2021/02/02 のログ
ご案内:「第二教室棟 ロビー」に朝宮 小春さんが現れました。
朝宮 小春 > 悩んでいる。
ここで声をかけるのは教師の務めである。ええ、それはもう当然。
ただ、この「声をかける」ということは割と曲者である。
単純そうに見えて奥が深い。 特に、いつも質問をしてくるような生徒ならばまだしも、そうではない生徒ならなおさらだ。

「こほん。」

一つ咳払いをして。

「どこで悩んでるのかなー?」

天井を見上げたら、そこに顔がにょき、っと生えて目をぱちぱち。至近距離で見下ろす生物教師。
声かけるの下手だった。

杉本久遠 >  
「――おおっ!」

 至近距離に女性の顔!
 思春期の男子なら動揺しないではいられないシチュエーション!
 しかしっ!

「朝宮先生!
 これは良いところに!」

 この男、微塵たりとも動揺せず、朗らかに笑顔を浮かべるのだ!
 仰ぎ見た姿勢かた微動だにする事もないぞ!

「いやあ、ははは、部活の事で少しばかり困ってたんですよ。
 もう今月になってしまうんですが、試合があるもので!」

 机の上のノートには、なにやら選手らしい人名と共に、特徴や性格などなど、事細かに分析され様々なチェックや、注釈が入っていた。

 なお、久遠は幼少期から学園に通っており、教師陣の中でも知っている教師は多いだろう。
 そのため、久遠の成績が常に赤点ギリギリ、追試にならないのが不思議なくらいであると知っていてもおかしくはない。
 特に生物や理科と言った一般科目であれば、授業態度こそ至極真面目だが、成績が危ういと知る機会も少なくないだろう。
 

朝宮 小春 > 「いいところに?」

はて、と首をかしげながら相手の話を聞けば、少しばかり苦笑をする。

「勉強のことかと思ったんだけどなぁー。」

少しばかり困った顔で笑いながら、まあ、そうよね、と頷く。
ええ、何かに打ち込んでいるのならば、ほかのことは多少遅れてしまっても仕方ないというか、よくあるというか。

大学時代にたっぷりと経験済みの根っからの研究者。
うん、うん、と頷いて。 割と理解のある方の教師。

「………それで、実際に何に悩んでいるの?
 いいところに、って、私の運動神経くらいは知っているでしょう?」

金づちでおぼれたとか、ソフトボールをして腰をやったとか、バレーボールして突き指をしたとか、前屈で90度以上曲がらないとか、肩に鉄板とか、絶望的な逸話ばかりがある教師。

杉本久遠 >  
「だはー、勉強はー、勉強は――しないとだめですよねえ」

 苦笑されると、久遠もまた痛いところを言われたとばかりに苦い顔。
 勉強、してないわけではない。
 ないのだが、苦手なのだった。

「先生は少しずつ身体づくりをしていけば、大丈夫そうに思いますよ!
 適度な運動は肩こりにも腰痛にも効果的なのは医学的にも証明済みですから!」

 「ぜひ一緒にランニングしましょう!」と親指をぐっと立てた。
 さて、久遠が何に悩んでいるのかという話だが。

「いやあ、今度の大会、アマチュアとは思えないレベルの選手が何人か出場するんですよ。
 去年も強かった選手なんですが、ますます強くなってるのは凄いとしか言えませんな!
 伝手から試合動画も貰って分析してたんですが、いやー、勝てる未来が見えませんね、だはは!」

 と、示したノートにはびっしりと文字が書き込まれている。
 これくらい勉強にも熱があれば赤点ギリギリになんてならないだろうに、と思えるほど。

「良いところに、というのは大したことじゃないんですが。
 先生なら、まるで勝てそうにないと思えるような相手に出会った時、どうするのかと!
 是非とも経験豊富な朝宮先生の意見を聞いてみたい次第で!」

 

朝宮 小春 > 「そうよー、勉強はしないと。実際問題スポーツにおいても、将来教える側になった時に有用だもの。」

元々射撃はそこそこ得意だった教師。今は見る影も無いが。
その時に言われた言葉を丁寧に繰り返す。

「………う、うう、それはまあ、そうかもだけど。」

最近は階段を一気に駆け上がるだけでぜいぜいと息が切れる。
これはもうダメかもしれない。
ランニングとかついていける気がしない。

「…………なるほど。
 勝てる未来が見えない相手、ね。」

相手が本気で分析していることが見て取れれば、そうね、と顎を撫でて考え込む。
そんな時に「気合だ」とか「諦めるな」とか、そういうことは口にしない。

「………勝てそうにない相手と戦うのは、まあ、よくあるのはよくあるけれど。
 …その場合は、負けても納得できる負け方を自分の中で作っちゃうことが多い、かな。

 あれだけは負けないとか、ここだけは負けないとか。」

杉本久遠 >  
「おお、なるほど、教える時に――それは疎かにはできませんな!」

 久遠はごく単純である。
 特に今は新入部員が入ったおかげで教える側にもなるのだ。
 その理由は大いに、学ぶ理由になってしまったのだった。

「――なるほど、納得のできる負け方ですか。
 うむ、たとえ勝てずとも、全力を出し切った上でなら悔いはない!
 だはは、やっぱり悩んだ時に頼れるのは、先達の言葉ですね!
 なればやはり、出来る事は全てやり尽くさねばなりませんな!」

 うむ! と力強く頷き、白い歯を見せて笑った。
 その様子を見れば、勉強はやはり後回しになってしまうんだろう、という予感が確信めいてする事でしょう。
 

朝宮 小春 > 「……負けるつもりで挑むわけじゃなくて。
 そうね………どんな相手でも、全てにおいて負けてるわけじゃなくて、長所も短所もあるでしょう?
 それと同じで、相手に「ここはすごいな」って思わせることができたらいいと思うの。
 点数だけで見れば80点と70点だと、80点の方が上だけれど。

 それこそ生物だけは満点とか、そういうのね。」

ゆっくりゆっくりと噛むように言葉をつないで、とりあえずがんばろう!の相手に苦笑を浮かべる。

「でもまあ、出来ることを全部やるのは大事なことね。
 それで、納得ができるものであれば………やった意味もあるもの。

 勉強を後回しにするなら、絶対納得するまでやりきること。 それくらいはしてくれないとね?」

なんて、ちょっと高めのハードルを提示して、ウィンク一つ。

杉本久遠 >  
「――俺が勝てる所、ですか」

 細い目が開き、濃い青が覗く。
 ほんの一瞬、その瞳がギラリと光ったように見えるだろう。

「――だはは、一つくらいそう思わせられたらいいですね!
 練習相手もいない弱小部活じゃ、中々上手くいきませんがね、だっはっは!」

 しかしすぐに、口を開けて可笑しそうに笑った。

「うぐ、勉強は――それはそれで何とかします。
 先生たちから誠心誠意教授してもらってるのに、試験を落としたら面目ない!
 勉強もなんとかして、部活にも全力で立ち向かいますよ!」

 ハードルは高ければ高いほど、飛び超える甲斐がある。
 そして、与えられたハードルをより高くして飛び越えようとするのが久遠という男なのだ。
 きっと今年は、試験の成績も――ほんの少しは良くなる、かもしれない。

「先生も、健康のために軽いフィットネスから始めましょう!
 よかったら運動メニューも用意しますよ!」

 と、誠実な女教師に笑いかける。
 

朝宮 小春 > 「ええ、勝てるところ。
 全部負けてるなら、それはそれ、どうしようもないし、それも経験があるけどね。」

とほほ、と少し笑いながら頬をぽりぽりとかく。
姉さんと母さんにはぐるっと360度勝てなかったな、と思いながらも、それはそれ。

「その意気その意気。
 それなら、勉強のことで悩んでいなかったことは水に流してあげましょう。」

えへん、と胸を張って先生らしく威張ってみましょう。
ただし。

「………その、用事が。 夜遅いと外には出れないし、朝は弱くて……。」

運動の二文字の前ではクソ雑魚弱気女教師になってしまうのだった。

ご案内:「第二教室棟 ロビー」から杉本久遠さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」から朝宮 小春さんが去りました。