2020/06/26 のログ
ラピス > 「ちみっこですが、先生ですからね、ふふり。
 っとと、そう言えばお名前聞いてませんでしたね?
 先生は、ラピスといいます。しいちゃんのお名前も、もしよければ」

言いたくなければ、言わなくても良い。そんな選択肢を残しつつの誰何。
止血された箇所に施される手当は、てきぱきとした素早い手付き。
見る間にガーゼが、包帯が彼女の右手を覆い、清潔な白が傷を隠した。

「おおー、あれだけの傷で動じてなかったですし、傷を追うことに慣れてる感じです?
 あまり無茶をしてはいけませんよー?お人好しな先生の、お節介なお話ですけども」

飲むように促してみた鉄剤だが、効かぬというなら話は別だ。
それなら、ただお腹が膨れるだけなのだから、パンケーキのほうが余程良い。
ふむー、と少しだけ頭の中で何かをこね回すが、上手い答えは見つからなかった様子で。

「薬が効かない、というのは中々難儀ですね。お腹痛いときとか大変そうです。
 血液なら、全く同じ成分のものを作り出せば馴染むかもですけれど……。
 うや、生徒を心配するのは先生のお仕事ですから、気にする必要はないのです。
 先生は他愛ないお喋りの相手だろうと補修の講師だろうと、断りませんから!」

視線をそらす彼女の仕草には、にっこりと満面の笑みを返事として。
他に手当てを必要とする傷などがないならば、使った後の諸々の片付けは引き受けるつもりだ。

神樹椎苗 >  
「しいは、しいです。
 かみきしいな、って言うですよちみっこ先生。
 しいの傷は全部古傷ですし、付き合いもなげーのです。
 新しい傷の方がむしろ早く治りやがるから、めんどうくせーです。
 心配しなくてもしいは痛いのは好きじゃねーですので、中途半端に怪我するような事はしないですよ」

 少し居心地が悪そうにもぞもぞとしつつ自分も名乗るが、椎苗自身は名前を呼ぶ気がなさそうだ。
 それでも、後始末を引き受けようとしてくれる様子には、素直に「ありがとうです」とお礼を伝えた。

「不便は不便ですけど、もう慣れたのですよ。
 ちみっこでも、先生は先生みてーです。
 きっと人気者になるにちげーねえですね」

 言いながら椎苗は立ち上がると、チューブを押さえたまま頭を下げる。

「今日は助けられちまったのです。
 これは、今度新しいのを買って返しにくるですよ」

 そうして、扉に向かって保健室を出ようとする。

「ちみっこ先生は、お人よしでお節介かもしれねーですけど。
 そういう先生はいると、助かることもあるみてーです。
 お前にならまた、頼ってやっても、いーかもしれない、です」

 背中を向けたまま、ぼそぼそとつぶやいた。
 それが聞こえたかどうかはわからないが、一瞬立ち止まったあと、逃げるように小走りで保健室から去っていくだろう。

ラピス > 「かみきしいな――ふむふむ、覚えましたよ!
 んー、傷が中々治らない、というのは大変そうですねぇ。
 そういうことでしたら、先生で良ければいつでもお手伝いしますよー?」

どうせお節介をするなら、最後まで面倒を見るのが責任というもの。
それに、責任だの何だのを抜きにして、知り合った相手とは仲良くしたい思いもある。
だから、彼女が望むならば、少女はいつでも手伝うことだろう。それが、傷の手当以外でも。

「ん、それなら先生は、しいちゃんを見守ることにするのです。
 そうです、先生ですから――人気者な先生になれるといいなぁ」

彼女の言葉に笑みを深めると、心の内でも目標に設定。
せっかくなら、より良い先生を目指すのも悪くはないだろう。
礼儀正しい彼女に、やっぱり良い子だなぁ、などとぽわぽわ思いつつ。

「ん、先生は生徒を助ける為に居ますから。
 あぁ、気にしなくても平気ではありますが、しいちゃんがやりたいようにするのが良いです」

彼女がそうしたいなら、それを受け取るのも先生の役割。
彼女が扉に向かうなら、その後姿を見送ることにして。

「ふふ、傷の手当以外でも、暇つぶしとかでも相手になりますからね!
 ではでは、きっとまだどこかで出会うでしょうから――またね?」

彼女の背中に声をかけつつ、小さく手を振って。
後はささっとお片付けをしたならば、教師は元のお仕事に戻るのだった――。

ご案内:「第一教室棟 保健室」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 保健室」からラピスさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 教室」にデザイア・ハートさんが現れました。
デザイア・ハート >  
授業終わりの休み時間。
一人の小柄な生徒が、青く透き通った髪を机の上に零しながら黄昏るように周囲を見渡す。
その生徒は非常に整った容姿の少女のようで、その珍しい髪色からも目を引くのだが…それ以上に今、目を引くのは腕にいくらかの絆創膏…のようなものが張られている事だろう。

だがそんな件の小柄な生徒は、その事を気にした様子もなく。
紅くクルリとした瞳でどこか楽しげに周囲の様子を眺めていた。

デザイア・ハート >  
小柄な生徒はくるりくるりと自身の長い髪を弄びながらふと視線を時計へと向ける。
…授業が始まるまでは、もう少し時間がありそうだ。

そう思えば、ふぅ…と溜息を一つつき、手帳を取り出して授業の予定を確認した。

ご案内:「第一教室棟 教室」に富士 雅さんが現れました。
富士 雅 > 小柄な生徒が静かに授業の準備を始めている横で、教科書を相手に奮闘している男。
奮闘と言っても決して試験勉強に励んでいるとかそういった内容ではなく。

「…く、動け。」

机の上に広げた教科書相手に念を送っている。
先日、ある生徒に教えて貰ったコツで引き寄せることは成功するも。
そこからの発展形、浮かせたり飛ばしたりをやろうと頑張っている。

額に汗を浮かべる程に念を送るも、教科書はピタリと動かない。

デザイア・ハート >  
「うん……?」

ついつい横で、何やら奇妙な事をしている生徒の姿に視線が向く。
勉強をしてるわけでもなく、なにやら念を送って動かそうとしている。

…それはそう、たとえるなら念力を使おうとしているような…。

「…えーと、なにしてるの?」

とはいえここは常世学園。そういった”能力”もあって不思議ではない。
故にっぐっぐっと身を寄せてみて、こてりと首をかしげて聞いてみる。

富士 雅 > 「ん? 実はな…。」

身を乗り出してくる可愛らしい生徒。
前から思っていたが、この学校は皆レベルが高い。

「念力の練習をしているのだが、なかなか本一冊浮かせることが出来なくてな。
昨日、リモコンだのを引き寄せることは出来るようになったから、
そのうち浮かせたり飛ばしたりすることも出来るはずなんだが。」

男は既に疲れたのか、鞄から水の入ったペットボトルを取り出して口にする。
ちなみに、大きさは2リットルサイズだ。

デザイア・ハート >  
「ほーん、もしかしてと思ったけど念力か~。
他の小さいものならどうなの?
リモコンはいけたんでしょ?」

ほー…と、見上げるような形で視線をあわせる。
小柄な生徒はそちらがペットボトルを口にする様子をマジマジと見つめている。

富士 雅 > 「リモコンも教科書も、引き寄せるのはいけたんだぞ。
ほれこんな風にな。」

男が手を離して念を送ると、教科書がすっと手元に引き寄せられる。
但し、引き寄せた教科書をどこかに送ろうとしても移動しない。

「こんな状態だ。送る方も使えたら引き寄せるよりも便利だと思うんだがな。
どうすればいいかわかるか?」

キャップを占めると、大きなボトルを鞄に入れる。
男は困りきったのか、深いため息を吐く。

デザイア・ハート >  
「おー…!」

感心したような明るい表情を見せながら、ぱちぱちと手を叩く。

「引くほうなら教科書も行けるって事は、引く事限定の能力だとか?
押せたり浮かせたりもできるなら、ピクリと位は動きそうだけど。」

そんな少年は、困りきった男の姿を見れば、くるくると指先を空で回しながら何の気なしに推測を口にする。
特にたいしたことの無い、世間話をしているかのような感じだ。

富士 雅 > 教室の中で拍手をされ、男は柄にもなく気持ちよかった。
正答を述べて褒められた時並みに気分がいい。

「引く限定って言ってもなあ。
元の世界ならテレビに出れるだろうが、こっちじゃ誰も見向きしないだろう。」

もう一度ため息を吐くと、机の上に教科書を広げて。

「所で、試験勉強は順調か?
人によっては試験を免除されているのも居るらしいな。」

この時節柄、話題はどうしても試験になる。
お互い同じ学年と言うこともあり、最低限の面識はあった。
こんなふうにちゃんと会話するのは初めてだったが。

デザイア・ハート >  
「あっはは、まあそうかもだね。
念動力を扱える人は探せばいそうだし…。

ま、”引くだけならどんなものでも”とかだったらすごそうだけどさ。」

そんな他愛の無い返事をしながら、からからと小柄な生徒は笑う。

「んー?そりゃまあしっかりと。
ボクはそういう免除も無いから最低限の勉強はね。」

くりくりと、自身の髪先を弄りつつ、面と向かって、こうして会話するのは初対面だと言うのに目の前の小柄な生徒はどこかその距離感が近かった。

富士 雅 > 「だろ? こっちだと文化祭の余興にもならんだろうな。
どんなもので引けたら、まずは当たりくじを引いているな。
流石に10憶もあればいっしょうこっちで働かずに暮らしていけるだろう。」

男は冗談と言うより、半ば本気で残念がっている。
ちなみに男が引き寄せ出来る範囲は10メートル、小物までと大変使い道が乏しい。

「ほう、ちなみにどんな勉強をしているんだ?
俺は委員会で忙しいから免除しろと迫ったんだが、
駄目だった。 …まったく。」

口を尖らせ、腕組をする男。

「ところで、その絆創膏は喧嘩か?
簡単にで良かったら今治療してやるぞ。」

デザイア・ハート >  
「ありゃ、うまい事言うね~。
アイスの当たりとか引けるなら便利そうだ。」

くすくすと、本気で残念そうな相手をどこか励ますように冗談で宥める。

「そりゃよっぽどじゃないと免除は無いでしょ~。
その迫りに行く気概はすごいと思うけど。
ボクはとりあえず普通に、必須科目を優先だなぁ。

…ん?ああ、まあそんなとこ。
そこまで大したものでもないから気にしなくても大丈夫。」

ひらひらと手を振って、何でもないように生徒は語る。

富士 雅 > 「そうだろ?」

男は割と本気の様だ。
いづれ、そう言った物を引き寄せる研究を始めて勢い。

「しかしな、俺は割としょっちゅう呼び出されてるんだぞ。
学校の中でも外でも喧嘩するような連中の為にな。

ほう、ウカル目途はついているのか?」

怪我の事は暈されたので、それ以上追及しなかった。
代わりに、試験対策の進捗度合いを訪ねる。
一瞬、男の目が輝いた。

デザイア・ハート >  
「キミ、そんなしょっちゅう喧嘩でも拭きかけられてるの?」

若干あきれたような怪しげな視線で男を見上げる。

「まあそんな難しいものは無かったし、普通に復習しておけば大丈夫そうかな。
というか、そんな試験あぶなそうなの?」

輝く目を見逃さずに、そう聞いてきた彼の意図を一先ず探る。

富士 雅 > 「いや、そうでなくてだな。
喧嘩して怪我した連中を治療するために呼び出されるんだ。
俺は保険課の人間だからな。」

ふうと、3度目のため息。
見た目がそうだから、こんな風に喧嘩っぱやいと思われることは日常だ。

「いいや、そうではないが。
どうせなら分かっていそうな相手に聞くのが手っ取り早いだろう?」

どうも、向こうは授業理解が良い様だ。
男はそれ以上墓穴を掘りたくないので己の理解度については敢えて語らないことにした。

デザイア・ハート >  
「あー、なるほどねー。
さっきチラっと言ってたのもそれで、か。」

ぽんっと手を叩いて納得した仕草。
保健課なのは正直言って少々意外な風貌ではあったが。

「ふぅ~ん?免除を求めに行くくらいには切羽詰ってそうだったけど。
まあいいや、勉強教えて欲しいってことでいいの?」

怪しげな視線をふっとやめて、首をこてりと傾けながら、長い髪を腕に垂らしつつ問いかける。

富士 雅 > 「まあ、そういうことだ。
俺は治癒の異能を持っているからな。」

煙管を虚空から取り出し、一服する。
治癒の効果を伴った甘い煙が吐き出され、相手の腕にかかる。
本当に治すのなら暫くじっくり取り掛からないと効果はないだろうが。
まずは自己紹介代わり。

「ああ、まあな。
その代わり今度飯でも奢ってやるよ。」

デザイア・ハート >  
「へぇ…その煙管、何か関係あったり?」

腕に甘い煙を掛けた事は少々奇妙で、だからこそそのような問いを投げかける。

しかして、小柄な生徒はその煙管で一服する姿に奇妙な視線を向ける事も無い。
それはこの世界の学生にしては少々珍しく、どこか”慣れた”ものを醸し出していた。

「おっけー、じゃあどっかのカフェでも奢ってもらおう。
それでどこが分からない?」

富士 雅 > 「関係あるも何も、これが俺の異能だぞ。
煙管を取り出してこれで吸って吐いた煙が人を癒すんだ。」

右手に煙管を持ち、先から煙が昇っている。
異能で保健課の仕事をしているだけに校内喫煙を見逃されている。

「カフェ程度でいいのか?
ふむ、そうだな…。」

男は遠くを見つめ、暫し一服し。

「そもそも、出題範囲はどこからどこまでだ。」

デザイア・ハート >  
「なーるほど。
煙管も異能なのかぁ。」

くるくると、指先を回して何かを唱える。
そうすると、漂っていた煙が小柄な生徒の腕にふんわりと帯流する。

「いいよー、そんな食べるのに困ってないしね。

……って、そこからかい?」

若干、がくっとしながらも、一先ずは出題範囲が書かれたメモをそっと差し出す。

富士 雅 > 「そういうことだ。
…それは便利そうだな。それも異能か?
とりあえず、その煙を腕に巻きつけていれば多少は治りが早くなるだろう。
それでも駄目ならまた来ると良い。」

随分と便利な魔法を使う。
こっちの生徒はこれ位が普通なのだろうかと多少面食らっていた。

「おお、こりゃ助かるな。
そうだな、これなら魔術系統を多少学べばなんとかなりそうだ。
試験勉強の序でにさっきの魔法みたいのを教えてくれるか?」

メモを穴が開く程見つめ、今更ながら試験範囲を頭に入れる。

デザイア・ハート >  
「異能…じゃなくて魔術だね。
ちょっと空気を動かすだけの魔法。
おかげさまで治りがはやくなりそうだし、ありがとって言っとくよ~♪」

ニカリとした笑みを浮かべながら、小柄な生徒は嬉しそうに礼を伝える。

「じゃ、そこらへん重点的に教えればいいかな。
さっきのは…教えてもいいけど覚えられるかは保障しないよ?」

富士 雅 > 「異能も魔術も似た様なもんだろう。
おう、いつでも言ってこい。」

こっちの世界の人が聴けば怒り出しそうなことをさらっと口にする。
その反面、保健課らしい殊勝なことも言ってみたり。
用を無くした煙管を仕舞い。

「なあに、俺はこっちに来てから既に2~3個使えるようになった。
集中して練習すればどうにかなるだろう。」

最初に教科書を浮かすことが出来なかったことは既に忘却の彼方。
得意げにドヤ顔を決め込む。

デザイア・ハート >  
「あはは、聞く人が聞いたら怒りそうな話だ。」

幸いにも、目の前の小柄でかわいらしい生徒はそれを聞いても引っかかるものはなかった。
結果だけを見れば、魔術も異能も同じ事象は起こせるものが大半なのだから。

「それでテスト勉強を疎かにしないようにね?」

そんな釘を刺しながら、ノートを開きいくらかの復習を行っていく。
授業が始まるまでは、勉強を教える事だろう。

富士 雅 > 「なら、この話はオフレコでな。」

正直、どっちでもいいじゃないかと思っている男だったが。
口元に人差し指を立て、苦笑する。

「おお、そりゃそうだ。」

ノートを開き、相手の説明に聞き入る。
説明をしているうちに男が授業をちゃんと聞いていなかったことも露呈しつつ。
教師が入ってくるまでの間、即席の勉強会が続く。

「教え方が上手いな。」

デザイア・ハート >  
「うんうん、オフレコで。
間違っても先生とかに言わない方がいいと思うな。」

ああいう教授はこだわり強かったりもするし…なんて苦笑を返す。

そんなこんなで即席の勉強会はつつがなく進み…。

「そう?わりかし普通にわかんないとこの答え、見せてるだけな気がするけど。」

富士 雅 > 「そうだったな。
ああいう手合いはそういうものだな。」

相手の苦笑に男も頷く。

「いやいや、分かりやすかったぞ。
おかげで上位入りも夢ではないな。」

授業を聞いてなかったから分からなかったが真相だろうが。
そんなことを気づかない男は机に着いたまま、両手と頭を深々と下す。

「どこのカフェが良いか決めておいてくれ。
帰りにでも行くとするか。」

デザイア・ハート >  
「じゃー、それはきっとキミの自頭がいいんだよ。
ボクは授業で教わった事を反復してるだけだしね~♪」

ふんふんと、褒め言葉にも涼しい顔で、むしろ相手のノリをあげるような言葉を返す。
そうこうしているうちに、恐らくは時間が迫り…。

「なら授業中に考えとくよ。
いつ行くかは、まあ、そっちにあわせる。」

そう言葉を返したころに、授業時間の鐘がなる。

富士 雅 > 「まあ、都合がついた時にでも連絡しよう。」

そうこうしていると、教師が入ってきて授業が始まる。
男の自信が本当に合っていたのか分かるのは、もう少し後の事であった。

ご案内:「第一教室棟 教室」から富士 雅さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 教室」からデザイア・ハートさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にラピスさんが現れました。
ラピス > ちみっ子教師がやってきたのは、教室棟の屋上だった。
頭上には薄っすらと雲のかかった灰色の空。空気は、ほんのり汗ばむ位に温く、湿っている。
どことなく気怠さのある曇天の下、へっぽこ教師は職務をほっぽり出しての休憩中。

「お日様がギラつくのも苦手ですが、曇り空も気分がこう、だる~ん、ってなりますよねぇ」

嘆息一つ。懐から細工の施された長方形の箱を取り出すと、鼈甲の蓋を横にずらす。
中に入っているのは、数種類の薬草を独自に配合した、オリジナルの紙巻煙草。
そのうちの一本を取り出して指に挟むと、煙草の先端をじぃ、と見つめて。

「火精さん、ちょっと一服したいので、お手伝いしてくださいな」

願いの言葉を述べると、いつの間にやら煙草の先に火が灯る。
ふわん、と漂うほんのり甘い香りや味を楽しみながら、逆端を咥えてプカプカと燻らし始めた。

ご案内:「第一教室棟 屋上」にセレネさんが現れました。
セレネ > 晴れより曇りの方がまだ、肌が焼けずに済む。
ただこの蒸し暑い気温は己の気力と体力を奪い、屋上に着いた頃には深い溜息を吐き出した。

「早く冬にならないかなぁ…。」

外に出れば少しはマシになるかと思ったがむしろ逆効果だったかもしれない。
引き返そうかと思った所、視界に入ったのは小さな白衣姿。
…それに見慣れた紫煙と嗅ぎ慣れない匂い。

白衣を着ているという事は教師だろうか。
いや、あれだけ身長が小さいのならもしかしたら同じ生徒かもしれない…?
どちらにせよ、良い機会だと相手の方へと歩み寄っていこう。

「屋上で喫煙する人を見るのは二人目ですが、煙草はお身体に悪いですよ?」

初っ端ぶつけた言葉は相手の身体を心配するものだった。

ラピス > ぷか、ぷか。息を吸う度に先が赤熱して灰に変わり、灰は空気に溶けて消えていく。
特殊な調合を施した薬草の灰は、空中で無害な物質に分解される仕様である。
携帯灰皿を用意するのが面倒だから、と横着して編み出した代物は、気軽に吸えるのが快い。

「はふー、今度は紅茶を混ぜてみるのも良いかもですね。
 ちゃんと配合を考えてあげたら、紅茶の匂いの煙草になりそうですし」

などと独り言ちている所に、近寄ってくる誰かの気配。
ふぅ、と胸一杯に吸い込んだ煙を空に向けて吹き出すと、再びパクっと吸いさしを咥えて。

「ん、私以外にも屋上でおサボり――じゃなくて、休憩してる人が居るんです?
 あぁ、これは、ちゃんと先生が自分の体に合わせて作ったものなので、多分大丈夫なやつですよー」

くるん、と近寄ってきた気配に向き合うと、にぱっと笑みを浮かべて。
退屈に飽いていたへっぽこ娘は、来訪者を待ち望んでいたかのようだった。

セレネ > 己と似たような色をした、銀髪と青目の相手が此方を振り向く。
随分と子どものような見た目をしているが…。

「先生?
あぁ…貴女、教師なのですね。白衣となると医師か薬剤師でしょうか。」

かなり幼く見えるものの、教師と分かれば驚きの顔。
傍まで近づいたなら目線を合わせるように腰を屈めて。

「手巻きの煙草なのですか?
……香りも普通の煙草とは違うように感じますが。」

可愛らしい笑みに釣られて己も微笑みを浮かべては、話題を広げようと言葉を返す。

ラピス > 視線の先に立つ彼女は、自分に似た色彩を持っている。
なんとなく親近感。お人好しなへっぽこ教師は人懐っこいことでも有名で。

「ん、ご明察ですね。先生は、お薬のお勉強を教えてるのです。
 この煙草もその一環で、先生の頭をしゃっきりさせてくれるのです」

それだけ聞くと危ない何かな気配を帯びるが、ちゃんと人体には無害である。
とは言え煙を相手に向けるのは行儀が悪いから、吐く時は空に、が鉄則だ。
眼前、屈んだ彼女と視線が合う。子供扱いされている気もするが、気にしないでおこう。

「ん、そうですよ。乾かした葉っぱを混ぜて、フィルタの付いた紙できゅっと巻くんです。
 色んな薬草を混ぜて作った自信作ですからね。良い香りだとリラックスも出来ますから!」

むふー、無い胸を張る少女は、何とも自慢げ。幼子が成果を自慢するようなもの。
これを大人として扱え、というのもなかなか難しい話である。

セレネ > お互い親近感を覚え、且つ職種も似たようなもの。
となれば、自然と仲良くなりたいと思う。

「薬ですか。
…流石に薬は、そこまで知識がありませんね。
人体に関してならば得意なのですけれど。」

これでも元は医者ですので。
意識をはっきりとさせる効能のある薬草…いくつか麻薬系が思い浮かんだものの。
薬師ならば恐らく大丈夫か。
紫煙は己に当たらぬよう、上を向いて吐き出される。
首を上げた儘も見下ろす儘もどちらも辛かろうと思ったから屈んだだけの事。

「煙草自体もストレス解消には役立ちますからね。
他者に害がないのなら…まぁ。」

自慢気に胸を張る仕草が微笑ましく、思わずクスクスと笑ってしまい。

ラピス > 「うや、それはつまり、お医者さんとか、それに近い経験がある感じですかね?
 或いは学者さんかもですが、それだとここの先生になってそうですから、ふみゅ」

目の前の彼女は、大人っぽさに静かな叡智を讃えた雰囲気が、何とも素敵なものだ。
このへっぽこ娘からすると、将来の理想像的な気配を感じるのである。
時折彼女を避けるように煙を吹きながら、じぃ、と彼女を観察してみる。
それは、彼女を覚えるとともに、大人の女性の片鱗を会得せんとするもので。

「そうそう、先生は日夜のお仕事のストレスを発散してるのですよー。
 灰も自然に還る様になっていますから、エコってやつなのです、エコ」

ぷかぷか。煙草の長さは残り半分ほど。もう少しは楽しめそうだ。
クスクスと笑う彼女の様子に、少女自身も気分がほわっと上機嫌に。
咥えた煙草をぴょこぴょこと上下に揺らしながら。

「っとと、お近づきの印に自己紹介しておきましょう。
 私はラピスって言うです。好きに呼んでくださいな?
 あなたのお名前も、もし差し支えがなければ――」

名を隠したいならば聞きはしない、などと暗に示すのは、ちょびっと大人な気遣いってやつだ。

セレネ > 「えぇ、はい。
私は医者をしておりました。
…薬師が教師になれるなら、私も教師として教壇に立つ方を選べば良かったですね。
まぁ学生生活にも憧れてたので後悔はしてはないのですけれど。」

相手は己と違いとても可愛らしい。可愛いの塊だ。
撫で回したい感情を必死に抑え込みつつ努めて平静を装う。
じ、と丸い瞳に見つめられればゆるりと首を傾げ。
まさか理想像に近い姿だと思われているとは、考えもせず。

「成程。
身体的な健康も大事ですが、精神衛生も不可欠ですからね。
どちらかが偏ってしまうと不調を来してしまいますし。」

人体にも自然にも無害なら、医者として言う事は何もない。
何だか上機嫌そうな相手を見るとまた更に可愛さが増す。

「ラピス先生、ですね?
私は…セレネと言います。宜しくお願いします。」

偽りの名を相手へと告げれば軽く会釈をしよう。

ラピス > 「ん、先生はたまたま、ひょいと拾われたようなものですからね。
 学生として過ごせるなら、今を楽しむのが良いと思いますよ?
 憧れていたのならなおさら、後悔しないままで生きられる方が良いですから」

外見は子供で過去の記憶もすっ飛んでるが、これでも一応それなりな年を経た生き物である。
古びた精神は、たまに少しばかり年長者っぽい雰囲気を生み出せたりする。
ちなみに、いつもは女生徒に囲まれでだっこされたり、撫で回されたりとマスコット扱い。
それ故、目の前の彼女がそうしたい、と思って手を伸ばすなら、しかたないなぁと受け入れることは言うまでもない。

「流石はお医者様ですねぇ。言わなくても理解してもらえるから、楽ちんなのです。
 ――たまに保健室に詰め込まれてることもありますから、不調があったら相談に来ても良いのですよー?」

頼って、頼って!というオーラを出しながら、彼女に上目遣い攻撃。
視線を合わせてもらっているから、威力は半減かもしれないけれど。

「セレネさん、ですか。覚えましたよぅ。
 ではでは、ぜひともよろしく、なのです」

お気楽思考のポンコツ教師は、彼女が偽名を名乗ったなどとはつゆとも思わない。
重要なのは、教わった名で呼んだ時に、ちゃんと気づいて、振り向いてくれるかなのだから。

セレネ > 「…確かにその通りですね。
後悔したままではしこりが残りますし。」

子どものような見た目だけれど、案外考えは達観しているように見え。
己が学生としての生活を望んだならその生活を出来得る限り謳歌したい。
流石に初対面の人を、まして教師を撫で回すのは相手の気分も良くないだろうと節制。
もう少し仲良くなれたらその時は、撫でたりするかもしれない。

「ふふ、理解しておくべき事ですしね。
あらそうなのですか?…なら、時々お話相手になってくれたら嬉しいですね。
セクハラしてくる先生もおりますので、ちょっと愚痴とか…聞いてくれたら有難いです。」

頼ってー!と雰囲気で伝える姿を見ると、
こっそり囁くように告げた。
愚痴だと言う言葉とは裏腹に、表情はそこまで嫌でもなさそうだが。

「はい。仲良くして下さいね、先生。」

嘘をつくなら、徹底的に。が己の信条なので。
気付かないなんてことのないように気をつけねばなるまい。

ラピス > 「セレネさんが先生になれるだけの力量を持っているなら、いつだってなれちゃいますから。
 だけど、一度先生になってから学生に戻るのは、なかなか難しいかもしれないです。
 大人でも学生だったりするようですから、案外どうとでもなるのかもしれませんけど……」

ともあれ、先生として、生徒の手助けはいくらでもするつもり。
自分など必要ないかもしれない彼女であっても、望まれたならきっと。
どうやら目の前の彼女は、無闇に抱っこしたり撫でたりせずに扱ってくれる様子。
大人扱いして欲しい少女からすれば、そこも好感度ポイントが高かったりする。

「お話相手なら喜んで、です。先生はわりとぽえっと暇そうにしてること多いですから。
 せ、セクハラですか……そういうことであれば、お菓子を用意しておくことにしましょう!」

囁かれる言葉に苦笑しつつ、愚痴の相手をする約束は確かに受け入れる。
そのくらいならお安い御用。ついでに、お菓子を保健室に持ち込む大義名分もゲットだ。
万が一何かあっても、薬ならば用立てられる、という自負もあったりするのは秘密だ。

「ん、勿論です。先生は仲良しさんが増えれば増えるほど嬉しいですからねー!」

もし仮に、彼女が嘘を吐いていることに気づいても、それは事情があったのだろうと勝手に納得する。
原則として誰を相手にしても性善説を信じる少女は、単純で脳天気で、タフなのだ。

セレネ > 「ふむ…そうなのですね。
まぁもし、教師になるのであればその時はその時で。
とりあえず今はまだ生徒としての生活を楽しみたいと思います。
有難う御座います、先生。」

なろうと思えばいつでもなれるのであれば、何も急ぐ必要はあるまい。
優しい言葉に礼を述べた。
昔から”子どもらしい子ども”ではなかった己だから何となくそこらの機微も分かったりする。

「そうなのですね?なら、見かけたらまた声をかけるかもしれません。
そうなんですよー。この間もじーっと見られてて。」

困ったものです、と溜息一つ。
お菓子を用意しておくとの言葉には楽しみにしておきますねなんて言葉を付け足して。

「仲良しさんは多ければ多い程楽しいですしね。
ラピス先生で、私の仲良しさんは二人目です。」

何故嘘をついたのかと、言及されないのならばそれはとても有難い事で。
二人、と言いながら指でピースサインを作り、嬉しそうに微笑んだ。