2020/06/11 のログ
ご案内:「食堂」に小金井 陽さんが現れました。
小金井 陽 > 「ちーっす!今日もちょいとキッチンの端っこお借りしますッスね!」


そういって食堂から調理場に入ってきたのは、調理部として営業終了後の食堂で調理許可を得た銀髪猫目の男子。真っ白な服を着込んで、長めの髪を帽子にしまいこんで調理準備万端だ。

小金井 陽 > 「卵を五個割りましてーの、ボウルに卵白冷やしましてーの…冷凍庫っと…」

ちゃっちゃかちゃっちゃか、手慣れた動きで卵をぱかぱか割ってセパレートして、冷凍庫に突っ込んでいる。片手割で非常にスピーディである。
キッチンスケールを使って他材料の分量を測り…作っているものとは別の材料一式も揃えていく。
とても楽しそうに、ニッコニコである。

小金井 陽 > 「んー、ついでにちょいっと一息つく用にっと。」
冷凍庫から取り出したもの。珈琲豆である。
『陽ブレンド』と印字されたソレを、ぱらららららっと皿の上に空けて解凍。使わない豆は手早く、即再冷凍。
「ん、ん、んー♪寮の調理場じゃこんな広くスペース使えねぇもんなー。」
鼻歌歌いながら、バターを細かく切って軽くレンチン…ボウルに入れて、しゃかかかかかかかかっと撹拌し始める。ボウルの中でバターがふわっふわに空気含んでいき、砂糖と塩をIN。更に白っぽくなり、ふわふわ度合いが増していく…

小金井 陽 > 「ほい、ほいっと。」

割り溶いた卵を混ぜ、次に小麦粉をぱったんぱったんゴムベラ混ぜ…
ある程度まとまった生地をラップに包んで、冷蔵庫に入れると同時に冷凍庫に入れていたボウルを取り出し。

「今日も美味しくなぁれよ、っと…頼むぜー?」
ヴィィイイイィイイインッ…ハンドミキサーの大音量を鳴らし、メレンゲを泡立て始める。
砂糖を加えては混ぜ、砂糖を加えては混ぜ、状態を確かめ…

「――おっしゃ、こんなモンだろ。」
つやつやてかてかのメレンゲができれば、ひとまずそれを放置する。

小金井 陽 > 「黄身も盛り上がって良い感じだな…」
じっくり素材を観察してから、オーブンに予熱。
泡立て器で黄身を潰し、ぬるま湯と油を混ぜて、ひと混ぜ。その後に小麦粉を振り混ぜてシャカシャカシャカシャカ…

「メレンゲは…おし、大丈夫だな。」
混ざった卵黄生地に、メレンゲを混ぜ入れていく…数回に分けて入れたメレンゲを何度も、何度も、何度も混ぜて。

…しっかり混ぜ入れた生地は、柔らかい黄金色をしていて、見るからに美味しそうである。

「ふぅー、そんじゃ…」

ボウル片手に、取り出したのは…中央底面から大きく丸い突起が突き出している型である。
その型に、片手で持ったボウルから、だばぁーっと一気に生地を流し入れ、揺すってならし、空気抜き。

小金井 陽 > 「―――――よし。頃合いだ。」
生地の状態を再確認し、予熱していたオーブンに入れる。

「ぅー、あっちぃ…今日暑すぎねぇか?」
営業終了後の食堂のため、暑かったとしても冷房は切ってある…
先刻まで生地の練り混ぜをしていたせいもあって、額に汗を流しているのだった。

「こういうときはコレに限るぜー、っと…」
解凍していた珈琲豆を電動ミルに加えて…ガリガリ削っている間に、電子ケトルで湯を沸かす。
淀みない動作でハンドドリップの準備を始める猫目男子。

小金井 陽 > 「んー、我ながらいい香りだ。あのオッサン、良い豆仕入れるんだよなぁ。」

粉砕し終えた豆をペーパードリッパーに入れ…ケトルから珈琲サーバーへ熱湯注入。珈琲ポットにもお湯を入れ替えして、温度調整。

じっくり、じっくり、珈琲豆を蒸らし…ぷく・ぷくっっと新鮮な豆の表面が膨らむ…
蒸らし終えれば、円を描くように湯を入れて抽出を始め……

小金井 陽 > 「よっし。んじゃ待つか…」

抽出を終えた、深い琥珀色の珈琲をたっぷりの氷に注ぎ入れて…急冷した深煎りアイス珈琲を楽しみながら、芳しい珈琲の香りと、焼けるケーキ生地の香りに満たされた食堂で、のんびりと焼成&熟成タイム…

小金井 陽 > 透明なグラスの中に、からんからんっと揺れる大ぶりの氷を透かしながら、向こう側を眺め、のーんびり…どことなく、日向ぼっこの猫を思わせる佇まい。アイス珈琲を一口。

「……うっめェ~~~……はぁー……」
香り際立つブラックアイス珈琲は、一回作るたびに多めに作ってあり、度々製菓中の楽しみにしているのだった。

「…そろそろ生地の熟成は良さそうか。」
冷蔵庫から寝かせていた生地を取り出して、大きな鉄板にオーブンシートを敷く。
取り出した生地を木板に載せ、軽く柔らかくしてから麺棒でぐいぐい平らに広げ…
星・動物・ハート・王冠…様々な型で押し抜いて、かんたんなクッキーを成形していく。

小金井 陽 > 「これで完成まで待つだけ…っと。」

蒼の猫目を瞬かせ、ケーキを焼いているオーブンとはまた別のオーブンへ、ミトンを持った手でクッキーの載った鉄板を押し入れる。

「………あー…あっちぃけど、楽しいなぁ…」
ぼーんやりと天井見ながら片手に珈琲硝子。スイーツ(作製)男子の放課後である。

小金井 陽 > 「…………よし。」

オーブン内で焼いていたケーキの状態を見てから、ミトンをつけて取り出す……ぷわっぷわに焼き上げた、シフォンケーキである。
取り出した直後、軽く底を打ち付け、ひっくり返す。

取り出す前から香っていた生地の焼ける香りは、オーブンから取り出してみれば、より強く香り…食堂の外にも香るかもしれない。
ほどなくして、ケーキよりも焼き上げる時間の短いクッキーを取り出す。カリカリさくさくふわっふわに焼き上げられた逸品だ。

小金井 陽 > 「クッキーはちょい冷ませばいいけど……すいませーんっ!シフォン冷ますために食堂の一角お借りしまッス!!」

逆さまにして、まだまだあつあつのシフォン型を食堂の隅っこへ。耐熱皿に乗せて一晩放置するつもりだ。
程よく冷めたクッキーをちゃっちゃか、されど丁寧に珈琲豆を保管するためのスチールキャニスター缶へ。

小金井 陽 > 「はー、今日も作った作った…クッキーどうすっかなぁ。俺ン茶菓子にするにも焼き過ぎちまったし…斬ちゃんクンにでもおすそ分けすっかな?」

からかって楽しい後輩を思い浮かべる銀髪パイセン。猫が遊ぶものを探している様に似て。

小金井 陽 > 「ん、ん、んー。ま、多少は日持ちするモンだしあとで考えるとすっか!
…おっしゃっ、調理場今回もあざっした!!毎度助かりまッス!!」

帽子をとって、調理場の管理担当者おばちゃんに頭を下げ、半笑いしてるおばちゃんに作ったクッキーを一部上納。根回しもバッチリだ!

小金井 陽 > 使った器具の清掃、テーブル、床の清掃を終えてから。

「またお借りしたいんで、そん時はよろしくおねがいします!そんじゃ、失礼しまッス!」

肩で風切り、自作のお菓子片手に食堂の調理場を去っていく。それが、この小金井陽の標準的な放課後であった。

ご案内:「食堂」から小金井 陽さんが去りました。
ご案内:「屋上」に幌川 最中さんが現れました。
幌川 最中 > 6月も2週目に入り、陰りのある天気が増えてくる。
丁度雨が止んだ頃合いに、誰もいないびしょ濡れの屋上へとやってくる。

「いよっし。丁度だな」

誰もいないというのに指をパチン、と鳴らしてガッツポーズを作る。
白いワイシャツの胸元は雑に開けられ、腰に風紀委員の隊服を結んだ男。
大きく背伸びをしてから、濡れた屋上の柵の水を適当に払う。
そして、腕を捲くってから体重を柵に預けてから、晴れ間の見えてきた屋上で。

「……あ、ヤベ」

ポケットをまさぐり、ソフトの煙草を取り出してから眉間を揉む。

「火ィ持ってくんの忘れたな……」

がっくりと項垂れる。

幌川 最中 > 先程まで、しとしとと嫌な雨が降っていた。
それに、ちょうど都合よく降り止む頃合いを見計らった。
他の人は止んだことに気付いていないのかもしれない。
誰もいない屋上で、気分良く一服でもするかと駆け足でここまでやってきたのだ。
そりゃあ火を貸してくれとも、火を起こす魔術でも使ってくれと頭を下げる相手はいない。

「運がいいんだか悪ィんだかわかんねーなこら! ハハハハハ」

豪快に笑ってから、仕方なし、と屋上のベンチに腰を下ろす。
腰を下ろして、先程まで降っていた雨を尻で強めの再認識をする。

……そらな。雨降ってたらな。そうもならぁな。

これ結構なところまで濡れたな、と一人難しい顔をした。
寂しげな表情を浮かべて。

幌川 最中 > 立ち上がれば、雨上がりだというのにびしょ濡れの男が一人出来上がる。
煙草をポケットにしまい込んでから、じゃらじゃらと音の鳴る逆側のポケットに手を突っ込む。
音を鳴らす小銭を握りしめて、ポケットから引きずり出す。

「えーっと……水? 水はねえな。水だぞ。
 エナジー前借りドリンク――はあるな。よし」

満足そうにうんうんと頷いてから、小銭を投入口に放り込む。
自動販売機が小銭の枚数をカウントしきったときに、その事件は起きる。

「5円使えるなら払えるが?」

何度も繰り返し5円玉を投入口に放り込んでは吐き出される。
お金が足りない。エナジードリンクすらも買えない。嘘だろ、と肩を落とす。
……が、そんなことで諦めるような男ではない。幌川最中28歳。
地面に顔を寄せて、自動販売機の下に手を突っ込み始める。
遠慮なくワイシャツを水たまりに汚しながら、「見えねえーーー!!」と叫ぶ。

ご案内:「屋上」に園刃華霧さんが現れました。
園刃華霧 > 雨も上がったてるし、屋上でのんびりサボ……もとい、日向ぼっこでもしようか、などと考えていた。
どうせ、雨上がりなんざ人もそんな居ないだろうしちょうどいい。
そう思ってたんだが……

「うわ、うっさイな……」
なんか、どこかでみたようなおっさんがいた。
しかも自販機の下に手を突っ込んでる。
いくら自分でも流石にそれはみっともなくねー?って思う。
これ、見なかったことにしたほうが良いのか?

幌川 最中 > ぎいい、と音を立てる屋上の扉。
「ラッキー誰でもいいから10円貸してもらおうあと火も」と腕を引っこ抜く。
そして、やはりこちらも聞き覚えのある声がして。
委員会の規定制服すらもびしょ濡れの学生(28)が彼女に気付く。

「華霧ちゃ~~~~~~~~~ん。丁度いいところに来た。さすがだ。
 それでこそ優秀な風紀委員と言える。困った人間に差し伸べられる手。
 そういう隊員を一人でも多く育てていこうっていう話でね。わかるね?」

じわりじわりと距離を詰めながら、肩を組もうとして自分がびしょ濡れであることに気づく。
その代わりにと言わんばかりに真面目そうな表情を作ってから。

「おっぱい触らせてくれるかお尻触らせてくれるか火貸してくれるか小銭貸してくれる?」

あごひげを軽く触りながら、ススッと距離感を詰める。
既にもう、見なかったことにするどころか絶対的距離すらも詰まる。

園刃華霧 > 「アタシ的には最悪なタイミングだったネ。まっタくこのおっさんは……
はい、残念。本日は店じまイだし、アタシは優秀でもなンでも無いのは承知だロ?」
うげぇ、気づきやがった、とあからさまにめんどくさそうな顔をする。
いや、同じ穴のムジナ的な意味では同類なんだけど、これはあれか。
同類だからこその嫌悪とかそういうやつか?

「相変わらず、遠慮ナいおっさんダな……
テか、ナチュラルにセクハラだナ? 触ったラ高いゾ?」
さり気なくにじり寄ってくる様子に顔をしかめる。
別に嫌いというわけではない。状況次第ではむしろ好ましいと言うか面白いおっさんではあるのだ。
ただ、今はどちらかといえばうざいというかめんどくさいという感情が先に立っている。
あと別に触られるくらい気にしないが、そうはいってもタダで触らせるような義理はない。

「……ま、火くラいなら貸しテやってモいいけドさ」
そこで一瞬思いついたこともあり軽く笑って付け加えた。

幌川 最中 > 「店もまだ始まったばっかだろ~~? ケチなこと言ってると損だぜ。
 華霧ちゃんが優秀でも優秀じゃなくてもいいのさ。女の子は褒めて伸ばすのが幌川式だ。
 5の倍数円なら払えるよ」

濡れた隊服を腰から解いて、鼻を擦りながら笑う。
ほらね、と手の中で転がす五円玉を何枚か見せながら冗談を口にする。
ちゃらちゃら、と軽く手の中で遊んでから、おつりのレバーを引く。

「遠慮なんてするもんじゃあないぜ。
 ほら、同じ委員会なんて家族みたいなモンだろ。
 いいや、常世学園が家族なら実質10割強くらいは兄弟みたいなもんだ。
 兄弟のよしみで――」

胸元に手を伸ばしはするが決して触れはしない。
セクハラこそいくらでもするが許可がなければノータッチ、が幌川の信条だ。

「火あるんなら貸してくれや。いくら?」

園刃華霧 > 「どーセ、ケチはアタシの性格だしナ。一生つきアうサ?
てか、おっさんの育て方トか毎度てきとーナことしカいってないだロー、どーせ?」
軽口に軽口で返す。ウン、調子出てきた。

「……おっさん、そレは、ちょっとドーなんダ? さっきのモ割とみジめだったけド……
いつカらホームレスに職替えしたンだ? 落第街、行く? いいとコ紹介できるかもヨ?」
そして手の中で転がす5円玉をみて、割とフルスイングにたちの悪いジョークを打ち込んだ。
相手によっては激怒させるかもしれないが、まあその時はその時だ。
どうせ自分はそういうキャラだし。

「おっさんと兄弟、だケはないナー。ナイ無い。」
手を横に振りつつ、さらに容赦ない一撃を振り下ろしていく。
実際、見ている分には楽しいかもしれないが身内としては面倒くさい気がする。

「や、おっさん支払えルの? 無理だろ、そレ??
それとも、なンか代わりに出すノ?」
いくら?とかまさかその口から出てくるとは思わなかった。
思わず真顔になる。

幌川 最中 > 「いやだなあ1から10まで大真面目に決まってるだろ。へへ……よく言うぜ華霧ちゃん。
 華霧ちゃんが小さかった頃は……ほら俺の半分も身長なかったのにさ。
 おにいちゃんおにいちゃん……って可愛かったもんじゃねえか。
 こんなに丹精込めて大事に大事に育ててきたのにこんな不良になっちゃって……」

1から10までデマカセである。1ミリも本当の話が紛れ込んでいない。
そして、ブラック(文字通り)ジョークには怒ることはない。
慣れた調子で(なんならマジでよく言われているのだろう)笑いながら肩を竦め。

「落第街詳しいのかあ?
 はーあ。オジサン華霧ちゃんがパトロールと称して落第街に入り浸る悪い子だったなんて。
 マジで全然知らんかったな……。華霧ちゃん、悪いお友達は作っちゃダメよ……」

およよ、と泣き真似をしながら頬に手を当てる。
わざとらしい仕草に自分でもどうかと思ったのか、咳払いで切り替える。

「125円ならある」

転がってきたおつりを取り出して、極めて真面目な表情を浮かべながら。
現状の男の手持ち全財産を示してから、ぐっと自信満々に拳を握って笑う。

園刃華霧 > 「うン、ずっと不良だシな? あと、いった覚えないナ? お・に・イ・ちャ・ん?
……いヤ、やっぱナイ。気持ち悪」
好き勝手いうな、こいつ。こちらも適当にあしらっておく。
あと、冗談で言ってみたがマジでキモいなコレ。ヤベェ。
思わず一瞬真顔になった。

「うわ、ソレまじでイラっとクるナ。そーだ、おっさん。ソレ、捕物で使え?
多分挑発には使えるぞ?
あとそーだナ。とりアえず、友達でもなンでもナイけど、悪い知り合イなら眼の前に居るナ?」
わざとらしい泣き真似に、こちらはあえて神妙な顔つきで答えてやる。
こんな顔、仕事でもしない気がするぞ?

「………………ウン。なンか、アレ。むしろ小銭ばっかでソレってすごいナ?
いーヨ、タダで。その代わり、貸しナ」
呆れつつ、提案する。
ま、どうせ仕込みはするからその分でタダでも良いとは思ってるのだ。

幌川 最中 > 「華霧ちゃんは俺のことが嫌いだねえ」

冗談交じりにそう言ってから、いやーお兄ちゃんいいと思うんだけどな……と唸る。
首を捻りながら真顔の華霧を見る。珍しい。そんなに嫌だったんだこれ。
そっか……そんなに嫌か……という思考はひとまず放り投げ。

「捕物は俺の仕事じゃあないでしょうが。
 挑発なんてしておじさんが死んだら華霧ちゃんは泣いてくれるんですか~?
 ……はいはい。冗談は終わり。落第街の方の悪い噂聞いたから、行くなら気をつけなよ」

肩を竦めてからそう言って、無料でと言われたなら「そうだね、それでこそ風紀委員だ」と繰り返す。
やったー無料だ~~!! 無料より嬉しいもの、あるわけな~~い!
ポケットの中にじゃらじゃらの小銭を放り込んでから、胸ポケットの煙草を一本口に咥える。

「そんじゃ可愛い後輩のお言葉に甘えて」

わずかに前傾姿勢になりながら、煙草の先を華霧のほうへと。

園刃華霧 > 「人間、そう簡単に愛さレると思うなヨー?」
ケタケタと笑う。冗談を気兼ねなく言い合えるのは悪くない気分だ。
大抵の場合、呆れかガチ切れが返ってくるってものだからなあ……
自分が愛されキャラではないのは自覚的だが、まあこのおっさんの場合は
愛されるんだろうな。
一方でマジで嫌われてもいるだろうな、うん。

「あー、泣く泣ク。目薬さした量だけ泣くワー。
……ま、あそこの悪い噂はいつものコト、だロ?」
冗談を打ち切って少し真面目に言われれば……
やれやれ、おっさんこういうところあるから油断ならないな。
心配されるなんて久しぶりなきもする。

「よーシ、おっさん。そこ動くなヨ?」
いってタバコの先に指を近づける。
パチンっと指を鳴らせば、そこから火柱が吹き上がった。

幌川 最中 > 「いつものことはいつものことだけどね。
 賑わってるって噂聞いたら先輩が可愛い後輩を心配するのは当然でしょうが。
 第一華霧ちゃんも女の子なんだし、っつーか風紀の子たちはみんなそうだけどね。
 男が俺みたいなヤツばっかりなわけないんだから気をつけなさいって一生……」

はあ、と愚痴じみた心配の言葉がつらつらと並んでからへらりと笑う。
「ま、大丈夫だろうけど」なんてその表情は雄弁に語っている。
それに、彼女が自分の発言ひとつでやることを変えたりしないのも知っている。
だからこそ、「大人ヅラ」を勝手に押し付けてからうんうん頷く。

「はいはい、ありが――」

目の前で、火柱が。

「――ッ!?!?!?」

吹き上がって。

「そ、園刃!!!!!!!!!!!」

半ば悲鳴のような絶叫が屋上に響く。
これ俺濡れてなかったら燃えてない? どう? 燃えてるよね?
ずぶ濡れで実質的アドになってたりしない? するよね。

「そういうことをするならなあ! するならなあ!!
 ちゃんとバケツだの何だの準備してからやれって言ってるだろ!!!!」

やるなとは決して言わない。
ただ、大事にする前に準備をしっかりしよう。
屋上の地面に煙草を勢いよく捨てて、足の裏で火を揉み消す。雨上がりでよかった。

園刃華霧 > 「あっはっはっはっはっはっっ!悪イ。
 ちょっと火力強かっタかナ?」
なんか、予想以上に派手に転がったので思わず大笑いしてしまう。
いや、一応加減はしてるから大惨事にはならないはずだ、し?
それにしても、ココまでうまく引っかかるとは。

「おっさんも、人の心配もいーけド油断大敵、だナ?
 まー、安心しナ。火加減はしたシ、燃えナイぎりぎり狙ったかラさ。
 その辺は実戦でお試シ済みだシ?
 あとま、水なら周りにあるでショ」
ゲラゲラ笑い続ける。

幌川 最中 > 「…………」

爆笑する後輩の顔を見ながら、実に妙な顔をする。
怒ってないよ。怒ってないからいいんだけど。しかも俺だしね。
ちょっと嫌な予感がしたからまあなんとなくわかってはいたけどさ。
わかってはいるからとはいえ――

「……隙ありーーーーーッ!」

うんうん頷きながら納得しようとしている様子から一転。
勢いよく華霧の脳天にチョップを入れる。ぐるりと肩を回して一撃。
腕を腰に当てて、少しだけ焦げた前髪に軽く触れる。

「風紀委員が学校の屋上で火遊びするんじゃありません!
 俺は華霧ちゃんのママじゃねえんだから! わかりました!?
 油断とかじゃねーし味方に燃やされる想像なんてする必要ねーから!!
 これが雨じゃなくて灯油とかだったらどうすんだあ? ああ~?
 大事な大事な先輩が火達磨になる一歩手前だったが~???」

肩を竦める。「まあいいけどよ」と笑いながら、自動販売機に百円玉だけを放り込む。
煙草作戦は失敗したので諦めてミネラルウォーターで妥協する。
ごとり、と重い音がして、取り出し口に落ちてきたペットボトルを手に取る。

「腕白め」

ペットボトルのキャップが捻られ、笑いながら喉を鳴らす。

園刃華霧 > 「わぶっ!?」
ちょっとあまりにも面白すぎたので、割と油断していた。
ひょっとしたら避けられていたかもしれないチョップは華麗に脳天に炸裂した。

「いっター……これ以上、馬鹿になっタらどースんのヨ、おっさんサー」
欠片も痛そうな感じもなく、文句を言う。
とはいえ、今は明らかに自分が悪いわけで。
あまり強い口調では言えない。

「いや、おっさんがママだったラまじで引くワ……
 あとマあ、火達磨になったらとりあえず笑っとク」
でもちょっと悔しいので憎まれ口はしっかり叩いておく。
それと……

「ほい、おっさん」
ペットボトルの水を飲む相手に、小さく白い棒状の何かを投げる。
タバコだ。

幌川 最中 > 炸裂するチョップに溜息をつく。

「これ以上馬鹿になっても変わらんだろ~?」

本当は俺だって可愛い女の子に暴力を振るいたくはないんです。
ないんですよ。ないからこういうことはしちゃいけないよ。
……とは言わない。どうせ言ってもやるため~。
それでもまあ、ちょっとくらいの腕白はね。という気持ちはある。
自分も同じようなものだ。だから余計にこう、甘やかしている自覚があるのだが。

「笑ってんじゃねーよ!!! 火消せよ!!!
 笑う前に勢いよく火消せや!!!! 焼死体見逃すのはダメだろ!!
 やってもいいけど消すだけちゃんと消せよ!!!」

まったくこれだから、と笑いながら呟いて、放り投げられたそれを器用にキャッチする。
目を細めてじっとタバコを見る。「ああ~?」と眉を寄せて華霧を見る。

「未成年喫煙かあ?」

園刃華霧 > 「うっさイなー、ほっとケー。確かに馬鹿だけどサー。
 でもサー、乙女の頭たタいてサー。マジでサー」
どの口で乙女とかいうのか。
真面目くさったわざとらしい顔でうざったく抗議する。

「貧乏なンだろ?線香代節約できルだけお得じゃン?」
すでに死が前提となっていた。ひどいものである。

「ンー。ヤ、アタシはやらナい。タバコとか、食っテも不味いしナー。
そいつハ、アレだ。どっちカってート、カツアゲ?」
実際のところは生徒の隠れ喫煙初犯を、タバコ取り上げでとりあえず見逃した結果のブツである。
まあそこまで説明するのは面倒くさいし、する気もない。
ここで処理できるなら、それはソレで楽だし。

幌川 最中 > 「乙女は先輩火達磨にして笑わねえから」

冷静なツッコミがスッと挟まってから、暫くの沈黙。
そして、指先で煙草を弄びながらいつものように持ち直す。
あれだけの火力があるなら火くらい点けられるだろ~? と言わんばかりの顔。

「偉い。幌川先輩が褒めてあげよう。
 ほら頭出せ頭。よしよしよしよし!!! 偉いぞ!!!」

ひどく乱雑な褒め方をしてから、わしわしと年下の女子の頭を撫で回す。
女子を撫でている、というよりはどちらかというと動物を撫で回すような感じで。
“これ”がどういう経緯で手に入ったのかはだいたい想像がつく。
想像がつかないようじゃあ先輩ヅラはしてられない。それでいて敢えて言っていないのもわかる。
から、こうだ。こうする。こうなる。撫で回す。子犬撫でるみたいに。

「一服したら俺ァ委員会棟行くけども、華霧ちゃんはまた外回りでも振られてる?」

振られていないのならばあわよくば自分の仕事に付き合ってもらおう、と。
ちらりと視線を向ける。

園刃華霧 > 「ほいほい、今度は真面目にやリますヨ。」
今度は指も鳴らさず、小さな炎を出してタバコにうまく点火する。
さっきはガソリン着火。今度はローソク並みの炎。

「っテ、わぶっ!? ウザい、ウザい、こら」
わしゃわしゃされて、抗議の声を上げる。
このおっさんのこういうところがホントめんどくさい。
自分は別に褒められたいわけじゃない。
あと、犬じゃない。

「ァー……ンー……」
仕事を振られる前に自主的なサボりに来たところで、捕まったのだ。
であれば、仕事はとりあえずないわけだが……
ここで嘘をついてもいいが、委員会棟にいかれればバレバレなわけで。
この男が自分を売るとは思わないが、思わず言葉を濁す。

幌川 最中 > 「サンキュウ。中々のお点前で」

穏やかな火の揺らぎに、問題なく煙草の先に赤色が灯る。
息を吸い込んでは、静かに吐き出す。煙が雨上がりの屋上に広がる。

「ちゃんと仕事してる委員が褒められんのは当然だろ~?」

煙草を片手にへらへらと薄笑いを浮かべてみせる。
華霧ちゃんは優しいもんな~と言わんばかりのにやけ面を向けて、肩を竦め。
そして、微妙な表情を浮かべる後輩に。

「わーったわーった。俺はなんも見とらんし聞いとらん。
 こいつの借りがあるからな。そんじゃ、今から俺はひと仕事行ってくるわ」

しれっとした表情でそう言い放つ。これで貸し借りゼロ!
豪胆な相殺をしてから、鼻を軽く擦る。

「見回りに行った委員が一人大怪我を負って帰ってきた。
 他の委員にでも会ったら言っておいてくれ。俺はついでに今から見舞いだ。
 もしなんかあったらいつでも連絡入れていいからな。それじゃ」

短くなった煙草を携帯灰皿に押し込んで、先程揉み消した煙草も拾って押し込める。
少しだけ真面目な声色で、「こいつは冗談じゃねえからな」と付け足して、踵を返した。

ご案内:「屋上」から幌川 最中さんが去りました。
園刃華霧 > 「じゃーネー……やーれヤレ。」
相手を見送ってから思わず肩をすくめる。
大怪我……外ならともかく、この学園都市内では”よくある”ことだ。
特に、風紀委員ではしょうがあるまい。

「厄介事はどーセ関わりマせんヨーだ。
それガ不良の心意気ってモンだ。」
そんなふうに軽口をたたき。
しかし、いつか自分もそういう事態に絡むことはあるのだろうか。
その時、自分はどうするのか。
いつものように尻尾を巻いて逃げるのか、それとも……

「ま、なるよーニなる、でショ。ったく。
おっさんが、珍しく真面目になるからコッチまで無駄に真面目に
なったジャン。ゲンが悪……」
そうぼやいて、自分も屋上を後にした。

ご案内:「屋上」から園刃華霧さんが去りました。