2020/11/06 のログ
ご案内:「第一教室棟 教室」に白泉椿丸さんが現れました。
ご案内:「第一教室棟 教室」にレイチェルさんが現れました。
■白泉椿丸 >
「――――というわけで、そろそろ時間になるわね。
この魔女薬で扱う、基本的な薬草の説明はこれでオ・シ・マ・イ♡
配った資料には、今回説明したような内容は載せてませんからね」
しっかり記録を作っておくのよと、乙女がウィンクをした。
その瞬間、授業の時間は終わりを告げる。まるで化粧品CMのアイキャッチのように。
別にウィンクでチャイム召喚をしたわけではない。安心しよう。
ざわざわと席を立ち始める生徒、黒板の内容を確認する生徒。
それなりの人数が思い思いの行動をとっている。
大人しく授業を聞き、疑問は質問としてどんどん飛ばしてくれる生徒の多い時間であった。
オカ……乙女は微笑ましそうに、みなを見つめ(それはもう、ラブ)慈しみの視線で見送っていく。
自分はといえば、最後に出るつもりだ。
忘れ物などの確認はもちろん、自分が持って来た道具の収納もあるからだ。
■レイチェル >
ウィンクを振りまく乙女の視界の中、教室の隅で。
ペンを走らせ、メモを取るレイチェルの姿があった。
授業中ずっとメモを取っており、しっかり話を聞いているようでは
あるのだが――それでも、どこかぼんやりとしている印象を
与えたことだろうか。
一通り単位は取り終えている彼女だが、一部の授業に限っては
受講を続けている。その一つがこの、魔女薬の授業だ。
担当教員が島外から帰ってきた為に再び開かれているこの講義は、
レイチェルにとって興味の尽きない内容であった。
魔法・魔術の素質《センス》を問わず作製が可能な魔女薬は、
今や魔術の才能を持たぬレイチェルにとっては一つの救いだった。
しかし、それよりも。
授業はいつの間にか終わっていた。
皆が散り散りになっていく中で、レイチェルは一人、机の上で
配られた資料に目を落としながらメモの整理をしている。
――授業は、良い。
メモの整理に一つ区切りをつけて、ペンを机に置く。そうして。
生徒を見送る先生――確か、椿丸といったか。
そちらの方へ何とはなしに、ぽけーっとした視線をやりながら、
レイチェルはそんなことをぽつりと思った。
知的好奇心は余分な思考が滑り込むのを少しばかり、
抑えておいてくれる。
■白泉椿丸 >
机に座る生徒がいる間は、黒板消しを動かさない。
これは乙女が行う授業後のルーチンでも、必須の行動であった。
メモや記録を取る速度は人それぞれ。
次の授業がある生徒ならば、それと折り合いをつけて作業をしていくだろうから。
乙女は全面的に生徒を信じる傾向にある。ヤバそうだったら声をかけるわ。当たり前よ。
教室の中も空いて来て、座っている生徒が目立つようになった。
そこからふと、乙女は視線を感じる。
「……あら?」
眼帯をつけている生徒はたまにいるが、それが少女かつ金髪であれば、
この乙女でもそこそこに知っている存在である。
(確か風紀委員の子よね。まだ学園にいたのねえ)
一時期、それはもう…すごぉぉおーーく!頑張って!風紀のまとめを務めていてくれた子よ。
そんな子がアタシの授業に顔を出してくれているなんて…嬉しいわ!
乙女は嬉しさの気持ちを胸いっぱい、いや、顔に出しながらニコニコと視線に返した。
…少しぼうっとした様子はあるけれど、気づいてくれるかしら?
荷物は大まかにまとめられているし、ちょっと近くまで行って挨拶しても良いわね。
行動を決意した乙女の行動は大変早い。
白い翼を模したロングケープをゆわぁ…とさせ、レイチェルの方へと歩いていった。
オカ…乙女がその横に立つまで、残り数秒…。
■レイチェル >
椿丸先生の授業は、とても分かりやすかった。
世界が違えば、薬草の種類だって違う。
当然、聞いたことも見たこともない薬草の名が飛び交う。
しかしそれらが不思議と、すんなり頭に入ってくる。
授業の質は、これまで授業を受けてきた教員の中でも
トップクラスなのではなかろうかと、生徒目線ながらに
レイチェルはそう感じていた。
分かりやすい授業を行う先生は、生徒として好感が持てる。
ちょっとキャラが濃いのが玉に瑕ではあるが。
しかし。
そんな先生のキャラクターを、愛している生徒も少なくないと聞く。
そんな先生の暖かさに甘えて、
じっくり思考を整理しながら、丁寧にノートを纏めていく。
先生が口頭で伝えてくれた情報は付箋に分けてノートに貼りながら、視覚的に分かりやすく、
それでいて細かい所まできっちりと自分なりの考えをまとめたメモを書き記している。
まるでこの場で魔女薬の参考書を作っているかのように、
そんな丁寧な作業をすらすらと進めていくのである。
それは、何かに追われているかの、ような。
そしてノート作りも佳境を迎えれば、ふと小さく息を吐いた瞬間に、
思わず脳裏に蘇ってしまうあの顔。あの声。
ぽうっとした頭を振って、最後のまとめにとりかかる。
今、視線は完全にノートに集中しており、周囲へは気を配れていない。
■白泉椿丸 >
乙女、もといオカ魔女はレイチェルの隣に着いてしまった。ありゃあ。
レイチェルの手元をそっと覗きこむと、なんということでしょう。
生真面目なだけではこうも作るまいとした、丁寧なノートが作成されていた。
この子はこんなにマメな子だったのかと、少々驚いてしまったくらいには。
ただ、乙女も経験だけは百戦錬磨の存在である。
受験生なら泣いて喜びそうなノートを作る傍ら、どうにもレイチェルの動きが鈍い。
彼女のバリバリ現役の頃を知っているからか、このどこか隙のある間には、乙女も疑問が浮かぶ。
つい首を傾げつつ、島に戻ってからの情報を脳内でばっと広げる。
(病院にしばらく居たという話も聞いたけれど、それの後遺症…ではないわね。
何かを打ち消すように頭を振ったこの行動は…何か青春の匂いがするような…)
おお、なんと恐ろしいことだろう。
乙女はレイチェルに何か悩みがあるのではないかと、ピンときてしまった。
しかしそれが何なのかは、流石に察せていない。なぜなら彼女との交流は、ほとんどなかったに等しいからだ。
なので(残念ながらこの乙女の体格は非常によく、そのせいで驚かせる確率が高い事を自認しているので)、
ノート作製へ前のめりになっている彼女に、そうっと…出来る限りそっと、声をかけた。
「熱心なのね。とっても嬉しいけれど、まばたきは大丈夫?」
勉強でもドライアイは怖いわよと、乙女はレイチェルへニコッと微笑んだ。
■レイチェル >
一生懸命手を動かしている彼女に、そっとかけられる声。
「……わっ、う?」
気遣いがあったお陰で、そう大きく驚くこともなかった。
故に小さく、ぽつりと驚きの声を漏らすに留まったのである。
裏に走っていた思考が思考だったからか、それが思いの外
変な声だったものだから、少し恥ずかしくなってレイチェルは
先生から視線を逸らした。しかしそれも、僅かばかりの間で。
「……っと、先生か。良い授業だったよ、色々と参考になった」
巨躯の魔女を見上げると、レイチェルはそう口にして口元を緩めて
見せた。
「悪ぃな、まとめてたら遅くなっちまって……すぐ帰るぜ」
気づけば、二人を除けば教室には誰も居なくなっていた。
慌ててノートを閉じれば、筆記用具をしまい始めるレイチェル。