2020/08/27 のログ
ご案内:「第一教室棟 ロビー」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 炎天下の昼間。
折り畳み式の日傘を差したヨキが、ロビーへと入ってくる。
手に提げたビニル袋を見るに、買い出しから戻ってきたところらしい。

日傘を畳んで、手近なベンチに腰を下ろす。
凍らせて持ち歩いていた麦茶のペットボトルは程よく溶けて、流し込んだ喉をすっきりと冷やしてくれた。

「ッはあ……生き返る……」

Tシャツの襟元から風を仰ぎ入れながら、心地よさそうに一息。

ヨキ > 汗を拭き、空調の風に当たっているうちに身体がだんだんクールダウンしてくる。

「……ふう。さてと」

ロビーには他にも歓談に興じる生徒たちが数組あって、和やかな空気の中にある。
傍らのビニル袋の中からツナマヨネーズのおにぎりを取り出して、包装を剥がす。

今日はここで昼食を摂ることにしたらしい。
海苔を齧る、小気味よい音。

見知った生徒が、ヨキに向けて挨拶しながら通り過ぎる。
手を振り返しながら、大きな口でおにぎりを食べる。

ヨキはどこにでも居る。生徒の側からもすっかり慣れた光景だ。

ヨキ > 端末があれば画面を見てしまうし、ノートがあれば書き物を始めてしまう。
それらの仕事から離れて一息つくのに、このロビーは丁度良かった。
頭の中で、絶えず考え事をしていることには変わりないのだが。

ヨキセンセーこんにちは。

聞いて聞いてあのね。

こないだのことなんだけど……。

ちょっと聞いてよひどいんだよ!

ありがとーヨキ先生!

行き交う生徒たちが、代わる代わるヨキに声を掛けてくる。
ヨキはそんな風にして、誰の悩み事や相談もよく引き受けた。

無論のこと、おにぎりの減りは遅い。

ご案内:「第一教室棟 ロビー」に羽月 柊さんが現れました。
羽月 柊 >  
ヨキに近づく生徒、遠巻きに見る生徒。
誰もが彼を知っているという訳ではないし、関わらないこともある。

表にも裏にも関わるということで、彼を敬遠するモノもいるだろう。


生徒の数がまばらになる頃、彼らに混ざるように、白を二つ連れた男。
時折羽月先生、と男に声をかける生徒がいる。

時々立ち止まって、顔見知りになった生徒と言葉を交わす。
まだ己の授業を持っていないにせよ、学園に教師として来るようになれば、
こうして生徒との会話をする場面も出来るようになった。

その生徒との会話が終わり、学園に何かしらの用事があったのだろう男は、
ロビーを通り過ぎようとして…友人の姿を認める。


「…あぁ、ヨキ。君か……相変わらず賑やかだな。」

……今回は、柊の方から声をかけた。
今までは、相手の方から声をかけられることが多かった。

ヨキ > 波が去ったところで、残りのおにぎりを食べ終える。
麦茶を飲んでいる最中、知った顔がやって来ることに気が付いた。

「おお、羽月」

片手を挙げて挨拶。
ベンチの上で荷物をまとめて座る場所を少しだけずらし、隣に相手が座れるだけのスペースを空ける。

「ははは。センセー冥利に尽きるというものだ。
好かれるうちが花さ」

友達と仲直りした話だの、彼氏がしょーもない話だの、あれこれ持ち込まれたにも拘わらず、ヨキは楽しげだった。

「それで、君の方は?
あれから体調はどうだ。心配しておったのだぞ」

“あれ”。
この二人しか知る由のない、狂騒の一夜。

羽月 柊 >  
僅かばかり男も普段のしかめ面というよりは、
愛想が良くなったのかもしれない。

近くまで歩いて行けば、相手が場所を作ってくれたことが分かり、隣に腰かけた。
白衣の裾を相手に引っ掛けないように自分側に寄せる。
小竜たちも肩なり膝なりに留まって、休憩。

「…そうだな。俺みたいな偏屈モノにも、声をかけてくれる生徒が出来て来た。
 ここの所は臨時図書委員の手伝いで、顔見知りの生徒が少し出来たな…。」

友人の彼のようにはいかないが、
男もまた様々に生徒と交流が出来始めている。
その語調は、楽し気なヨキと同じとまではいかずとも、悪く思っている訳ではなかった。

通り過ぎていく生徒が一人、小竜たちに声をかけた。
愛らしい見た目の彼らを好く生徒もおり、
男に確認を取ると、小竜たちはは少し遠くへとその生徒と共に戯れに行く。


それを見送ると、

「………あぁ、あぁ…。
 …今の所は、特に何かという訳じゃあないな。
 あれの依存性やら、反復性がどうとかはまだ、わからん…。」

…"あれ"。
そう言われてしまえば、視線が僅かに泳いだ。

「……自分の記憶力は、どうやら良いらしい。」

そう告げる。

ヨキ > 羽月の近況に、我が事のように顔を明るませる。

「ほう、それは良かった。
せっかく教師として舞い戻ったのだ、良いことがなくてはな。

君は真面目だし、小竜たちも人懐こいし。
何より竜の研究者など物珍しかろう。
生徒らにとっても、新鮮だろうさ」

このまま君にも馴染みの生徒が増えてゆくだろう、と。
柊が己の教え子であるかのような顔で、目を細めた。

小竜たちを見送って。

視線が泳ぐ柊の横顔を見ながら、他愛ない世間話でもするように。

「ふ、ははは。なるほど、なるほど。
刺激的な夏の思い出になったのう?

これから先、何もなければよいが。
またもし手が足りなくば、ヨキを呼ぶがいい。助けになってやるでな」

にやりと笑った。

羽月 柊 >  
柊の変化というのは本当に目覚ましい。
僅か二か月半。それだけで、まさか男がここまで変わろうとは。

「あぁ、なんならセイルとフェリアを目当てにする子もいる程だ。
 俺が連れ回す分、見目にはなるべく気を使って来たが、
 籠に入れずに校内を飛び回れるようになるとはな。

 …かつての自分とはいえ、彼らの好奇心には感服するところがある。
 以前は職員として稀に学園を訪れることもあったが、
 教師になると視点が全く違うな。」

いくら道筋があったとはいえ、自分から望んで飛び込んだ。
その決定をしたのは、成り行きでもなんでもなく、間違いなく己の意志だ。
この常世学園という舞台に、昔とは違う役割(ロール)で再び立つと決めた。

遠くで戯れる彼らを見やる。
成人となんら変わらない知能を持つが、それでも彼らは異種族同士。
事故の予兆でも起きればすぐに対処できるようにと、右手の中指と親指は常に擦り合わせていた。

それは、話をしている間も続けていて。


「色んな意味で刺激的すぎる…。」

今までのことにしても、"あの日"の出来事にしてもだ。


ちらりと相手の方を見て、…その口を見て。
改めて恥ずかしさを思い出して、空いた手で口元を覆った。

「……そこそこ君の返答に予想が出来るモノだが、
 嫌とは思わんのか? 三十路すぎた男だぞ…こっちは。」

ヨキ > 「時が経てば、彼らの流行りも在りようも変わってゆく。
だが君の言うとおり、『好奇心』だけはいつの世も変わらぬよ。
ヨキは彼らと居て退屈しないし、退屈させたくないと思う。

貴重な青春の日々を使ってまで、この学園に通っておるのだ。
教師は責任重大であろうよ」

そう話している間にも、麦茶を飲み、身振り手振りを交えて話す。

あの唇で。その指先で。

居心地悪そうな柊の様子に、何でもないことのように応える。

「……うん? ははは。自分からするかと言われたら、断じてノーだ。
だが友人のピンチとあらば、ヨキは迷わぬよ」

気さくに肩を竦める。

「そういえば、君と言えば――話は変わるが。

葛木一郎君。
教師になってから、彼には会ったかね?
人伝に聞いた話だが、人捜しをしておるそうではないか」