2021/02/04 のログ
■杉本久遠 >
「なに大変な事はないさ。
好きでやってる事だしな」
もちろん苦心する事はあるが、それを大変と思ったことはない。
とは言え、スポーツをしない人からすれば大変そうに見えるのかもしれないが。
「――そうかあ。
そうかぁ、興味が持てないかぁ」
そういう反応には、まあ慣れている。
伊達にマイナースポーツを続けているわけじゃないのだ。
しかし、目の前できっぱり言われると、それはそれで落ち込むモノだ。
「まあうん、仕方ないよなあ。
競技自体もマイナーでしかないからなぁ」
と、苦笑しながら、肩を落とすのだった。
■雨見風菜 > 「そうなんですか」
感心した、と言わんばかりに頷く。
確かに、傍から見て大変そうでも本人からすれば楽しくやってるというのはよくある話。
「確かに、あまり聞くことはないですね。
だから先入観で決めつけてるのかもしれません」
食べ物で言えば、イメージの先行した食わず嫌いのようなものだろう。
落ち込ませるつもりはなかったのだが、落ち込ませてしまった。
「エアースイムの、どういうところが好きなのか伺っても?」
こういうときは、先に歩み寄るものだ。
■杉本久遠 >
「――どういうところが好きか、かあ」
うつむいた首を上げて、少し考える。
地力で飛べる、興味もあまりない、という相手に伝えるなら、どの要素だろうか。
好きなところはいくつも、いくらでもあるのだが、さて。
「そうだなあ、例えば体格差、例えば性差とか。
大抵の運動競技はレギュレーションってものが分かれているだろう?
近年じゃ、多くのスポーツでも異能の有無や、異邦人か地球人か、で分けられてしまう事も多い。
だが、エアースイムにはそういったレギュレーションが存在しないんだ。
だからこそ、どんな相手とも対等に、自由に競い合う事が出来る。
オレはそういうところに、魅力を感じるな」
うむ、と頷いて話す。
種族の違いや異能の有無に関わらず、同じ舞台、同じルールで、全力で競い合う事が出来るというのは、他の現代スポーツにはあまりない要素だ。
■雨見風菜 > 「なるほど、無差別、平等なチャンス……。
夢のあるお話ですね」
語る彼の言葉には、さほど引きずり込まれなかった気がする。
そもそも、自分が興味を持てないは、もしかすると相性が悪いのだろうか。
いや、まだ決めつけるのは早いだろう、とかぶりを振る。
「それは、つまり……女子や、体の小さい相手でも油断できない、と」
■杉本久遠 >
「夢があるかはわからんが、誰でも同じステージで競い合えるというのは、スポーツとしては貴重に思う所だな」
そういった懐の広さというのは、間違いなくこのスポーツの魅力の一つだろう。
「ああ、もちろんだ。
去年の世界大会で準優勝した選手なんて、150センチ未満で小柄な少女だ。
年齢も、アマチュアでは十歳未満から、最年長だと七十台の選手もいる。
まあそこまで行くと、流石に体力的な差はどうしても出てきてしまうがな」
そう少女には答えるだろう。
■雨見風菜 > 「150センチもない小柄な少女が、準優勝……。
今までのスポーツからはなかなか考えられませんね」
彼の話では、競技を行うことには未だ興味は持てない。
だが、見ることには興味が出てきた。
と、ここで携帯端末のアラームが鳴り出す。
「あら、もうこんな時間……すみません、私は用事があるので行きますね。
お話、ありがとうございました」
そう言って、水筒を『物体収納』して立ち上がる。
そのまま歩き出す……前に、何かに気づいて振り返る。
その様に、横から見ていた別の男子生徒が見惚れたのは別の話。
「私、雨見風菜と言います。
また、縁があればお話しましょう」
■杉本久遠 >
「ああ、そういう懐の広さっていうのが、エアースイムの良いところの一つだと思うぞ」
そう話しているうちに彼女の端末からアラーム。
なにか用事の合間に立ち寄ったというところだろうか。
「おお、こちらこそ。
少しは興味を持ってもらえたならいいんだがな。
もしよかったら、大会にも遊びに来てくれ」
そして水筒が消える様子に、おお、と声を漏らし。
「オレは杉本久遠だ。
ああ、またな雨見」
そう言って、去る姿を見送るだろう。
■雨見風菜 > 「ええ、観戦を考えるくらいには興味が出てきました。
それでは失礼します」
そう言って、風菜はロビーを後にするのであった。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」から雨見風菜さんが去りました。
■杉本久遠 >
「――ふう。
まあ、少しでも興味を持ってくれたのなら、上出来か?」
まったく興味がない、という相手に少しは関心を持ってもらえたのだから、十分な成果、と言えない事もないだろう。
話してる間に少し温くなってしまったゆずれもんを一口飲んで、再び手帳を眺める。
「もう少し休憩するか。
メニューも考えないといけないしなあ」
そう呟き、手帳を眺めながら、時折首を傾げ、小さく唸り。
そんな事を繰り返しながら、ロビーのテーブルで時間を過ごしている。
■杉本久遠 >
「――さ、て。
そろそろ行くとするか」
手帳をポーチにしまって、久遠は再び寒空の下へと出ていくのだった。
ご案内:「第二教室棟 ロビー」から杉本久遠さんが去りました。