2020/10/06 のログ
■羽月 柊 >
光の球をぽーんと、難しい顔をしている生徒の方へ投げる。
「…『魔力が無いのにどうやって魔術を使うんだ』
と考えるモノは君たちの中にいるだろう。」
魔力を生産できる器官。
元来魔力があるモノはそういった何かしらを、生まれつき身体に備えている。
もちろん、そういった器官を移植なりすれば自ら魔力を産み出すことも出来るが…。
「俺自身も"魔力を持たない人間"であるが、
そう言った場合は、他の何かしらから魔力を借りて魔術を使うことになる。
もちろん、この手法は生来持っているモノよりも努力は必要だ。
才能に敵わないと思う部分も大いにある。
しかし、『魔力が無いから不可能』では無い、ということだけは覚えて帰ってほしい。』
無いなら有る所から持ってくれば良い、というのは持論だ。
精霊なり妖精なり、魔石なり、
そう言った元来持っているモノの力を借りれば、魔術という奇跡を起こすことは出来る。
それが、『近代魔術』と呼ばれるモノ。
完全にプログラムコードと変わらない、仕組みを理解し、理屈で扱う魔術。
■芥芽ある >
「ああー、なるほどぉー……」
魔力
その源は、一体どこにあるのか。といえば。
何がしかの器官だという人がいる。
それは、なんだかよくわからない"魔法袋"であったり、"心臓"であったり、"脳"であったり……
本当のところ、"それ"が正しく魔力を生み出す"モノ"であるか、というと……うーん、実は違いましたー、とかいう可能性もありそうよね。
なんにしても、"魔法袋"とかならまだしも、"心臓"だの"脳"だのを移植するとかゾッとしない話よね。
いや、"魔法袋"だって正直ゾッとしない話だわ。
で、あれば。
なるほど、他から借りてくる、というのは実に合理的な話といえる。
考えてみれば、大魔法、なるものなんて馬鹿みたいに魔力を使うから本人だけで賄えない、何て話もよく聞く。
そうであれば、借りる、なんていうのは魔法だって使える技術なのは変わらないだろう。
いいとこつくなー、羽月先生。
「――『魔力が無いから不可能』では無い、ということだけは覚えて帰ってほしい。
かぁ……かっこいい……」
うーん、此処で決め台詞のように差し込んでくる一言。いい……いいわ……ッ
■羽月 柊 >
もう一度パチンと指を鳴らす。
生徒の机の上にある光の球は、小さな花火と鳴って消える。
「俺自身はその魔術を扱う為に、
刻印された魔石等の装飾品で賄っている。
身体に魔力を巡らせて、疑似的に"魔力のある身体"と同じ状態になっている。
魔法感知の出来るモノがいるなら、俺の魔力がどこから出ているかは分かるだろうが…。」
そう言いながら手を掲げ、そこについているいくつもの装飾品を見せる。
基本的にはアクセサリーをじゃらじゃらと着けている成金趣味のようにも見えるが、
これらが彼にとっての魔力の核なのである。
「また、精霊魔術の応用で相棒たちから魔力を借りての魔術行使もしている。
魔力の無いモノは授業を通して、
どの方法ならば自分が魔術を扱うのに適しているかを見つけて欲しい。
また、元より魔力を持っているモノは、研鑽の為に手を貸そうと思っている。
魔力の有無は、スタートラインが違うというだけに過ぎんからな。」
自分が歩んできたからこその言葉。
己の失敗も成功も、恐らくはこうして教えれば良いこと。
そうすれば良いと、己もまた教えられた故に。
■芥芽ある >
「あ、なるほどそういう……」
羽月先生、結構アクセをガチャガチャさせてるなー、やっぱり身だしなみとか大事なのかなー……なんて思ってました!
単にイケメンおしゃれっていうだけじゃなかったのね……ごめんなさい、羽月先生!色目で見てました!
とまあ、本人の前では口が裂けても言えないことを心で叫んでみる。
……声に出てないわよね? うん、平気平気。
まあ別に、趣味でも似合ってるから気にならないんだけど……
「相棒……相棒かぁ……あの龍ちゃんたち、かわいいわよねぇ……
やっぱり私も欲しい……」
ぽわん、と思わず小竜たちを眺める。
やっっっっっっっぱり、可愛いっ! また大人しく羽月先生と一緒にいるのがもう、またね、こう、こう……ッ
「――スタートラインが違うというだけに過ぎん」
ああああああ、もう、本日のイケメンゼリフ第二弾、いただきましたッッッッッ!
もう、なんなの?かっこいいセリフ製造機なの?
その口から出てくるの、イケメンゼリフしかないんですか羽月先生???
■羽月 柊 >
「……とまぁ、ここまで大まかに魔術について語った訳だが、
何か質問があれば受け付けるが…。」
あまり長々とうんちくを語るのも退屈だろう、と、
一旦話を区切り、質問タイムにする。
ざわざわと言葉が行き交う教室の中、あるの方を見やる。
そちらも何か質問があれば飛ばしても問題は無いと言うように。
初回の授業としてはこれぐらいだろうか。
論文ならばもっと長々と語っても良いのだが、
己の学生の頃を思い返すと、これ以上は眠くなってもおかしくは無い。
■芥芽ある >
……ふむふむ、ふむむむむ……なるほど、勉強になる……ッ
流石、羽月せんせ……って、あれ? 目線がこっちに向いているような……?
あ、はい。質問。質問ですね?
ああ、これ、あれかな。生徒が質問でなそうな空気の時にとりあえずなんかやっておいて呼び水にしたりしようとかそういう……?
ハードルたかぁい! あんまり高等なこと言ってもしょうが無いし、むむむむむ……
「え、えーっと……はい! 外から魔力を手に入れる手段、は今のところ装飾品、それから魔力を持つ生物……
というものがあるようですが、他に考えられる可能性ってなんでしょうか?
あと、適性を調べる、ということですけれどやっぱり地道にいろいろ試してみるのがいいんでしょうか?」
あ、ちょっとよくばりセットな質問だったかな?
■羽月 柊 >
「では、芥芽先生の分から。
『外から魔力を手に入れる手段』は、
装飾品としては魔力物質、魔石等が該当する。
魔力を持つ生物の他には、精霊、妖精、その他に幽霊などからの憑依。
いわゆる"隣人"と呼ばれる、どこにも属さない類の我々のすぐ近くに在る生物。
他には草木に魔力が宿っている場合もある。
ざっと説明はしたが、同じヒト同士でも、魔力を貸し借りして扱うことも出来る。」
つまりは、相手側が何かしら魔力を持っていれば良いということ。
魔術を行使する側が、どういった目的で扱うかにも寄るが…。
「適性なんかはある程度は、異能診断と同じく診断出来るシステムもある。
しかし、地道にに色々試すのも手段の一つだ。
システムは大まかにしか知れない部分が多いからな。」
黒板にそれぞれの大まかな分類を書く。
鉱石、宝石、精霊、妖精、憑依、使い魔…そして、隣人とヒト。
「何かを成す為に一人でやる必要があることはさほど無い。
術師が数十人がかりで行うような、大規模な魔術もあるからな。」
そこからは質問がそこそこ飛び交うようになる。
使い魔とそこの小竜の違いは何だとか、
亜人でも魔術が使えるようになるのかとか、そんな質問がそこそこに。
■芥芽ある >
「ふむふむ……」
いいなあ、懇切丁寧に一つ一つ、積み上げるように……
羽月先生の積み上げてきたものがにじみ出るような説明……素敵ッ
それにしても……ある程度予想はできていたけれど、結構魔力の元ってあちこちにあるわねえ……
無尽蔵、とは言わないけれど結構ホイホイ回収できたりシそうだけど大丈夫なのかしら……?
「うーん……今度、私も適性とか診断してみようかしらね……」
自分についであれこれと質問が出るのを眺めながら、ふむん、と考え込んでみる。
魔術先生、とか素敵な響きじゃないかしら……?
■羽月 柊 >
生徒の質問にそれぞれ答える。
使い魔は魔術的な契約を結んだ間柄の事であり、
小竜たちはそういった関係ではなく、純粋な相互の意思による関係だということ。
亜人でも魔術は使えるが、さっきも言ったように、
適性はきちんと調べることが必要だ、等。
「そして魔力とは言うが、魔力にも性質というモノが存在する。
科学でも、相性の悪い物質同士を組み合わせると爆発したりするだろう?
魔術でも同じことが起きる可能性はある、というのは頭の片隅に置いてくれ。
『理』を知ること。
大地が育み、抗えぬ荒廃を知らせるように。
水が生命を産み、押し流すように。
火が文明をもたらし、焼き尽くすように。
風が季節と種を運び、消し飛ばすように。
魔力は決して万能のエネルギーでは無い。
包丁の扱い方を学ぶように、『理』という扱い方を授業で学んで欲しい。」
最後に締めくくる形で全体に告げれば、
チャイムの時間がそろそろ迫って来るだろう。
■芥芽ある > 『理』を知ること。
大地が育み、抗えぬ荒廃を知らせるように。
水が生命を産み、押し流すように。
火が文明をもたらし、焼き尽くすように。
風が季節と種を運び、消し飛ばすように。
ああ……地水火風の四元素に合わせた素敵な言い回し……
ほんと、詩的でカッコいい……イケメン……
でも、本当に……『理』って大事よね……
うん、ちょっとこれは参考にしておこう
それにしても……包丁の扱い方、かぁ……羽月先生、料理やるのかなやっぱり。
エプロン姿の羽月先生とか、ちょっとこう……ダメだわ、危険だわ、破壊兵器だわ……
■芥芽ある >
おっと、もう名残惜しいけれど授業時間が終わりを迎えるのね……
ああ……もっと見ていたかったなあ……
ご案内:「第一教室棟 教室」に白泉椿丸さんが現れました。
■白泉椿丸 >
チャイムが鳴り響くと、生徒たちが少しずつ動き出す。
その中を、1人のピンク頭が通っていく。目指すはもちろん、羽月のところだ。
「お疲れ様です」
その隣に来ると、少年はニコ!と笑った。
細身であり、殴ったらポキっと真っ二つに折れそうな、たお…たおやか…たおやかな生徒である。
と、思っただろうか。
思った人がいてくれたら嬉しい。これはオカマ先生の仮の姿である。
芥芽先生の方を向き、なんだかやたらとフレンドリーに、ひらひらと手を振った。
こっちオイデーとばかりに。
■芥芽ある >
「はい、皆さんお疲れさまです」
生徒が出ていくのを見届けて……あれ? 逆に入ってくる子がいる……
細身でたおやかで……どこか可愛らしい?
あれ、羽月先生のところに? え、なにこれ。イケメンと可愛いが揃って危険な空間が出来上がってる気がするんですけど???
ん? え? 手招き? どういうこと? え?
まさか、その素敵空間にお呼ばれしてるの私? え、ほんとに?
行っちゃっていいの????
「はーい!」
秒で負けた。
とてとてと素敵空間に歩いていく。
■羽月 柊 >
生徒もまばらに教室を出ていく。
残って会話しているモノも居るだろうが、そのうち去っていくだろう。
教卓の上に乗っていた小竜たちを手招きし、いつものように肩と頭に乗せる。
一応用意していたカンペ的なプリントを纏めつつ……と、
「…あぁ、ありがとう。」
こちらへやって来た生徒(?)に言葉を返した。
少年が椿丸であることは分からない。
魔術的なことであっても、男には見破るのも少々難しい。
何せ誰が誰とはまだ把握しきれていない。
今日は顔合わせのようなモノだ。
これから減る生徒もいれば、増える生徒もいるだろうという状態。
全て居なくなる訳でなければそれで良い。
■白泉椿丸 >
「予想していたよりも、ずっと肩の力が抜けてたんじゃないかしら。
"羽月先生"が教えたい事、知ってほしい事の触りが聞けてとても嬉しかったわ」
と、ここまで話したところで芥芽先生が傍にやって来ると、まじまじと彼女を見上げながら話を続ける。
んまぁ、可愛くてオシャレな丸眼鏡をしてらっしゃるわね!
自分の眼と顔の形をよく理解してるタイプかしら?明るそうな先生ね。
「とても聞きやすくて良い初授業だったと思わない?」
めちゃくちゃ教師目線で語っているが、姿はただの少年である。
なんだかやたらと喜びながら芥芽先生にも聞いているが、姿は本当に少年である。
気づくかどうかは先生たち次第だ。もっとも、椿丸自身は目線の低さを忘れているようだが。
■芥芽ある >
「……?」
たおやかな少年から発せられたのは、どちらかというと女性じみた感じの……というか、あれ、これオネェ言葉ってやつかな?
本物は初めて聞いた気がする……なかなかインパクトあるわー……もうインパクトだけで一生食べていける感じ。
……って、いやいや!! え、なんで? え、この子そっち系?
あ、いや、別に差別するつもりとかそういうのはないんだけど、流石にちょっと、こう、想像していたものと違って……
ギャップを埋めるのに少し時間が欲しいと言うか!!!!
……いやまっておちついて、ある。これはこれでアリじゃない? うん、アリだわ……斬新斬新。
ここまで0.05秒
「ええ、そうね。聞きやすくて良い授業だったと思うわ。
初授業とは思えないくら……い……?」
そこまで言って、はたと思う。あれ、この子の発言、先生に対して生徒が言う感じというより、先生同士の会話って感じなんだけど……
いや待って、この子先生だったりするのかしら?
ああもう、ここってば見た目詐欺が多すぎてわからないのずるいと思いますッ!!
「……えーっと……すみません。失礼ながら……あの、教員でいらっしゃいます……?」
おずおずと言葉をかける。
そもそも、学園の規模大きすぎて教員全員を把握しきれないのも悪い!はい、私悪くないッ
■羽月 柊 >
「ああまぁ、論文の発表の感覚と、
他の授業の手伝いをしてみた感じでやってみたんだが…。」
上手く出来ていたと二人から評価が貰えれば、ありがたい限りである。
纏めたプリントをファイルケースに入れ、
三人交えて話す…少年の背丈はほぼあると同じであり、
こうなると柊だけが突出して見える。
「教員?」
あるが把握できていないのならば、当然柊が把握できている訳も無い…可能性の方が高い。
軽く首を傾げて少年の方を見やる。
最近聞いた口調なのは確かなのだが…
どうしても、かのオカマな先生と、目の前の少年が結びつけられなかった。
■白泉椿丸 >
ノートと筆記用具を抱えてニコニコしていたが、二人の発言に首をかしげる。
まさか芥芽先生の脳内でシナプス大爆発が起きて、そのままアリ判定を頂いたとは思いもせず。
何でそんな事言われてるのかしらと考えずとも原因は明らかで、
アッ!と声を上げて頬に手を当てた。女性らしい仕草といえば、確かに響きは良い。
ちょっと恥ずかしそうに、自分のほっぺたをぽこぺち叩きつつ。
「やだも~~~。ごめんなさいね、テンションばかり先走っちゃってて!
もちろん、アタシも教員よ。魔女薬を教える、白泉椿丸っていうの」
普段はこんな姿じゃ無いのよと断ってから、いやぁねホント…ウフフ…と落ち着きを勝手に取り戻した。
「いつものアタシだと、生徒たちが授業に集中出来ないかもしれないからネ。
それに、初授業の学科に先生が2人も見学に来てるのも驚かせてしまうかなって」
■芥芽ある >
ほっぺたをぽこぺち叩く少年。なにこれもう、これだけでご飯が食べれそうな勢いなんですけどなにこれもう、なに?
というか、あざとさMAXなんですけど大丈夫ですか? おーい、倫理委員会ー。此処に危険人物がいますよー
……いや、連行されても困るから呼ぶわけにも行かないんだけれど
それにしてもテンションが先走った……なんて、コワイなあ……
やっぱりテンションに任せて突っ走るっていうのはよくないわね。
うんうん、やっぱりローテンションサイコー。そう、私はいま正気。落ち着いているわ
「白泉椿丸……先生?」
あれ、名前を聞いたような聞かないような……魔女薬って確か今言ったわよね?
よーし、落ち着いて情報整理よ!はい、判断材料!
魔女薬!オカマ言葉!白泉椿丸!
……いや、どう考えても答え一つしかないでしょ。噂のオカ魔女先生じゃない。
え、でももっと背が高いって聞いたような……って、そうか。
薬か何かで姿変えてるのね……魔女って便利だわ……私も勉強すれば、あんな姿とかこんな姿になれたりするのかしら……
あ、それちょっと美味しそう……
魔女っ子ある、とかいい感じゃない? え、年齢を考えろ? はい、すみません……
「あ、えーっと……ご存知かもしれませんが。芥芽ある、です。よろしくお願いいたします。」
はい、テンション低めでお送りいたします。
真面目に真面目に。
■羽月 柊 >
「……白泉……ジュディ先生?」
相手の名前が知れると、流石の柊も綺麗な二度見になった。
前回出逢った時の彼は…なんというか、
逞しいという言葉の方が似合うれっきとした男性だったからだ。服装はともかく。
「以前逢った時と姿がまるで違うが……。
変身魔術か何か…か…?」
質量保存の法則をぶっちしてしまっている目の前の少年に、
普段は冷静な男も桃眼が泳いでいる。
少々失礼な物言いになってはいないだろうかと思いつつ。
小竜たちも、以前逢った時とは別の意味で半口が開いていた。
■白泉椿丸 >
二度見されるのは慣れているのよ、アタシ。
でもね、小竜ちゃんに口を開けられるのはちょっと予想外だわ…。
というか芥芽先生、さっきとトーンが違うじゃないの。ヤダ、緊張されてる…?
アタシ怖い魔女じゃないのよ。普通の魔女なのよ!
「芥芽先生ね~…って、ヤダ畏まらないで~!同じ教員って立場じゃないの~~~!
もっとフランクな気持ちで大丈夫よ。羽月先生みたいにジュディって呼んでくれても良いけど♡」
手をぶんぶん振って抗議している。
あざとい萌え袖を作るあたり、自分の容姿を分かっている制服選びであった。
「この姿は魔術ではなくて、魔法の類になるわね。
数年前までは薬を併用していたのだけど、今は魔法だけで一時的に若返っている状態よ。
アタシの事はどうでもよいのよ!初授業、どうだった?」
これ以上ないくらいに眼が泳ぐ羽月にそう返し、ニコニコ状態に戻る。
■芥芽ある >
うーん、このテンション。元気いっぱい夢いっぱいって感じでいいなあ……
でもやっぱりテンションあげ↑あげ↑で……いやあ、ちょっと、そういうわけにはいかないでしょう。
こう、ほら、教員として、というか人として、というか……ね?
親しき仲にも礼儀ありっていうか、そもそもまだ親しくもないわけで……ねえ?
「ジュディ? わぁ、可愛らしくて素敵ですね!
じゃあジュディ先生で!」
決意は秒で崩壊しました。え、なんで?
おかしい……こんなはずでは……
「魔法で 一時的に 若返ってる……」
……いいなあ、魔法……
そんなのずるい。ずるくない? それこそ、魔女っ子ある、が無理ない年齢にだっていけるんじゃない、これ?
いいなあ……
……ほんとうに?
■羽月 柊 >
「"魔法"の方なのか…。」
授業の頭でも話していたが、『魔法』は奇跡の顕現。
『理』を解せずに行われる、理屈を超えた事象だ。
そしてそれは、己には決して扱えないモノ。
「あ、あぁ……まぁ。
言いたいことはそこそこに言えたとは思うが。
気になるのは生徒がどう思ったか、だな…。
魔術を教えるというに、魔力の無い教師だからな。
持たないモノには指標になるだろうが。」
持たざる者だからこそ、教えられる授業でありたい。
それが、今日の話で生徒に伝わっていれば良いのだが。
■白泉椿丸 >
「……芥芽先生、若返りに興味がある方のお人かしら?」
お肌も毛艶もまだ苦労するような歳には見えないのに。
もしかして、見た目よりずっと長生きしている種族の人なのかしら。
驚いているだけなら、アタシちょっと恥ずかしい言葉を返しているわ!ごめんあそばせ…。
芥芽先生に聞きながらも、羽月に返事を貰えばウンウンと頷いた。
「不安かもしれないけれど、授業1回目で結果なんて出ないわ。
飽き性の子達でも、3,4回はちゃんと来てくれるもの。今日は、挨拶が終わっただけじゃない?
魔力の"扱い"は"有限"だし、無い子も有る子も興味は尽きない内容だと思うわ。自信を持って!」
まだまだ始まったばかりよ!と抱えていたノートを叩く。
■芥芽ある >
あら?顔に出てたりした?
バレてる?もしかして、心の声が聞こえちゃう感じの人だったりする?
いやいやいや、もしそうなら全部わかってるはずだから、多分きっとその線はない。
ない……よね……? 全部読まれてたりしたら私死ぬ、死んじゃう。確定死。社会的死。
「あ、あははー……まあ、将来を見越して、といいますかー……
ほら、あれば、ねえ……色々と、便利かなあ……とかなんとか……」
花の女子高生時代とか、そんな感じになってみたりして青春っぽいものを謳歌するのも楽しいのではないか。
禁断の恋、とかそんな感じのサムシングを味わったりとか……
ごめんなさい、調子乗りました。若返っても昔なかったものは今もありませんよね、はい。知ってます。
「少なくとも、今日の反応を見るかぎり……生徒の受けは良さそうですよ?
意外と、質問ってしてもらえないものだし……
なので、自信持ってください、羽月先生!」
白けているわけではないんだけれど、こう、誰も何も言わない、なんともいえない固まった空気、とか、結構地獄じみてるのよね……
…… あ、想像しただけで胃が壊れそう。
それがないだけでも大成功、だと思うの。うん。
■羽月 柊 >
同僚というのは本当にありがたい存在だなと思う。
友人のヨキにしてもそうだし、この二人にしてもそうだ。
独りで立ち往生などしていられないと、しっかりと背中を押してくれる。
「あぁ、二人ともありがとう。
有限な時間のうちで、どれ程教えられるのか分からんが…。
配分なんかはまた貴方がたに聞くかもしれん。」
そう、まだ始まったばかりだ。
これからどんな生徒と対話することになるかもわからないし、
どんなことが起こるのかも分からない。
ノートを叩かれても、以前の時のような勢いも力も無かった。
「次の授業からは実利的な内容を組んで行かんとな…。」
それにしても、椿丸が魔法の方も扱えるとは。
まぁ、魔女(?)と言っているのだから、扱えても当然ではあるのだろうが。
■白泉椿丸 >
「ふふふ、可愛い将来の心配をしてるわね。
体験してみたかったら、お薬くらいは融通できるわよ。ほんの数分だけの効果だけど。
ど~~~しても欲しい!となったら、こちらに連絡して頂戴な」
椿丸は芥芽先生に名刺を差し出した。
<森の魔女・白泉椿丸>と書かれており、その下には番号とアドレス、有名SNSアカウントが数種類載っていた。
連絡先の内容自体は、教員名簿で確認できるままのものである。
若い悩みだわ~~~。可愛いわぁ~~~~。
美しくあろうと思えば長く外見を保てるこの時代で、先を心配するだなんて。
やりたい事がたくさんあるのかもしれないわね、芥芽先生は…。
うふふうふふと微笑みながらも、緑の瞳は時計の方を見る。
「そのうちきっと、教えたい事が増えていくわ。
生徒に直接感想を聞くのが難しかったら、出席届にアンケートをつけるのもアリだし。
早めに授業スタイルが固まると良いわね」
そう言って、自分の髪を横に軽く流す。
ノートと筆記用具を改めて抱えなおすと、2人から数歩離れた。
「そろそろ魔法が解けてしまうから、アタシは先に職員室に戻るわね。
授業終わりに引き留めてしまってごめんあそばせ!」
オカマ時よりもはるかに衝撃の小さなウィンクが、ばちこーーーーんと飛んだ。
■芥芽ある >
「わーい、ありがとうございます!」
名刺を頂いてしまったので、いそいそとしまいこむ。
ふふふー、いいものもらっちゃった、えへへへー。
薬っていう下心はさておいて、やっぱり仲間が増えるのは嬉しい。
「もー、羽月先生ってば本当にもー、シリアスなんですから!
もうちょっと肩の力抜いて!リラックスリラックス!ですよ。」
へにょん、と軟体動物っぽい感じに肩の力を抜くジェスチャー。
真面目でしっかりもの、というのは良いところだけれど、そればっかりだと先が思いやられてしまう。
それに……やっぱりなんだか羽月先生はなんだかんだと、肩の力が入りやすい気がしてならない。
日常からしてそんな気がするから、ね。もうちょっと気楽に生きてほしいという思いもある。
「はぁい、ジュディ先生、またー!」
ぱちんっと、こちらもウィンクを返してみる。
うん、ちょっと可愛げが足りない気がするわ。うー、キャラじゃないのはわかってますー!
「……って。あ、私も、いかないと……」
そういえば、報告とかそういうのもしなきゃいけなかった。
もー、ただ見学だけさせてくれればいいのにな―。え、イケメンだけ見てて授業とか全く見てなかった、とかないように?
あ、はい。すみません。そんなコトナイです。ちゃんと聞いてます。聞いてますとも。
……まあ、そんなわけで報告はしないとな……
ちょっと足取り重く、いかねばならないなにごとも……ああん、めんどくさぁい……
■羽月 柊 >
生徒に紛れて去っていく椿丸を見送る。
あんなに華奢な子が、以前に逢ったような逞しい男性になると考えると、
なんともはや、ヒトの成長というものは恐ろしいというか、なんというか。
頭の上の小竜は、ぽふりと髪に身体を埋めている。
リラックスというのは、この男には確かに無縁かもしれない。
それは過去のせいだったり、普段の生活故だったり。
結局の所、どれほど良い事があれでも、
その右耳に光るピアスは未だに彼を縛ったままなのだから。
「…まぁ、善処はしよう。」
だから、素直にあるに対してYESとは言えないまま。
心から笑うことすら難しいこの男は、
いつか、気楽に生きれるようになるのだろうか。
……今はまだ、分からない。
やることは山積みだなと内心独り言ちながら、男も職員室へと戻るだろう。
とにもかくにも、こうして羽月柊の初授業は、幕を閉じるのであった。
ご案内:「第一教室棟 教室」から白泉椿丸さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 教室」から芥芽あるさんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 教室」から羽月 柊さんが去りました。