2020/11/03 のログ
ご案内:「第二教室棟 教室」に白泉椿丸さんが現れました。
■白泉椿丸 >
始業の合図が鳴り響く。
教壇にいるのは、クセのある桃色の髪をポニーテールできゃわいくまとめたオカ…乙女だ。
本日はマストアイテムとしている翼を模したロングケープに合わせ、紅葉のように着飾っている。
とはいえ、乙女の表情は柔らかくとも真剣であった。
注目が集まったころ、雛菊色のルージュで彩られた唇が開かれる。
「余計なお喋りはもう、いらないわね。ようこそ、アタシの授業へ。
今秋から魔女薬を教えることになった、白泉椿丸(しらいずみ・つばきまる)よ」
オカマ特有の甲高い作り声ではなく、自然そのままの声。
魅力的低音で語られるは、この授業での目的。
■白泉椿丸 >
「とはいえもう、暦上では冬が隣に座っているようなものよね。
この時期は過ごしやすくて良いけれど、気温差で風邪をひいてしまう子も多いと思うの。
だから、まずは……のど飴をプレゼントさせて頂戴な♡」
乙女の手が高く掲げられ、パチンッと良い音を立てて鳴り響く。
その姿はまるで彫刻のように凛とし、(無駄に)インパクトの大きい一瞬であった。
しかし、音が鳴り響くのと同時に――
――授業に出席していた生徒の眼の前に、紅く色づいたもみじの葉と共に飴玉が現れた。
晩秋の夕焼けを思わせるような、何とも味わい深い橙の、美しい飴玉だ。
「今届けさせてもらったのど飴は、ただののど飴じゃないわ。
魔女薬の技術を応用して作ったのど飴よ。作製するにあたり、使用したのは粉砂糖と…このフラスコのみ」
そう言って見せたのは、丸く大きなフラスコだ。
年季は入っているが、大切に扱われているのが分かるほどによく磨かれている。
乙女が手の中でくるっとそれを回して硝子底を見せると、何やら刻印があるのが分かるだろう。
フラスコをピンと弾いて音をたてながら、にこっと笑って乙女は語る。
「丸フラスコに刻印がされているのは、見えるかしら。
あとで後ろの方にも回してあげるから、今見えない子はそこで観察してネ」
「このフラスコにはね、魔女薬を作製するにあたってとっても大事な要素が付与されているのよ。
"魔素"や"マナ"と呼ばれるもの、または"妖精元素"などを収集し、エッセンスに変換して留めておく機能を果たしているわ。
本来ならば魔法や魔術で補う過程を自然に存在するものでまかない、時に増幅させて――"薬"とする」
乙女はチョークを握り、ぱぱっとその図を描いて見せた。
何度も書いたことがあるのが良く分かる、慣れた手つきだ。
■白泉椿丸 >
「もちろん、絵本に描いた魔女のようなこともあるのよ。
大釜に爬虫類の尻尾やカラフルなキノコを入れて、よく煮詰めるような作業がね。
でも、そんなのは魔女薬という製薬分野では、ほんの一部のこと。
アタシがあなた達に教えるのは、魔法や魔術がポンポンと咲くような華やかな技術ではないわ。
そのかわり、ちゃんと学んでくれれば魔力や素質が無くとも "魔法と同等の効果を得る薬" が作れるようになる。
翼を生やすことはもちろん、小瓶を振るうだけで夜空が真昼のように輝くようなお薬が。
…アタシは、その入り口をあなた達に用意するガイド。
数百年の時を蓄えた森の知恵を、少しでも多くの人に分ける為のカンテラ」
フラスコを手前の生徒に渡し、観察を終えたら次の子へ回してあげてと伝えた。
魔法陣とは似ているが、しかし決してかぶらない不思議な刻印を、その目で見てもらうために。
なお、乙女は用心深い。フラスコにはバッチリと保護魔法がかけてある。