2020/06/09 のログ
ご案内:「教室」に小鳥遊 日和さんが現れました。
小鳥遊 日和 > (極めて生徒が少ない教室…中央にある教壇に立つのは、白いチャイナ服姿である。
 まばら、というにもさらにたりなさそうな生徒を見るその人は、周知に頬を染めながらも
 生徒たちに声をかけた。)

あの…先生が中国から帰ってきた記念の衣装リクエストだからこうなったんだろうけど、
先生にも羞恥心ってのがあるってこと、わかってくださいね…?
(深いスリットからあらわになる太ももが恥ずかしいのか、そわそわと手を動かしつつ、
 生徒たちに訴えかける。 その声や体つきには男らしさはほとんど…あまり見られないが、
 これでもれっきとした男性教諭だ。 気を取り直して、と小さく咳払いをしてから、
 改めて生徒たちに向き直る。)

先生、本草学の話をしますね。本草…すなわち、【薬の大本となる草】を指しています。
草とは言いますけれど、草や鉱物も含めた薬学というのが正しいでしょう。
古代中国にて生まれた本草学は、平安時代に日本に渡って、連綿と受け継がれてきたそうです。
まあ、近代になってからこの学問は廃れてしまったわけなんですけれど…。
ここ最近、異世界の存在が我々と関わるようになってから、再び本草学は見直されるようになったというわけです。

理由はもちろん、異世界の植物や鉱物を手に入れられるようになったからです!
これ、すごいことなんですよ! 言うなれば突如として未知の原野がバーンって現れたわけですから!
(話しているうちにテンションが上がってきて、眼を輝かせながら、興奮した様子で生徒たちに語りかける。
 生徒たちの眼はどこか穏やかだけれど、それを気にしている場合ではなかった。)

小鳥遊 日和 > …というわけで、中世ヨーロッパにおいて魔女術の形をとって薬草学は形を成したんです。
で、それが近代においてウィッチクラフトとして姿を変えたということですね。
そういう意味では、先生も魔女といっていいかもしれません。 …何の話でしたっけ?

(本草学がどれだけ可能性があるか、そして自分の専門である蘚苔学がどれだけ本草学に重要か、
 それにまつわる様々な内容を時間いっぱいになるまで話すだけ話した後、満足げに額の汗を拭う。
 熱弁を奮ったせいか、なにか言いたいこととだいぶ脱線してしまった気がするが、とても幸せだった。)

ふー…! 今日の授業はこれくらいです。 蘚苔学の授業、ものすごくつまらないかもしれませんけど…。
先生、せいいっぱい説明するので、皆さんもまた受講してくださいね!
(すごく嬉しそうな笑顔で生徒たちに向けて呼びかける。 最後の生徒が引き上げるのを見送ってから、
 自分も教室を引き上げるのでした。)

ご案内:「教室」から小鳥遊 日和さんが去りました。
ご案内:「食堂」に水無月 斬鬼丸さんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 今日は久しぶりに午後の授業も出る気になったので
昼食を学食で済ますことになった。
学食と言うにはあまりにバリエーション豊富なメニュー。
食券販売機がずらーーーっと立ち並ぶ食堂入口。
だが、正直…
変な冒険して食事で失敗したくない。
そこらにぽつんとたっている創作料理の店よりも、身近なチェーン店。
見たこともない料理よりも見慣れた料理。
そもそも学生という立場上、そんなに懐が暖かいわけじゃない。

「………(うどんでいいかなぁ…)」

素うどん…よりはもうすこしなにか…
少しばかり悩む。券売機の前で。
後ろに人は、運よくいないし。

水無月 斬鬼丸 > やはり僕は…王道を行く…きつね?
いや、ここは少しだけ奮発して天ぷら?
いやいや、男子だし。肉うどんだろ、肉うどん。
いやいやいや、鴨塩うどん…淡々うどん……

「……(うどんってだけでなんでこんなにバリエーションが…)」


前来たときこんなにうどんあったっけ…
ぽちぽちぽち

水無月 斬鬼丸 > うどんという、ややボリュームに劣るものに対して…
やはりここは油もの。
そして、上質なタンパク質。
ついでにおいしいやつ。
かと言って単純ではないもの。答えは決まった。

鴨塩うどん

お前に決めたーー!!
ボタンポチーーー!!

カタンと一枚の食券が券売機から吐き出され、それを手に取れば足取りも軽く
それを提示して受け取り口へと進む。
オプションはないからすぐに出てくるだろう。

ご案内:「食堂」にシュルヴェステルさんが現れました。
水無月 斬鬼丸 > 学食のいいところは、それほど待つ必要がないことだ。
さっと頼めばさっとでてくる。
トレイにのっけたどんぶりに、ややチープ感あるうどん。
その上には塩ダレを絡めた鴨肉。
あっさり塩スープであるため、スープも透き通っている。
ボリューム的にはやや物足りない。
だが、午後の授業を乗り切るには十分。
さて、席でも探すか…

シュルヴェステル > 受け取り口へと歩んだ男子生徒の後ろで、何やら大声を上げている生徒がいる。
男子生徒――すなわち、水無月を指差しながら。
背を向け、既に席を探している彼のことを真正面から指をさして。

「なぜ奴は支払いもせずに食事が出てくるのに私には出てこないんだ?
 ……一体、いや、あいつもキョータローと同じなのか?
 働かざる者食うべからずという、そういう話なのか? なあ、どうなってるんだ」

学食の受け取り口では、忙しそうに配膳が行われており。
「食券買ってねー」という声は青年には届かない。
キャップを被って、その上からパーカーのフードを被った二重の防御の前に、その声は届くことはない。

「どうやればその剣とやらを見せられる? 誰に見せればいい?
 “燭剣”が必要ならいくらでも見せると言っている」

慣れた様子の生徒に、邪魔だからこっちに、と列から追い出される。
目の前で鴨塩うどんを手にする男子学生を恨めしそうに視線だけが追いかける。

水無月 斬鬼丸 > 席は結構埋まっている。
やはり気軽にそれなりの食事が提供される学食は
学生や職員の人気スポット。
というか、サボって外に食べに行くほうが少数派なのだからそれは当然。
屋外の席になんか空いてるとこあったかな。
季節的に人が減りそうな時期ではあるが………

「………」

なんか睨まれてる?
というか、見られてる?
白髪の…こんな時期にクソ暑そうな格好している男。
俺なんかしたっけ…?
なんで見られているのだろうか?いちおう、面識はない。はず。

シュルヴェステル > 視線が合う。
根暗そうな前髪の下から覗く赤い瞳が水無月を捉え。
確実に目が合ったことを確認すれば、受け取り口から踵を返す。
そして、水無月の想像通り、面識のない初対面の男が目の前までやってくる。

「どうやって手に入れた? あいつらもなぜだ。
 特別なにかしなければいけないことがあるのか? 限定品というやつか?」

主語の消え去った質問が乱暴に男子学生へと向けられる。
列に並んでいた女子学生たちは「よかった」と言わんばかりの表情で水無月を見る。

「その鴨塩うどんとやら、何ぞの戦果か?」

食堂は食べ物が出る場所のはずなのだが、と付け足してから、水無月の手元のうどんに視線が落ちた。

水無月 斬鬼丸 > 立ち止まってしまった。
そして、目があってしまった。
直感的になんかわかった。やばい。
その場をさっさとさろうとターン…する前に、男がずんずんと迫ってくる

「え、え、え、えぇぇぇ…」

なんで?なんでこっちくるんだ?
こんなところでカツアゲか?
校内で白昼堂々とかどうなってんだ。
もしもし、風紀メン?誰か助けて。
っていうか、他の生徒のまるでシッポを切り捨てたトカゲのような視線。
ひどい。

「は?え?期間限定ではある…けど…」

そう、この鴨塩うどん。期間限定メニューだ。しかし、聞いているのはそういうことじゃないんだろう。

「な、なにか…?え?なにが?これは、その買ったもの…で…」

どういうことなのだろう?なにをいっているのだろう?
どうすればいいのだろう…わからない。

シュルヴェステル > 「つまり今しか食べられないということだな」

風紀メンも暇じゃない。
それにまだ、まだ未遂だ。まだ何もやっていない。
そもそも何かをやるのかやらないのかという話だったのかも定かではない。
決定的な瞬間をつかめばおそらく委員会の生徒が出てくるかもしれないが。
やはり、まだ未遂なのだ。

「……一つ問わせていただく。
 その限定メニューを買うには条件があるのか?
 前期のテストで優秀な生徒であったり、異能に長けた生徒であったり……。
 そのショッケンとやらを買う条件を、教えてもらいたい」

真面目な表情で、鼻を小さく鳴らす。
香る仄かな塩ダレの香りとインパクトの強いカレーやら何やらの香りが混じり合うが。
おそらく、青年が求めている香りは目の前のトレイから発せられている。

「いいや、教えてはもらえないだろうか。礼ならする。
 私にできることであればなんだってやろう。……いかがか」

真面目な表情を浮かべて、白昼堂々頭を下げる。
腰を折って。……未遂ではなくなったが、しょっぴかれる理由も失われる。
ただ、衆人の視線が鴨塩うどんに注がれている。

水無月 斬鬼丸 > 風紀メンもいない。
なんか強面の男に間合いを詰められ、なんかよくわからないことを問い詰められている。
俺はただ昼飯を食いに来ただけなのに…どうしてこうなっているんだ。
未遂、そう、未遂なのだが…
それはそれで当事者的には怖いのだ!!

そして、目の前の男は更によくわからない質問を投げてくる。

「…条件…?いやいやいや、そんなもんないっす。
ない、はず?」

そんな条件あったら、別に優秀でもなんでもない自分はこれを食する権利など一生手に入れることはないだろう。
そんな自分の手の中、トレイの上、そこにこのうどんがあることが
万人にこのうどんを食べる権利が与えられているという証拠。
無意識的に条件を満たしていたりしたのかもしれないが
そんな、ゲームの隠し要素じゃないんだから……

そう、ないはず、ないはずなので答えようがないのだが…
強面の男が深々と頭を下げる。…なぜだ…

「ど、どういうこと…かよくわかんないですけど…
あの、あれ…お金、たりてました?」

シュルヴェステル > 「条件が、ない。
 ……つまり、門前払いを食らう生徒は他にいない、と」

きつい印象の強い瞳が細められる。
野生動物じみた視線がちらりと受け取り口に注がれて、すぐにまたこちらへ視線が戻る。
いったりきたりを繰り返しながら、食堂のど真ん中で棒立ちは続ける。
どう見ても恐喝かそれに類するなにかの現場であるが、未遂だ。

「金ならある。この通りに」

この島に流れ着き、渡された分の貨幣は常に持ち歩いている。
それを渡そうとしても「あっちで~」と忙しそうに断られた、と青年は言う。
うどんはスープに浸されているまま。ゲームであれば時間切れ表示が始まってもおかしくない。
が、男はそれを気にすることなく再び頭を下げる。

「……う、売ってはもらえないだろうか。
 いくらでも構わない。手元にある分からなら支払える。
 あそこに並んでも買わせてもらえなかった。……食事前にすまない」

「言い値で買おう」

行われていたのは、恐喝でもカツアゲでもなく。
青年は受け取り口を指差して、「何度並んでも断られた」「剣とはなんだ」と繰り返し。
行われていたのは、どうにも情けない交渉だった。

水無月 斬鬼丸 > 他の生徒は普通に学食を利用している。
カレーとか、うどんとか、カオマンガイとか。
それを受け取ってはみな席に付き、食事を始めている。
そして…自分はまだ食事を始めることができずにいた。

目の前の男がなにをもとめているのか。
ゴクリとつばを飲み込む。正直逃げたい。

「え…お金があるなら…」

なんで買えないのか。
このうどんを買うには十分の代金を持っているように見える。
頭を下げる男がなにを言いたいのか…続いた言葉…そこに答えはあった。

「あ、ああ…その、えーっとですね…
食券…えーと…交換用のチケットをあの機械で買うんですけど…」

なんか逆にこっちがカツアゲしてるみたいになってるじゃないか。
いま風紀メンが来たら、しょっぴかれるのは自分なのではないか?

シュルヴェステル > そのうどんの最高のパフォーマンスはいまも逃されている。
1秒ずつ、本来あったはずの輝きは失われていく。恐らく先がピークタイム。
つまり、ここから先は緩やかな下降の一途を辿る。

さてどうなるか、とうどんが静かにレースを始める直前で声が掛かる。
自分のおよそ15センチほど下から。

「交換用チケット」

そっくりそのまま復唱してから、瞬きを数度繰り返す。
そして、眉根を思い切り寄せてから訝しげな表情を浮かべて、小首を傾げる。

「……カフェとは、違う仕組みで動いているのか。学食は。
 そういうのも、あると。……すまない、有り難う。礼を言う」

くるりと何事もなかったかのように踵を返してから、説明書きを読みながら券を買う。
ようやくたどり着いたその小さなチケットに感慨深そうな表情を浮かべながら列に加わった。

水無月 斬鬼丸 > 男はこちらの説明を聞くと、その言葉を復唱する。
それはいい、それはいいけど、早く。早くしてくれ。
ゆっくり言うな。
そう、これは、うどん。うどんなのだ!
しかも学食の。
これ以上はやばい、やばいのだ。

「そう、そういうことっす!!いや、お礼とか結構ですんで!
えっと、もういいっすか?いいっすよね?」

嬉々として食券を買いに行く男。
そして、嬉々として列に並ぶ男。
うまくいったようだ。
ならばもう、これ以上…絡まれることはきっとないだろう。
席を探さねば…。食わなければ…すでにピークタイムは過ぎているだろうが…まだましな方だ。

シュルヴェステル > そのやばさは未だうどんを知らぬ男には伝わらない。
うどんが汁を吸い、うどんが伸び、うどんが本来のパフォーマンスを発揮しないことも知らない。
故にこの悠長かつ贅沢な時間の使い方であり、平然とした立ち振舞い。
恐らく、青年がこの真実にたどり着いたときには平謝りが繰り返されるだろう。
だが……今は、知らぬのだ。

「ああ、そうだ。そう。鴨塩うどんを、一つだ」

焦る男とは対照的に、自信満々に頷く。
受け取り口で(もう既に注文が通っているというのに)注文を繰り返す。
そして、口元を緩めてから「とびきりいいやつを頼む」と視線を向ける。
特に誰にも反応されない。しれっと無視される。いいも悪いもない。

そして、男子学生と同じ鴨塩うどん(高パフォーマンス)を手にして。
わずかに目元を拭ってから、やはり席問題は同時にたどり着くらしく。
先程空いた2人掛けの席を目ざとく見つけては早足でそちらへと向かう。

「……また会ったな。先達、改めて感謝する。有り難う。
 して、座らんのか? 二席丁度空いている。そちらは貴殿、こちらが私だ」

椅子を示してから堂々と頷いて、温かいうどんを手に青年が水無月より先に席につく。
周囲から、水無月へと心底気の毒そうな視線が注がれた。

水無月 斬鬼丸 > 「………」

えぇぇ…という表情。
すでにパフォーマンス…その性能はD-といったところ。
Fラン一歩手前の鴨塩うどんを持ったまま立ち尽くす。

自分より後に注文した男が、自分よりのびてないうどんを手に
自分より早く席について、自分より先にくおうとしている。
席を譲ってくれているのはありがたいが、ありがたいのだが。

「あ、はい…失礼します…」

やや元気無く促された席に腰掛け
早々にうどんに手を付ける。これは無礼でもなんでもない。
これ以上パフォーマンスが落ちてしまえば、これは鴨塩うどんではなくなってしまう。
鴨塩うどんだったものになってしまうのだ。

ずぞぞ~っと音を立てすするそれは…

クッソのびてる。

シュルヴェステル > 「いただきます」

箸を割る。乾いた音が鳴って、完璧なまでに二等分される箸。
二度とこの箸と箸は出会うことはない。永久の別れが軽やかに行われる。
その先で、ずぞぞ……と啜られるうどんを見ながら「なるほど」と短く呟き。

「もうメニューが入れ替わる前だったそうだ。運が良かった」

ズズズズズーーーーーーッ!!!!
勢いよく、ステレオタイプなほどに「らしく」うどんを啜る。
そして、暫く無言でうどんを啜る音だけが水無月の対面からは聞こえる。
今も鴨塩うどんであるそれを咀嚼しながら、一段落してようやっと顔を上げる。

「……うまいな。これは。こんなに美味い食べ物があるのか。
 これがこの低価格で振る舞われる上、なおかつ学生の身分でも食べることが許される。
 この鼻を抜ける香りがたまらないな。肉もほどよく転がせる。
 して、このうどんという粉を練った細長い食べ物。誰が考えたのだろうな。
 きっとさぞ高名な料理人であることだろう。なあ。うまいな……」

貴殿、と続けようとして一度止まる。

「突然すまない。シュルヴェステルという。異界の出だ。
 名も知らぬ相手にここまでしてくれるとは。……親切な男だな」

親切を半ば(おおよそ10割強)強要した男が、ようやく「突然」を詫び。
やや表情を和らげてから、水無月の顔を正面から見た。

水無月 斬鬼丸 > 「そっすね」

運が良かったという男の言葉にそっけなく応える。
これみよがしに、美味そうに
フルポテンシャルを発揮しているうどんを目の前ですすられているのだからそれも当然。
くたくたに伸びた自分のかわいそうなうどんにくらべれば…
あのフレッシュさよ。
ずぞぞぞぞぞ…

「そっすね」

学食の鴨塩うどんに対しては大げさとも言える食レポ。
この人はなんなんだろう。どっかの国の王子とかそう言うやつなのだろうか?
もしくはあれだ。異世界人。
肉はいいよ。伸びないから偉いよ。
肉をもぐもぐと咀嚼し、スープもすする。
まぁ、量はそれほどではないのだからすぐになくなってしまうだろう。
俺も出来ることなら、もっと美味い状態で食いたかったなとは思うのだが。

などと思っていると、目の前の男が名乗った。
思ったとおり異世界人。それで…

「あ、いえ…ちょっと要領を得なかったけど…まぁ、なんつーか…
あー…えっと、水無月っす」

親切というわけではない。もちろん。っていうか、顔が怖かったとは流石に言えず。

シュルヴェステル > 「ミナヅキか。そうか。ミナヅキ、有り難う」

男は知らない。
男は何一つだってこの世界のことを……一つよりはそこそこ知っている。
が、まだ十分には足りているとは少しも言えたものじゃない。
その結果が先の一件である。故に、水無月のことはわからない。
でも多分わかるようになってもうどんを伸ばす経験をしないとわからない気もする。

「ミナヅキも学徒の一人だろう。どこかで会う機会もあろう。
 ……頼れる相手が増えたのは幸いだった。先に一人、従者を引き連れた子供もそうだったが。
 難解なものに出会ったときには聞けば誰かしらが教えてくれる。学ぶにいい場だ」

学ぶための犠牲になったうどんのことを知ることはない。
スープをゆっくりと一口二口と飲んでから小さく満足そうに鼻を鳴らす。

「今後ともよろしく頼む」

社交辞令にしたとしても、そうでなかったにしても嫌な挨拶をしてから微笑む。
口元を緩めてから、空になった器を前に両手を合わせて静かに目を閉じ、また開く。

「ところで、1年次の魔術基礎学の時限がもう5分前に始まっているのだが。
 こういうときはどうして教員に非礼を詫びるのが正解か、知っているだろうか」

1年。偶然の悪夢。同級生。
水無月の学年など知らない男が、実に幸先の悪い言葉を口にした。

水無月 斬鬼丸 > 「ああ、大丈夫なんで…」

お礼を言われても、うどんに吸われたスープはもう戻らない。
気持ち少なめのスープを飲み干して、からの丼をおく。
おそらく、この男は器を返却口に持っていくことも知らないのだろう。
食レポ等のおかげで食べ終わるのだけはどうやら先んじたようだ。
だからなんだではあるが。
まぁ、多少うどんがまずくなった程度だ。
気持ちを入れ替えよう。

「あ、はい。今度はそのなんといいますか…
何がどうわからないのか先に言ってくれれば…」

従者を引き連れた子供とか。なんだそれ、どこの富豪だ。
ともあれ、またあった場合はできればわかりやすく質問してほしいものだと願う。
うどんが伸びない程度に簡潔に。
今後があればの話だが。しかし、続く言葉はそれがまたあるであろうという予感めいたものを思わせるものだった。

「あ?え?1年次?あーえーっと…そうっすね…えぇ…」

え?もうはじまってんの?今日出席する気だったのに?
サボろう…うん、そうしよう。
だが、目の前の男は、きっとそれを許してはくれないだろう。新たな問の答え…その実践のために…。

シュルヴェステル > 「何がどうわからないのか、か。成程、確かに一理ある」

勿論返却口に持っていくことなど知らないため放置して立ち上がる。
いつぞに訪れたカフェでは店員が片付けていた。
「店」というクソデカい括りでしか物事を見ていないが故に起きる事故。

「今6分前になったが、始まっている。
 第一教室棟の第八教室と言ったか。最初はそこに辿り着くのが目的だったのだが」

香りにつられた、と付け加えて笑う。
そして、彼の胸中を知ることなくシュルヴェステルは予想通りに言葉を並べる。

「よければ、案内してもらえないだろうか」

サボるつもりの学生に対して、真正面からそう言ってのけて。
人間、“嫌な直感”というのは、往々にして当たるものだった。

水無月 斬鬼丸 > 「……これ、あそこにもってくシステムなんで」

空の器の乗ったトレイを手にし、返却口を指で示す。
普通の店ならばそれでいいが、ここは学食。そうはいかない。
異世界人でなにも知らない…というのであれば…しかたないのだが…。
しかたないのだが!!

「いいけど、いいけども………俺も一年なんで…」

肩を落として歩き出す。
ここのところ厄日が続く。
明日はいいことあるだろうか?ないだろうなぁ……

「はぁ……」

今日のやる気をため息とともに吐き出して、異世界の白髪男子を引き連れ歩くのであった…

ご案内:「食堂」からシュルヴェステルさんが去りました。
ご案内:「食堂」から水無月 斬鬼丸さんが去りました。