2020/09/19 のログ
ご案内:「とある美術室」に月夜見 真琴さんが現れました。
■月夜見 真琴 >
「――おや」
返事のないノック。閉まったままの鍵。
「ご不在か。多忙な御方だものな」
主の空けていた美術準備室の扉の前で、なぜか愉しげにそう呟く。
踵を返し、気分転換に手近な美術室を訪うことにした。
カーテンのむこうより、穏やかな秋晴れの陽を取り入れる薄暗さ、
どうやらちょうど授業の合間であるらしい無人の静けさのなかを、
冬滝のような髪を揺らしながらぼんやりと散策する。
「意馬心猿。いつか英治に言ったことだが。
なかなかままならぬものだ、何か面白いことが見つからぬものかな――」
立ち止まり、背の高い石膏像を見上げていると。
――気配。銀色の瞳を横に滑らせ、美術室の入り口を見遣った。
ご案内:「とある美術室」に羽月 柊さんが現れました。
■羽月 柊 >
柊が常世学園に教師として舞い戻ってから少し。
美術教師のヨキと男が友人関係にあるのは周りにも少しずつ知られて来た頃。
他の教師から、プリントを持って行ってくれないかと頼まれたのがつい先ほどだ。
──とはいえ、目的の人物がいるだろうと目星をつけた所におらず。
近場の美術室が空いていることに気付き、そちらへ足を向けた。
少女の見やる先、静かな廊下を歩く足と小さな羽ばたきの音。
現れたのは、深紫の長髪を揺らす桃眼の男だった。
白衣を揺らし、小さな鳥のような動物を連れている。
「ヨキ、いるか……ん。」
低く、僅かに掠れの混じる声が美術室に友人を問うた。
その声色は教師同士の上っ面のモノという雰囲気ではなかった。
手にはクリップボードに挟まれたプリントを持って。
そうして、白と紫は出逢う。
■月夜見 真琴 >
まず視界に入ったのは紫色。
好きな色だ。この島に来てから好きになった。
「残念ながら、彼の御仁はご不在であられたよ。
助言を頂きに参じたところ、校内の城には返事がなく。
レターケースに投じて――というのも、
些か迷うところではありましょうか」
向き直る。菖蒲と桜を一目で楽しめるような美丈夫だ。
見目が佳い方が多くて助かるな、と愉快げな笑みを崩さない。
そちらに静かに歩み寄る。佇まいである程度、用事は察せた。
「羽月柊――先生。 お噂はかねがね。書面上の、ではございますが」
そちらのことは存じているとばかり、名を呼ばわるなり。
キャスケットを取り、白い髪を背に流す。
そして白い女は礼儀正しく、男に向けて頭を下げた。
名乗りの挨拶、という風情ではない。
そこにあったのは謝辞の意だ。深々と頭を垂れている。
■羽月 柊 >
どれほど衣装に深い色を重ねたとて、それは白。
それはキャンパスのごとく、数多の色を簡単にその身へと移すモノ。
窓硝子から入る陽が、その髪に反射する。
この色に満ちた美術室という部屋で、少女はその眩さを際立たせる。
「――そうか、では…外の『生徒』の所かな。こんにちは。」
最低限、見目は良くはしている。
とはいえ男は明らかに、年齢をその顔に皺として刻んでいた。
眉を寄せることが多いのか、目元に皮膚は谷を作っていた。
別段友人に対しては、急ぎという用事でもない。
単純に逢えたなら言葉でも交わそうかというだけだった。
連絡先は知っているし、後からでも問題は無い。
ここに居ないのであれば、この島のどこかしらの『生徒』の所にいるのかもしれない。
傍らの鳥のような…それは近づけば、小さな竜。
それが、男の肩と頭に乗って首を傾げた。
「………書面?」
少しずつだが、己が先生として見知った生徒も増えて来た。
しかし、相手の態度からは別の意図が見て取れて、
言葉はどうしたと問うようだった。
男は少女の所属を、まだ知らない故に。
■月夜見 真琴 >
「ええ。やつがれの同僚が大変に世話になっていると」
顔を上げた。微笑みは自然か不自然かを綯い交ぜにした感情を読ませぬものなれど。
すくなくとも心は嘘はない。これを示す時に偽る必要もなかった。
しかして最初に名乗らぬのはそうして謎を深めるのが習性のひとつ。
視線を吸い寄せ何かを見えるようにしながら、別の何かを見えなくする。
「三年、風紀委員。 月夜見真琴です。
どうぞ見知り置いてくださいませ。こちらにはよく顔を出しますゆえ。
一郎と――理央と英治。だけならずに、委員たちが柊先生に助けられたと」
報告書などの書面から読み取れるものはといえば。
子供に"国営"が任されているような特異な性質を持つこの島において、
そうして直接、生徒に手を伸ばした"大人"がいた、ということだった。
「報恩謝徳には到底至らぬ、言葉かぎりの礼となること、恐縮ですが。
――どうも、ありがとうございました」
"子供"ができることといえば、そうした感謝を向け、
彼から直接の薫陶を受ける身でないにせよ、
何か生徒として返せることを探す、という行動に帰結する。
視線は伴う者にちらりと向け、興味深そうに眉を釣り上げたものの。
連れ合いの子供に挨拶するように微笑む。
「お怪我の具合は、如何でしょうか?」
再び彼へを見返すなり、問いかけた。
その存在に驚くことはなかった。
"羽月研究所の羽月柊なら、連れているだろう"、
――"書面で読めるものはだいたい把握している"、
という分類の、風紀委員である。
■羽月 柊 >
随分と、見目よりも"大人"びているなという印象だった。
しかし《大変容》が起きた後のこの世界では、
見た目と実年齢が一致しないことは良くあること。
そしてこの島では、年齢では何もかもが量れない。
子供の教師も、大人の生徒もいる。
ヒトの領分で推し量ろうとすることが、最早愚かでさえある。
「…なるほど。彼らと同じ所属だったか…丁寧にありがとう。
俺は知っての通り羽月 柊だ。
ヨキは俺の友人に当たるから、これから逢うこともあるだろう。」
『トゥルーバイツ』事件において、
葛木一郎に手を差し伸べた時は、ただの島職員の研究者であった男。
かの事件に置いて、風紀委員も表面上は彼らを
"元違反部活生威力運用試験部隊傘下独立遊撃小隊"という、風紀傘下組織ではなく、
"違反部活"と切り捨てたとはいえ、彼らも馬鹿ではない。
事件が終決し、代表であった日ノ岡あかねは今も懲罰で地下教室であり、
それに関わった葛木一郎や園刃華霧に関して、調書が作られていない訳が無い。
故に、この羽月柊が、葛木一郎に関わったことも…きっと知っているモノは知っている。
……少し前に彼らに何が起こったのかも。
そうして教師に成り、先日の『ディープブルー』との戦いでは、
山本英治、神代理央と共に、"大人"として戦った。
もしかすれば、男の裏の顔が知られていたとしても、『それでも』と。
「あぁ、大人の俺が一番軽症というのもどうなのかという話ではあるが、
左肩を焼かれた"だけ"で済んだから、そう問題は無い。
こうして、学園に顔を出せているのがその証明だとも。」
怪我を問われれば、問題無いというように右手で左肩を軽く叩いて見せた。
「ところで、もしヨキに言伝があるのなら、伝えておくが。」
■月夜見 真琴 >
「ほう! ああ、失礼。
存じておりましたのはしかし、そうした書面に綴られていることばかり。
柊先生はなぜこちらに、と思っておりましたがなるほど、矢張り」
彼の言葉に疑問が氷解して、嬉しそうに声を上げた。
さて、ここは美術室。そうした芸術分野の教室が居並ぶ棟。
見目の佳きとて、研究者であり新任教師でもある彼の分野とは、
すこしばかり遠い気がした――さて、なぜ彼が恩師宛てのプリントを持ってきたのか。
「ふふふ、少し意外な友誼を垣間見た気がする。
ヨキ先生は、面白い御方ですものな――そして貴方も、まちがいなく」
彼の美術教師であり恩師は、とても顔の広い御仁と心得ているものだから。
疑問は氷解した。さて、二人はどのような友人関係を育んでいるのだろう。
細めた瞳は推し量るようにして男を、そして連れ合いの小竜を見眇めた。
「それは良かった。では重ねてお祝い申し上げる。
治ったとは言え、その痛みも生半ではなかったことでしょう。
たしかにあのふたりは荒事に慣れ親しんだ風紀の刃。
なれど――貴方が傍に居たとあれば、きっと心強かったことと思います」
怪我の程が誇りに関わることではないでしょう、と。
すくなくとも、月夜見真琴にとって。
"大人"というのは、そうしたものであった。
無論それは、ある意味では子供からの、重たい期待でもあろう。
しかして大人になろうとしている年頃からすれば、
若干の理想視が含まれるのも致し方ないことであった。
「――ああ。 いえ、学業についてのことではなく、私的な」
言伝を、と言われると、首を横にふって。
たとえば道に迷い、だれかに相談事をかんがえたとき、
上級生に分類される三年生であり齢十九の月夜見真琴が頼るのは、
教師――すなわち大人であることが多いのだ。
「相談事、ですな。
柊先生にも、そう、お聞きしておこうか
鬱屈した日々を過ごしたあと、望みを手に入れることができた。
闇を抜けたさき、とても充実した日々であるのはまちがいないのに――
どこか、そう、正直に言えば、浮かれてしまっている心地で。
蝶と成る夢をたのしんでいるかのようで、いまいち何も手につかない。
いまいち――そういう気分を、処理できていない――実感がわかない?
気の緩みというか、妙な油断を――してしまいそうな。
研究の徒である貴方も、教職に名を連ねられた。
そういう心地を覚えたことの、心当たりは?
ありましたらば、どのように落ち着けばいいのか――助言を賜りたく」
如何でしょうか、と。
見上げる瞳には、むしろ。
正答を期待するよりは、この男はなんと応えるのかということに対する期待があった。
■羽月 柊 >
見目の色こそ賑やかであれど、
男の服装は、二人にとっての恩師には到底趣向が及ばない。
小動物のような小竜を相手に仕事をしている彼にとって、
新品の服はすぐにくたびれてしまうモノであるし、着飾っても無駄である。
故に確かに…この部屋の空気には似合わなかった。
ヨキには知り合いが多く、目の前の少女も違いなくそうであるのだろう。
彼女の言葉繰りを見て聞けば、友人との会話も弾むだろうと想像に難くない。
「意外か? ヨキの交友範囲は広いからな。
自分のことは分からんが、彼が面白い"ヒト"には違いない。
ヨキには多くの恩義がある。
山本と神代、彼らと共に俺が『教師』として共に戦えたのも、
巡り巡れば彼のおかげでもあるからな。
……心強かった…か。"大人"として、そうで在れたなら良いのだがな。」
誇りに関わる話ではない。
しかしそれでも、彼ら二人が負った傷は心身共に大きい。
己の無力さを痛感してしまうのだ。
人間、何もかもが出来る訳では無いと、大人として分かっていたとしても。
『導く』よりも『共に歩む』この教師は、それが歯がゆかった。
「……………。」
少女の相談ごとを静かに聞く。
桜の瞬きは揺れず、深紫の下、夜桜のように。
言葉という花弁を落としていく。
「……そうだな、俺としては、
今正に、そういう心地の中に生きているようなモノだ。」
この奇跡と言わざるを得ないような、今の状況。
何もかもを諦めたはずの自分が、再び歩み、
手を伸ばし、誰かにこうして、思いを伝えられる今の日常を。
「…落ち着けているかは俺もわからん。
しかし、"過去は無かったことには出来ない"。
歩んだ道筋は、確かに自分が今、ここにいる証だからだ。
だからこそ、忘れてはいけないと思う。
繰り返さぬ為に、夢の中であっても"歩みを止めてはいけない"と。
足を掬われる恐怖に、立ち止まってはいられないと。」
それは、男の人生が平坦でなかった証。
今もなお激動の最中、一寸先も見えぬ闇の中で光を探すかのように。
「誰も彼もがそう在れとは言わん。
これは、俺がそうしてここに在るから言えることだ。」
それは、例え『周回遅れ』だったとしても。
己は"知って"いるからこそ…そう『選択』をしたのだ。
■月夜見 真琴 >
胡蝶の夢――それについて同調を示されたことに、
瞳は意外そうに開かれて男の顔を見返した。
大人といえば。人に歴史在りと言っても、地に足がついているもの。
無論名ばかりの者もおおくいたが、しかし――。
次第に、彼が語り終えた言葉が締めくくられた時、
目を閉じて、それらを咀嚼するような間を置いた。
双眸を開く。悪戯っぽく細められた。
「――"理"を説かれることも覚悟しておりましたが、
なかなかどうして直往邁進の心持ちで在られるようだ。
求道の徒としての色が強い方でいらっしゃるのかな」
腕を組み、片手はその細顎に添えられた。
考えるかのような仕草だ。大人びた、あるいは大人ぶった。
仮面を被り直したようでいて、ひとつ仮面を外している。
「もしかして、これはまだ泡沫の如き夢想なのではと。
浮ついたこの足元が、不意に闇へと落っこちてしまわないか。
みずからの不徳でたやすく壊れてしまうのでは――、
……そう、か。 "恐怖"か。 恐かった、のかな」
視線がそれて、自らの内側に意識が向く。
目の前に刻まれた車輪の轍、遠くないにせよ先にある背中の道筋を追うようにして。
「これこそ現、と。
いつかその実感を掴めるまで――そう、口をあけたひな鳥のままでは。
たしかに、居られますまいな。なるほど、そう。
過去から連れ出された、"恩義"もあるのに――たしかに」
そうしてひとつ、ピースを組み合わせて一幅の画が出来上がる。
すべては彼がそうして、《過去》と《現在》。
決して甘やかならぬものを語り聞かせてくれたがゆえ。
正答など求めてはいなかった。そうでなくとも人を助ける助言がある。
表情は機嫌がよくなり、両手は体の横に。
「――うん。
惚気話の様なもので、恐縮ですが――やはり、先人に問うてみるものです。
すとん、と得心がいきました。貴方に相談して良かった」
深々と、ふたたび頭を下げた。
今度は直接、じぶんからの謝辞となる。
そもより先、彼が夢見心地と告げたことへ少しばかり引っかかったのは、
「ありがとうございます、"先生"」
先に生きた者。
その在り方は、たとえ成り立ての教員の卵とはいえ。
月夜見真琴。十九の娘のからすれば、十全にそう見えていたからだ。
顔をあげて、帽子をかぶりなおすと。
「ふふ。 お忙しいなか、お時間を頂戴してしまいましたな。
次の機会がありましたらば、茶菓子でもご用意致しましょう。
やつがれはこれにて失礼させていただきます。ヨキ先生にも、どうぞよろしく」
去りがてに。
彼の連れるその存在に対して、軽く手を振って。
「良き翼をお持ちですな」
と、つぶやいた。
卵が孵化したならば、備えられているのやもしれぬ、などとも。
ご案内:「とある美術室」から月夜見 真琴さんが去りました。
■羽月 柊 >
『胡蝶の夢』
それこそ少女の前に立つこの男が持つ、資質たる"異能"に名を冠する故に。
確かに、夢はいつか覚める。
夢を追えば潰えることもある。
だが、例えそう。
──"夢尽きても……俺の言葉が届くなら"。
「…"理"を並べることはいくらでも出来る。
しかしそれは、俺よりも本を開いたりする方が、余程真っ当な答えを出してくれるだろう。」
そうして桃眼を細める。
ゆるりと首を横に振れば、ウェーブがかった深紫の長髪が踊る。
己は多く間違って来た。
他人に誇れる人生でもない。
失敗を繰り返し、喪失し、順風満帆では無かった人生だ。
今もなお、傷口から流れる血を止められずに、生きている。
「…いいや、何かしらの助けになれたなら良かったとも。
ヨキには遠く及ばないだろうが、得られたモノがあるのなら、幸いだ。」
低く、静かに…男は語り、頷く。
傍らの小竜はキュイキュイと可愛らしく鳴いていた。
去っていく少女に鳴声と、男の別れの言葉が重なる。
そうして静かな彩の部屋に、白衣が揺れる。
「……俺だけの翼ではないさ。」
届かない呟きを零す男の脳裏には、これまでに出逢った全てのモノと、
己の手を取ってくれた──白翼の彼の姿。
ご案内:「とある美術室」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 屋上」にレニーさんが現れました。
■レニー > 放課後の人の少なくなった時間帯。
そんな屋上のフェンスに身を預けて空を見上げる。
大分涼しくなったとはいえまだ暑い日が続いており、こうしているだけでジワリと汗がにじんでしまう。
そんな屋上で時折に吹く風を感じては頭の狼耳を動かして。
「もう少しで過ごしやすくなってくる。早く涼しくならないかな」
こちらの世界は暑すぎると小さくぼやいてはフェンスをきしませるほどに体重をかけてもたれ掛かり。
そのまま空を見上げて。
ご案内:「第二教室棟 屋上」に柊真白さんが現れました。
■柊真白 >
「ん」
授業を終えて何となく屋上に来てみれば先客の姿。
耳と尻尾、まぁこの島では珍しくはない。
なんとなく彼の方を見ながらベンチに座る。
「――いただきます」
取り出したお弁当を前に手を合わせて。
今日の授業は午後からだったので、ちょっと早い夕ご飯。
もぐもぐもぐ。
■レニー > ぼんやりと空を見上げていると扉の開く音と人の気配。
誰か来たのだろうかと視線を空から降ろすと靴は赤いが後は白い人影。
誰だろうと思いながら眺めていればベンチに座り取り出したのはお弁当。
蓋が開くを微かに流れてくる美味しそうな匂いに鼻を動かし。
「いい匂い…」
お弁当を食べる姿を眺めながらついそんなことを口にする。
■柊真白 >
もぐもぐもぐ。
ご飯を食べていれば視線。
彼がこっちを見ている。
もぐもぐもぐ。
「――食べる?」
煮物が多い、色味が茶色いお弁当から唐揚げを一つ箸で取り、彼の方に差し出してみる。
昨日から仕込んでおいた自信作の唐揚げ。
■レニー > お昼を食べてからそれなりな時間。
夕飯も近いこともあり間食は考えていないが目の前で食べているのを見ると欲しくなってしまう。
なのでつい食べている姿を見つめてしまい。
「いいのか?」
初対面の相手からの提案に思わず問いかけ。
警戒はしているが食の欲求、差し出された唐揚げの魅力には逆らえずにふらふらと近寄っていく。
■柊真白 >
「いいよ。帰ってからまた食べればいいし」
そもそもお弁当を持ってくる必要はないと言えばなかったのだ。
ただいつもの習慣で作ったから持ってきただけ。
ふらふら近寄ってくる彼に、箸で摘んだ唐揚げを差し出して。
「はい。あーん」
口元へ。
■レニー > 「それならもらう」
その言葉に食への欲求に完全に敗北。
一つぐらいなら食べても問題はない、むしろ食べたい。
その気持ちを表すように尻尾が左右に振ってしまい。
「あーん」
口元に差し出された唐揚げを摘まんだ箸。
言われるままに口を開けて食べようとする。
■柊真白 >
尻尾が左右に振れている。
犬みたいだ。
「はい」
その口へ唐揚げを入れる。
冷めても美味しいように、少し濃い目の味付け。
鶏モモ肉を丁寧に下拵えして作った唐揚げは、冷めていてもジューシーだろう。
「おいしい?」
こてんと首を傾げて尋ねる。
■レニー > 美味しいものがあと少しで食べられるという期待。
その期待に尻尾の動きは早くなっていく。
「あむ……もぐもぐ」
唐揚げが口に入ると待っていましたとばかりに食べ始め。
濃い目の味付けが冷めていてもおいしく。
丁寧に下拵えがされていると思われる唐揚げは本当にジューシー。
あっという間に食べてしまい。
「凄く。凄く美味しかった」
その問いかけに素直に美味しかったと告げ、何とも頷いてしまう。
■柊真白 >
「ん、よかった」
嬉しそうな彼に満足げな様子。
煮物のにんじんを一口食べ、もぐもぐもぐ。
ごくん。
「まだあるから、食べていいよ」
唐揚げを箸で摘み、それは自分の口に。
彼の方にはお弁当箱を差し出しておく。
唐揚げ、煮物、卵焼き。
全体的に茶色い。
■レニー > 「こんなに美味しいの。滅多にない」
夕飯前に良いものを食べれたと満足顔。
余計にお腹が空いてしまったがそれはそれ。
「うれしいけど、いいのか?」
唐揚げを食べる姿を見ては再度の問いかけ。
差し出されたお弁当箱には唐揚げ以外のものもあり。
全体的な色合いはともかく美味しそうなメニュー。
美味しそうな匂いと美味しかった唐揚げ、気が付くとお弁当箱に手を伸ばして唐揚げをもう一つと摘まんで口に運び、幸せそうに食べてしまう。
■柊真白 >
「料理ってね、人に食べてもらうのが一番嬉しいんだよ」
だから気にしないで、と。
もう一つ唐揚げを持っていく彼。
こちらは卵焼きを箸で摘む。
「野菜も食べなきゃだめだよ」
恐らく獣人の彼。
必要な栄養は一緒かどうかはわからないが、曲がりなりにも人の姿をしているのだから野菜も食べた方が良いと思う。
多分。
■レニー > 「そういうもの?」
美味しければ一緒な気がする、と言うかそういう事はあまり考えたことがなく。
美味しいものは美味しく食べればいいと大雑把。
美味しい美味しいと唐揚げを食べて。
「……箸、ある?」
野菜もと言われると返すのは他にもお箸はあるかという問いかけ。
煮物ももちろん食べたいのだがお箸がないとと困った顔になって。
ちなみに何でも食べれるものは食べたりする。
■柊真白 >
「そういうもの」
自分で食べるために作る人もいるだろうけれど、それでも自分が作ったものを美味しいと言って貰えるのは嬉しいだろう。
箸はあるか、と言われてぱちくりと瞬き。
自分の持っている箸をじ、と見て、
「――はい」
渡す。
■レニー > 「覚えておく」
自分で作ったものを食べてもらうとうれしいのか。
そう言うことは思い返せばした事がなく、本当にそう感じるのか機会があれば試そうと考え。
唐揚げや卵焼きはともかく煮物は箸が欲しく。
「ありがとう」
渡された箸を素直に受け取ると煮物に箸を伸ばしてパクパクと美味しそうに食べて。
■柊真白 >
「君も作ってみると良い」
料理は楽しい。
美味しいものをいつでも食べられるし。
「ごはんも食べていいよ」
弁当箱の半分ほどを占める白米。
まだ四分の一ほどしか手は付けられていない。
と言うかなんなら全部食べてもいい。
■レニー > 「料理は一応できる」
出来るといっても焼くか煮る程度、料理と言っていいか悩むものではあるが自分では料理。
ただ味はお察し。
「じゃあ、少しだけ」
唐揚げ、煮物と食べて次は卵焼き。
これも美味しくて箸が止まらず食べてしまい。
ご飯もと言われると白米も口に運び、自分とは違いきれいに炊けているご飯にした包みを打ち。
「美味しかった…これで十分」
そうしてだいたい半分ぐらい食べた所で満足したと箸を返して。
■柊真白 >
「じゃあ人に食べてもらうと、わかるよ」
人に食べてもらって美味しいと言ってもらう楽しさは、やはり経験しないとわからないだろう。
友達に作ったものを食べてもらったり。
「どうぞ」
彼がお弁当をムシャムシャ食べるのを眺める。
なかなかいい食べっぷりで、見ているだけで楽しい。
「おそまつさまです」
箸とお弁当を受け取って、改めて自分で食べ始める。
今日のお弁当は中々自分でもいい出来だと思う。
■レニー > 「…今度試してみる」
そこまで押されると試してみたくなる。
きっと今食べたお弁当のように美味しくはないだろうが作って誰かに食べさせてみようと決めて。
もう後の夕飯よりも今の美味しいご飯、これは食べなければと食べ進め。
その勢いはなかなかに早く、白米やおかずがどんどん消えていく。
「凄く美味しかった。ご馳走様」
箸を返せば食べ始める姿を眺め、ふとあることに気が付き。
「俺はレニー、よろしく」
名前を名乗ってなかったと気が付いて食べている姿を眺めながら名乗り頭を下げて。