2022/10/06 のログ
ノーフェイス >  
視線。それを受けると、赤い唇が薄っすらと微笑んで。
立てた指先で、下唇を左から右へ、そっと撫でてみせた。

「………」

曖昧な笑みで、言葉の真偽は濁しておく。
もとより記憶にないのなら、あってもなくても変わらないことだ。
女にとってはその程度の認識。

「ソレ以上のことはしてないから安心して~。
 寝てるとほら、リアクションも物足りないし? ちゃんと起きてる時にするから。
 でも、うっかりこんな誰が来てもおかしくないところで寝ちゃったら……フフフ、ねえ?」

組んだ脚をぷらぷらと揺らしながら、視線をふいに彼女の手元に。

「……お昼たべて、きもちがいいと……寝ちゃうんだ?」

両手の指で、カメラのフレームを作る。
そこにパンを納めると、しげしげと見つめた。

「秋になるとねえ、畑一面に、カボチャがならんでいるんだよ。他にも、いろんなものが。
 その時期にはお祭りがあって、その食べ頃のカボチャを煮崩して、ロールケーキを作るんだ。
 とっても甘くて……美味しいんだよ。 お砂糖もいっぱい入ってる。
 今でもきっと暖かい紅茶と一緒に飲むと、秋を感じられる」

両手をほどく。おどけるように掌を見せて。

朝宮 小春 > 「いやいやいや、ちょっともう、もう。もおーぅ!」

ぷんすこ怒りながらも、頬を真っ赤にして唇を押さえる。
生娘のような反応を返し、いや今時生娘でももうちょっと冷静である。

頭固いので、教師でいる間は教師で居続ける気持ちが強いので、それを崩されるとテンパるのである。
生真面目なのでガードが強いのだ。


「………だ、ダメですよ、ここ学校ですからね! ね!!
 いや学校じゃなきゃいいってことじゃないんですけど!!」

頬を赤くしながら、めっ、と説教をする。

「………うう、まあ、お腹いっぱいになると、まあ………。
 ………ハロウィーンのお祭りですかね。 いいですね、私もそれは昔見たことがあるような気がします。
 姉さんに手を引いてもらって。」

相手が明るく話すのを見ながら、何か思いを馳せるように。

ノーフェイス >  
「そう、ハロウィーン。もうちょっとで時期だよね。
 ボクのとこは、ふつうより……少しだけ特別なお祭りなんだケド。
 カボチャのケーキを食べるまえには、おっきいロブスターとか食べたりもした。
 だから、秋にはいい思い出、たくさんあるんだよね~」

説教もどこ吹く風、そういうのを受け流す、不真面目なやつだ。
真っ赤な顔を盗み見て、にやりと厭らしい笑いを浮かべるようなやつが鼻歌混じりに思い出がたり。
脚をぷらぷらと揺らしながら、懐かしむ様子に、寂しさなど微塵もなく。

「……小春、お姉ちゃんがいるんだ。
 やっぱり美人なの? 大きいの?」

その横顔に、楽しそうにして。
じゃあ――と、指をくるりと立てて、額のあたりにぴたりとあてて。

「それなら、幸せな時の夢がみられるように……おまじない。
 ちゃんとおうちで、暖かくして寝るんだよ?
 じゃないとボクみたいのに、ソレ以上のことをされちゃうから」

朝宮 小春 > 「もう……。」

ぷんすこ、不満そうにしながらもそれ以上は詰めない。
語る思い出が鮮やかに色づいているような気がして、それを邪魔する方が無粋に感じたから。
見渡す限りに広がる秋の色。
鮮やかな赤に、華やかな音楽が組み合わさる。
見たことも無いお祭りの景色。

「……ああ、ふふ。三つ子なんですよ。
 だから、私と全く同じ顔で、ほとんど同じ身長で。
 ちょっとだけ、私の方が重かったんですけど。
 だから、髪型変えないと勘違いされちゃって。」

ころころ、と笑いながら……そ、っと指が額に当てられる。
不思議そうな顔をしながら、じ、っと……その言葉を聞いて。

「………それ以上って、もう……っ!」

ぼ、っと赤くなって。

ノーフェイス >  
「すばらしい!ぜひ紹介して欲しいね……」

にまにま。
その顔に、出来のよい下心の色をうかべて。

「なんだよ~、本気で心配してあげてるんだぜ?
 すっごくきもちよさそうに眠れるひとだから、なおさら。
 目がさめて悲しい思いにつつまれるなんて、こっちの目覚めが悪くなっちゃう。
 ……これでよし。 きっと、なつかしい思い出と会えるはず」

指を離すと、触診を終えた医者のように具合を確かめ……離れる。
するりと立ち上がり、あくびを噛み潰すようにして。

「確かに、ずっとそばにいたくなる、春のようなひとだね。
 根を張っちゃうまえに、ボクはもういくね。
 今晩はカボチャのケーキと、砂糖のない紅茶をどうぞ。
 魔女が描かれたグラスかカップで頂けば、ボクがみたのと同じ景色を覗ける」

腰を折って、耳元に唇を寄せると。

「……つぎは"学校じゃないばしょ"で会おうね、小春?」

学校ではダメなんでしょ?

朝宮 小春 > 「あはは、今はちょっと遠いところにいるのよ。
 でも、そうね、姉さんなら会っても大丈夫かな。後はねえ、ちょーっと癖が……」

あはは、と苦笑い。マッドと天才と凡人とマッドな家庭だ。
なつかしくも、悲しい思い出も多い家庭であるけれど。

「………ん、じゃあ、そうしてみる。
 懐かしい夢は、ちょっと悲しい夢も多いから、楽しい夢が見れたらいいかな。
 まあ、その前にちゃんとベッドで寝ないとダメだけど。」

ころりと笑いながら、自制を込めた自虐を一つ。

「……ひゃ、んっ……!?」

耳元に囁かれる吐息と言葉に、びく、っと背中が伸びて腰がちょっと浮いちゃって。

「……こー、らっ!」

もう! っと立ち上がって。
実際に来たら、いろいろと自信が無い。

ノーフェイス >  
「ごめんねえ、かぼちゃの被り物の用意がなくて?」

怒られても、悪びれる様子はなく、そそくさと立ち去るのだ。
お菓子をくれなきゃ悪戯する、狂騒の精霊に倣って。

「目は覚めたー? 次は悪戯じゃ済まないからねー」

あっという間、夢が醒めるように。
それはその場から、いなくなる。
誰だったかも告げないまま、残ったものは秋風とおまじないだけ。

ご案内:「第二教室棟 屋上」からノーフェイスさんが去りました。
朝宮 小春 > その日の夢はとても甘くて。

おんなじ顔の姉妹三人が、並んで食卓について。

でもそれは目覚める間の僅かな時間。



ほろりと崩れる、温かい南瓜のようだった。

ご案内:「第二教室棟 屋上」から朝宮 小春さんが去りました。