2020/08/18 のログ
持流 童男 > 「それならば仕方ないね」
そうすこしだけ笑ってから
少し眉を残念そうにして了承する

「・・・異能を使わないで人を助ける方法、
一人じゃなくて、周りを見て、相談して調べて突っ走ってみるよ」

そうしっかりとセレネさんにいってから

「それじゃ僕はそろそろ帰るよ。・・気をつけてね。セレネさん」

そう言ってから、保健室からでていこうとする。

セレネ > 「頑張って下さいね。応援してますよ。」

それで更に良い方向に進めば御の字だ。
相手の怪我も約束通り治したし、己の今日の仕事は終い。

「貴方もお気をつけて。」

立ち去ろうとする相手をちょっと力なく片手を振って見送ろう。

ご案内:「第一教室棟 保健室」から持流 童男さんが去りました。
セレネ > 「さて、どうしようかなぁ。」

保健室に一人、ぽつんと。
このまま寮に帰る気力があまりない。
転移魔法を使う魔力はあるけれど、やる気が起きない。
…研究室、行こうかな。

開いていれば少し話をして、開いて無かったなら大人しく寮に戻るとしよう。そうしよう。
決めた。

保健室を出て、足を向けるは馴染みにしている幻生研究室へ。
無事に話が出来たかは、また別の話。

ご案内:「第一教室棟 保健室」からセレネさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 猫です。
誰がどう見たって黒猫です。首輪も何もしてない、野良っぽい黒猫です。
いつの間に、というかどうやって入り込んだのだろうか。
毛艶のいい黒猫が、屋上の木陰で丸くなっていた。

「くぁ………」

夏の空気を纏った風がそこいらにそよぐと、それにつられてか大きく欠伸なんかして、
すっかりリラックス気味に、まだ誰もいない屋上の雰囲気を独り堪能している。

ご案内:「第一教室棟 屋上」に伊伏さんが現れました。
伊伏 >  
扉の出入りを予感させる音を立て、屋上を1人の生徒が歩く。
夏期講習を受けたのだろう、勉強面倒くせえという顔のまま咥えているのは、あんぱんだった。

心地よい夏の風に、少し背筋を伸ばす。

サンダルでだらしなく歩きながら、陽射しを避ける場所を目指して進む。
ただ、ここの屋上で猫を飼い始めたのは知らなかったなと黒い獣に気づいた。

「ねこちゃんじゃん。迷い猫かね」

あれは寝てるのだろうか。
近づいてみよう。逃げられたら、その時だし。

アーテル > 『…………。』

丸まっていると、屋上に誰かの気配。
耳がぴこんと立つと、音源に向かってぴこぴこと動いた。
遅れてむくりと上体を起こして、その方向を見やる。

『………んなぁー。』

気怠そうに一鳴き。どう聞いても猫のものです。
逃げたりしない辺り、人には慣れているように見えるだろうか。
蒼い眼が、彼をじーっと見つめている。

伊伏 >  
「起きてるじゃん。逃げないね、ここの飼い猫か?」

流石に見た事ないし、迷いだとは思うんだけどな。
動物へ独り言を吐く癖があるのか、返事も気にせず語りかける。
その間もすたすたと黒猫に近づいて、数歩離れたところで生徒は立ち止まった。

アンパンはほとんど食べ終えてしまい、せいぜいひとくちの欠片を指先に持っている。

「あっは、やっぱ黒猫だ。可愛いな」

そういうと、最後の欠片をぱくっと頬張った。
手をはたき、撫でれるものかと、猫の機嫌を伺うようにしゃがみこむ。

ハシバミ色の瞳が、眼の前の猫にうきうきしていた。

アーテル > 『……………。』

首輪はしていない。
精々が地域猫…ならぬ学園猫とでもいうのだろうか。
きっと、そういう扱いと思われても仕方のない慣れっぷり。
ただ、その眼は彼から逸れずに、じぃーっと見つめている。
まるで、一挙手一投足を見逃さないと言わんばかりに。

『んに。』

手がこちらに伸びてくるが、それでも逃げない。
寧ろこちらから目を瞑り気味に、頭を差し出す。そうすれば、容易く捉えられるだろう。
身体よりも控えめな毛並みではあるものの、それでも柔らかい感触が伝わるはずだ。

伊伏 >  
黒猫の視線の鋭さ、観察して来る眼にはあまり気にしていない。
動くものは目で追う。気になれば注視する。そういう振る舞いの動物だという認識なのだ。

だからこそ、猫に触れるのを許してもらえば、それはもう目元もほころぶというもので。

「夏毛って感じすんね。ねこちゃん可愛いねぇ」

猫はこの辺が気持ちいいんだっけと、生徒は黒猫の頭を中心に指の背で撫で続ける。
こざっぱりしているという印象を受けるこの猫の首元に気づき、首輪は無いのかと眼が語る。

「ねこちゃんは野良っぽいでしゅねー。…ノミとか居る形跡が無いなあ。
 誰かが面倒みてる感じすんなぁ……」

これが人間の猫なで声だ。ねこちゃん。

アーテル > 『……んぃぅー……』

ごろごろ。
指で頭を撫でられると、気持ちいいのか喉から音が鳴ってしまう。
夏毛でさっぱり、しかし毛艶のいい毛並みはつるりと滑らか。
人の手が加えられてると見られても、不思議ではないだろう。

『……………。』

ノミどころか、その体躯からはほのかに桃のような甘い匂いさえする。
イイとこのネコチャンなのだろうか?なんて思われても仕方ない。
されっぱなしの彼は、何をするわけでもなく、じぃーっと見つめっぱなしだったが、
…その猫撫で声には耳をぴくぴくさせていた。

伊伏 >  
甘い匂いがするということは、シャンプーすら誰かに面倒を見てもらっているのか。
迷いや野良だと独り言は吐いたが、もしかすると首輪を失くした誰かの飼い猫だったりしないのか。
生徒は黒猫をこれでもかと優しく撫でながら、そう考える。
 
「これが屋上じゃなきゃ吸わせてもらうんだけどな…。
 いつ誰が来るか、ちょっとわかんねーもんな……」

しかし、本音は口から出ていくものだ。
少なくとも、今の生徒にとってはそうである。

誰かの猫かもしれないだとか、そういうのを取っ払ってでも猫を堪能したい。それが漏れてしまった。

「…いや、流石に出会ったばかりのねこちゃんには、荷が重いな」


変な事つぶやいてごめんにゃーと、生徒は黒猫を撫で終えた。

アーテル > 『……………。』

撫でられながら、彼を見やる。
なにやら考え事をしているのは分かる、が、そこまでいろいろと考えているだなんて思っていないだろう。

『っ…………』

吸う。
その単語に、ぴくりと身体が反応した。
だが、それまでだ。
彼がそれに気づかなければ、ただの猫で居られるわけで。
猫なで声のまま、撫でられ続けることを選ぶだろう。

『……んにゃぁ。』

伊伏 >  
撫で終えた後の、小さな違和感を生徒は得た。
それまで喋りかけていた黒猫が、急に身体をぴくりとさせたのだ。
どっか痛いところでも指で引っ掻けてしまったのかと、黒猫をじっと見る。

いや、傷があった様子はない。
むしろつややかな毛並みそのもので、自分が触っている範囲では異様なものなどこれっぽっちも無かったはずだ。

・・・ということは。


「ねこちゃん、まさか」

生徒は猫を撫でるのを、とっくにやめている。
しかし、その距離は近いままだ。


「ねこ吸いをさせてくれる、神のねこちゃんか…?」


え?いいのか?そう言わんばかりに、もう一度撫でようとする。

アーテル > 「やめとけ。」

喋った。
とても流暢に。
それも、人の言葉を容易くその口から。
テレパシーのようなものではなかった。

「撫でる、触る、声をかける…それは許すがー……
 無暗矢鱈に雄猫の身体に手を掛けると、引っかかれても知らないぞー……?」

更に続けて、喋った。
青年の声だった。
その双眸は、彼をじいっと見やっている。

伊伏 >  
「は」

今、人の声がした。
あまりにも唐突に、それでいてしっかりと耳に届いた。

生徒はよほど驚いたらしく、中腰になりかけている。
そのまま辺りをザッと見渡すことにし、人がいない事を確認してから、向き直るようにしゃがみなおした。

「……あ、えっ……とぉ。マジ?
 お喋りしたのはねこちゃん、じゃなくて、ねこくん?」

これドッキリじゃねえよな。
いや、ここは常世島だ。動物が喋ったっておかしくはない。無いけど、このタイミングで?

まだ半信半疑といったところか、周囲を気にしながら、そう問いかけた。

アーテル > 「そーだな。
 猫くん、だな。俺ってば雄だし。」

雄。
でも、証拠までは見せるつもりはない。
あるにはあるけど、そこは尊厳の問題で。

くぁ…と一つ欠伸をした。
こういった流れには慣れている、そういう態度だ。

「なんだぃ。ここは常夜島だぞー?
 色んな世界の怪異ひしめく混沌の坩堝、何が居たってぇ不思議じゃあねぇだろ。」

にや、と、猫が笑った。
どちらかというと、人間のそれに近いだろうか。
今この場にいるのは自分と彼だけ…そう知っていて、堂々と振る舞っているようだ。

伊伏 >  
笑った。猫が笑った。
しかもこの環境をよく理解しているらしい。ただの喋る猫じゃなさそうだ。
黒猫が笑った代わりではないが、生徒は若干口を結んでいた。
人語を介する相手に、猫なで声でねこちゃんを連呼していた自分を思い出してしまったのだ。

「不思議じゃ無いけど、そりゃあ不思議じゃあ無いけどよ……。
 ねこくんもそういう怪異だとか、異能を持った猫みたいなそういう扱いの存在なのか?」

勢いで猫を吸わなくてよかったかもしれない。

アーテル > 「怪異。」

その言葉に、ぴくりと耳まで反応する。

「まあ、そうだなー?
 今の俺がどーいう存在なのかは……お前さんに任せる。」

意地わるそうに、にやり。目なんか細めて笑った。

「俺が異能持ちの猫だったとして。
 俺が猫みたいな怪異だったとして。
 今お前さんとこうして話してる俺は、お前さんの前じゃ何の変哲もない雄猫……」

何の変哲もない雄猫…というのは流石にどうかと思ったが、気にしないことにした。

「お前さんが認識し、思考し、はじき出した結論のままの、俺でいい。
 なぁーに…現実なんて、認識する者々によって違うもんだろー……?」

伊伏 >  
答えを得られなかった。
のらりくらりと、はぐらかされていく気がする。

「あるよ変哲は。結構あるんだよ、俺からしたら。
 何の変哲もない雄猫は、俺みたいな一般学生を手玉に取らないはずなんだ」

いわゆる”猫”の手玉取りではない。
猫以上の存在と対話しているような気持ちだ。
この気持ちは絶対にウソじゃないはずだが、この生徒はそれを証明する技量は持ち合わせていない。

「俺が持った結論のそのままだと、ねこじゃないヤバめのねこくんみたいなふわふわした認識になっちまうよ。
 とりあえず猫吸いするとヤバいねこくんだってことぐらいしか、わかんねーもん。
 みんなから見たねこくんにブレが生じそうだよ。怖くないか?」

チャシャーキャットみたいなものか?
いやそれとも、いやいやもしかしたらと、生徒があれこれ想像を巡らせているのは顔に出ている。

アーテル > 「そこは喋る猫くんでいいと思うんだがー?
 事実、それしか分かってねーだろう…?
 つーか、吸われるのを止めた理由はアレだ。
 雄相手にいいのかそれはっていう、お前さんの尊厳を憚った結果だ。」

目を細めながら、まるで試すような口調で、彼に質問を続けた。
…いつの間にか、禅問答の様な話になっているが。
そして更にここで止めた理由を開示しておく。
確かに、男の身体をすーはーしたなんて意識したらなかなか辛いものがあるかもしれない。
…尤も、彼からは桃のいいにおいがしそうだが。

「今の俺はそりゃあ喋る猫くんってぇだけさ。
 でも、誰かに取っちゃあ大切な飼い猫かもしれないしー?
 また誰かに取っちゃあ、お魚取られたにっくきドラネコかもしれねぇ。
 ……誰かに向けた各々の認識ってぇのは、ブレてて然り…だろぉ?」

にやにやにやにや。
彼はなんと答えるのか、楽しそうに前足を組みながら待っている。

伊伏 >  
ああ、やっぱりそうだ。この猫はただの猫じゃない。
こちらの困惑や思考の迷いを楽しんでいるではないか。

憎きどらねこでも可愛い飼い猫でも、猫は猫だ。
しかし今この生徒が感じているのは”そもそも猫なのか?”という疑問だ。
猫の存在そのものに疑問が生じている。この黒猫は誰にでもこう振る舞うのだろうか。

悩みに悩んだ言葉を、どう整頓して伝えよう。
その余裕すら、今は驚いた衝撃で飛んだままなのが辛い。

「ドラネコは……吸えるから………」

言葉も思考も整頓出来ていない。

いや待てよ、嫌がられないなら猫吸い出来るのではないだろうか。
シュレディンガーの猫だろうがワイルドキャットだろうが、猫が暴れないなら人間としては構わないものでは?

生徒は静かに混乱を極めていた。
猫という存在に性別を考えることが無かったのだ。ねこはねこであった。

「吸える猫に性別は関係ないけど、喋ってこっちをからかってくる猫は正体が猫なのか?という認識だよ。
 そもそもねこくんはねこか?ってさ、自分の脳みそを疑い始めちまうよ」

まだ驚きが極まっているらしい。
にやつく黒猫の正体を見破りたくても、ねこはねこだしという思考停止の気持ちが邪魔をする。

アーテル > 「いや待て。そのりくつはおかしい。
 おめードラネコの気持ちも考えてやれ?!」

そんな靄がかかったような思考から繰り出された発言に対して、全うなツッコミを飛ばした。
オンオフはきっちりと分ける主義なようだ。
ともかく、そこから先は彼からの回答があるまで、じっと待った。
そして、それが得られると…

「………なるほど。
 あくまで猫たる俺が、ニンゲンとコミュニケーションできること自体を疑問に思う訳かぃ……」

ふむ、と独り言ちる。
なんと答えてやろうかな、と、わくわくしてそうな表情だが。

「逆に聴くぞぉ?
 ……猫にコミュニケーションができないと思うのは、お前さんの思い込みじゃあないかい……?」

その内新しい詭弁が浮かんだらしい。
さあ、次の質問だ。とばかり、顔を傾げながら彼に語り掛け始める。

「ほら、よく言うだろぉ……?
 猫は集会を開くくらいに社会的で、互いの縄張りをきっちり理解してるし、挨拶や上下関係だってばっちり……
 それをしあえる範囲は今まで猫同士だったってだけで……実はこの度それを人間に広げましたー…、
 ってだけかもしれないじゃあないか。」

それに、と…更に言葉を続ける。

「俺は、俺だ。
 それ以上でも、それ以下でもない。」

にやぁ、と、少し気味が悪くなるくらいに、にこやかな笑顔を向けた。

伊伏 >   
猫にツッコミをいれられた。
ねこに。そんなに変な事を言ってたのか。
 
「へ?そう?…そうかな?そうかも…しんないな…?
 でもドラネコは俺をからかう事も引っ掻きも無かったから、まあ良かったのかなって思ってたし」

猫にツッコミを貰ったのは初めてだなと、妙な感慨深さにふける。
とはいえ、その後に続けられた話には僅かに口を開き、眉根を寄せた。

「猫にコミュニケーションが取れないとは思って無いし、猫の言葉が人間に通じて無いだけってのも、なんとなく分かる。
 けど、生物として全体的に見て、猫が人間にも会話を仕掛ける事が出来るようになったってんなら…ううん。
 …そうだなあ、犬猫SNSの猫語会話論文大会は、もう少し伸びても良かったと思うな。

 しかし表情筋めっちゃ動くんだな、ねこくんって。ねこは機嫌を眼で語るもんだと思ってた」

俺も猫は猫以上でも猫以下でもないと思うと、まだどこか混乱した思考を覗かせながら黒猫に返した。

アーテル > 「……ほぉ。」

猫は機嫌を眼で語る。
その言葉に少し感心したように、目を丸めた。

「まあそこは、お前さん方に合わせてるってーことで。
 なぁに、ニンゲンに合わせるんならニンゲンなりのルールに合わせなきゃならねぇしさ?
 郷に入ってはなんとやらってぇやつさ。にししし。」

そして、目を細めて歯を見せるように笑った。
…明らかに、普通の猫のそれではない。

「しっかし……猫のこと、詳しいんだなぁ?お前さん。
 いやぁおかげで、なかなかに楽しい暇つぶしになった。
 こーいう問答も悪くねえもんだ、うん。」

未だに胡乱な思考のままでいる彼を余所に、すくっと立ち上がる。
ぐーっとその場で猫らしく伸びをして、軽くふるふると身体を振るわせると……。

「んじゃ、俺ってばそろそろ。」

彼を一瞥するとゆらりと尻尾を揺らして、ゆっくりと階段のある方向に歩いていこうとする。

伊伏 >  
ようやく、驚いて飛び出た思考力が戻ってきた気がする。

「動物は好きだからさ。そこらの人間よか、ずっと好きかもしんない。好きなもんは勝手に調べるもんだし」

にししと笑う黒猫の顔が、猫に見えない。
猫なのに猫ではない。猫かすらも本人が答えてくれない。
これがただの白昼夢だったらどうしよっかなと、歩いていく小さな背中を見送る。
流石に追いかけるつもりは無い。今だってまだちょっと、不思議な気持ちが続いているし。

「……えーっと、またねで良いのか?良いんだろうな。
 どっかでまた会ったら、声かけてくれよな。こっちもそうかなって思ったら、声かけるから」

他人の黒猫似じゃなきゃいいけどと、声を投げて。

アーテル > 「………。
 なぁに、会いたいと思えばまたどこかで会えるもんさ。
 そういう"言葉"ってのは、結構強いもんだと思うのさ。」

彼の方へは振り返らない。ただ、返す言葉には次への楽しみが籠っていた。
不思議な黒猫のままで居られたらそれでよし。
次会うときは別の姿だったとしても、それでよし。
刹那的ではあるが、それもまた一興…
人間ならざるそれの楽しみは、独特だった。

「じゃあな。名前も知らないニンゲンさんよ。」

そう言い終えると、器用にジャンプしてドアノブを空けて、
僅か開いたその隙間から、するりと校内に戻っていった―――

ご案内:「第一教室棟 屋上」からアーテルさんが去りました。
伊伏 >  
猫がどうやって脱走するかを再現してもらったかのような、手際のよい扉開けが見えた。

「猫も名前を気にするんだな…」

ふっと吹き抜ける風が、夏の暑さによる幻覚や白昼夢ではないことを生徒に訴えている。
そのまま姿勢を戻して、ぱたっと地面に倒れた。
背中に僅かな湿り気を感じる。ああ、今は起きているな。

伊伏 >  
この島に来てから、そこそこ驚いたつもりになっていたのだが。
猫が喋ったことで脳内がポンと白くとんだのだから、気が抜けてたのかもしれない。
異常が普通の日常に慣れていたというよりは、なんでもいいやと全てを投げていた姿勢のせいか。


「…まあ、なんだって良いや。次は肉球揉ませてもらおうかね」

携帯を取り出して、時間を確認する。
受けたい夏期講習はもう少しばかり、休んでいく余裕がありそうだ。
うわついた気持ちの切り替えに、ゲームアプリでも少しやっていこうか。

ご案内:「第一教室棟 屋上」から伊伏さんが去りました。