2020/07/17 のログ
■日月 輝 > それはその日の試験を終えた昼下がり。緩慢に転落防止の欄干に着地をした時のこと。
小規模な庭園状に設えられた場所は小休止に丁度よくって、時折利用していたりするわ。
何より、あたしには花壇が良く似合うもの。
「……………」
問題はその花壇に恐ろしく似合わない誰かが居た事。
アンニュイでメランコリックで、それこそ御召し物の記す文字が現実に起きたかのような有様の彼。
大丈夫かしら?あれ死んでない?あたしったら殺人事件の第一発見者?
そんな思考を抱き抱えて一歩二歩と彼に近づ──あ、生きてた。
「それはね、メロスのコケティッシュな所作にメロメロになっていた……という事じゃない?」
恐らく現国のテスト内容についての叫び。
なるほど、と思ったから横合いから声をかけ、手にしたフリル付きの日傘を翳す。
「こんにちは、初めまして。花壇ではもっと華やかな顔をするものよ?」
きちんと丁寧な御挨拶だって忘れないわ?
■天月九郎 > 「……」
ふわりと現実感の無い動きで舞い降りる少女の姿。
それは服装もあいまって非日常的な光景であった。
だが今はそんな事はマジどうでもいい。
屈強な男が屈強な男たちに囲まれているシチュの話題を振られぶわっと全身の汗腺がいっせいに開く。
さっさと排熱しねぇとやべぇぜ?と身体が訴えているようであった。
「新しい解釈だな……俺の脳内だとエネルギッシュなボディしか思い浮かばなかったんだけど言われてみれば外見は細かく描写されてなかった気がする……」
メロスが実は……いや待てどんなに可愛らしかろうが全裸寸前なら属性は明白。
山賊どもの好みの部分以外変動してねえ。
「ああ……まあテストで手ごたえがあったら晴れやかな顔してるんだろうけどさ。
今の俺ははなさか爺さんに灰降りかけられても灰まみれになるだけで華やかにはちょっとなんないや……」
■日月 輝 > あたしの姿を観て、あたしの言葉を聞いて、まるで怖いものでも視たようなお顔をする彼。
おかしいわね。特に怖がられる要素は無かったと思うのだけど。
一応自分の恰好を確認する。フリルよし、リボンよし、何も問題は無かった。
「ええ、そうよ。セリヌンティウスが彼の横暴とも言える身代わり論を通したのも」
「もしかしたら彼もまたそういう意味での親友だったのかもしれないわ……文章って奥深いわね」
彼の言葉に頷く。隣に座っても?と訊ねながらに、答えを待たずに座る。疲れちゃったもの。
「テストの結果……そんなに難しい科目でもとっていたの?」
「中々エスプリの効いた返答が出来るなら現国はお得意そうに見えるのだけど」
「灰に塗れたなら花壇に埋まればきっと綺麗な花が咲くわ。華やかにね」
埋まってみる?なんて唇を釣り上げて笑み、面前の花壇を指差す。勿論冗談。
時期も終わりかけの紫陽花が今だ綺麗に咲いていて、
そういえば死体の上に咲く紫陽花は色が違うのだっけ。なんて話を思い出した。
■天月九郎 > 「よしてくれないか奥深すぎて深淵が見えてくる論を展開するのは!
最後に抱き合う二人を見て改心した王様が同類のカプ厨みたいになるだろ!
…………
点と点が今まさに線で繋がっちゃったよ!」
あまりにもあんまりな新説に咆哮を上げ。
頭の中でピースがぱちりとハマってしまう感覚に頭を抱えて俯く。
やっぱ凸型のほうが攻めなのかな。
「どうぞ……ああ、俺は天月九郎だ。
いやまあ思考力を試されてるわけだからその辺は出来たと思う、思うけど採点基準が読めないんだよ……。
とりあえず俺は戦争も無く発展している最中の国だから肉体労働者を需要が高まっていたって答えたけど……
アルカリ撒いてんのに俺の肉体で酸化土壌に戻すのは気が引けるから遠慮しとくわ」
ああ、なるほど……判ったぞこの人面白い人だな?と認識に再補正をかける。
見た感じ綺麗な女の人だけどうちのクラスメイトと同系統の人間だと思えば異性慣れしていない自分の緊張もどこへやら。
目に見えて肩の力を抜いて気安い感じの態度へと変わる。
■日月 輝 > 「繋がっちゃったなら良かったんじゃない?次の現国のテストはバッチリね」
深淵を覗くとき、深淵をまた観測者を覗き返す。なんて言葉を思い出した。
彼が恐慌を来したように呻くからかもしれない。
そして凸と凹にまでは言及をしない。それは危険な話題だものね。
「あら御丁寧に。あまつきくろう。どんな字を書くのかしら。天気の天にお月さまの月?くろうは…苦労人のくろう?」
「なんてね。あたしは日月輝。お日さまの日にお月さまの月。輝くと書いてあきらよ」
和やかな自己紹介に至る為には話題を選ぶ必要がある。そういうこと。心裡で満足そうに頷く。
「ふうーん、実利的な解答ね。いえ、多分それも正解なんじゃないかしら……多分正解の筋は幾つかあると思うのよね」
「例えばあたしなんかは、さっきの意見みたいな事を書いたけれど、解釈が一つだけ。の方がおかしいでしょう?」
ふふん、と鼻を鳴らして見せる。気持ちを考えろ。との設問ならば筋道の立った自論が出せれば良い筈。
だから天月君もあたしも◎だって貰えるわ?と元気付けて差し上げるの。
冗談に真っ向から剛速球の解答が来てもなんのその。
「そうねえ、それなら魔法使いの御婆さんでも探して、12時までの魔法をかけてもらって舞踏会にでも行く?」
ころころ笑って瀟洒に可愛く振る舞うわ。
■天月九郎 > 「次もメロスとセリヌンティウスのセンシティブな話題に触れてきたらちょっと上の方に投書するわ」
二度ネタは禁じ手と言う他ない。
学生としては対策は完璧すぎて美味しい話だが人としてどうなんだ。
「ああ、綺麗な名前だな。そこでナチュラルに俺の名前に今見た印象を反映させなかったらもっと素直に賞賛出来たんだけどな……
源九郎のくろうだよ。爺ちゃんがファンだったんだってさ」
そして爺ちゃんに連れられて山で飛びまわって遊んで育ったので目論見どおりといったところか。
「まあある意味では感想文みたいな……待って書いたのコケティッシュ!?」
これで俺の配点が減点ありで向こうが満額配当だったらどうしてくれようか。
自分の点数はともかく向こうはパーフェクト貰えそうな予感がバリバリするのがやるせねぇ。
「いや……この流れで舞踏会行ったら俺が王子様に見初められそうだからやめとくわ……」
そして追跡者となる王子様。
古い洋館に逃げ込み窓を叩き割り燃え盛る大広間で向かい合う俺と王子様。
俺に政治はわからぬが一つ判る事は生きて出る事が出来るのは一人だけって事だ。
■日月 輝 > 「前期と後期で深堀されるのもちょっと違う気がするわね……」
走れメロス。その物語の本質が何処に至るかは未知数のまま脳裏を駆け抜けて行った。
「んふふ、褒めてくれるのね。ありがとう。そういうの大事よ。"男みたいな名前だな"なんて言ってたら怒っちゃうわ」
「源九郎。歌舞伎?それとも義経公のほう?随分と……ああ、御爺様の。どちらにせよ渋い趣味ね……」
目の前の天月君がもっとお年を召したら似合いそうな由来に、彼からは見えないでしょうけれど眉根を寄せる。
「ええ、書いたわ?だって気持ちに嘘をついてどうするのよ。表現は自由であるべきよ」
「例えばファッションとかもね。これ、あたしが素敵だと思うから着ているもの」
驚嘆を隠さない天月君にそういった様子は消えてしまうけどね。
代わりに出るのは得意気な顔。胸を張って己の可愛い衣服を誇示するようにしてみせる。
なお、本日の気温は考慮しないものとする。どうみたって彼のラフな格好の方が適切なのは明らかで──
「王子様に見初められるなら武闘会。戦う方になりそうね。ほら、決闘よ決闘」
「なんて素敵な少年だろう。しかしこの国で一番素敵なのはこの俺だ。生かしては帰さん。この気持ち正しく愛だ!」
「……みたいな。それこそ貴方のシャツに描かれた、脳幹が爆発するような発露があるのかもしれないわ。というか、何処で買ったのよそれ」
それから、あまりにジャンル違いな衣服が気にもなり、ジャンル違いなお伽話をつらりと語って首を傾げる。
■天月九郎 > 「もしやった場合自分の趣味に生徒を引きずり込む気だからギルティだな」
俺には人を裁く権利はない、けれど裁く事が出来る人に訴える権利はある。
社会に属するという事もまた力の一つと言えるだろう。
「その発想は無かったな……名前なんて生まれて初めて貰う贈り物にそんな事言わないよ。
ああ、義経の方。歌舞伎の方はちょっと知らないな……」
爺ちゃんは歌舞伎とかよりも古い映画見るタイプだったなあと思い返し。
「そっか書いたかあ……俺には表現の世界ちょっとわかんないや……
ああ、そのファッションは似合ってると思うよ、神秘的みたいな?」
まあそのせいでギャップで三半規管揺さぶられているのだがそこを口に出さない分別はあった。
ファッションとは自己表現、女はそのためなら男には想像出来ない苦労を背負うものだと。
それを否定したら肋骨半分折られても文句は言えねぇと爺ちゃんは語っていた。
「やべえなそんな王子様居たら俺王家に忠誠誓えないわ……
メロスみたいな鉄砲玉用意してけしかけるかも。歴史の真実がまた一ページ……」
「ああ、これ?商店街とか異邦人街とか人が集まるところで徘徊してる屋台があるんだけどそこがこういう面白T扱っててさ
これ買った時は手持ち少なくてネコと和解せよTと悩んだんだよなあ……」
他にもラーメンを食べるときの心構えとか、エースの心得とかラインナップはとても豊富だった。
■日月 輝 > 「同好の士。いつだってどこだって求めるものよ。あたしもそうだしね」
何処となく暗い目をする天月君を止めない。あたしに出来るのは教師の無事を祈ることだけ。
無理強い、無理強いは駄目よ先生……此処に気付いたかもしれない生徒が居るわ……。
もし女教師が人の心を読む異能を持っていたとしたら、後日彼は大変な目に遭うかもしれない。
紫陽花の色、変わってたらどうしましょう。そんな与太な考えが無重力であるかのように青空に浮かんで行った。
「たまーーーーーーーにね、居るのよ。でも天月君の言う通り、パパとママから貰った名前にケチ付ける奴はその顎叩き割って黙らせてやるわ」
「歌舞伎の方はあたしもそんなにだけどね。でもこの島でも古典芸能保存とかで結構活発にやっていた筈よ」
「扶桑の映画館でも映像配信とかしてるそうだしね。テストの結果が良かったなら、お友達でも誘って行ってみたら?」
記憶を思い返すような所作の彼に、記憶を思い返すようにテストの話題を投げつける。
当り所で顎とて割れるかもしれない話題を投げて、意地の悪い魔女みたいに唇を曲げてあげる。
「ふっふっ、そうでしょう似合っているでしょう。あたしが好きで、あたしが選んだ衣服だもの!」
「似合わない訳が無いわ。魂が選んだのだから!あたしが可愛いと思ってるんだもの!」
「それなのにパパもママも怪訝そうな顔しちゃってまあ、別に他人からどう思われようだなんてどうだっていいのよ」
「別に可愛いなんて思われなくっていいの。あたしがそう思っていれば──と、ごめんなさい」
早口になった。
それは可愛くないのでストップ、と所作も交えて一度言葉を切る。
閑話休題という奴ね。ええ、そういうこと。
「……ああ~横暴な王様ってそういう!?それ、アリかもしれないわね……」
だから胡乱な歴史の真実の一片が詳らかになるのは幕間の御話で
「屋台で買ってるの?へえ、ほお……ふうん……屋台……ちょっと面白そうね」
「いえ、着ないけど。あたしは着ないけど。後学の為にね?見て、知っておくのって大事でしょう」
「どの辺にあったの?」
今は、教えて?と可愛らしくお訊ねなんかしちゃって、ダークレッドの携帯端末を取り出すわけ。
■天月九郎 > 「ああ、それは否定しないさ……時と!場合を!わきまえれば」
今回はギリギリだった。専門用語で言うならば匂わせというやつだろうか。
あと一歩、あと一歩踏み込まれて入れば切っ先が届いていた絶妙なバランスだった。
気付いてしまっても突っ込めばやましい事があるんじゃないかと思われてしまいそうな絶妙なライン。
だが次はねぇぞ。
「そっかぁ物理で黙らせちゃうかあ……いや気持ちは判るけどね?めっちゃ判るけど想像の五倍くらいバイオレンスだった」
「あーそういや掲示板に張ってあったなぁ……異能を演出に組み込んだハイパー歌舞伎
超時空忠臣蔵~吉良ァッ!お前が!殿を!殺したァッ!トゥハァー!~ってやつ」
自分みたいな古典という時点で一歩引いてしまうような若い世代を狙ったのだろう。
なんでも爆発の演出が凄いらしい。マジで爆発するとか。
「いや、うん俺はファッションには疎いから良く判んないけど。自分のこれだけは譲れないって感覚は良く判るよ
好きなもんの理由聞かれても困るよな、好きなんだから好き以外何て言えっての」
自分も人に言えば怪訝な顔をされたり、もしかすると笑われてしまうような憧れを持っているので良く判る、と何度も頷いて。
「待って隠語じゃないんですけど!?」
「ああ……と言っても決まった場所じゃないから俺が見た事ある場所教えるだけになっちゃうけどな?
えっとここと、ここ……あとここと、ここだな」
地図の上をちょんちょんちょんとタップして印を付けていく。
目撃した場所は四箇所、まるで円を描くように移動しているのでもしかしたら巡回しているのかもしれない。
それらを繋げば出来上がるのは五芒星、次なるは最後の点となろう。
■日月 輝 > 弁えられるべき時と場合。だがしかし、常に弁えさせられる権能を有するならば話は別。
もしもそうだったなら、線を踏み越えた場合にどうなるかは未だ知らない。
ボーダーラインかもしれないし、フロントラインかもしれない。一寸先は闇であるとは古に言われる言葉。
深淵なる何かは直ぐ傍まで這い伸びているかもしれないし、伸びていないのかもしれない。
「……?」
ふと視線を感じて振り向く。
建物の影に誰かの影が消えた気がした。気がしただけなのでこの話はおしまい。答案には記されないの。
「あたしはあたしを舐めた奴には容赦しないわ。先日も──いやなんでもない」
「そうそう超時空忠臣蔵。あとは超解釈道成寺~走れ安珍~とかも面白いらしいわ」
売りは俳優さんのマジな逃げ顔。ヒロイン役は奥さんが務めた話題作だけれど
ネット上では様々な流言飛語も飛び交ったり飛び交わなかったりしている。真相は闇の中。
危うく滑りかかった口をチャックしてアカデミックな古典芸能トークを交わして、屋台の目撃情報を携帯に記録する。
この模様……妙ね……。
「よし、ありがと。それじゃあ早速向かってみるわ。また会いましょうね」
いえ、きっと気のせいね。気のせい気のせい。
ベンチから立ち上がり、緩く笑って床を蹴った。
それだけであたしの身体は緩慢に飛び上がって、風に靡いて流れ行く。
異能を使った大ジャンプ。日傘が風を受けての空の御散歩。
見上げるならば、空の青に消えゆく私が見えるかもしれなかった。
ご案内:「第一教室棟 屋上」から日月 輝さんが去りました。
■天月九郎 > この世界にはいくつものラインが引かれている。
それはルールだったりコミュニティだったり、社会性の生き物である俺たちは区切られる事で自分の世界を定義する。
ゆえにいけないボーダーラインを超えてしまった場合起きるのはギリギリのせめぎあいである。
だがもし、そのラインを意図的に超え己の世界へと取り込もうとするものが居たとすれば?
それは侵略者と呼ばれるのだ。
「待って凄い気になる。でも待たないで聞きたくない!
ああ……なんか炎上商法の意味を間違えたとかコメントしてたような……」
見出しは燃え上がるような恋。
年頃の男の子としてはちょっと気になる話題だが物理的な熱はちょっとどうなんだろうか。
まだ子供の俺にはわからない、わからないんだ。
「ああ、じゃあまた……飛んだ!?」
飛んだ!と屋上から消える姿を追いかけフェンスを掴み、良いなあ!と見送る。
空を飛ぶのは人類の夢、まあ異能を使えば飛べる人も結構居るみたいだが自分には出来ないので憧れの世界である。
「さて、俺も帰るか……」
テストの日程はまだ残っている。
俺たちの戦いはこれからだ。
ご案内:「第一教室棟 屋上」から天月九郎さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 試験会場【イベント】」に修世 光奈さんが現れました。
■修世 光奈 > 探し物が大好きな光奈は、いつも探したいものが当然ある
依頼かそうでないかに問わず、彼女はいつでも何かを探したいと思っている。
ただ、それはそれとして学生である以上在籍するためには通った方が良い道。
それがこの試験だ。
単位を取れれば進級と卒業ができるこの学園
しかも、一年間など長期のサボりがなければ特に指導が入ることも無い。
特殊な環境故の緩すぎるともいえる制度だが、光奈のようにバタバタ走り回っている生徒には都合がいい。
『次、修世光奈―』
後は…自分の能力がどれだけ成長しているのか。
その限界を確かめられるという利点もある。
幸か不幸か、光奈の異能はわかりやすく人を傷つけるものではない。
光量を最大にすれば目くらまし位はできるだろうが、それだけだ。
周りから聞こえてくる派手な異能など持ち合わせてはいない。
けれどもっと遠くに光を出せるようになったり。
強い光でも持続して出せるようになれば…彼女のライフワークにも役に立つ。
■修世 光奈 > 「はーい」
そんな異能だからか、光奈の名前を呼んだ教官は微妙に緩い表情だ。
急激な発展も見られず、危害を及ぼしにくい異能というのはどこか気楽なのだろう。
ただもちろん、一定の緊張は見られる。
異能や能力は、どういった風に…今にも突然奇妙な変化をするかもしれないからだ。
光奈自身にその気がなくとも、勝手に成長するようなケースもままある。
『ふむ。持続性以外は平均以下か。よし、実技開始』
所定の位置に立ったのを見て教官が呟く。
光奈のデータが手元のタブレットに自動的に送られてきており、それを元に判定しているようだ。
この辺りも、教官や、生徒の異能ごとに違う。
■修世 光奈 > 「よし、と。じゃあ、距離に挑戦します。目標は30cmで!」
それをわかっている光奈は…自身の10㎝以内にしか作れない自分の異能を少し成長させようと密かに練習していた。
練習では問題なく30cmまで光の球は進んでいったが、さて――――
「ふ―――………っ!」
『…現在のステータスの10cmからは更新、と。30は………よし。オーケイだ。単位を足しておこう
他に試したいことはあるか?』
「あ、いえ。ありがとうございました!」
遅々とした進みではあったが。
30㎝を超えて体表から離れた異能を確認した教官が大きく頷く。
異能の成長が認められれば程度にもよるが単位を付ける教官だったようだ。
礼儀正しくお辞儀をして、会場を後にしよう
ご案内:「第一教室棟 試験会場【イベント】」から修世 光奈さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にラピスさんが現れました。
■ラピス > 今夜のへっぽこ少女は、屋上で一人咥えタバコで意気揚々としていた。
なにせ、今日で試験期間は終了なのだ。採点は随時行っているから、今日の分を丸付ければ終わり。
そうしたら、試験に苛まれることのない素敵なオフが待っている。幸せとはこのことだ。
「はふ、お陰で一服が美味しいですねぇ」
ぷかぷか、ぷかり。輪っかのような煙を吐き出しながら、空を見上げる。
梅雨時の曇り空は、星や月の灯りを通さずどんよりと真っ暗だ。
ところでこのへっぽこ教師は、気づいていない。実は試験が20日までだということに。
■ラピス > 煙草をプカプカしながら考えるのは、この夏の予定だ。
せっかくだからどこかにでかけたいし、活動範囲を拡げたい。
それに仲良しな相手と海や温泉にも行きたいし、美味しいもの食べたりしたい。
それからお薬を調合して、試供品として渡したりもしないと。
中々に予定が目白押しだぞ、とへっぽこ少女はご満悦で。
「さて、とりあえず、明日明後日はどう過ごしましょうかねぇ」
週末ともなればお休みだ。そう、お休みである。
働くよりもサボるほうが大好きなへっぽこ小娘は、満喫する気満々だった。
■ラピス > さて、そうこうしている内に夜も更けて、雨が振りそうな気配がしてくる。
すん、と鼻を鳴らせば湿った空気の匂い。そろそろ中に入った良さそうだ。
それなら、このまま帰ってしまおう。吸い差しを燃やし切ると、ふぅっと最後に煙を吐いて。
「さぁさぁ、寮に戻りましょー!」
ぴょんこ、とへっぽこ少女は毬のように弾みながら、屋上を後にする。
ご案内:「第一教室棟 屋上」からラピスさんが去りました。