2020/08/11 のログ
ヨキ > ヨキの声は穏やかな低音で、いっそ明るくさえ聴こえる。
美術の話も、正義の話も、同じトーン。

「“クズ共”と和気藹々とする。
何らかの事件に対して、日和見を決め込む。
君は君で、“爪弾き者”を自覚して『便利だから入っているだけ』と言う。

ああ、それならそれで、全く似たり寄ったりなのだろうよ。
ヨキは一介の教職員に過ぎず、委員会の内情など知る由もないからな。

だがひとつだけ、ヨキにも判ることがある。

君は『都合がいい』という理由にかこつけて、みすみす“風紀の看板穢し”に加わっている」

腕を組み、指先で己の唇を柔く弄ぶ。

「この『常世島』という社会の警察機構が、君ら生徒に委ねられている意味をよく考えなおしてみたまえ。
そこには必ず使命があり、誇りがあり、周囲からの畏敬と不可侵の職権が集約される。
『看板』とは、それら目に見えぬものの集合体だ。

ヨキはこの十五年、さまざまな事件に立ち向かう風紀委員たちの姿を見てきた。
彼らの大義は、常に変わらぬ。“常世島の風紀を守ること”だ。

君はその伝統の上に、“爪弾き者”という言い訳で胡坐を掻いているに過ぎん」

苛立つキッドの様子に、神妙な様子で唇を引き結ぶ。

「なるほど、精神安定剤か。
吸おうと吸うまいと、君は少し不安が強いようだね。

……君自身に対する文句はない。これは教師としての助言だ。
君が今後進むことのできる針路は、大きく分けて三つに分かれると思う。

一つ、現状維持。
二つ、風紀を抜けて己の“正義”を貫く。
三つ。風紀委員会の『看板』が君の言う“秩序と正義”に相応しくなるよう、内側から働き掛ける」

キッド >  
勢い良く立ち上がった。
衝撃でスツールが廊下に倒れる。

「……随分と言ってくれるじゃねェか……!」

苛立ちを隠すことなく、ヨキに詰め寄った。
上半身を乗り出し、煙草の煙がかかるほどに近くで睨みつけた。

「随分とコケにしてくれるじゃねぇか、エェ?
 俺が胡坐を掻いてるだって?甘えてるって言いてェのか……!?」

荒ぶる声音を隠すことなく強く、人差し指をヨキに突きつける。

「利いた風に聞くんじゃねェよッ!!
 俺が両親弾いた時、アンタ等大人は誰も俺を咎めなかったじゃねェか!?」

廊下に響く、少年の声。
白い煙が浮かび上がり、口から煙草が零れ落ちる。

「両親がマフィアだからって、人一人殺して『褒める』のかよ!?
 …ッ、…おかしいでしょ!?僕だって、好きで撃ったわけじゃない!!
 なのに、ただ……異能がソレを許さなかっただけなのに!!」

張り上げた声が廊下に響く。

「当てるつもりなんて無かったんだ……!!僕は、両親に『マフィア』を止めて欲しかった……!
 ただ、偶然『目に入った』だけで、引き金を引いた弾が当たってしまう異能だっただけなのに……!」

絞り出すような、懺悔。

「誰も責めやしなかったッ!!大人達<アナタたち>は!!誰一人!!」

16年間押し込めてきた。

「だったら、僕はどうすれば良かったんですか!?
 悪い事のはずなのに、誰も何も言ってくれなかった……!!
 マフィアのボスを討ち取った、ヒーローって……!!だったら……!」

「『演じる』しかないでしょう!?世間がソレを望むなら、僕はソレを『演じない』と!!
 じゃなきゃ、どうやって……どうやって"人殺し"の罪を償えばいいんですか!?」

秩序への隷属、正しさの奴隷。
大人たちへの望む姿でしか、己を表現するしか知らなかった。
子どもなりに考えて、子どもなりに出した結論。
誰も教えてくれないから、そうするしかない。

「死ぬまでずっと、"キッド<ぼく>"を"爪弾き者"を演じろと言ったのは、大人達<アナタたち>でしょう!?」

「秩序と正義を好きと言った貴方が、僕に何か言える立場なんですか!?」

そして、ヨキの言う通りそれが『間違い』と自覚していても
それしか知らなかった少年の歪さ。
自覚して、押し込めていた16年分の本音。
今にも泣きだしてしまいそうな少年の表情が、声音が
どうしようもない行き場のなかった、子どもの癇癪が縋る。

キッド >  
肩で息を切らす、ゆっくりと呼吸を整える。
静かに首を振って、廊下に落とした煙草を拾い上げた。

「……すみません、廊下で、怒鳴ってしまって……。」

踵を返し、キャップを目深にかぶった。

「わかってますよ、先生……貴方の言う通りだ。僕は、不安で仕方がない……。
 そして、自分が風紀委員に相応しくないって、わかってしまったんです。」

「温泉旅行、あったんですけど。気まぐれで言ったら、全然馴染めなくて……。」

「……わかってるんですよ、くだらない事を聞かせてしまいました。
 でも、もう全部"今更"なんです。その三つの、どれも取れない。」

「僕は……」

静かに、煙草を咥える。

「────キッド<オレ>で在り続けるしかない。」

そうでもしなければ、どうやって生きていけるんだ。

「……すまねェな、センセー。みっともない所見せちまった。
 ほかの連中には、黙っておいてくれ。……まぁ……。」

「アンタの配信は、余裕があれば見る事にするよ……。」

振り替える事無く、キッドは立ち去っていく。
小さな寂れた、子どもの背を向けたまま
何もかも分からないまま、一人のまま、彷徨い歩く。

ご案内:「第二教室棟 教室」からキッドさんが去りました。
ヨキ > 先程まで長身からキッドを見下ろしていたヨキが、今度はキッドから見下ろされる形になる。
真っ直ぐに相手の目を見据え、一言一句溢さずその言葉を聞き入れる。

「……そうか。
それが君の“切っ掛け”か」

目を伏せて、息を吐く。

「その言葉が聞けて良かった。
そして――ヨキと君とが“今更”出会ってしまったことを、心苦しく思う。

ヨキが君にもっと早く出会っていたら。
君がそのことを先に話せていたら。
ヨキがもっと、君の苦しみに気付いてやることが出来たら。

話はもう少し、変わっていただろう。

……だから、勘違いをするな。
ヨキはまだ、君に今日はじめて出会ったに過ぎない――

ゆえに。
ヨキと君は、“これから”対話を重ねてゆくことが出来る。

ヨキは君が責め立てる“アナタたち”とは、違う」

はっきりと口にする。
キッドが今まで出会ってきた“大人”とは、違う人種なのだと。
その顔はもう、笑ってはいない。

「……君の誤りは、真実を口に出来なかったこと。
『大人たち』の過ちは、君に真実を口にさせなかったこと。

このヨキは、異能に苦しむ者全員の味方だ」

静かに語るキッドに、自身もまた立ち上がって。

「何、案ずるな。ヨキは決して他言せぬ。
だから――次もどうか、吐露してほしい。
君がこれまで、言えなかったことを。言いたかったことを。

ヨキは君の苦しみを、いくらでも受け止めよう。
答えが見つからなくとも。無為にしか思えなくとも。

……必ずや、ヨキは君がぶつけられてきた言葉とは違う、新しい対話へ導いてみせる」

キッドの背中を見送る。
追い掛けることも、呼び止めることもなく。
廊下の向こうに、見えなくなるまで。

ご案内:「第二教室棟 教室」からヨキさんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」に吉良坂 美咲さんが現れました。
吉良坂 美咲 > 第二教室棟屋上の昼下がり。
暑い日差しに照らされた屋上で、屋上の柵に手をかけた少女が無表情に、しかしどこか無理をしているような顔をして遠い地面を見つめていた。

「やっぱり...無理だよね」

震えた声が出た。
柵を掴む手に無意識に力が入り、小さく震える。
見下ろしていた瞳に僅かな恐怖の色が映るが、それはすぐにを閉じられ、瞳を閉じたまま柵から離れた。
そして近くにあるベンチに置いておいた水の入ったペットボトルに手を伸ばせば、キャップを外して、水をちびちび飲み始めた。
あまり飲み過ぎるとこの暑さではすぐなくなってしまいそうだ。

吉良坂 美咲 > 異能の力でどれだけ浮いていてもあまり辛くはない。
それでもベンチに座っていた方がいくらか楽ではあるのだが、座らない理由は単純に下半身不随の身では離着席が難しいというだけだ。

水を5分の1ほど飲み干して、飲みすぎたかなと思いながら屋上のドアすぐ近くの影に入り、壁にもたれ掛かった。
暑さ故の汗とはまた別の、嫌な汗が流れる。

"あまり人のいない場所なら"なんて。
何回試せば諦めがつくのだろうか。
何回試しても、結局は辛くなるだけだというのに。

「私も諦めが悪いなあ...あはは...」

自虐の籠もった乾いた笑みを浮かべるが、すぐに小さなため息と共に悲しそうな表情を浮かべて。

「夏休み...早く終わらないかなあ」

他にやることがあれば、こんなことやろうと思わないで済むかもしれないのに。

吉良坂 美咲 > こういう時は壁に体重を預けて片足をぶらつかせたりしたい。
そんな何気ない動作が、あれ以降出来ない。
出来なくなって一年以上経っているそれをやりたくなるなんて、私も未練がましい。

「自由...かぁ...

.....今でも十分自由だよね。うん。私は自由な方だよね」

私より不自由してる人はいっぱいいる。
私はまだ恵まれている方だろう。

なんて強がっても、足は動かないけど。

"辛い"

失った"自由"。
動かない足。
染み付いた恐怖。

今が辛いけど、希望を捨てられない私はいつまでこうも停滞した生き方を続ける気なのだろうか。

ご案内:「第二教室棟 屋上」に修世 光奈さんが現れました。
修世 光奈 > とある授業の補講を受けた帰り。
せっかくだし、ちょっと休んでいこうと屋上に寄ったところ。

「わ、びっくりした…幽霊かと思った…」

扉を開けたところに…宙に少し浮いている学生を見つけて流石に驚く。
ことこの学園においては怪談は事欠かない。
まさか昼間から遭遇してしまったのか、と思ったが。
よくよく見ればきちんと足がある。

「ご、ごめんなさい。つい…、えっと、休憩?それだったら私も一緒に…となり、いい?」

相手も、補講か授業を受けに来たのだろうかと様子を伺いつつ、ゆったりと近づいていく。

吉良坂 美咲 > 「わっ!?」

夏休みで校舎に人が少ないからと油断していた部分もあったのだろう。
扉が突然開けば驚いて声が出た。
スーッと後ろへと少し後退り?する。

「こ、こっちこそごめんなさいっ
誰も来ないと思ってて...隣?いいよっ、何もないけどゆっくりしていってよ」

扉からまた少し離れて人二人分程度のスペースを扉との間に空けて。
にこにこと明るい笑顔を見せてどうぞどうぞと

「夏休みに学校にいるってことは補習?それとも部活?」

体を光奈の方へわずかに傾けてそう尋ねる。

修世 光奈 > 「ありがと。じゃあお言葉に甘えて―」

なんて、わざと大仰な言葉を使いながら隣へ。
支えのために柵を持ち、ぼー、と少し眼下を眺める。

「やっぱきれーだねー…あ、補講補講。
もー勉強が難しくって。異能のこともあるのに普通の勉強も単位が設定されてるから大変だよねー」

あはは、と困ったように笑う。
それほど成績が良くない光奈は、いくつか補講を貰っていた。

「あ、ごめん。私、光奈(コウナ)。二年生だよ。えっとー…」

これも縁だ、と…人とのつながりが大事なことを良く知っている光奈はまず自己紹介を。
その後、首を傾げて…相手の名前も暗に聞いてみよう。

吉良坂 美咲 > 「わかるー。生徒に優しくないよねー
単位取るための勉強も大変だよー」

とは言いつつも気をそらすための何かには何かと勉学を充てている為あまり単位取得などには困っていない。
とはいえ常世学園はきっと他の学校と比べて忙しい学校な気はしている為共感は深い
大変だねーと笑顔で応えて。

「あ、私は...美咲、私も二年生だよ、よろしくね!」

名前を名乗ったら...と思い僅かに詰まるが。
ここで答えないのも不自然だから、賭けのつもりで笑顔を向けたまま名乗った。

修世 光奈 > 「しっかも結構難しくない?
結局異能使ってなにかしらする人多いんだし、普通の成績とかいるのかなーって思っちゃうよねー」

うんうん、と頷く。
想いを共有できるのは嬉しい。

「あ、と。ほんと?いぇーい」

同じ二年生だと聞けば…更に気持ちが上がってくる。
一時とはいえ、悩みが薄れて。
ハイタッチでもしようと、手をあげてから。

噂については知っている。が、聞いたことがあるのは…1年前に誰かが自殺しようとした、ということだけ。
結局は噂程度であり、名前は知らないようだ。

「美咲…でいーい?私もこーなでいいよ。私は補講だったけど、美咲も?」

くる、と回って…今度は柵に身を任せるようにしつつ聞いてみる。

吉良坂 美咲 > 「そうだよねー
今の時代異能とか魔術とかそういうので働く人も多いのにねー
数学とか物理とか...特に国語とか!あんなのいらないよねー」

いくら勉強ばかりしていると言っても苦手科目はあって。
国語、特に古典が苦手な私はついやいのやいのと言ってしまった。

「いぇーい」

こちらも手を上げてハイタッチ。
いぇーい

「うん、いいよ。私もこーなって呼ぶね!
私は...私は特に用事はないんだけど、ちょっと屋上に来たくなったからかなー」

知らないのか、知ってて気を使ってくれたのか。
まあいいや、とマイナス思考を振り切って。
何しに来たかと言われてどう答えようか少し悩むが、ひとまず少し濁すことにした。
ついでにニコッと笑っておこう。

修世 光奈 > 先生もいないこの場では言いたい放題だ。
そして乗って来てくれるのが嬉しくて、何回かハイタッチをせがんでしまい。

「うん、いいよいいよー。
…屋上に?んー…?ここの花のお世話…とかじゃないよね。
んん?高いところが好きなの?」

補講でも部活でもなく、ただ屋上に、とはどういうことだろうか。
ふと思いついたのは庭のようになっているこの場所のお世話か。
ぐ、ぐ、と柵を背中で押しながら、不思議そうに聞いてみる。

吉良坂 美咲 > 普段人とあまり話す機会がないこともあって盛り上がった。
ハイタッチをせがまれればその度に応えた。
誰かとこうも話すのはやっぱり楽しいなぁ、と思って。
楽しい笑みを見せて。

「高いところが好き...ってわけじゃないけど
ちょっと高いところに来たい気分になったからかなー」

そういう気分だと答えながら、柵が僅かに軋む音に嫌な汗が出ている気がする。
しれっと音源をみやれば耕奈の背で。

「あ、あんまり柵にもたれすぎると危ない...んじゃないかな?」

大丈夫なのはわかるのだが、それでも少し不安になってそう言ってしまい。

修世 光奈 > 最近は光奈も少し色々あったため。
こうして学友と話せる時間はとても嬉しい。
探し物の依頼で時間が取られることも多いから。

「ん、ん?よくわかんないけど…綺麗な景色が見たいとか…?」

理由が掴めないものの、そういう気分の時もあるだろうと。

「あはは、大丈夫大丈夫。
そんなヤワだったらここに設置されてないってば」

『知らない』からこそ無防備に。ぎし、ぎし、と音を立てて。

「あ、そうだー。今度暇な時に遊びにでも行こうよ。常世渋谷とかさ。後はカラオケとか!」

せっかくたまたま会えたんだし―、と。
まだ、不安そうな様子には気づかずに、にこやかにそう言って。

吉良坂 美咲 > 「うーんまあそんな感じかなー」

なんて苦さを僅かに含んだ笑みで

あまり聞かれたくはないのだ。

「う、うん。そうだよね。ごめんね変なこと言って」

だよねーと頭の後ろに手をやってあははと笑って。
気にしすぎだと反省。

「え...?いいの?」

一緒に遊びに行こうと言われるなんて思ってもおらず。
ハトが豆鉄砲を食ったような表情を見せて。

「えっと...じゃあ友達に...なってくれる?それで一緒にカラオケとか行こうよ!」

進め、と。
ここで引いても何もない。折角楽しく話せる相手と出会えたのだから、と。
ここぞとばかりに食いついて。
少し勢いは強いかもしれないが、必死さよりも嬉しさを曝け出しながら

修世 光奈 > 苦そうな笑みを見たものの。
その意味まで図れるほどではない。
そして気軽に…覚えていないだけで同級だと知れば自然に誘うと、予想外に食いついてきて驚く。

「わ、わわ…。ど、どうしたの急に。そもそも、友達って…『なる』、じゃないでしょー美咲ー」

ちょっと引きながらも、えへへー、と笑って。

「同じ学年なんだし、美咲、ヤな子じゃないみたいだし。
そんなに気にしなくていいよー。もう友達友達!あ、でも私ちょっと忙しかったりするから、日にちはまた決めよ
端末持ってる?」

なる、というより、もうなった、のだと。
自分の連絡先を表示して見せよう。

「私の連絡先はこれ。美咲のも、教えてくれる?」

吉良坂 美咲 > 「あ、そう、だよね。ごめんね変なこと言っちゃって!」

ああ失敗してしまったと思いつつも、それを隠して両手を胸元で振りながら。
普段人と話さない弊害だろうか...

「!!!友達、そうだよね!
端末は持ってるよーちょっと待ってねー...
これが私の連絡先ー」

もう友達でしょ、と言われればぱあっと明るく笑って見せて。
その雰囲気のまま、光奈の連絡先を自分の端末にパパッと入力してから自分の連絡先を光奈に見せる

修世 光奈 > 「いいのいいの。はい、じゃあ交換っと。
後、私探し物依頼とか結構受けてるから、何か失くしたりしたら相談してね」

美咲の連絡先を登録するついでに、掲示板へ誘導するためのアドレスを送ってみる。
アクセスすればそこは…光奈にいつでも失くしたモノを探してもらえる場所の様だ。
対価もほとんどなく、ただ趣味でやっているもの。

「…で、いっこ、話しててすごーく気になったこと、聞いていい…?」

苦い表情に気づかなくても…それでも気になることはあった。

「なんで、美咲ずっと浮いてるの?異能がずっと出てるとか?」

そう、会った時からずっと…相手は僅かに浮いている。
自分と同じ省エネな異能なのだろうか、と予想はするが、どうなのだろうと聞いてみる