2020/08/03 のログ
ご案内:「裏庭」に倉橋 龍さんが現れました。
倉橋 龍 >  
常世島は帰省をしない生徒も多い。
だいたいは異能やら何やらが理由でこの島に来ているのだから、まぁ、当然と言えば当然でしかない。
そんな当然の中の一人に、倉橋もまた居た。
だが、倉橋が帰省しない理由は全くもってごくごく個人的な理由だった。

「よし」

相変わらずのバンダナをしっかりと額に巻き、前開きの半袖シャツを羽織って、地べたに座り込んで何やら作業を続ける。
着ているTシャツには「焼肉定食」と大きく筆字で書かれている。
戯れに回した千円ガチャから出ただけなので、深い意味はない。

倉橋 龍 >  
「こんなもんだな」

今まさに作業しているそれこそが、倉橋が帰省しないごくごく個人的な理由そのもの。
そう、大迫力科学部(部活ではない)で一人で作っているロケット。
その試作品である。
第何号であるかはもう忘れたし数えてない。
倉橋は過去を悔まない男だ。
悔んでたらやってられないだけともいえる。
 
いやだって、ガチャで当たり引くまでいくらつかったとか……覚えていたいか?
倉橋は覚えていたくない。
可及的速やかに忘れたい。
だから忘れた。
この話は、それでおしまいなんだ。

「頼むぜぇ……今度こそ、もうちょっとまともに飛んでくれよなぁ」

倉橋 龍 >  
試作ロケットの点火準備を済ませ、シャツと三段腹を揺らして、安全な位置まで走っていく倉橋。
だが、途中でバテたので歩く。
思えば、別に急ぐ必要はなかった。
倉橋はデブの御多分に漏れず運動音痴であり、出来る限り動きたくないのだ。
普通の人より重りつけてんだからしょーがねーだろ。
全身強制ギブスつけてるようなもんなんだよこちとらよ!!

「ぜぇ……ぜぇ……」

息を切らしながら、発射スイッチのところまで移動する。
Fuckin Hot!!!!!!!!!

んだよ、たまに晴れたと思ったらクソ暑すぎんだよ!!
加減しろボケ!!

倉橋 龍 >  
だが、そのファッキンな暑さのお陰で人は少ない。
これなら思う存分ロケットの試射が出来る。
これのために帰省しなかったのだ。
単純に面倒だったのもある。
倉橋の母親は扉をノックはしてくれるが、二回叩いたら返事を聞かずに扉をあけるのでノックの意味をなしていない。
独り暮らしですっかりプライベートの保護が当然になった今の倉橋にこれはキツい!!
倉橋だって年頃の男子なのだ!
あと、実家の部屋はパソコンモニターが部屋に入るとすぐに見える位置に配置されているのでいろいろとアレである。

「……マジ、島出ても実家には絶対戻らねぇ、さっさと仕事に就く……!!」

怨嗟の言葉を吐き出しながら、スイッチをポチっと押す。
さぁ、いけ、試作何号だかわかんねぇロケット!!

倉橋 龍 >  
「……」

うんともすんとも言わない。
もう一度押してみる。

「……」

やっぱり何も起きない。

「クソが!!」

連打。格ゲーマーの倉橋は得意技だ。
おらぁ、喰らってみろ十六連射!!

「……」

やっぱり何にも起きない。

「あっれぇええ???」

首をかしげる。
断線か?
原因を調べる。

倉橋 龍 >  
定期的に置かれた豆を追っかけるハトのようにケーブルを追いかける倉橋。
どこか線が千切れたり捩れたりしていないか、手探りで確認していく。

「お? ここか?」

らしき個所を発見。
軽く指先で揉んでみるが。

「おぶうああぁあ!!?」

それがいけなかった、断線は確かにしていた。
だが、それを倉橋が無理に繋げたせいでスイッチが今まさに入ってしまった。
連打したせいでスイッチがイカれていたのだ。
クソ、ボタンじゃなくてトグルにすりゃよかった!!
でも、後悔してももう遅い。
ロケットのバックファイヤと噴煙に思う存分焙られ、すっころぶ。

「げほっ!! ごほっごほっ!!」

だが、ロケットは早急に消えて……はいかず、派手に噴煙と爆炎を撒き散らしただけで、その場に転がるだけだった。

「……また、失敗か」

前はそこそこ飛んだんだけどな。
燃料変えたのがダメだったか?
いや、尾翼か?
まぁ、飛んだところで大気圏の先まで最終的に届かなければ意味がないのだから、誤差ではあるが。

倉橋 龍 >  
「はぁ……」

溜息を吐きながら、軍手をはめてロケットの残骸を片付ける。
周りに人がいないのは幸いだった。
怪我人でも出したら一発で活動停止だ。
ヘタすりゃ違反部活扱いにされちまう。
そうなったら、独力でのロケットの発射は諦めざるを得なくなる。
流石に落第街にいってまであれこれする度胸は倉橋にはない。

「気付けば、もう二年の夏か」

ぼそりと呟く。
流石に来年となると、倉橋も受験やら何やらある。
そう考えると、自由にできる高校の夏は、これが最後だった。

ご案内:「裏庭」にさんが現れました。
> 「わわ、どうしたのおにーさん?」

す、と音がしたから顔をだした幼女

倉橋 龍 >  
「あ?」

ドスの利いた声で振り返る倉橋。
煤で汚れた眉間にしわの寄った顔で振り返る。

> 「ひっ!?」

一瞬驚くも

「えと、どうしたの?」

倉橋 龍 >  
「あ? ああ……いや、ロケットが上手く飛ばなかっただけだよ」

見知らぬロリっ子にそう答える倉橋。
小さい女とつくづく縁があるな俺。
しぃとソフィア先生は勿論だし、どこぞのクソ落語家も小さい。

「大したことじゃねーよ、いつものことだから」

残骸を粛々と片付ける。
実際慣れてるので手早い。
全然誇れない慣れだが。

> 「ロケット!?凄い!」

わあと手を広げ空を仰いで

「んー」

なんとなく自発的にお手伝いしてうんしょうんしょと片付け

倉橋 龍 >  
「飛んでないんだからすごくねーし、あぶねーぞ」

まだ熱を持ってそうな部品は先に片付けてしまう。
見知らぬロリが火傷でもしたら大変だ。

「まぁ、でも……ありがとよ」

見知らぬロリが手伝ってくれたお陰で片付けはさっさと終わった。
いつでも撤収可能だ。

「こっちはもう大丈夫だけど、そっちはいいのか?
 こんなクソ暑いのに学校いたんだから、なんか用事あったんじゃねぇか?」

一応そう尋ねる倉橋。
世間は休日の筈である。

> 「ひとりでがんばったんだもの、すごいよ」

にぱーって笑う幼女、普通の幼女のようだ

「んーん、きにしないきにしない」

「んー、わたしのぞみ、じゅっさいです、おにーさんは?」

唐突な自己紹介

「んー、ヒマだったからなんとなく?」

特に深い理由はないらしい

倉橋 龍 >  
「そりゃ物好きなこったな……俺? ああ、俺は二年の倉橋だ」

そうノゾミに自己紹介をして、頬に浮いた汗を右手で拭う。
今日は本当に暑い。

「頑張ったって結果出てなきゃ凄くはねぇだろ」

思わず苦笑する。
頑張ってもテストで赤点なら、赤点は赤点だ。
それと同じことだ。

「俺の場合頑張ってるかどうかもわかんねーしな」

> 「倉橋のおにーさん、はい」

鞄から開けてない清涼飲料水【アクアリズム】を手渡して

「んーん、私が今見て、すごいって決めたからすごいの」

にこにこ

「希はあんまり色々得意じゃないからすごいなーって」

倉橋 龍 >  
「え、ああ? いいのか? ありがと」

クソ喉が渇いたのでありがたく受け取って一気飲み。
ゴミは廃材入れに放り込んだ。
分別は後でする。

「俺だって別に得意な事はなんもねぇよ。
 凄いっていってくれるのは嬉しいけどよ」

とはいえ、見るからに世間知らずっぽい幼女であるノゾミに偉ぶる気にはまるでなれない。
ここで威張ったら詐欺も同然だ。

「もっと凄い奴なんてそれこそ、一杯いるだろ、この学校」

> 「あついからねー」

にこにこと笑っている

「でも、形にしてるよね?」

ロケットと言う形にして、実際に飛ばそうとした努力がすごい、といいたいらしい

「んー、いっぱいいるけど、倉橋のおにーさんもすごいなあって

倉橋 龍 >  
「……はは、そんなもんかね。
 体裁を整えるだけなら、大したことでもないと俺は思うんだけどな」

とはいえ、励ましているという風でもないし、恐らくノゾミは心からそう思ってくれているのだろう。
いや、実際どう思ってるかなんてわかりゃしないが。

「じゃあ、すげぇ俺からのアドバイスだ。
 いつまでもこんなクソ暑いところいると茹っちまうから、そろそろ帰ったほうがいいぞ。
 俺も引き上げる」

そういって、撤収準備を済ませる。
少しでも残したら生活指導やらの先生にドヤされちまう。

> 「てーさい?で倉橋おにーさんは、ロケットをつくった訳じゃない、よね、だからすげーやつ?だよ、倉橋おにーさんは」

にこーっと笑って

「うん、あついからねー、じゃあ、のぞみかえるね、倉橋おにーさんも、ねっちゅーしょー?に気をつけてください」

手を振りながら

倉橋 龍 >  
「……どうだかな」

カッコつけでやっているところもあるかもしれない。
倉橋は将来に何の目標もなく、何の具体的展望も持たない。
ただ、「まぁでも、何もやってないってのもカッコ悪いし」くらいでロケットを飛ばそうとしているところは……恐らくある。
多分だが、ある。
普段は考えないようにしているだけだ。
だって、どっちにしたってどうせ『やる』んだしよ。

「ああ、気を付けてな。ほら、これでアイスでも買えよ」

百円玉を数枚渡して見送る。
倉橋は真っすぐ寮に帰るので、恐らく方向が違う。

> 「えへへ、次は教えてね、見にくるから」

本気で楽しみにしてる顔だ

「ん?いいの?」

小銭を受け取ってキョトンとしながら

「ん、ありがと、倉橋のおにーさん、しーなちゃんとアイスでもたーべよ!」

楽しそうに、その場を離れた

ご案内:「裏庭」からさんが去りました。
倉橋 龍 >  
「なんだ、ロリっ子の知り合いかアイツ」

見送りつつ、ロリとロリの意外な繋がりを知って笑う。
案外世間は狭い。
 
「……教えるのはでもまぁ、俺もわかんねぇからな」

額の汗を拭いながら、倉橋もその場を辞す。
ガラにもなく余計な事を考えた。
らしくもない。

ご案内:「裏庭」から倉橋 龍さんが去りました。