2021/12/01 のログ
■崩志埜 朔月 > 「あ…」
月の変わり目、たった一枚講義スケジュールを印刷しようとしただけなのに。
表示されたのは用紙切れの文字。
「これも運ですかね」
今朝見た星占いの結果を思い出して所在なさげに肩を落とす。
今更結果一つで一喜一憂するような事こそないけれど、
何かがあれば紐づけて見たくもなるという物。
A4用紙、セロハン、養生テープ……
ついでとばかりに共用の備品の残量を確認していく。
「……補充したばかりのはずなのですが」
ボールペンが数本無くなっている。
盗まれた、という物でも無いのだろう。
借りたままになっている。
規定に基づいて開封したはずのボールペンがいつの間にかキャラ物と入れ替わっている事すらあるのだから、
気に留めだしたらキリがない。
ご案内:「第二教室棟 職員室」に釜雲 蓮司さんが現れました。
■崩志埜 朔月 > もう随分長く働いているらしいプリンターの蓋を開け、紙束を差し込む。
干からびた植物に水を与えたかのように、鈍い機械音と共に電源が立ち上がり、勢いよく印刷を始める。
「これで、よしっと」
吐き出された紙を手に取る。
が、熱の残るプリントに記載されたのは郷土史のプリント。
はて、と首を捻りプリンターを見やるがプリンターはガシャン、ガシャンと、
絶え間なく音を鳴らしながら勤勉に働いている。
(これは……)
慌てて印刷予約を確認すると、その数431枚。
そう――誰も、補充していないのである。
■釜雲 蓮司 > 今日もまた数学を一人で任された
とはいっても今日は一年から二年の合同授業だったのでいくらか楽で
生徒にもしっかりと向き合えた自信がある
満足気に 鼻歌を小さく歌っていたのだけど、職員室
その前へとやってきたら 鼻歌を止め扉を開け入っていく
「……あ」
そういえば 朝にボールペンを借りたのを思い返して返そうと 借りた場所へと向かう
して、ボールペンを返せば プリンターの音が聞こえる
そちらに顔を向けてみれば見覚えのある顔が見えて 首を傾げた
「もしかして、志埜……?」
違ったら 謝ればいいだろうが、見間違いでなければ
昔同じく教職課程を勉強していた人物だろう
困っているように見えて 確認がてら近づいて
「なにか手伝う……いますか? 志埜さん」
声をかけてみよう
■崩志埜 朔月 > 郷土史、物理、英語に古文……
今となっては必要なのか否かも分からぬ印刷物が山と積まれていく様を唖然としながら眺める。
停めても良いのだがどれが必要な物か等この場で判断が付く物でも無い。
そうして、またエラーの音。
用紙を補充してください。
「沢山、入れたつもりだったのですが……」
プリンターの飲み込めるいっぱいいっぱいまで詰め込んだ。
ちなみにチラリと見たが自分の印刷した物の番はまだ遠そう。
呆気にとられて立ち尽くす耳に懐かしい声。
人の良い、良く通る温かみのある音。
「あら……お久しぶり、ですね――釜雲先輩」
問い掛けるように呼ばれた名は今はもう旧く。
名乗る事も禁じられた懐かしい響き。
無意識に声に出してから、ややあって訂正する。
「今は釜雲先生、でしたね」
夢、叶ったのですねと小さく。
名簿で見て、新任の先生が着任すると聞かされて、知っていた。
人違いかとも思ったが、会って旧知の相手と確信できた。
「すみません、用紙を切らしてしまったようで……」
困ったように眉を下げるが、お手上げとでも言いたげに表情は柔らかく笑みを浮かべる。
■釜雲 蓮司 >
やっぱり見間違いではなかった その事がとても嬉しく
胸の内が暖かくなる 久しぶりに呼んでくれた 先輩 の言葉
それも拍車をかける
「随分と久しぶり……ですね。あいも変わらずお綺麗だ
いや、綺麗さに磨きがかかりましたね」
教材を手にしたまま 相手の顔を眺め 本心を吐く
声も、生真面目さを感じるもののどこか温かい綺麗な声
昔から此方が変わらないのは口の軽さだけだ
「先輩、でも良いですよ?
あ、志埜さんのほうが先輩ですか
まあ、ようやっとですが叶いました」
随分と回り道をしてしまったけれど ようやっとこの場所に立てた
今は日々の忙しさに忙殺されているが それでも満足感は充分で
「――おや、そのようですね
えーと、郷土に物理に…随分溜まってましたね」
少し、呆れたような口調で
そうして、吐き出されていく印刷物を眺め
「これ、私が先生方に確認しますので……それと、用紙も取ってきますね」
待っててください、そう告げた後は用紙が置かれている場所へと向かおうとして
「どこでしたっけ?」
振り返って、確認した
■崩志埜 朔月 > 「きっ、きれ……!? あ、ありがとうございます……?」
懐かしさついでに思い出す。
そういえば突飛もなくこういった事を言ってのける人だった。
狙って言っている訳ではないのは知っているが、面食らう。
学生をやっていた頃には軽口程度と聞き慣れていたはずのそれも、今となっては完全に不意打ちだ。
「もう勤め始めてから随分経ちますから、ね。
貴方から先輩と呼ばれるとくすぐったいですよ。
お互い念願叶って『先生』になれたのですから、折角ですし釜雲先生と呼ばせてください。
お互いと言っても、私は思っていた物とは随分違った形に落ち着きましたが」
目の前の彼が不意に姿を消してから、何年経っただろうか。
同じ教室で指導を受けた輩は一人、また一人と島を離れていった。
本当に、お待ちしていましたよ。
声には出さずに胸の中で飲み込んだ言葉は、少しだけ心を若返らせるようで。
「ここまでになる前に誰かが補充していればこうはならないのですが、役回りでしょうかね……。
もう先生方のお顔は覚えられたのですか?」
人の事を良く見ているとは思っていた。
それでも着任からの日数を考えると驚きもする。
が、待っててください、と言った端から振り返る姿に苦笑する。
考えるより先に身体の動く人。
愛嬌というのだろうか、人好きのする顔と振る舞いに学生時代からよく視線を受けていたのに、
結局浮いた話はあまり聞いたためしがなかった。
「急ぎの用事もありませんし、おひとりでとは言わずに私にも持たせてください。
デスクに戻らない方もいますし。
大概の物は備品庫にありますが…鍵の番号はもう教わりましたか?」
職員室の隣にあるダイヤル式の錠前で閉じられた備品庫。
開錠自体はそう難しい物では無いが、肝心の番号を知っている人間の数は少ない上に、
懇切丁寧に教えてくれる人ともなれば更に少ない。
■釜雲 蓮司 >
「本心を言っただけですよ」
昔と違う反応で 少し驚いたが本心なのは本当で
それでも 驚いた様子を見れば 口元に手を当て くすくすと
そう言えば、教師の先輩に言われて口をもうちょっと重くすると
そう誓ったのを思い返して 小さく咳払いを
「どうやらそのようで……ああ、では先生と呼んで頂きますね?
お気遣いいただきありがとうございます志埜先生
あはは、随分と遅くなってしまったようで」
相手には何も言わずに消えてしまったから 申し訳なく
それでもこうして話せているのが嬉しく 笑みを嬉しげなものへと
そうして、相手の顔を見つめ続けていたが
「ふ、あはは…生真面目なのは相変わらずですか。安心しました
ええと、今出てきた科目の先生方は覚えてますので確認は大丈夫です
貴方の役回りを少し肩代わりさせてください」
昔から生真面目で、損な役回りを引き受けてしまう
それでも それは良き人柄故だろう 昔から周りに好かれていた
それを思い出しては 懐かしい気持ちを思い返し
嬉しげな雰囲気をまといながら 上機嫌に向かったものの
「そうですか? すみません、格好がつかなくて
ああ、備品庫ですか……いえ、教わっておりません。教えて下さい先生」
毎回忙しく送り出されていたがゆえに そういった話は聞けず
ここまで来てしまった がっくりと肩を落とし 相手へと着いていこう
■崩志埜 朔月 > 「誰にでも言っていると、いつか本命の方にも軽くあしらわれてしまいますよ?」
この人の言葉はトゲがない。
それでいて、うっかり刺さると抜けにくく厄介な程に甘い。
以前見かけたある先生の高まったテンションはこの人の仕業だったかと見当がついてしまった。
「えぇ、改めてよろしくお願いします、釜雲先生。
――お帰りなさい」
今更改まって握手をするような仲でもない。
かつて意地悪な問題に一緒に頭を悩ませた学友同士、
かける言葉があるとすればこれが正解なのだろう。
「っと、懐かしくて伝え忘れていましたが、今は崩志埜とお呼びください。
追い出された手前、本家の方に聞かれでもするとあまり良い顔をされませんので。
――結局、異能は発現しないままでしたから、売り物にならないのだそうで。
ですので! 今は崩志埜と。」
言いづらそうに、一つ伝える。
楽しくもない身の上話だ。
この話はお終いとばかりに無理に笑顔を作って声を張る。
「教師という物は生真面目なくらいが調度いいと、在学中は思っていましたが…
なってみるとなかなかどうして目が回る思いがしますでしょう?
流石、物覚えの良さは健在ですね。
では、こちらはお任せしてしまいますね」
良くも悪くも、教師の癖が強いのは在学中から変わりない。
とても教師らしからぬ恰好の男から数学を学んだ記憶も懐かしく。
「新任の先生に恰好をつけられては立つ瀬がありませんよ、まったく……
あまり気負わずに、ありたいと思うようにいてください。
釜雲先生ならきっとそのままで、生徒からは素敵な先生に見えますよ。
備品庫、皆さんむしろ知らずにどうやりくりしているのか不思議なのですが……
こちらです、先生」
カウンセラーが教壇に立たされるほどの人手不足だ。
新任だというのに大人数を相手に、むしろ上手く教鞭を取っていると感心する程に、
目まぐるしく働いているのは知っていた。
言いつつ、3桁の錠を前にメモを取れるように数字を見せてから、
必要な物を回収する。
200枚程度では足りないので、手を貸してくれたのは正直なところ大変ありがたい話だった。
■釜雲 蓮司 >
「おかしいですね、本心を言っているだけなんですが
ま、本命の方が出来ましたらたっぷりとお話させていただきますよ」
毎朝見ても飽きない だとか、と言ったが自分で微妙だと思ったのか首を傾げ
そうして 咳払いをした後 先生方になら良いかとも思い直し
知らない仲でもない 遠慮なく行こうと決めた
「はい、改めてよろしくお願いいたしますね
――ただいまです」
随分と時間がかかってしまったが
素敵な出会い達のお陰でここまでこれた
ただいま そう言ってくれた優しい相手へ頷きを
だが、しかしだ 耳に入ってきた言葉には 怒りを
それを見せるように笑顔がこわばった
「……昔から貴方は几帳面で優しく、器量も良いと言うのに
売り物にならない? まず売り物とはなんですか
電話の一つでもして殴り込みに――……失礼しました
今度愚痴でも聞きます……聞かせてください」
異能の一つや二つ無いからと言って それはあまりにも しかし
相手が割り切っているなら 口をだすべきではないのだろう
それでも、無理な笑顔が気になって そう告げよう
「ええ、全くそうですね 目が回る思いですが これがまた楽しくて
いえいえ、貴女の要領の良さには負けますよ はい、お任せください」
昔の授業中 教卓に足をかけて
図を説明しだす先生もいたのを思い返してクスクスと笑い
この学校では一癖二癖無いと駄目なのだろうか
「あはは、申し訳ありません……
ありがとうございます……先生も私に言う割に甘い言葉を言いますよね
……あ、はい」
素敵な先生に見える そう耳に入ったならば 少し顔を朱に染めよう
顔を教材で仰ぎながら 言われ慣れていない言葉
それでペースが少し崩れてしまった。
そうして、鍵の前へとたどり着いたら胸に挿していたペンを抜いて
きちんと番号をメモに取ろう すれば、できるだけ多く紙を持とうか
■崩志埜 朔月 >
「嘘が無いのが先生の良い所ですね」
遠慮なく突き出された言葉に呻きそうになるが、
少しずつ目の前の男の言葉を涼しい顔で受ける感覚が戻ってきていた。
彼の言葉をたっぷり聞かされよう物なら真に受けてしまうような子なら
どうにかなってしまうのではなかろうか。
最後に見かけた時の深く思いつめた表情はそこには無く、
「異能一つで戦争ができてしまう時代、求められていたのは
器量でも真っ当な性格でも無かったみたいでして。
勘当されて家を出て晴れてこちらの職についているので、
せいせいしていますよ」
しんどくなった時には、お付き合いしてくださいね? と笑う。
カウンセラーなどしていても、辛くなる時はある。
「えぇ、久々に顔を見ましたが安心しました。
いきいきとしているものですから」
瞳が、というには彼の糸目の奥はそうそう拝めるものでもなく。
言いつつ、手渡す書類は100以上の紙束。
二人で割ってこれなのだから、
1人で渡して回るにはあまりにも無理難題というものだ。
昔を思い返し、あれは酷かったと笑う。今も近しい態度の教師はいるのだが。
「甘い…でしょうか?
素敵な先生でありたいと願ったから、此処に居るのでしょう?」
言ってから、逡巡して自分の言葉を思い返す。
綺麗になりたいと大っぴらに願ったりはしないが、そうでありたいとは思う。
そこをくすぐられるからこそ、くすぐったくなるのだ。
人に言っておきながら、手前も似たような事をしていたかと自身で笑いそうになる。
「備品庫の扱いは、大丈夫そうですね。
悪用しない限りはおおよそ自由に使用して咎められるような物ははいっていませんから。
帰りにでも用紙は補充しましょう。郷土史は……少し遠いですし」
プリントの束の行き先の一つは別棟、とても近いとは言い難い距離だ。
「こっち、任せてしまっても大丈夫ですか?」
自慢では無いが、非力な類だ。
台車でも用意しなければこんな物を長距離に運べた物では無い。
随分と久しぶりにするおねだりは可愛げのない物で
■釜雲 蓮司 >
「まぁ、先生になってから嘘はないですね
そうやって褒めてくれるのが先生のいいところですよね」
先生になってから嘘はない 生徒とできるだけ本音で話す
これは心がけていることで 今の所嘘はついていない
これは、カウンセリングを受けたい生徒も多そうだ
そうして、思いつめた顔はそこにはなく
どこかせいせいとしたさっぱりとした顔だ
「崩志埜先生がそう言うなら よかったです
よく考えれば 自由に恋愛もできるか怪しいですしね?」
笑った相手の言葉 それには勿論と二つ返事で答えよう
「あはは、ありがとうございます
ええ、とても楽しいもので年甲斐もなくはしゃいでおります
それと、私は嬉しいです 崩志埜さんと再会できて」
昔の学友に再開できたのだから嬉しくもなろう
更にその人が穏やかに過ごしているのだから
そうして、渡された紙束は100以上
最近まで鍛えていたので此方は平気だが 一人で回るには無理だろう
「……そうですね
熱血教師になりたいと思っておりますし
いろんな生徒を助けたいとも思ってます 崩志埜先生もでしょう?」
こんな気持になるものなのかと 照れくさい気持ちになって
頬をかこうとしたが 手がふさがっているのでかけず はにかむのみだ
「ええ、お陰様で今度から使えそうです ありがとうございます
ですね、そうしましょうか
ああ、はい。こんなもので良ければ任せてくださいよ
後の仕事は余り残ってないので」
随分と久しぶりのおねだり それは随分と業務的であったが
これも先生同士ならではだろうと嬉しそうに笑い。
その場所へと向かっていくだろうと
ご案内:「第二教室棟 職員室」から崩志埜 朔月さんが去りました。
ご案内:「第二教室棟 職員室」から釜雲 蓮司さんが去りました。