2020/07/06 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に芥芽 あるさんが現れました。
芥芽 ある > 【「はい、皆さんおはようございます! 芥芽あるです!
  今の私は……生物の先生です!」】

芥芽 ある > 「はーい、みんな!おはようございまーす!
 今はなんと、生物の時間、です!」

まじかー、と生徒たちの声が上がる。
そうよね、私も知らなかったもん。
でも、一緒に頑張ろうね。今までも頑張ってきたでしょう、私の生徒たち!

「というわけで、今日は試験前スペシャル、ということでー!
 自習……ではなく進化、についての考察をしたいと思います!」

え、なんで?という声。
だって授業だもん。ちゃんと教養を身に付けないとね

芥芽 ある > 「では、気を取り直して……
 さて、みなさん。そもそも『進化』というのは、
 『変わらなきゃ!』っていう『自己進化』みたいなのじゃなくて、
 基本的には突然出てくる『変異』が元だというのは、お話したよね」

『え、知らねぇ』
『そもそもそんなことやってたっけ』

うーん、不真面目だなあ。
ちゃんと先生の授業は聞いてないとダメだぞ?
君たちはやれば出来る子だって私は知ってるんだから、ちゃんとやろう?

芥芽 ある > 「続けるわよ?
 もちろん、急に現れた『変異』は、良いやつも悪いやつもあるわけ。
 当然、生きていくのが大変な子たちは残念ながら死んでいっちゃうわけね。
 で、生きていくのが上手い子は生き残っていく。
 それは、何となく分かるよね?」

ここで一拍
みんなの顔を見る
あれ、なんかポカーンとしてる
だ、大丈夫かな? ううん、私、負けない!

「そこで取出したるは……そう、噂の『常世苺』!」

『えっ、マジ!?』
『食わせてよ! 先っちょだけでいいから!』
『じゅるり』

生徒たちから声が上がる
ふふん、みたか大人の力!
これを一パック買うためにどれだけ苦労したことか……
いつのまに買ったのか覚えてないけど。

芥芽 ある >  
「さあ、この美味しい苺さんですが……あ、いい匂い……
 こほん。
 これ、不思議なんですよね。
 さてみなさん、甘くて美味しい実の利点ってなんですか?」

『決まっているでしょう。
 鳥獣などに食われて、遠くまで種を運ばせる。
 違いますか?』

真っ先に答えたのは教室きっての秀才、家白 良(かしら りょう)君
ふふ……さすがね。
キミの頭脳にはいつも助けられてるわ。

「そう、そのとおり!
 でも、これを見て。
 常世苺は、そもそも地下茎。
 種を広めるようなモノじゃないのよね。」

ここでちょっとスライド投影
地下茎で増える常世苺の図
いつの間にか用意してあった今日のためのスライドだ
流石、準備良いわ私

芥芽 ある >  
「つまり、別に常世苺はこんなに美味しくなくても生きていけるはず、なわけ。
 とすると、ひょっとしたら別の理由があるのかも?
 そこを考えてみたいなー、というのが今日のテーマね」

さて、勢いだけで此処まで来たけれど大丈夫かしら。
いいえ、大丈夫よ。
私は出来る子。これまでだってどうにかしてきたじゃない。

「さて、というわけで。
 さっきも言ってもらったけれど。
 『食べてもらう』は『美味しい』の利点なのは多分間違ってないわ。
 とすると……違うのは、食べてもらう目的?」

うーん、と考える
実のところ、その先は用意していない
今から考えないとなんだけど段取り悪すぎない、私?!
こんなときは、伝家の宝刀を抜くしか!

芥芽 ある > 「みんなは、どう思うかな!」
芥芽 ある > 『いや、普通食われてもいいことないっしょ』
『そもそも、実のなる数が少ないから高いんでしょ?
 食べられちゃダメじゃね?』
『教員が根本的に間違っているのでは?』

う……辛辣……
私とみんなの今までの信頼関係はどこに!?

芥芽 ある >  
あ、でも

「ふふん、甘いわね!
 逆に考えるのよ。
 『数が少ない』のに『食べられ』てしまう、その利点!」

ビシッと指をつきつける。
ふっ……決まった……
と、ちょっと自己陶酔

「『食べられる』結果ではなく、その過程に意義があるとしたら?
 つまり、そこにあるのは奪い合い!」

渾身のドヤ顔を披露

『いや……うん、奪い合われたからって、どうなんだ……?』
『ヒロイン気質とか?』
『いや、植物だろ』
『植物だってヒロインになってもいいだろ!?』

あれ、なんか違う論争始まってる。

芥芽 ある >  
『そ、そうか!』

がたっと立ち上がる神田囃子 壱伍(かんだばやし いちご)くん。
好物はいちご煮なので、よくそれをネタにからかわれている少年
今日は話題が話題だったからずっと黙ってるかな、と思ったんだけど……

『常世苺には『紅い真珠』なんていう別名が在るくらいに、
 取り合い、奪い合いで血みどろになる特性がある!
 もし、それが苺自身の利益として導かれているとしたら……!』

そう、それ!
私は心のなかでニヤリとする
ああ……この瞬間のために、私は先生をやっているんだ

芥芽 ある > 『もしおれのこの仮説が正しければ人類はもっと
 おそろしい運命にさらされることになる!
 人類は……滅亡する!』

芥芽 ある > 『な、なんだってー!?』
芥芽 ある > 「うんうん……うん?」

あれ?

「あの……ちょっと……?」

芥芽 ある > 『常世苺は、各地に広がり人類の争いを広めるために
 ●×▲から遣わされた■●×で……』
『それは本当なのか、壱伍!』

生徒たちは大盛りあがりになる。
あれ、あの……
いや、議論が活発になるのは良いことだけど……
あの、想定と、ちが……ちが……

  おれ たち
『 人 類 は……何もかも……何もかも遅すぎたんだ……』

芥芽 ある > キーンコーンカーンコーン……

そこで、終了を告げる鐘がなった
そう……全ては無情に、ここで終わってしまったのだ
授業の進展も、議論の行末も、そして
人類の未来も……

「ぇ、と……授業……おわり、ます……はい……」

人類の未来を、生徒の未来を憂いながら
そして、悲しみに暮れながら、あるはその場を去っていった

芥芽 ある > 生徒も、憂いを帯びた視線で立ち去っていく女教師を見送る

『なあ、ところでさあ……』

『今の先生、誰だっけ……?』

ご案内:「第一教室棟 教室」から芥芽 あるさんが去りました。