卓の位置から教室の後方まで跳躍し。

「っと」

反動で折り曲げた膝を伸ばして振り返る。

「これが『みんな』が見る風景なんだね」

中央に幅広い黒板、その左に大きな時間割表、右には連絡事項の掲示板。
そして日の光こそ無いものの並べられる窓が開放感溢れる外界を見渡せる。
その様相をくぅるり、と見渡す黒瞳は一点に止まる。
整然と並べられた机と椅子、誰の席かわからねど――

「ごめんね。ちょっと借りるね」

そっと席を引いて腰を落とす。低くなった視界がより一層イメージしていた光景と重なって……
満足気に双眸細めて肘ついた手の上に顎を乗せて上機嫌に足を揺らした。

矢那瀬陽介 > 揺れる足もやがて大人しく止まる。
手に乗せていた頭も船を漕ぎ始める。
瞼を閉ざした儘に眠りに落ちた少年は目覚めれば帰宅するのだろう。
ただ、今だけは微笑む顔で新しい級友と過ごす楽しい夢を見ていた――

ご案内:「第一教室棟 教室」から矢那瀬陽介さんが去りました。