2022/07/30 のログ
■紅李華 >
「そーなのっ!?
太好了! さだはるは甘いのすきじゃない、覚えた!
嗯、りょーやくくちににがし?
さだはるの身体にひつよーそうなの、合わせたの」
これでもお医者さんだもん。
さだはる、あんまりけんこーじゃなさそうだし。
「嗯、すこし?
これ、人家がやった!」
ぽんぽん。
ずーっと手を挙げてたからつかれちゃったけど。
「――ンーッ!
很好吃!
哥哥のおべんと、おいしーよ!」
けーきはせれねのほーがおいしーけど。
りょーりは哥哥がやっぱりおいしー!
――嫌悪に皮肉を向けられても、どこ吹く風。
好き嫌いの一つが知れたら、それを無邪気に喜ぶありさま。
その上、普段の様子から生薬の調合も即席で、東山教諭に合わせたという。
髪の事を訊かれれば、自分で結んだと、巨大な団子を両手で自慢げに叩いた。
兄が作ったという弁当を食べて、本当に美味しそうにはしゃいで、全身の身振りで美味しさを表現していた。
■東山 正治 >
「覚えてどうすんだ。通い妻でも何でもねーんだろから覚えても仕方ねーだろ?」
今回だってたまたま気が乗った程度だ。
次があるなんて期待されても困る。
ハァ、と漏れたため息にその気持ちは籠っていた。
東山は勿論健康体とは言い難い。
公私で言えば公の割合が多く
特に教員と公安の二足わらじは睡眠不足の原因だ。
おまけにタバコ、とてもじゃないが健康になる気兼ねは微塵も感じられない。
「ふぅん。あ、そ。自分の身の世話位自分で出来るようになりな。
誰も彼もが世話してくれるワケじゃねェし、女ならヘンなのにかこつけられても知らないよ」
「オタクは少し、人を疑う事を覚えなよ。
この世に善意100%なんてのはねェ。バカが下心ありきだ」
「俺みたいにね?」
美人かどうかはこの際どうでもいい。
案外"異性だから"なんて面倒事は起きる。
特に"コレ"は警戒心が薄すぎる。諫めておかなければ後で面倒だ。
くつくつと喉を鳴らしながら笑いつつ、炒飯に舌鼓。
不味くはないし、寧ろ美味いが三口目以降からペースが落ちるのは歳のせいか。
■紅李華 >
「さだはるの事、知れたからうれしーの!
へん、かなー?」
なかよくなりたいから、なんでもしれたらうれしーもん。
「――好、好、好っ!
えへー、しんぱい、してくれるのー?」
きっと、言っとかないとめんどー、とかそういうの。
でも、いってもらえるだけでも、うれしーの、さだはるはわかるのかなー?
「じゃー、さだはるはー。
あくいなんぱーせんと?
やっぱり、人家のこときらいだから、ひゃくぱーせんと?」
あ、いまちょっとおいしそーなかおした!
んふー、やっぱり哥哥におねがいしてよかった!
「阿、はい。
とちゅーでのむと、ちょーどいいよー」
おちゃ!
おいしくはないけど、おなかがつかれたり、もたれたりするの、ふせげるのだー。
――箸が重くなったころに、お茶を勧める。
独特の苦みがあるが、味が濃く油の多い中華料理には、ちょうどよく箸休めになるだろう。
■東山 正治 >
「…………」
軽く目を閉じ、失笑のような吐息が漏れた。
思わず背もたれに思い切りのけぞり、首を振った。
「……いーや?おかしくはない。
よっぽど悪い事じゃなければ、ね」
良し悪しはあれど、未知こそ恐怖とはよく言う。
逆に言えば知る事こそ安心感を得るためのものだ。
それを"違う"と否定できる人間がどこにいるのか。
東山は紅 李華の事が嫌いだ。
彼女に限らず、この世を肯定する異能者が
のうのうと申し訳なさもなく闊歩する異邦者が嫌いだ。
だが、"それはそれ"。"これはこれ"。
人間的な好き嫌いがあるからと言って、道徳的なものまで否定しない。
それ以外は教師としても、元弁護士としても公平性は持つが故に"人間"であった。
「心配?冗談。李華ちゃんがメンドー起きると、尻ぬぐいがイヤなの」
「俺は、死んでもお前を助けたくないワケ。
だから精々健康的に生きてもらわないとな」
彼が教師であり、人間でいようと思うからこその言葉だ。
東山自身は、『この世界』にとって"害悪"である自覚はある。
それを隠すこともせず、ひけらかす悪意がせめてもの抵抗だ。
その中で教師であり続ける、有体に言ってしまえば一線を越えない。
それもまた、『東山正治』という人間の全てではあるのだ。
半身を起こせば肩を竦めつつ、お茶を口に含んだ。
「……へェ」
確かに心なしか、胃が軽い。
口の油が洗い流された気分だ。
「悪くない」
そのまま箸を進めればあっという間になくなってしまった。
案外食えるものだな、と我ながら思ってしまった。
「……ご馳走様」
両手を合わせ、感謝の意思は忘れない。
■紅李華 >
「――对」
そっか。
さだはるのことばから、いっぱい、嫌いが聞こえてくる。
けど、ふしぎ。
それが「こわくない」し、「いやじゃない」。
「对对!
けんこーにいきるよ!
だって、おいしゃさんだもーん」
えっへん。
あ、でもおさとーへらさないとダメっていわれたよーな――いっかー!
没事儿! 没事儿!
「阿ー!
さだはる、たべるのはやいー!」
もー、それにすぐかえろうとする!
さだはるに「ぷれぜんと」あるのに。
「――等等!
あのね、これ!
さだはるにちょーざいしたの。
さだはる『しんでも人家にたすけられたくない』でしょー?
だから、『せーぜーけんこーてきに生きて』ね!」
――自分よりも早く食べ終え、さっさと席を立とうとする東山教諭に、慌てて、少し大きめの薬袋を自分の机から持ってくる。
中には、東山教諭の健康状態に合わせて調剤された、一月分ほどの漢方薬が包まれている。
飲めば、暑さバテしづらく、疲れが取れやすくなるだろう。
東山教諭の、短い睡眠時間でもだ。
とはいえ――受け取ってもらえるかは微妙なところだろうが
■東山 正治 >
「はいはい……」
それこそあしらうような態度だった。
何時もと変わらないヘラヘラとした態度のまま席を立ちあがる。
急いだつもりはないが食べるのは早い方。
食事以外に時間を割きたい性分だ。
「…………」
そして、机に置かれた薬袋にはそれこそ妙薬を口にした苦い顔をした。
「悪いけどいらないね。俺は長生きする気ないの。
ま、俺以外の健康オタクにでもあげたら?それじゃ」
まさしく"余計なお世話"だ。
好きで不健康でいる人間なんだ、こっちは。
自分の体の事はよく知っている。
薬袋を一瞥して、振り返ることなく手で別れの挨拶して部屋を出た。
残された薬袋はまるで、"隔り"のように残ったままだっただろう。
ご案内:「第一教室棟 保健室」から東山 正治さんが去りました。
■紅李華 >
「――对」
うん、そうだろーなってわかってた。
でも、それでもやりたかった。
「拜拜、さだはる!
――再见!」
さっさと出ていっちゃうさだはる。
でも、つめたい、とか、こわい、とか。
そういうふーには、やっぱり感じない。
「いーもん。
じゃー、人家がさだはるが長生きするよーにしちゃうもん」
笑嘻嘻。
こんどは、どーやってお薬のんでもらおーかな?
――残された李華は、その薬袋に『隔たり』を感じた様子なんてなく。
楽しそうに薬袋を抱いて、大好きな兄のお弁当を、幸せそうに食べるのだった。
ご案内:「第一教室棟 保健室」から紅李華さんが去りました。