2020/06/24 のログ
■ルリエル > 「ああ、その気持ちは分かりますね…! 空調の空気ってやっぱり自然の風とは違いますから。
……それでも私は、雲のなかでゆったりできないときはクーラーの効いた部屋でゆっくりしたい方ですけどね……ふふ」
ニンゲンは神の庇護から離れた後、たっぷり数千年を経て、つい200年ほど前にようやく雷霆をその手中に収めたという。
その他諸々のイノベーションがあって、いま彼らは地表のあらゆる場所を己らが快適に暮らせる空間に替えつつある。
それを傲慢というべきか、当然の進化と捉えるべきか。
かつての主である《大いなる存在》であれば傲慢と断じたかもしれないけれど、主なき天使には未だそれを評価できず。
こうして自らがそのイノベーションの恩恵に授かれるのであれば、少なくとも文句は言うまい。
「この島はこれからどんどん暑くなるのでしょう?
そんな中で汗をかきながら外で動くなんて、私には考えられませんね……。フフッ、私ってそういう性質なんで。
なので、眠るフリをしてたわけでもありません。いえ、最初のうちは眠るフリだったかもしれませんが。
次第に本当に、ニンゲンと同じように眠るようになって、もう数千年はそんな感じですね……」
くすくすと自嘲気味に笑う天使。軽々しく数千年などと宣うその口調には迫真さは感じられまい。
「………おおっ。それがヨウスケの異能なのですね。モノを回転させる………おお、おおっ………早いですねっ……!」
ルリエルの質問に応えて、自らの異能を披露する少年。
ボールペンが不自然な力を受けて回転するさまを、ルリエルは目をまん丸にして凝視している。
「すごい、今にも飛んで行っちゃいそうですねぇ……。いろいろと便利に使えそうなチカラですね。
なんでも回せちゃうのです? ニンゲンとか、クルマとかでも?」
屈み気味になってボールペンを注視しつつ、上目遣いに少年に視線を送って問いかける。
二千年紀の繁栄ののちに、神懸かりとでも言うべき様々な能力を得たニンゲンたち。
彼らが発揮させる多種多様な《異能》について知ることこそ、いまルリエルがこの島に暮らす一番のモチベーションなのだ。
■矢那瀬陽介 > 小さな駒を指遊びにするように、人差し指から中指、小指、と高速回転させ乍。
余裕持って翡翠の視線と黒壇の瞳を重ねていた。
「だからこそ、あの雲の涼しさは良かったよ。本当に。
ちぎれた奴集めてポケットにいれたいくらい
暑いから汗を掻くのさ。熱中症にならない程度に思いっきり体を動かしたら気持ちいいよ?
へぇー、ついに眠ることができるようになったんだ。それにしても数千年って!生き字引だね。
それだけ長く生きてる先生から見てこの島の最近の暑さはどうなの?」
異能に驚き感心されるのが心地よい。ついには右手から左手まで往復したボールペンは
胸ポケットに近づけるとぴたりと止まってその中に収めてゆく。
「うん。単純な異能だけれど、それだけに色々と応用させたいと思ってる。
なんでも、とは行かないけれど。先生くらいなら回せるかな。
――ねぇ」
長身を折り曲げ悪戯っぽく上目遣いを見せ。
「先生を回してみても良い?最近訓練所に誰もいないから人に試せていないんだ。
お願い。」
さらりと黒髪を靡き落とすように首を傾げて強請る。
■ルリエル > 「ふふ、残念ながら私の雲は私から離れるとすぐに消えちゃうのですよ。
ですのでお土産に持たせることはできませんね。
気持ちよく眠れて、涼むことも暖をとることもできて、乗れば空も飛べますが……それだけの能力です。
この島で見たいろんな《異能》の可能性に比べれば……ね」
ボールペンの回転は完璧なまでに制御されているのが見て取れる。指の間を渡すなんて、生来の器用さも高いレベルで必要だろう。
危険な扱い方も可能な《異能》の力と、彼ら・彼女らは早い段階から共に生き、成長してきたのだ。
その可能性は愛おしく、当初は地表の行く末に興味のなかったルリエルも徐々に希望と好奇心を抱けるようになってきている。
「ふふっ、単純と思えるチカラほど、使う当人の工夫でさまざまな可能性を見いだせるのですよね。
……あ、これは学園のほかの先生からの受け売りですけれど。 ――ん? 私を回してみたいですか?
さすがにそこまでされるのは……と言いたいですけど、私から言い出したことですし。
ええ、構いませんよ。特別にあと1回だけ、私に遠慮なく触ることを許可しましょう……フフッ」
――だからこそ、『能力で体を強制的に回される』なんて危険な体験にもつい食指が動いてしまったり。
今度は少年の側から上目遣いの姿勢でそう問いかけられれば、その愛らしい仕草にもほんの少し心の防備が緩んで。
ふぅ、と1つ深い息をつくと、軽く腕と脚を開いた体勢で、胸を開くように陽介の目の前で構える。
「……あ、でもやっぱりちょっと怖いですね……。いつでも雲を出せるようにしておかないと……」
少しばかり表情をこわばらせ、ドキドキの異能体験を待ちわびる。
天使の肢体は肉感豊富で、平均的容姿よりもやや太…重たげな印象。
しっかり構えていれば、超能力でも用いないかぎり、力でバランスを崩すのは容易ではない。
■矢那瀬陽介 > 「他の異能の方が強いってこと?
でもさ。その人達だってご飯を食べて眠って、人と同じようにしているのが多数だと思うよ。
体が資本。その資本を支える睡眠や体温の調整をできる先生の能力は凄いと思うけれどな」
背筋を伸ばして向かい合う。
了承を貰ってぱぁ、と明らむ顔にて対峙しながら言葉の交接を続け。
「うん。そのために俺、沢山戦いたいんだ。いろんな人とね?
それじゃ非番なのに生徒の相手をしてくれる優しいルリエル先生に感謝して投げるね。
といっても、多分先生が想像してるような痛い投げ技じゃないよ。
回転するのさ」
一歩踏み込む。その腕が届く距離に。
しかし中々手が伸びず。掴むべき先を見るはずの黒瞳は――
「えっと……」
やはり豊かな胸丘を見る。
目元をはんなり染めながらくしゃりとほころばせ。
「ごめんね」
言うなり伸びやかに手は左乳房に触れる。
初見で揉んだような手付きとは違う触れるだけ。
されど女教師は気づくかもしれない。シャツも、その内の肌も螺旋が描かれるのが。
触れた途端豊満と自負する体が重力から解放される。体が浮くような感触を。
そして少年は軽やかに足払いを掛けて。
「よっ……と!」
添えた手を中心に回る廻る身体。天地を逆転する光景を何度見たとて。
その長い髪も衣服も乱れることない。ただ海風が頬を撫でる感触あるのみ。
※ダイスの目が回転数 [1d6→3=3]
■矢那瀬陽介 > 3回転した後に再び足を差し出してピタリと止まった。
胸から手を離したと共に宙を浮くような感覚失せて。
その踵は確かに地の感触を得るのだった。
「どうだった、せんせ?」
■ルリエル > 「ふふふ……ええ、健康こそ定命の者が最も尊ぶべきモノです。
それを支えられるからと思って保健課に就きましたけど……まぁニンゲンも一時は50億を超えるほどに殖えたのですから。
私よりも医療に向いた異能使いも数人見受けられて、少しばかりは嫉妬も覚えましたよ。
優秀な人がいる分、自分は適度にサボれるってことでもありますけどね……」
そう謙遜の言葉を紡ぎながら、陽介の能力によって体が回転させられる瞬間に対応しようと少しずつ神経を張り詰めさせる。
床に頭を打ち付けるかもしれない。雲をうまく作れれば受け身も容易だけど、異能による転ばせに対応できるかどうかは未知数。
まぁ多少痛い目を見たとしても、面白い力を体験できたならそれで御の字という考え方も……。
……と、ガラにもなく緊張を見せていたルリエル。
だが少年の手がおもむろにおっぱいに伸びれば、その表情は嫌悪にひきつり……すぐに、いっぱいの驚嘆で満たされる。
「……ちょっ、そこは………わあああああああああっ!!!?」
ぐるん。天地が逆さまになる。
しかしそれは実に妙な感覚である。トルクを感じない。服もねじれないし、髪もなびかない。
回転させられる能力と言われていたが、受けてみれば全然違う。むしろ自分を中心に世界が回転しているような。
重力すらも消え失せ、1つ、2つ、3つ、と天地が続けざまに入れ替わって。
屋上の景色と少年の笑みがスペクタクルとなって視界に映るが、それ以外の力を感じない。
まるで物理法則に反している。こんな力を触れるだけで他人に行使できるなんて、そんな《神様》みたいな真似……。
「……………………はぁ、はぁ………はふ………」
ぴたり。元いた体勢に戻される。視界の天地も元のとおり、曇天が上でタイル張りの床が下。
ルリエルは荒い息をつきながら、瞳をぱちくりと早く瞬かせ、絶句のままにあちこちに目配せをする。
何が起こったのか理解できないという雰囲気。
でも確かに、宣言どおり自分は回されたのだ。この少年の《異能》で。
「………………お、面白かったですっ! その……ええ、続けざまにもう一度、とは言えない感覚でしたけれど。
危険な人に絡まれたときとかにも身を守るのに使えそうですね。受けた人絶対、混乱しちゃいますから。私も……」
ふぅ、ふぅ、荒い息が続く。それほどにびっくりしたようだ。瞬時に3回転もすれば、誰だって驚く。
……でも、このドキドキは異能を受けた驚嘆からのみではなく……。
「………で、でも。さすがに、そんなに親しくもない異性の胸を触るのはどうかと思いますよ?
まさかヨウスケ君……他の女子にも似たようなことしてたりするんです?
だとしたら……その……き、嫌われますよ?」
自ら異能を受けたのだから、どこを触られても文句はなかった、といえばそれまでだけど。
一度は言っておかないと自覚がないままセクハラボーイになってしまうかもしれない、と思う気持ちから、はっきりと言い放つ。
……口から出た叱り文句にはあまり張り合いはないけれど。
■矢那瀬陽介 > 「ぁぁ、ごめんねぇ。
……2つの意味で」
すっかりと息を乱したこと、過激なスキンシップへの嫌悪の顔したこと。
双方綯い交ぜに少し丸まって見える背筋をそっと撫でる。
その息が整うまで。その間に返答を。
「そうだね。この力は俺の力で手にしたものじゃないけれど。
自分の身を守るために使おうと思ってる。その時は思いっきり頭から落としてやるけれどね」
背筋から手を離せば困ったように眉尻を下げる
のは一瞬だけ、にっ、と薄く開いた唇から白い歯列を覗かせて、咲う。
「好奇心が抑えきれなかった。他の子にしてるかどうかは秘密!
ルリエルせんせは優しそうだから、つい、調子に乗っちゃった。
そのお詫びじゃないけれどさ。今度一緒に歓楽街にショッピングにいかない?
保険医なんでしょ?ずっと閉じこもりっぱなしじゃ退屈しちゃうよ。
どこにでも買い物付き合うからさ」
いい意味では朗らかに、悪く言えば反省薄く。
お詫びを提案しながらポケットからスマホを取り出して。
「よかったら連絡先交換しない?」
■ルリエル > 「謝れば何でも許してもらえると思っているのですか? 謝るならもう少し誠意を持って謝るべきでしょう?
……まぁ、さっきのタッチはぎりぎり許しますけれど。私から触れていいって言ったのですしね。
それに、ちょっと怖かったですけど、面白い体験もできましたし。ええ、許します。天使の寛大さを噛み締めてください」
くすり、柔和な笑みをうかべる。紅さした白い頬にくっきりとえくぼが浮かび、薔薇が開くかのよう。
「ふふ、あなたとショッピングですか? ええ……悪くない申し出ですね。
まだここに来て日が浅いですし、貨幣も少なかったのでお買い物も最低限しかしていませんでしたから。
お誘いに来て、私の気が向いたらぜひお付き合いしましょう。
………ん、連絡先? それは………あ、ああ、『すまほ』! すまほってやつですね? 知ってます!」
連絡先を交換しようと携帯端末を取り出す陽介を見て、ルリエルは再び焦燥の表情を顔に貼り付けた。
銀のロングヘアをかき上げて、側頭を掻く仕草。いつかこの時が来るとわかっていても、来たらやっぱり焦る。
「………うん。私まだそれ持ってないんですよ。というか『キカイ』全般にまだ馴染めなくて。
ようやく最近保健室の『パソコン』を最低限使えるようになった程度ですから。
いつでもどこでも会話できるキカイなのは知ってますので、いつかは持ちたいのですけどね……。
……ああ、でも連絡先といえるものなら一応渡せますよ?」
そう言うと、ルリエルはジーパンのポケットからメモ帳とちびた鉛筆を取り出し、何かをさらさらと描いて渡してくる。
ひらがなのみだが流麗な字で、住所らしき文字列。見れば、異邦人街の一角を示している。
いきなり自宅を伝えるのは過激なアプローチかもしれないが、ルリエルはそうは思っていない様子。
「……スマホ、いつか買わなきゃですねぇ……」
■矢那瀬陽介 > 「謝って許してくれないときは……笑って誤魔化すさ。
誠意をもって謝るって言うのは分かるけれど。
ここで土下座なんてしたりしたらシラケてしまいそうだなーって。
それにせんせ、そんなに嫌がって見えなかったし。
そうそう。天使様は寛大じゃなくちゃ」
至極呑気な少年は指這わせてスマホの画面に指を這わせる。
「うんうん。俺もこの島のこと何も知らないから二人で面白いもの見つけようよ。
気が向いたら……か。
ん、もしかしてスマホ持ってないの?」
彼女の言葉に指が止まるのは一瞬。
続く表情の変化に凝っと様子を伺い、クッと喉を震わせて再び指を動かす。
「そっか。それならスマホを一緒に買いに行こうよ。色々と知ってるからルリエルせんせにぴったりなもの見つかるよ。
スマホも天使から見たら『ムダ』な要素の一つみたいなもの。眠る担当を千年も続けたし次はスマホ担当になってみればいいんじゃない?
ルリエルせんせの気が向いたときに付き合うよ
――ありがと」
手渡された紙を見て微かに眉が持ち上がる。
住所が記されていたことよりも、その所在地に驚いたのだ。
「異邦人街かぁ、ここも行ったことないな。一度行ってみようかな。
天使とか悪魔ばかりだったりして」
紙は丁寧に四つ折りにして財布の中へ。
スマホもポケットの中に締まった少年は両手を後ろに組んで嬉々と微笑む。
「初めて連絡先を交換するのが先生だとは思わなかったよ。
これからもよろしくね」
■ルリエル > 「無駄だなんて、そんなことはありませんよ? 現にこの島の若者の多くがそれを使っているわけですし。
……むしろ私達は念話で意思疎通を済ませてたところ、飽き飽きしてニンゲンの『コトバ』を使うようにした方ですし。
ですから……ええ、ヨウスケ君とのお話もとても楽しかったですよ。
スマホの購入もぜひお付き合いよろしくお願いしますね? キカイの種類とかさっぱりですから……」
メモ書きを受け取り、何やら驚いた様子を見せる少年に、ルリエルは穏やかな笑みで軽く会釈をする。
「ふふっ、異邦人街もニンゲンの住宅街とそれほど変わったところはありませんよ。私が見たら、の話ですけれど。
遊びに来てみるといいですよ? ウチに来たらお茶くらいはお出ししますし。
……っと。そろそろ保健室の番が回ってくる時間です。お昼休みは終わりですね。それではヨウスケ君、またね♪」
曇天を見上げ、『時間』を悟る。天に強く紐付きし異邦人、空模様だけで時間がわかるのだ。
これならスマホを時計代わりにすることもないかもしれないが……『便利さ』は触れた者を変えていくものである。
近々スマホを買いそうな予感に内心ウキウキしつつも少年の前では飄々とした女を装い、しなやかな足取りで屋上を去っていく。
■矢那瀬陽介 > 「天使も言葉を重んじてるようで良かった。
それならスマホはきっといい買い物になるね。
任せてよ。2回胸を触ったお詫びはそこでたっぷりさせてもらうから。
そう?異邦人街も同じなの?それなら俺も遠慮なく足を踏み入れよう。
喉が乾いたらジュース代節約のために先生の家に行くね
――ん、もう大分良い時間だ。俺も戻るね。
どこか楽しげに揺れる銀髪の後ろ姿を見届けてから少年も屋上を後にするのだった。
ご案内:「第三教室棟 屋上」から矢那瀬陽介さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」からルリエルさんが去りました。