2022/10/25 のログ
ご案内:「第一教室棟 屋上」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 黒猫は一匹、人気のない屋上のベンチの上でのんびりと寝そべっている。
吹きすさぶ風はひんやりと、秋の香りを運ぶ頃合いの、
気温の変化を体感できるものであっても、この猫のやることなすことは変わらない。

「…………くぁぁ……」

大きく、人の言葉で欠伸を一つ。
他人の目など気にしない。
巷では何やら季節のイベントだか、それに乗じた怪異沙汰への対策とか、
或いはそれとも異なる喧騒であるとか、聊か平穏と離れた事態となっている。
だが、この黒猫にはどこ吹く風と、冷たいそれにふるりと体を震わせた。

自分の周りはここまで静かなのだから、
わざわざいらぬ顔を挟むまでもないだろう、と。
人の争いは人が解決すればいい……今の見た目はともかく、
怪異とも呼ばれようこの存在はそんなことを考えながら、ごろりと体を丸めよう。

「腹ぁ出して寝てると、流石に冷えるなぁ。
 やー……どんどん寒くならぁな。冬毛も考えなくっちゃあなぁ……」

アーテル > 「……………腹ぁ減ったな」

のんべんだらり、一日寝ても腹は減るし喉は乾く。
とはいえこの格好で食事をたかれるのは精々商店街くらいで、
ここでそんなことをすれば怪しまれるし、最悪討伐対象認定だ。
あくまでお邪魔している身分のようなもので、
この場では借りた猫の如く静かにしているのが相応しい。

「……自販機あったよなぁ、えーっとぉ……」

身体を伸ばす。
ぐーっと背筋を反らして、前足をたしたし動かして。
ぴょんと軽い足取りで、ベンチの上から飛び降りた。
そのまま右見て左見て、目当ての自販機を探し始める。
暖かい飲み物でも飲んで、紛らわせようという算段だ。

ご案内:「第一教室棟 屋上」にアーテルさんが現れました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にアーテルさんが現れました。
ご案内:「第一教室棟 屋上」にアーテルさんが現れました。
アーテル > 「おおぉ、あったあった……」

猫の姿でとてとて近づいて、
さてあったかい飲み物でも買おうかと……

「…………。
 いやぁ~……どうやって買うんだぁ?こりゃ……」

そう。
猫の姿では到底、ボタンを押すことはできようとも、
お金を投入することはとても難しい。
ついでに言えば、この姿では投入する金も持ち合わせていない。

「…………あー……、えーっとぉ……」

さて、どうしたものか。
猫の姿では困ることが、目の前にそびえたってしまった。
黙って考え込むのも難しいので、自販機の前をぐるぐる回って企みを練っている。

アーテル > 「………いいや。
 まぁ、誰も見てねぇだろ」

暫くぐるぐる回っていたけど、諦める。
一息ついて、念じるように目を瞑った。

黒い靄が、黒猫の中からにじみ出て、その体を包み込む。
全身を纏うそれが、人の大きさまで伸びて形作ると、ざぁと晴れた。

そこに、猫の姿はなく。

アーテル > 「こうすりゃあよかったんだなぁ」

現れたのは、赤髪の人間。
見慣れない和装を纏う、蒼目の男だ。

「ええっとぉ、財布はこの辺に………」

懐を探ると、がま口財布を取り出した。
口を開くと、小銭をいくらか抜き取って。

「やー、残りが心許ねぇなぁ。
 この姿でのその日暮らしってのも、
 なかなかスリリングなんだよなぁ」

猫の姿だから半ば住所不定でいられるけれど、
人の姿ならこうはいくまい。
ひとまず自販機に小銭を突っ込んで、暖かいおしるこをご購入。

「猫の姿なら、これだけで結構大きいがー……
 あっつ…!!」

猫なら苦労しただろうプルタブも、人の手ならなんのその。
容易に開けて、一口。あったかいを通り越して熱かったようだ。

アーテル > 「……ふぃー。いやー暖けぇもんはいいなぁ。
 しっかし、もう冬も近いってわけかい……」

暖かい飲み物が欲しくなるくらいに、
気温の低下は感じられる。
環境変化程度で斃れるような脆さはないが、
できれば過ごしやすい場所にいたいのは、どんな姿でも変わらない。

「今年の冬はどうやって過ごすかねぇ……
 それもよぉ~く、考えなくっちゃあいけねぇなぁ」

などと言いながら、飲み干した後の空き缶をゴミ箱に入れると、
今後の実の振る舞い方を考えながら、屋上から去っていった。

ご案内:「第一教室棟 屋上」からアーテルさんが去りました。