2020/06/30 のログ
ご案内:「第三教室棟 保健室」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 「失礼しま――何だ。誰もいないじゃないか」
授業を終え、夕日が校舎を照らす放課後。
左腕の包帯を取り換えるのと、痛み止めの薬でも貰おうかと訪れた保健室。余り御世話にならない場所なので、好奇心も兼ねて訪れたものの、室内に響くのは自分の声のみ。
担当医は外出中らしい。休んでいる生徒も今はいないようで、消毒液の匂いが鼻孔を擽る保健室には、己一人がぽつんと立ち尽くす事に成る。
「…こんな事なら委員会の救護室に行くべきだったかな。勝手に薬を持ち出す訳にもいかんし」
戸棚に陳列された薬やガーゼを眺めながら、無人のベッドに腰掛ける。幾分勢いをつけて座り込んだベッドは、ぽすん、という音を立てて己の体重を受け止めた。
「自分で変えられれば苦労しないんがだな…」
うーん、と悩みながら壁に掛けられた時計をぼんやり眺める。
今時何でだろう、と思う様なアナログ時計がコチコチと時を刻んでいた。
■神代理央 > 忌々しい戦闘任務自粛も、此の怪我が治るまで。
形式的には未だ百貨店の巡回任務、という事になっているが、それすら今日は休み。飼い殺しにされている気分だ。
「…身体を休めろ、とか、趣味を見つけろ、とか。余計な御世話なんだがな。全く」
こういう状況になると、ワーカーホリックな己の性が憎らしい。
早く怪我を治して任務に行ける様にしなければ、と考えている内に、己の体はベッドへ吸い込まれていく。
「……安物の癖に、意外と寝心地が良いじゃないか。生意気な」
ぽふ、と横たわった視界に映るのは、無機質な保健室の天上。
遠くから、部活動に励む生徒達の声が聞こえてくる。
平和で穏やかな時間。微睡む様な黄昏れが、己を包み込んでいた。
ご案内:「第三教室棟 保健室」にカラスさんが現れました。
■カラス >
遠慮がちに保健室の戸を開ける音がした。
靴ではない足音を響かせながら、ひたひたと歩く音には僅かに床を引っ掻くような音が混じる。
「あれ……?」
新たに保健室に入って来た青年は、先生が居ないのを認めると首を傾げた。
腰翼が扉に軽く擦り音を立てる。
どうやら理央の死角の位置に青年は鞄を置いていたようで、それを取りに来たようだ。
真黒の塊のような生徒は、保健室の中へと歩を進める。
■神代理央 > 扉の開く音。次いで室内に響く足音。
靴音とは幾分異なる音に首を傾げながらも、担当の教師でも来てくれたかと身を起こす。
そして視界に映るのは、黒い翼。爬虫類の様な脚。学園の制服。気弱そうな表情の男子。
ぽかんとした表情で彼を見つめた後、暫し悩んだ末に声をかける。
「……担当医は不在の様だぞ。具合が悪いのなら、暫し待つか病院に行く事を勧めるがね」
彼にとっては、唐突に投げかけられる声になってしまうだろうか。
それくらいのタイミングで、唐突に言葉を投げかけるだろう。
■カラス >
不意に声がかかればぴゃっと言わんばかりに肩を竦めてそちらを見た。
背丈は黒の青年の方が大きいが、精神的には極めて小さく見えるだろう。
「え、あぁ、そうです、か……さっきまで、居たから……。
呼ばれて、行っちゃったの、かな。」
同じ赤眼。ただこちらは瞳孔が縦に長く、足と同じく爬虫類のような眼をしていた。
西日が窓から入り、理央の金髪を照らす。
「俺は鞄を取りに来た所、ですけど…。
君は先生を、待ってるんです、か?」
と、爪の伸びた手で理央の死角になっていた先生の椅子の近くを指差せば、
学生鞄が一つ、置かれていた。
■神代理央 > 先程まで居た、という彼の言葉を聞けば、深い溜息を一つ。
入れ違いになってしまったということは、暫く戻らないだろう。最初から病院にでも行っておくべきだったか。
「…そうか。いや、待つ程の怪我でも無い。急いでいる訳でも無いが――」
と、彼が指差した先に視線を移し。
「ああ、成程。なら、突然声をかけられて驚いただろう。別に邪魔をするつもりは無かったんだが」
声を掛けたとき、随分と驚いた様な仕草を見せた彼を思い出しながら小さく苦笑い。
しかし、常世も色んな生徒がいるものだな、と改めて彼に視線を向ける。エルフだのオークだのすらいる島なので特段驚く様な事でも無いが、珍しいものは珍しいらしく。
■カラス >
「程の怪我でもない、って、
でも、包帯巻くぐらいなら結構な怪我じゃ、ないです……?」
よく見なくても相手が風紀委員だと気付いたが、
それよりも包帯を巻いているのに気付く。
風紀委員にとっては怪我は日常茶飯事かもしれないが、
黒の青年には痛そうだなと耳羽根を下げるぐらいの感覚だった。
ぱっと見れば青年は鳥人にも見えるが、
足の緑色の鱗だけが異様に見えるかもしれない。
「保健室で、勉強してたので、俺は後、帰るだけ、ですけど…。」
■神代理央 > 「……まあ、大したことはないことも無いが…。此の島の医療機関は優秀だからな。もう暫くすれば、包帯も取れるだろうさ」
実際、大した事はあったのだし。
と、思いつつも風紀委員として生徒に心配を掛けさせる訳にはいかない。もう治りかけているから、と苦笑いしながら左腕をぷらぷらと振って見せる。地味に痛い。
「ふむ?教室ではなく此処で勉強していたのか。見たところ、ヒトならざる種族の様ではあるが、何か理由あってのことか?」
此の学園は正規の生徒であれば種族による差別など行っていない筈。現に、己自身にもそういった差別意識は全く無い。精々、好奇の視線を向けてしまうかもしれない、程度のもの。今更ヒトかヒトじゃないかで驚いていては、風紀委員等務まらない。
翼を生やしながら東洋の龍の様な脚を持った彼の姿には、流石に何の種族なんだろうかと思わなくもないが。
「まあ、人によって事情は色々あろうから深くは聞かぬがね」
と、彼を気遣って答えたくなければ答えなくて良い、と言葉を継ぎ足す。その態度は、小柄な体躯に似合わぬ尊大なものであるのだろう。えへん、みたいな。
■カラス >
「あ、えぇと…俺は、大体保健室登校、してます…。
人が嫌い、って…訳じゃないんですけど、
沢山いると、酔ってしまう、感じがして…。」
ここの所は試験もあるのだから登校しないといけないのだが、
やはり負い目というものは感じてしまう。
「それに、俺はキメラで、能力制御、全然出来なくて、
練習するとすぐ体調、悪くなるので。」
自分の事を迷惑だとかそう考えているような物言いだった。
「でも、痛そうだし…包帯と消毒液の場所ぐらいは分かりますけど……。」
■神代理央 > 「ふむ。まあ、そういう生徒も中にはいるだろう。しかし貴様――あー、君はそれでも登校する事を選び、学ぶことを諦めてはいない。
自分に言い訳をせず、出来る範囲の事を最大限に努力している、
私は、その選択をとても好ましく思うよ」
負い目を感じている様な彼に、労わる様な言葉。
自分に出来る事を精一杯努力する者が、嫌いでは無いのだ。例え彼が自分自身に負い目を持っていたとしても、こうして登校しているという努力を無碍にする訳にはいかないだろう。
「…ああ、成程。珍しい姿だと思っていたが、キメラ。合成獣の類だったのか。まあ、どんな種族であれ生まれであれ、学園の生徒ならば私と同じ。そう引け目を感じる事もあるまい」
この少年はもう少し引け目を感じるべきかも知れない。と、第三者が見れば思う程度には尊大な態度。もっと自信を持て、と言わんばかりの口調。
「ん…いや、構わない。素人がしても良い事はあるまいしな。
ところで、今更ながら名前も名乗らずに話をするのも無礼であったな。私は神代理央。風紀委員会に所属する二年生だ。改めて、宜しくな」
先程、彼の事を「貴様」呼ばわりしようとした事を流すかの様に。
自らの名前を名乗った後ベッドから立ち上がり、握手を求める様に彼に手を差し出すだろう。
■カラス >
「そう、ですか。
先生がやっているの、よく見てるからと思っても、駄目ですね。
アキ先輩なら、手当できたのかな…。
最近は、試験も近い、ので……なるべく登校は、するように、してます。」
関わるモノ皆が青年を励ましてくれる。
ただそれでも、黒の青年はその励ましをどう受けて良いのか分からぬままだった。
生まれの呪いというのはそれほどに生物を束縛の檻へと閉じ込めるのだ。
ヒトと同じ姿を得たならば、尚更。
「…ありがとう、ございます。
俺は、カラスと呼ばれています。
一年生なので、後輩に、なりますね…神代、先輩。」
尊大な態度を取る理央には、すごいなと思うばかりである。
諫めようとかそういう気持ちにはならないのだ。まぁカラスが気が弱いのもあるのだが。
■神代理央 > 「そのアキ先輩、とやらが保健委員であるのなら、治療を頼んだかもしれんがな。生憎私は、受けるばかりで自分でするのは苦手故。
…そうか。最近はオンラインの授業も活発に行われている。保健室だけではなく、それらを管轄する教師の元を訪れるのも良いだろう。まあ、最後に選ぶのは君自身の選択だ。好きにしたまえ」
励ましたかと思えば、後は自己責任だと言わんばかりの口調。
要するに、彼自身の選択を好ましくは思うが、それをどう繋げていくかは彼次第。他人である自分が外からどうこう言うつもりは無い、との意思表示。
小さく肩を竦めながら、そんな言葉を彼に投げかけて。
「カラス、カラスか。名字はないのか。まあ、別に構わぬが。
先輩でも呼び捨てでも、好きに呼ぶと良い。何か困ったことがあれば、風紀委員会を訪れて私の名前を出しても良い。
……まあ、私は荒事の方が担当故、生活面において余り役には立たないかも知れぬが」
と、苦笑いを浮かべながら差し出した手を引っ込める。
後輩相手に流石に馴れ馴れし過ぎたか、とちょっと反省しつつ。
■カラス > 差し出された手を青年は取らなかった。
一度自分の手を見たのだが、長い爪で引っ掻いてしまいそうで怖かった。
戸惑うような仕草を見せてしまったことに、気を悪くしたかと内心後悔する羽目になる。
「………あ、はい。アキ先輩は、保健委員で…よく、寝てます。
おんらいん……ううん、機械は、ちょっと、分からなくて。
ありがとうございます、今度、"お父さん"に、聞いてみます…。」
耳羽根がぱたりと上下に動く。動物の耳と同じように、感情に左右されるらしい。
「風紀委員会に…ですか。
服と腕章、してるなとは、思いましたけど…怪我もそのせい…
神代、先輩は、風紀委員のえらい人、なんですか?」
■神代理央 > 「そうだな。分からない事は御父上に聞いてみるのが一番だろう。分からぬ儘にしておくのは、悪い事だからな」
ぱたぱたと上下する彼の耳を視線で追い掛ける。
犬の感情表現みたいなものなんだろうか?と内心首を傾げつつ。
「…む?まさか。私はまだ二年生だし、役職もついてはいない。単なる一風紀委員に過ぎないよ」
彼の質問にきょとんとした様な表情を浮かべた後、クスクスと笑いながら首を振る。
自分の態度が色々と問題なのは自覚していたが、流石に尊大が過ぎただろうか、と。