2020/09/11 のログ
ご案内:「第二教室棟 保健室」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 >
ガラガラと音をたてて開く扉。
中に入ってくるのは椎苗が『娘』と呼んでいる同居人だった。
「すみませーん、少し仮眠するのにベッドを貸していただきたいのですが。」
ふらふらとしており、目に隈を抱えている様子からして、睡眠不足がたたっている様だ。
おそらくは碌に食事もとっていなかったのだろう。
中に彼女が居るとは知らずに入ってきた。
その手には多くの資料が抱えられている。
「あれ、先生居ないのかな……。」
ゆっくりとベッドの方に歩みよってくる足音が、椎苗には聞こえるだろうか。
■神樹椎苗 >
頭の働きが鈍っている。
単純な『情報処理』だけじゃなく、外部への『接続』を続けたから仕方のない事なのだが。
どうしても、『端末』部分で処理しなければいけない事が増えると、ハードに負担がかかってしまう。
(純粋な頭脳労働での疲労なんて、久しくなかったですね)
ぼんやりとしながら、眠気を感じてあくびが出る。
そんな中で、扉の開く音と、良く知った声。
気づけば、その声にほとんど無意識に答えていた。
「――養護教師は席を外していますよ」
ベッドの方から気だるげな声が聞こえるだろう。
ベッドを見れば頭の上に氷嚢を載せて、仰向けに寝転がって目を閉じているいる椎苗の姿。
ベッドの上から左手で手招いているのがわかるだろう。
■水無月 沙羅 >
「あれ、しぃ先輩?こんなところで何してるんです?
学校に居るなんて珍しい。」
実際、彼女を校内で見るのは初めてだった。
普段は帰れば女子寮に居るし、もしくはどこかに出かけている印象が強かった。
最近は時計塔に行く姿もほとんど見てはいない。
それが何処か寂しくも感じていた。
「何処か具合でも悪いんですか?」
自分の事を棚上げにして心配そうに歩み寄り、椎苗の隣に座り込んだ。
ギシリと音をたてて少しベッドが軋む。
細くなって眉を垂れさせている瞳が覗き込んだ。
■神樹椎苗 >
「べつに、ちょっと働き過ぎただけです」
そう言いながら、左手を伸ばしてのぞき込んでくる娘を抱き寄せようとする。
「今回は、お前の事をとやかくいえねーですね」
そう珍しく眠そうな声でぼやく。
左手を離して身動きをすれば、載せていた氷嚢はずるりと落ちるだろう。
■水無月 沙羅 >
「うぇっ……ちょ、どうしたんですかしぃ先輩。
甘えん坊ですか?」
抱き寄せられるがまま隣に倒れこんで、氷嚢をそっと乗せなおした。
「今回はちょっと忙しいんですよ。
のんびりも知ていられないし、整理することも多くて。
でも何だか妙な引っ掛かりも多くて。
それでもやらなきゃいけないから頑張ってるんですけどね。」
眠そうな椎苗の背中をポンポンと叩いて眠気を誘うようにする。
また子ども扱いをするなと怒られそうなものだが、実際子供なのだからいいだろう。
しかし、この少女が知恵熱を出すほどに何を頑張っていたのかは、気になった。
かといって、そこまで踏み込んで良い物かもわからない。
分からないものは、とりあえず触れないでいる。
■神樹椎苗 >
「別に甘えるとかじゃねーです」
少しだけ不満そうな声が漏れるが、そのまま抱き寄せて額を着けるように顔を寄せる。
「知ってます。
また何かあったんでしょう。
――ふぁ」
また小さくあくびが出る。
背中から伝わる感触が心地よく、眠気が誘われる。
椎苗もまた、娘の髪を梳くように撫でて。
「がんばってるのはえらいですが、おまえもきゅーそくが足りてねーのです。
仮眠に来たなら、しいの昼寝につきあうのですよ──はふ」
瞼を持ち上げるのも重たくて億劫だった。
声は眠気からか、普段よりもろれつが回っていない。
■水無月 沙羅 >
「はいはい、しょうがないですねぇ。」
額同士をくっつける。
眠そうに瞼をパチパチとさせている少女の顔が息遣いがわかるほどに近寄った。
少しだけ、額が熱いように感じる。
よしよしと、言葉にしながら背中をゆっくり、一定のリズムで叩いている。
全く知らぬ人が見れば、姉が妹を寝かしつけている様子に見えるのだろう。
事件の裏で、人知れず動く者たちのサポートをしている二人の仕事は見える以上に過激なものだという事を誰も知らず。
おそらくはお互いに詳しくは把握はしていないのだろう。
ただ、其処に気遣いあう二人の少女の姿だけがある。
「しょうがないから、付き合ってあげますよ。」
夏場にしては少し熱いかもしれないが、そっと少女を胸の内に抱き寄せて、タオルケットをお互いにかぶせた。
もし、彼女があの修道院に行っていたのだとしたら、寂しい思いをしているだろうと思ったから。
心音を聞かせる様に、安心できるように。
■神樹椎苗 >
「むう──えらそうですね」
しょうがない、という娘に不満げな呟きがこぼれる。
しかし眠気には勝てないのだろう、すでにうとうととして、今にも眠りに落ちそうだ。
それでも、娘の髪に指を通す感触も楽しく、時折手が止まりながらも、頭を撫でるのはやめない。
「ん、ちょうど、いいです。
このごろは、おまえがいるほーが、ねごこちがいーのです」
タオルケットの中で、もぞもぞと娘にくっつく。
お姉さん風を吹かせる娘には、かなーり不満があるものの。
今回ばかりは疲労の回復のためだから、仕方ないのだ。
「おまえも、つかれてるん、ですから、ちゃんとやすむのです」
言葉も小さく、途切れ途切れになりながら。
娘をあやすように髪を撫でて――けれど、その手もだんだん動かなくなってくるだろう。
■水無月 沙羅 >
「……ふふ。」
不満そうにぼやく少女に思わず笑みが零れた。
そんなことを言いながらすっかり舟をこいでいる。
髪を撫でる手が時折止まっているのがわかった。
損吾に髪を触るのが好きなのかな、と自由にさせている。
「それは、光栄ですねぇ。
私もしぃ先輩の近くは安心しますよ。」
自分がいる方が寝心地が良い。
なんとも不思議な気分だ。
抱き枕として見られているのか、傍に居ることで安心を与えて居られているのか。
腕の中で言葉も途切れてきた少女はいつだってあまのじゃくで、その真意は測りにくい。
それでも、不思議と悪い気はしなかった。
「そうですね。 私も休みますよ。
一緒に寝ましょっか、しぃ先輩。」
そっとおでこに唇をつけて。
少女に親愛を伝えながら、自分もゆっくりと目をつぶった。
椎苗が寝息を立てるまでは、きっとそうして背中をたたいているのだろうか。
不眠不休で働いていた自分も、随分疲れがたまってきた様で、少しあくびが出る。
目の前に寝転がっている、自分の日常の象徴をそっと撫でた。
■神樹椎苗 >
「ん――すこし、おやすみ、なのです」
額へのキスにくすぐったそうに笑いながら。
いつもよりほんの少し、素直な言葉と表情で。
いつの間にか左手も止まり、頬を撫でるように滑り落ちていくだろう。
寝息はいつもそうだが、あまりにも小さい。
微かな弱弱しい寝息は、消え入りそうにも感じられる。
それでもその表情は穏やかで、すっかり心を許した寝顔を見せた事だろう。
■水無月 沙羅 >
「おやすみなさい。 椎苗。」
こっそり、少女が寝息とたてたのを確認してからその名を呼んだ。
彼女の為にも、はやくマルレーネを助けなくてはならない。
それは自分の日常を守る事とイコールだ。
彼女の、この安らかな表情だけは守って見せると心に秘めながら、自らも微睡に深く落ちて行った。
抱えていた書類は、ポトリと二人の間に落ちるのだろう。
暫くの間、そうして少女2人の静かな寝息が保健室には響いていた。
ご案内:「第二教室棟 保健室」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 保健室」から神樹椎苗さんが去りました。