2020/09/10 のログ
ご案内:「第二教室棟 保健室」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
先日、『姉』の件をきっかけに偶然であってしまった風紀委員、『鉄火の支配者』こと。
「──クズやろー」
端末に届いたメッセージの差出人名には『クズやろー』と表示されている。
問題はそのメッセージの内容で。
件の修道院に出入りしていたキャソックの男は『オダ・エルネスト』という人物だそうだ。
「──なんっにも、出てこねーんですが?」
この男、経歴に関してはどうにも胡散臭さが残るのだが。
今回の件に関わっているかと言えば、完全にNOだろう。
となると──あの少年と調べた事は全くの無駄だったと言う事だ。
「頭が、いてーですね」
実際に痛い訳では──普通なら相当痛みを感じるのだろうが。
頭の上に氷嚢を載せながら目を閉じて、ベッドの上に寝転がっていた。
脳の使い過ぎで40℃近い高熱が出ている。
「まあ、そうですね。
余計な情報を排除できたと考えれば、まあ」
良かった──わけがないのだ。
手掛かりにならないんじゃ意味がない。
そして、意味がない事をやっていたと思うと凄まじく腹が立つ。
■神樹椎苗 >
(なんなんですか、この男は)
出自から学歴まで洗っても、真っ白。
なんの怪しい所もない、アメリカ生まれアメリカ育ちの転入生。
ただ、その潔白具合が不自然といえば不自然だった。
(『これ』も『それ』も、深入りするにはやべえ場所じゃねえですか)
だからムキになって多方面から徹底的に浚ってみたのだ。
その結果わかったのは、この男が正真正銘の『魔術師』であること。
外部に出せない機密事項に関わっているだろう事。
余計な深入りをすれば火傷をしそうな相手だ。
これ以上の探りを入れるのはリスクが高い──悔しいが能力的にも難しい。
島の内部の事ならともかく、外の事になると思うようには行かないのだ。
(しっかし──なんでこいつ、支援が打ち切られてるんですかね)
表向きは留学の形式に近いはずなのだが。
金の流れを洗い出すと、年度のはじめにはあった筈の支援金が振り込まれていない。
なにか支援の条件から外れたのだろうか。
■神樹椎苗 >
(でもまあ、何にしても、能力的には『つかえそう』なやつですね)
常世島内で観測出来ているだけでも、身体能力、風を操る魔術など、見るべきものがある。
恐らくそれ以上のスキル、魔術を秘匿しているだろう事は想像に難くない。
上手く味方に引き込めるのなら、戦力としても数えられるだろう。
(まあ、それを決めるのはしいではねーですが)
『クズやろー』には、使えそうな男だと言う事だけ伝えておこう。
実際にどうするかは任せればいい。
とりあえず不法侵入他いくつかの余罪はありそうだが、それを追及するのも椎苗の仕事ではないのだ。
■神樹椎苗 >
(──で、あとはコッチですか)
違反部活『ディープ・ブルー』。
オダ・エルネストから何も得られなかった腹いせに、散逸していた情報、噂などをかき集めてみたものの。
拍子抜けするほどあっさりと、ある程度の形になってしまった。
手掛かり一つ一つは大きなものではない。
それでも、一度壊滅したと思われていた組織が動き出せば、裏ではどうやっても噂になる。
いつ、どこの誰が何をしていたか。
そんな話はどれだけ上手く隠蔽しようと漏れ出てしまうのだ。
(──それにしても、妙ですね。
まるで集めていると言うよりも、『集めさせられている』ように感じます)
そう、まるで『ディープ・ブルー』に辿り着くように筋道を立てられているような。
何者かの手の上で動かされているような。
椎苗自身が情報を扱う存在だからか、『不自然でない事』が『不自然』に感じられた。
■神樹椎苗 >
(とはいえ、手掛かりが無いのも事実ですか)
となれば。
何者かの意図がある事を前提として、罠だと考えて動くのが無難だろう。
(急いで欲しいのは、山々なんですがね)
それで摘発に向かった人員が潰されるようなことがあれば、より状況が悪くなる。
そうなれば『姉』の捜索がただ滞ってしまうだけだ。
そんな事態だけは絶対に避けなくちゃいけない。
『クズやろー』には念のため警戒するように伝えておくべきだろう。
「――あー、ほんと、頭がいてーですね」
思うように事が運ばない。
当然、ある意味仕方のない事なのだが。
自力で解決するために必要な『暴力』を持たないのが悔しい。
一先ず『情報端末』に出来る事はやった。
後は新しい情報が入るか、事態の変化があったときに備える──くらいの事しかできない。
頭の上に置いた氷嚢は、いつの間にか温くなり始めていた。