2020/06/25 のログ
ご案内:「第三教室棟 屋上」に日ノ岡 あかねさんが現れました。
日ノ岡 あかね >  
日の差す屋上で。
誰も居ない屋上で。
女が歌う。
女が踊る。
ウェーブのセミロング。
風に揺れるブルネット。
真っ黒なチョーカー。
風紀の腕章。
常世学園制服に身を包んだ女。

日ノ岡あかねは、高らかに歌う。

日ノ岡 あかね >  
上機嫌に歌う歌は。
笑顔と共に歌う歌は……歓喜の歌。
古い古い、ラテン語の讃美歌。
くるくると舞いながら。
ゆらゆらと舞いながら。
日ノ岡あかねはただ歌う。
満面の笑みを浮かべて。
溢れんばかりの笑みを浮かべて。
 
ただ……歌う。
 

日ノ岡 あかね >  
「あと、二日」
 
足取り軽く、笑み深く。
女は踊る。
スカートを翻し、ステップを踏みしめて。
日ノ岡あかねは、ただ歌う。

「……ふふふ、『楽しみ』ね」
 

日ノ岡 あかね >  
鼻歌を歌いながら、傍らに置いた籠を持ち上げる。
紙切れ……ビラの詰まった籠。
縁きり一杯まで中身の詰まったそれを楽しそうに抱えて。
 
「ねぇ!! みんな聞いて!!」

楽しそうに笑いながら。
嬉しそうに笑いながら。

「知ってる人は知ってるわよね! 明後日! 土曜日の夜!」

屋上から。

「みんなで!! 『楽しみ』ましょう!! 話し合いましょう!! 声をあげて!! 顔を上げて!! 前を見て!! 私と一緒に!!」

声を、掛ける。

「『謳い』ましょう!!」

日ノ岡 あかね >  
籠を、ひっくり返す。
満載されたビラは風に舞ってバラ撒かれ。
誰彼構わず、『それ』を知らせる。
 
落第街での話し合い。
誰の区別もなく。
誰の差別もなく。
 
ただ、『それ』を風と共に届ける。
 
『見て見ぬ振り』など、出来ないほどに。
 
「……ふふふ、本当はこれ、札束でやってみたかったんだけど……まぁ、それはまたの機会ね」 
 

日ノ岡 あかね >  
「一般生徒には当然委員会も含まれるわ……さぁ、何人来てくれるかしら? 何人応じてくれるかしら? 何人『話し合い』をしてくれるかしら?」

目を細めて。
口角を吊り上げて。

「日和見なんて……しないでね? 『見て見ぬ振り』なんて……」

日ノ岡あかねは。

「『寂しい』わ」

静かに……笑う。

日ノ岡 あかね >  
懐からスマートフォンを取り出して。
鼻歌混じりに弄りだす。
アクセスするのは常世学園フォーラム、地下サイト、匿名情報掲示板、SNS……片っ端から。
その全てに。
同じURLを……貼り付ける。

http://guest-land.sakura.ne.jp/tokoyo/pforum/pforum.php?mode=viewmain&l=0&no=60&p=&page=0&dispno=60

誰の目にも止まるように。
誰の元にも届くように。
 
遍く全てを巻き込むように。
 

日ノ岡 あかね >  
深く深く、口角を吊り上げて。
高く高く、両手を掲げて。

両掌を、天へと高く……突きあげて。

「憂う時間は終わったわ。嘆く時間は終わったわ……ここからは……」

祝うように。
慶するように。

「『謳う』時間よ……あは、あははは」

――挑むように。

「あははははははははは!!」

日ノ岡あかねは……哄笑した。

日ノ岡 あかね >  
「『悪』が『悪』だから『悪』を行う話……だったかしら? ふふ、アナタ達がそれをするなら……私は違う話をするわ」

あかねは笑う。
あかねは笑う。
あかねは――笑う。
 
「これは……『私』が『私』だから『私』を行う話」
 
日ノ岡あかねは――ただ、笑う。 
 
「私は『あかね』……『日ノ岡あかね』」
 

日ノ岡 あかね >  
 
「さぁ、一緒に――運命を塗り替えましょう」
 
 

ご案内:「第三教室棟 屋上」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 廊下」にヨキさんが現れました。
ヨキ > 晴れた午後。美術室前の廊下。
掲示板に常世博物館の特集展示である『大「地球」展Ⅱ』のポスターを貼るヨキの姿がある。

「これでよし……と」

そこには美術館やギャラリーの案内、アルバイトの募集、ライブハウスのフライヤーなど、さまざまなチラシが隙間なく貼られている。
種々の催しのカラフルな色合いは、常世島の多彩な営みがそのまま表れているかのようだった。

「さて。今日も賑やかであることよのう」

子を見守る父のような顔で、廊下の左右や窓の外を見遣る。

ご案内:「第三教室棟 廊下」に雨見風菜さんが現れました。
雨見風菜 > 掲示板になにか真新しい物は貼られてないかな、ということで。
思い立った場所から一番近い場所であるこの掲示板の前に来た風菜。

「あら、ヨキ先生」

内心、後ずさりしたいとは思いつつ。

ヨキ > 「やあ。こんにちは、雨見君」

見知った顔に、にこりと笑い掛ける。
風菜の本性を知る由もない顔。

「今日もたくさん見応えのあるチラシが入っているよ。……」

相手の内心を知ってか知らずか、首を傾げる。

「……? どうかしたかね?」

雨見風菜 > 「いえ、特に何も」

良かった、今日もまだバレてないと安堵する。
そもそもそんな警戒するならその心当たりをやらなきゃいいのになんてことは分かってる。
でもチョコ中毒者にチョコを我慢しろというようなものだよそれ……
という、誰に向けているのかわからない思考を巡らせる。

「見応えのあるチラシ……『大「地球」展Ⅱ』ですか」

展示自体は特に興味のある分野ではないのだが、ついついチラシの内容を読んでしまう。

ヨキ > 服の上か下かというだけで、ベルトが多いヨキの服も風菜とそうそう変わらない。
相手の心中も知らぬまま、常世博物館のチラシに目を留めた風菜に嬉しそうな顔をして。

「ああ、これはすごいぞ。前回も大層な展示でな、いよいよその第二弾だ。
何しろこの展示は、監修がしっかりしていて……」

やたら早口である。よく声の通るオタクは厄介だ。

「……おっ、と。いかんいかん。自分の好きなことになると、つい早口になってしまうな」

またやってしまった、というような顔で、口元を拭う。

「雨見君はいつも大人しいからな。
ヨキのように早口になれる話題があったりするのか、見てみたいものだよ」

雨見風菜 > 「ふふ、わかります。
 わたしも……」

と言いかけて。
いやこれ以上はヨキ先生相手にはあかんやつだと思い直す。

「音楽ゲームのことなら、聞かれなくても色々言っちゃいそうで」

なんとか取りなす。
漫画なら大きな汗マークが付いているだろう。

ヨキ > 「ほう、音ゲー。ヨキも好きだぞ。最近注目しておるのは……」

と、リリースされたばかりの新作タイトルを挙げる。
これまたシステムがどうだとか、楽曲が粒揃いなどと、話が止まらなくなりそうだ。

「これまたいかんいかん。君の話が聞きたいというに、ヨキと来たら」

額に手を当てて、首を左右に振る。本当に反省しているのだろうか。

「雨見君。ヨキもオタクの端くれとして、言えることと言い難いことがあることは判っておる。
しかしヨキは……」

格好良い顔。

「君が秘していることをこそ聞きたい。
それがいちばん、早口になれることだからな」

まさか下着が秘されているとは思ってもいない。

雨見風菜 > 「ふふ、良さそうですよねぇ。
 でも、私は別のゲームに集中してますし……」

このまま音ゲーの話が続くかと思っていた。

「ヨキ先生は?」

先程、自分が誤魔化したことを見破られた。

「私が、秘していること」

超弩級の爆弾だ。
いや、爆弾を持ってるのは自分であってヨキ先生はそれを知らず知らずに狙ってる狙撃手のほうが妥当か。

「い、や、それは、その」

流石にこれは狼狽える。
わかりやすく狼狽える風菜のこの姿は割と珍しい。

ヨキ > 「む」

君はどんなタイトルを遊んで、と音ゲーの話を続けようとしたところで、風菜の狼狽が目に付いた。

「何か人に言えぬことが……?
いや。一端がまろび出たということは、きっと人に聞かせたい気持ちもどこかにあるのだろう」

とんだ強弁である。

「いかがかね、雨見君。
ヨキだけにそっと打ち明けてみるというのは……」

言って、内緒話の体で耳を近付けてみる。
男の上品な香水の匂い。

雨見風菜 > ……確かに。
見られたい気持ちはあるのだ。
だが目の前のヨキ先生は、なんというか駄目だと思う。

「え、そ、の」

耳を近づけてくるヨキ先生。
上品な香水の匂いが鼻孔をくすぐる。

「……えっちな、こと、なんです、けど」

陥落してしまった。
詳細までは言ってはいないが、ここまで言ってしまうのはもう陥落である。
ああ、これはお説教かなぁ……

ヨキ > 「!」

目を瞠る。しかし続くヨキの言葉は、風菜の予想とは大いに外れていた。

「よくぞ言ってくれた」

風菜の両手を、がし、と掴む。

「それは誰にも言えずに辛かったろう。
安心したまえ、ヨキは誰にも口外せん」

そこまで言って、しばしの沈黙。

「…………。言う相手がヨキでいいのか?
むしろ同性の教師に打ち明けた方がいいのではないか……?」

真っ当な逡巡であった。

雨見風菜 > 両手をがし、と掴まれて一度びっくり。
ヨキ先生の反応にもう一度びっくり。

「ああいえ、その。
 男性相手の方が、良い、のはあるんですが……」

やはり言い淀む。
これ以上言っていいものか。
いや言ってもこれは受け入れてもらえるルートでは?
待て待て、もしかしたら一転お説教ルートかもしれんぞ。
さあどうする、どうする風菜。

「今。私はマトモな下着を付けておらず私の糸で縛ってます」

(言っちゃった!言っちゃった!!何言っちゃってるの私!?)

風菜の内心は大混乱だ。

ヨキ > 「それは……」

両手はしかと掴んだまま。
すごく神妙な顔をして、吸って、吐いて、深呼吸。

「異能が君をそうさせてしまったのか。
それとも異能によって、君が秘めていた欲求が満たせたのか。
どちらにせよ――」

こくこくと何度も頷いて。

「ヨキは君の味方だ。
人に言いにくいことを打ち明けてくれて、ありがとう」

日がいい具合に傾き、差し込んだ西日が逆光となってヨキを照らす。
図らずも乙女ゲームのような構図となった。

雨見風菜 > 完全に後者です。本当にありがとうございました。

「は、い」

風菜の内心はますます大混乱だ。
え、何でこれで感謝されてるの?
そんなとき、差し込んだ西日にヨキ先生が照らされる。

(……ヨキ先生、格好いいなぁ)

現実逃避めいて、そう感じてしまった。
スカートの中から透明な滴が一滴、床に落ちる。

ヨキ > 「安心するといい。人の欲求は様々だ。
君のような悩みを抱えた者のために、ヨキと常世学園は在る」

胸に手を当てて、大真面目な顔で演説のように滔々と語る。

「誰にでもケアは必要だ。適材適所、ヨキが力になれることなら――」

ぽたり。
床に落ちる滴を見てしまった。
ヨキの目がまん丸くなる。

「…………。いかん。今はまだ駄目だ、雨見君。
いくらヨキが適材適所とは言え、我々は教師と学生だ。
卒業式が終わる後まで待って欲しい」

“今は”“まだ”“駄目”って言った。

雨見風菜 > ああでも、ヨキ先生では多分自分を"大事にしてくれる"。
多分駄目だ。
ヨキ先生の演説をよそに、そんな考えが浮かぶ。

気を取り直したのはヨキ先生が何かを見て目を丸くしたタイミング。

「え、いや、まだ、って。
 あの、何の話、ですか」

もう何がなんだか風菜にはわからない。
ヨキ先生の善意も、それが見当違いなことも、何を見たのかも。
冷静な頭ならば、まだ察せたかもしれない。

ヨキ > 「いや、何も言わなくていい。
女性にこれ以上無粋なことを言わせるヨキではないぞ」

ぶるんぶるんと首を振る。
まるで淫魔の異邦人でも前にしたかのような真剣さだ。
不意に小声になって、

「その、大変言いにくいことだが、スカートから何か垂れておる。
君の生きづらさは承知しているが、学内ではもう少し我慢する術をだね」

言いながら、大人の慎みとして携帯しているティッシュペーパーを一枚。
さっさと床を拭き取って、何事もなかったかのように美術室内のゴミ箱へ放り入れる。
軽く咳払い。動揺こそしていないが、居心地の悪さのようなものがある。

雨見風菜 > 頭の回転がついていかない。

「いや、その、ちょっと、混乱してまして。
 ええと、その……」

ヨキ先生の言ってることがわからない。
何が無粋?
と、気づけば愛液の指摘をされて。

「は、はいぃ!!」

慌てて液体収納の魔術を……無理です、集中できません。
そうまごまごしてる間にさっと拭き取られる。
こんなとき、どんな顔をすればいいのか全くわからない。
そもそも風菜自身、こんなに混乱させられることなんて生涯になかったわけだし。

ヨキ > 「ヨキ相手だから良かったものを、世の中には善からぬことを考える輩も多いのだぞ。
君はまだ若い。身体と心を大事にしなさい」

眼鏡を押し上げながら、そっと顔を逸らす。

「ヨキで良ければ、いくらでも相手になってやるから。な」

風菜の肩をぽんと叩き、その顔を覗き込む。

「…………。雨見君。大丈夫か? 気を確かに持ちたまえ」

雨見風菜 > ここで混乱していなかったら自分の欲望を打ち明けているのだろう。
誰かに隷属したい、でもヨキ先生は優しすぎる、と。
しかし大混乱している今の風菜には何もいえない。

そうして。

「むりれしゅ」

覗き込んできたヨキ先生の顔に。
風菜の意識は吹き飛ばされた。

ヨキ > まるで肩に触れたのがスイッチのように。
風菜が一言を残して意識を手放す。

「! 雨見君? ……雨見君!」

はたしてその声が聞こえていたのかどうか。
相手の両肩を抑え、優しく揺さぶる。

返事がなければ、所謂“お姫様抱っこ”で保健室へ運ぼうとする――
無論のこと、スカートの中が露わにならないように留意しながら。

雨見風菜 > そうして。
風菜が普段の彼女から全く考えられないほどに大混乱したなんともいえない顔で気絶し、
ヨキ先生によって保健室へ搬送されたこの一件は。
またたく間に学内に知れ渡るのであった。

ご案内:「第三教室棟 廊下」からヨキさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 廊下」から雨見風菜さんが去りました。