2019/02/14 のログ
ご案内:「廊下」にセシルさんが現れました。
■セシル > 午後。
大教室形式の講義が入る時間は概ね終わる頃、セシルは今日も試験対策のために図書館に向かおうとしていたが…
『あの…すみません…!』
鈴の鳴るような、女子学生の声がかかった。
「ん?」
律儀に立ち止まり、振り向くセシル。
■セシル > 『あの…これ、受け取って下さい…!』
差し出されるのは、可愛らしいラッピングの袋。
日付が日付だ、中身は一般の想像の範囲から外れることはないだろう。
「…念のため確認するが、私の性別と…私が「そういった関係」を望まないことは知っているな?」
地声で、出来るだけ柔らかいトーンで語りかける。これならば、少なくとも「性別」の方は分かりやすい。
『………はい、大丈夫です…分かって、ます………』
切羽詰まった顔で頷く女子。なかなかに、残酷な光景だ。
■セシル > 「………分かっていて、それでも私に?」
穏やかな口調で、再度確認をする。威圧的にならないよう、自分より頭一つ分近く小柄な少女に、視線を合わせて。
『………その、委員会街ラウンジでの横顔が、とても素敵で…憧れてて………』
どうやら、別の委員会関係者であったらしい。さっきの問いに頷いたあたり、風紀委員会内の義理チョコ配りに「女性側」で参加していることも知っているかもしれない。
「…そこまで強く想われてしまうと、いっそ申し訳ないな…。
私は応えられないけれど…そうしてまっすぐに想える心は、大切にしてほしい。暴走さえしなければ、美しいものだと思うから」
少しだけ苦味を含んだ表情で、少女に笑いかけた。
■セシル > 『………!』
高さの合う視線。憂いを含んだ笑み。そして、柔らかく距離を置く言葉。
それらに対する感想が心の中でぐちゃぐちゃに入り混じってか、女子生徒は包みをまっすぐセシルに押し付けて、そのまま駆け去って行く。
「………あ、コカトリスの雛の件を警告するのを忘れてしまったな…」
受け取った包みを見ながら頭を掻く。
まあ、声を張って無理に警告するのも、彼女の傷に塩を擦り付けるようなものではあるだろう。
■セシル > (…しかし、あれほどの熱意で直に持って来る者がまだいるとは…)
セシルも情報端末の類は所持しているが、最低限の連絡にしか使わない。SNSも、個人連絡の用途しか果たしていない。
コカトリスの雛の件の話も、委員会経由で回ってきたのだ。
だから、ネットワーク内で自分のことがどのように話されているのかもセシルは知らない。いや、意図的に知ろうとしていない。
変に意識するよりは、自分にできる最善の誠意を尽くす方が良いと思うためだ。
■セシル > (直接話したし、彼女には謝罪の手紙はいらないだろうが…礼くらいは、伝えられるだろうか)
セシルのそのあり方が、一方で「被害者」をさらに増やしてしまったりもするのだろう。
それでも、本人にはあり方を曲げる気はないらしい。
飲食禁止の図書館に向かうことを考え、もらった包みを鞄に納める。出来るだけ、優しい手つきで。
それから図書館に向かうまでに、更に何度か女子学生の突撃を受けることになったのは、また別の話である。
ご案内:「廊下」からセシルさんが去りました。