2020/10/18 のログ
ご案内:「第二教室棟 ロビー」に火光雷鳥さんが現れました。
■火光雷鳥 > 「あ~~~~…マジかぁ…。」
そんな憂鬱そうな呟きを漏らしながら、教室棟のロビーの隅っこの一角にて。
ソファーに座り込んで背中を預けながら天井を仰いで嘆く赤毛赤目の少年が一人。
手には一枚のプリント用紙を持っており、改めて視線を天井から手元へと向けるが…何度見ても記載された内容は変化していない。当たり前だ。
「……『魔術素養:無し』って…魔術方面の講義受けてる意味あんましなくね!?」
ちょっとした魔力の質や量を判定して貰えるという事で、学園の機関に申請して試しに受けてみたのが1週間ほど前の事。そして本日届いた結果がこちらです。
「素養ってこたぁ生まれ持った素質って事だよな…え、マジで?魔力が欠片もねぇの?いや、あってもつまり使えないって事だよな…うっそだろオイ…。」
他のクラスメートでも何人か受けていたので、詳細は兎も角結果だけ聞いてみたが…魔術素養:無しは自分だけだった。
…うん、俺は凡人でいいんだけどそういう所まで凡人なの?むしろ、逆にレアじゃないのかこれ?
「…異能はありふれてて弱いし、魔術は素養がねぇし…知識面で頑張る…いや、付いて行くのがやっとだしなぁ…。」
おい、何だこの行き詰まり感。軽く頭をくしゃくしゃと掻いて溜息を零す。とはいえ、素質が無いのはどうしようもない。
■回想:クソ親父との通話 > 『は?雷鳥なんだお前、魔法とか使えないの?素質ゼロ?だーーーはっはっは!!ウケる!!』
「よーーし、上等だクソ親父!帰省したらぶん殴ってやるから覚悟しとけやゴラぁ!!」
『ハッ、貧弱ボーイがこのマッスル帝王の俺に適うとでも思っているのか?』
「あ、母さんとタッグ組んで凹るから。俺が金的潰して…んで、母さんが関節技で」
『鬼か貴様ぁ!!』
こんなやり取りがあったのがつい1時間くらい前の事。微笑ましい父子の会話だ。珍しくもない。
■火光雷鳥 > 「……冷静に考えて、父親がマッスルで母親がやたら関節技強いのって、一般的な家庭なんだろうか。」
思わず真顔で考え込んでしまう。…いや、でもこの島の基準で考えたらむしろ地味じゃねぇだろうか?
ついでに言うと俺も地味だし凡人だが。あ、髪と目の色は不可抗力だ、見逃してくれ。
しかし、参った…魔術の講義も何とか自分なりに必死で食らい付いていたのに、急激にやる気が失せてしまった。
異能?異能はお察しだ。この前、何で水の能力を使う某くらげさんに勝てたのか全く分からない。
と、いう訳で現在はソファーの隅っこでぼっちな一時を過ごしながら黄昏ている訳だ。
流石に、この時間帯だと夜更かしボーイやガールも多そうなロビーも静かなものである。
「ただでさえ油断したら補習行きかねないレベルの成績なのに、どうしたもんかな…別にすげぇ魔術使いたい!って訳じゃないんだが…。」
こう、『貴方は魔術の素質が全くありません』という結果が出ると少し堪える。せめてちょっぴりこう、何か無いの!?と、思うけれども。
「…何度見ても結果は変わらねぇよなぁ…まぁ、元々異能の制御あれこれでこの島来た訳で…。」
魔術が使えなくてもしょうがないといえばしょうがない。あ、でも異能は異能で問題があった。そう、異能名である。
「つーか、『紅蓮の支配王』って名前初対面の女装男子君にも知られてたし、勘弁してくれよ…あと、アレで女装とか反則だろ常識的に考えて…。」
頭を抱えた。地味に忙しくてウザい独り言かもしれないが見逃して欲しい。これでもマジでショックなんだ。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」に綿津見くらげさんが現れました。
■綿津見くらげ > 「しけた面をしているな。
雷鳥。」
いつの間にか近くをふわふわと浮遊しているのは、
件の水使いの少女、綿津見くらげ。
「……。」
ふと、雷鳥の手元の紙を覗き見。
そこに見えるは、『素養無し』の字。
「……ふふ。
それか。
原因は。」
慰めるでもなく、
ただいつもの緩い笑顔を浮かべて雷鳥を見下ろすのであった。
……ちなみに、同様のテストを少女も受けたが、
魔術素養は無い訳ではないが、高くは無く……
有体に言えばダメダメであった。
■火光雷鳥 > 「うぉっ!?…って、くらげか。お前さん何時の間にそんな近くに。あと相変わらず常に浮いてんのな…。」
分かり易いくらいに驚きながらもそちらに顔を向ければ、相変わらずふわふわした緩いガールが居た。
そう、彼女こそ綿津見くらげ。先ほどちょっと出た某くらげさんその人である。
あと、自分の数少ない友人であり多分、一番交流があるのではなかろうか?
「…ぐっ…!そーだよ!この前、申請して判定して貰ったら見事に魔術の素養無しだとさ!」
手元のプリントを覗き込まれれば、慌てて隠そうとするが後の祭であり。
半ば自棄を起こして肯定する。別に慰めとか欲しい訳じゃない。…まぁ、嘲笑とかも嫌だけど。
でも、慰めるでも馬鹿にするでもない、相変わらずのマイペースな友人の態度はちょっと有り難かった。
「…で?くらげはこんな時間にどうしたよ?…いや、お前マイペースだから何時もフラフラしてそうだけど」
この場合、フラフラ歩き回るんじゃなくてフワフワ浮遊移動してるんだろうけど。
溜息混じりにプリントを乱暴に折り畳んで制服のポケットに捻じ込みながら尋ねよう。
■綿津見くらげ > 「浮かび漂うモノだ。
くらげは。」
何を当然の事を、と言った具合に言葉を返し。
「くく……。
まさか。
この私よりも低いとは。」
殆ど魔術素養の無いクセにマウントを取ってくる。
0に勝った所で自慢にもならないが。
「どうもこうも無い。
終えた所。
雑用を。」
ここ何日か、校内の掃除などの雑用で忙しかった少女。
「罰。
水道を壊した。
この前。」
というのも、
丁度雷鳥と初めて会った時に、
(些細な行き違いから)公園の水道をブチ壊したため、
風紀委員に叱られて罰を受けていたのであった。
しかし、それも今日で終わりなのであった。
■火光雷鳥 > 「…おぅ、格好付けてるけど、何かパッとしなくね?それ。」
浮かんで漂うだけって、まさに名前の通りのクラゲでは…いや、くらげだから正しいのか?謎の命題発生。
相変わらずこう、マイペースで独特なノリだ…よくコイツと友人になれたな俺。
「いや、お前そこでマウント取るの止めない!?そもそも今の発言からして、くらげもあんまし素養ねーだろ!!」
『この私よりも低いとは』と彼女は言った。俺が0だからつまり1とか2とかそういう低いレベルなのでは?
まぁ、自分のように完全に無い、という訳じゃないだけマシなんだろうが。
「雑用?こんな時間に?……罰…水道を壊した…あぁ!俺と初対面の時のあれか!!」
勘違いした挙句に見事に水道をぶっ壊してましたねこの友人。俺も事情聴取はされた。
幸い、こちらは水の能力は使えないし、水道を破裂とか無理なので嫌疑は直ぐに晴れたが。
「…つーか、地味に長い期間罰食らってたんだなお前…まぁ、公共物破損だからそれなりにアレかもしれんけど。」
呆れたようにくらげをジト目で見るが、まぁ彼女のマイペースは初対面とこの前の手合わせで身に染みている。
……ん?手合わせと言えば思い出した。
「そーいやさ。この前の模擬戦闘。勝った方が負けた方に命令?出来る賭けだったけど一応は俺の勝ちだよな?
――って、事はくらげに何か命令してもいいんだよな?」
危なかった、俺はなんて大事な事を忘れかけていたんだ!!
■綿津見くらげ > 「パッとしないモノだ。
くらげは。」
……そうなのか?
ふわふわと曖昧な存在、ではあるが。
「ふ……。
驚け。聞いて。
判定Eだ。」
満を持しての最低評価。
驚きである。
「まぁな。
雑用で済んでよかった。むしろ。
修理費、高すぎ。」
目の玉が飛び出る様な弁償費用を提示されたので、
素直に雑用に甘んじたのであった。
「ん。
そういう事にしておいてやる。」
一応は負けを認める。
しかし、負けたクセになんだか偉そうだ。
「命令。
いいだろう。
来い。何でも。」
何でも……。
この少女の事だ、本当になんでもしかねない。
■火光雷鳥 > 「えぇ…自分でパッとしないとか言うかぁ?お前、見た目は普通に美少女じゃん…。」
性格?性格は…ま、まぁマイペースな不思議ちゃんでいいんじゃないかな!多分!!
そして驚きの判定結果である。ちなみに魔術素養無しの俺はZ判定である。おい、Zって何やねん終わってるやんけ。
「いや、E判定って俺みたいなの除いたら一番下のレベルじゃなかったっけ?
あと、公共物破損は地味に高くつくって聞いたぞーー…まぁ、風紀よりもインフラ整備とかやってる生活委員?の範疇だろーけどさ。」
まぁ、事情聴取したのは風紀委員なんだけど。…風紀は警察ぽくてやっぱ苦手だ。
「…うん、何か負けたのに偉そうなのはお前の芸風っていう事にしとくけどさ?
女の子が何でも、とかあっさり割り切るのはいいのか?俺、お前の今後が心配になるんだけど…。」
何でも、と聞いて喜ぶよりむしろ心配になる。コイツ、絶対後で後悔してそれを直ぐに忘れるタイプじゃなかろうか?
とはいえ、折角の賭けの勝利だ。何もしないのもそれはそれで勿体無い気がする!
「何でも――何でも、かぁ。むーん…。」
腕を組んで考え込みながらくらげを見る。小柄で細身だが矢張り美少女だ。
…あ、いかんちょっと青少年特有の妄想が爆発しそう。よーし落ち着け俺!
「そうだな、じゃあエ…ごほんっ!えー…あー…よし、じゃあくらげの部屋に一晩泊まりこみ添い寝付きでどうだ!!」
びしぃっ!と、くらげに指を突き出して言ってみた。……いや、勢いで口にしたけどこれはこれで大概では??
■綿津見くらげ > 「美少女。
……やはり、そうか。」
謙遜するどころか、認めてしまう。
美少女と。
……確かに見た目はそれなりだが、しかし性格が独特過ぎる。
「一番下。
ぶっちぎりで。
まぁ、魔術なんて別に要らん。
気にするな。お前も。」
大胆に割り切る少女であった。
「心配するな。
特に問題なく生きてきた。
これまでも。」
……本当に問題なかったのだろうか。
きっと問題だらけの人生だった気がする。
「エ?」
……そこには食いつかない方が良い。
「容易い事だ。
いいだろう。」
一瞬もためらうことなく快諾!
仮にも年頃の少女が無防備すぎる。
■火光雷鳥 > 「…うん、お前絶対否定しないであっさり肯定すると思ってたよ…ほんと、イイ性格してるよなぁ、くらげは。」
その精神のタフさ?みたいなのを俺にも分けて欲しいくらいなのだけど。
あと、容姿は美少女だがこの性格は曲者過ぎないだろうか?いや、この島ってアレだからもっと個性的な女の子とかゴロゴロ居るんだろうな…と、少し目が遠くなる。
「気にするなって…まぁ、この島に来るまで別に魔術とはほぼ無縁だったし、そうなんだけどさぁ。」
流石に彼女みたいに大胆きっぱり割り切れるほど達観してはいない。
無くても問題ないかもしれないが、それでも「お前は落ち毀れだ」と宣言されてるみたいで…。
ただ、まぁ俺は所詮は凡人でそれを大事にしたい。だから、時間はまだ掛かるが受け入れて割り切るしかないんだろう。
「…むしろ、今まで問題無く生きてこられたお前の幸運がヤバい気がするんだが。
…あ、それは何でもないから気にしないでいいからな?」
エロい事、と言いそうになった自分に悲しくなる。でも年頃だからしょーがないじゃない!!
「即答!?お前躊躇ねーの!?俺にお…襲われるとか考えない訳!?」
こう、まぁ、その、そういう意味で!!ちなみにこのチェリーボーイにそんな度胸があるかはまた別の話だが。
むしろ、堂々と受け入れるコイツは男前過ぎるんだけど…いや、冷静に考えて。
(…女子寮を訪ねて、くらげと添い寝――俺の方が色々と持たなくね!?)
今更である。
■綿津見くらげ > 「うむ。
褒めるが良い。
もっと。」
きっと、雷鳥は褒めている訳では無い。
「炎の能力があるではないか。
お前には。
充分だ。それで。」
この私を破った力なのだからな、と付け加える。
………言うほど、「この私」に勝った事は大した事では無いが。
「配られたカードで戦うしか無いのだ。
この浮世は。」
などと、妙に達観した人生観を語るのであった。
「エ………?
……何でもないのか?
そうなのか??」
始末の悪い事に、やたらと食いついてきやがる。
「次は勝てると思うな。
命を賭してかかってこい。」
雷鳥の言う「襲う」とは恐らく別の意味で解釈している様子。