2022/04/28 のログ
■紅李華 >
「はーい!
んーふんー、さだはる、なんだか慣れてるー?」
手つきがやさしい!
嫌がっててもらんぼーしない、すごくやさしいひと。
「んー、んー――だーめー!
おもーい!
たおれちゃうー」
こてーん。
髪の毛がおもたくて、首がたおれちゃう。
かっくん、とみあげると、さだはるのしぶーいおかお。
とーっても嫌そうな、こわーいかお。
「さだはる、お花きらい?
でも、ごめんね。
この子抜いたら、人家、しんじゃうから。
人家、この子のおかげで、生きられてるから」
さだはるが嫌いなのは、なんとなーくわかる。
きっとこの子だけじゃなくて、この子がいないと生きられない、本人のことも嫌いなのかも。
でも、やだな。
本人は、さだはるとなかよしになりたいのにな。
――見上げる瞳は、申し訳なさそうであって、とても寂しそうでもある。
それはそれとして、背もたれにいっぱいまで凭れかかった李華は、放っておくとひっくり返りそうなバランスだ。
■東山 正治 >
「こう見えて遊ぶときは遊んでたからな」
ちゃんと若いころにはしっかりやんちゃしてた。
その中で学んだ女の扱い方。紳士とは言わないが
女で火遊びすることだってあった。今じゃいい思い出だ。
「重いってなぁ……」
重い。これは予想外。
そこまで貧弱だとは思わないだろ、そりゃ。
流石にこれにはやや呆れ顔だ。
やれやれ、と肩を竦めれば見上げる瞳に苦笑を浮かべた。
「別に。そいつも嫌いだけどおたくも嫌いだよ」
勿論それも嫌いだがそうじゃない。
須らく、異能者もまた異端。嫌悪の対象だ。
相手がどうとか、向こうがどう思っているなんて知ったことじゃない。
唾棄すべき異端をは致して何が悪いのか。
人間の世界に土足で踏み込んだ"ソレ"に、好感を抱けなんて土台無理な話だ。
「気にするんなよ。俺、大体の奴は嫌いだからそういう意味じゃ平等だから。
……つーか、束ねただけで重いってな。少しバランスとるか、背中向けよ」
へらへらと笑う口元は澱んだ悪意に歪んでいる。
異能が、異端が"普通"だなんて、思えるはずもない。
唯一の救いは、それはそれという割り切りができる事。
彼は"律"には忠実なのだ。自らの感情の優先所をわきまえている。
■紅李華 >
「むー、人家はさだはるのこと好きだよ?」
でもきっと、さだはるにはかんけーない。
こーやって、お話ししてくれるだけ、きっとなかよししてくれてるんだと思う。
「んーんー、気にしないよ。
えとねー、こっちと、こっちにわけてー。
ひとつにするとおもたいの!」
首がいたくなっちゃう。
「――いのう、なければよかったのにね」
そしたらきっと、本人も、哥哥も、もうすこしふつーに生きられたのかな。
さだはるも、こんなにたくさん、嫌いにならなくてもよかったのかな。
仮定、いみないけど、考えちゃう。
――再び東山に背中を向けて、頭の左右で髪を握って見せる。
伸び放題の身長よりも長い髪は、一つにまとめてしまうとバランスが取れないのだった。
■東山 正治 >
「そりゃどうも」
そう、関係ない。
相手がどう思ってくれるなんてどうでもいい。
未来永劫、この飄々とした悪意は埋めようがないと。
「失敗しても文句言うなよ……?」
とはいえ、そんな女のおしゃれに強い訳じゃない。
とりあえず応用で縛ってみれば行けるだろうか。
一旦ヘアゴムを取り外し、再びフリーになる髪。
本当に伸びっぱなしだ。それから枝のように。
「李華ちゃんさぁ、いい加減切りなよ。その内踏んでこけるよ?」
そもそも根本的に邪魔なら切っておくべきだと思うというか、そのほうが相手の場合手間がない気もする。
おしゃれ?知ったことかよ。とりあえず今度は軽めに櫛で解き
均等になるように髪を束ねて右と左。左右にきゅっとヘアゴムで止めた。
バランスは……まぁ、ぱっとみ悪くないように見える。
さじ加減だ、細かいことなんて知らない。
「これでいいかい?」
とりあえず手を離した。満足か、と。
そうして話題をそらして、敢えて答えはしなかった。
"それ"を答えてしまったら、歯止めが利かない。
きっと自分が自分でなくなる。"今更"だってさ。
だから東山は何も答えない。理性の悪意が押しとどめる、お互いのためだ、と。
■紅李華 >
「やだー、きらないー」
たくさん、きりなさいーって言われるけど。
きったらなくなっちゃうから、きりたくない。
それにまだやくそく、叶ってないもん。
さだはるが、ふたつにしてくれた。
うん、首も痛くない!
「んっ、謝謝――んん、ありがとーさだはる!」
くるん。
後ろをむいて、えがお!
「ねーさだはる!
またね、たまにでいーから、結んでほしい!
――だめ?」
だめって言われるの、わかる。
でも。
やっぱり、拜拜よりも再见のほうがいいから。
■東山 正治 >
「おいおい、本当にガキじゃないんだからさぁ……」
まったくもって子供っぽい。
とはいえ、そこまでして切りたくないのであれば何かこだわりがあるらしい。
そうであるなら強く言っても無駄だと思うが……。
「(科学者って奴は、皆こんなんなのかねぇ……)」
癖が強いというか、アクが強いというか。
まったく、嫌なことをちょっと思い出してしまった。
どうにもこういうのには縁があるというのか。いやな話だ。
やれやれと思っている矢先、まさかのおねだり。
これには思わず苦笑せざるを得なかった。
「イヤだね、シャルちゃんにでもしてもらいな」
わかりきった答えだ。
誰が好き好んで化け物の肌なんて触るものかよ。
ひらひらと手を振って拒絶の意思を示せばくるりと踵を返した。
目的のものは既に手に入れたし十分だ。
たとえ女であっても鳥肌が立つのでノーサンキューだ。
「ま、気が向いたらしてやるよ」
懐に収めておいたジッポライターを弄びながら
魑魅魍魎の巣を後にした。
■紅李華 >
「那倒是――」
やっぱりだめだった。
それは、そう。
嫌いなひとに、さわりたくなんて――
「――真的吗!?」
びっくりした!
じょーだんでも言ってくれない。
そー思ってた。
「嘻嘻――さだはる、だいすき!」
さだはるは本人を見てくれない。
でも、やっぱりさだはるはいいひとだった!
「――再见、さだはる!」
おっきい背中。
いっぱい手をふって、お見おくり。
――それから、李華は授業の準備をする。
李華の東山への態度に、周囲は驚きを隠そうともしていなかったが、李華は一つも気にしない。
この日一日、李華は東山に結んでもらった髪を嬉しそうに弄びながら、鼻歌を鳴らして過ごすのだった。
ご案内:「第一教室棟 職員室」から東山 正治さんが去りました。
ご案内:「第一教室棟 職員室」から紅李華さんが去りました。