2020/12/31 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」にラピスさんが現れました。
ラピス > 時間が立つのは早いもので、既に年の瀬最後の日。後数時間で新年という頃合い。
皆が各々のんびり過ごしているであろう中、へっぽこ教師は一人、教室棟の屋上にやってきた。
愛用の杖に四次元トランクを引っ掛けて、夜の空に虹の尾を描きながら一飛び。
何をしに来たのかって?――それはもちろん、年越しを祝いに来たのである。
寮の一室で一人でぐうたら、というのも魅力的ではあったけれど、なんだかダメ人間な気がして。
それでこたつを抜け出して、ガスコンロと大鍋を異次元トランクに詰め込んだのがつい先程。
そう、へっぽこ教師の目論見は非常に単純だ。この寒空の下、年越しそばを茹でて食おうというのだ。

「……まぁ、こんな日の屋上に、人が来る方が稀有な気もしますけど」

トランクの中から、サイズを無視した寸胴とガスコンロを引っ張り出す。
寸胴はササッと水で満たして、コンロにぱちこん、と火を付けて。
後はお湯が沸騰するまで待つばかり。屋上の一角から、もわもわと湯気が立っていた。

ラピス > ぐらぐらぐつぐつ。寸胴の中で沸騰しきったお湯の前に立ち、用意するのは蕎麦の包み。
ちょっとばかり奮発して、お高い蕎麦屋から購入したお持ち帰り用の生麺だ。
これを、たっぷりのお湯の中で、滞留に任せて茹でる。蕎麦が切れないように、かき回さないのがコツだ。
それでは早速行ってみよう。打ち粉で白く色付いた蕎麦を、ざらっと寸胴に放り込む。
後は、少しの間待つばかり。今のうちに器の準備もしておこうかと、トランクをゴソゴソ。
取り出したるは、蕎麦のつゆを入れた魔法瓶と保温したどんぶりのセット。
異次元トランクに入れておくと、温度もそのままなのが嬉しい仕様。さてさて。

「――お蕎麦が茹だったら、いよいよ完成ですねー。かもなんばーん」

そばつゆは、昼間の内に手作りしておいた渾身の一作だ。
鰹出汁も返しも自作の好み100%な代物。こいつで一年間頑張った自分を労るのだ。
くぅくぅ。お腹も空いてきた頃合いだし、そろそろどうかなー、なんてそわそわ。
お鍋の番をしている間、頭上のこにゃんこは退屈そうにしていた。
料理中に動物を連れこむなって?何故か、クロの毛は落ちないので大丈夫。多分。

ラピス > さてさて、そろそろ良い時間。お湯の中で踊る蕎麦を平ざるでひょいと掬い上げる。
そのまま寸胴の上で、ちゃっちゃと慣れた手付きで湯切り。三回できっちり落とし切る。
それから、ほこほこと湯気立つ蕎麦をどんぶりの中に放り込み、魔法瓶から汁を注ぐ。
中には具材も入っている。瓶をひっくり返せば一食分が完成する様に計算済みだ。
こうして出来上がった、鴨南蛮そば。最後に別添えの葱とゆず皮を乗せて――。

「……ふふり、寒さと空腹が最高のスパイス。その上で、味だって先生のお墨付き。
 年越しそばは、細く長く、という願いが込められているんでしたっけ?」

異世界の文化は不思議なものだ、などとのんびり考えながら、出来上がった蕎麦を携えてベンチへ。
ちょこんと腰掛けて、いただきまーす、と一人できちんとご挨拶。さぁ、お蕎麦を食べよう。