2020/07/03 のログ
ご案内:「第三教室棟エントランスホール」に矢那瀬陽介さんが現れました。
矢那瀬陽介 > 昼休みとなっても静かなのは本日は雨が降っているから。
学生達は教室や食堂、或いは体育館を使って各々が楽しんでいる中
少年は閑散としたエントランスホールのソファーに座っていた。
目を向ける先は硝子壁、向こうに見えるのは中庭だ。
篠突く雨が切れ目なく常緑樹や花々を濡らしている光景を物憂げそうに見て。

「七夕は晴れるかな」

小さな独り言を零して背筋が丸くなる。
梅雨の季節特有のアンニュイな気分に体が重い。
背筋を伸ばすのも辛く、膝上に肘を乗せた手の上に顎を乗せながら小さく溜息を零した。

「嫌な季節だよ」

矢那瀬陽介 > ソファーに腰を下ろして何する事もなく過ごしていた。
近づいてくる幼い声も聞こえずに。
足に軽い衝動を受けて硝子越しに中庭を見ていた視線が下がる。
そこには爪先に当たる野球ボール。
そして聞こえてきた声の方には小さな男の子達。

「小学部の子達かな」

拾い上げたボールを近づいてきた子達に手渡――さない。
わざと引いて不思議そうに首を傾げる子供たちに。

「雨だから退屈なのは分かるけれど。
 こんなところでボールを投げて遊んじゃダメだよ。
 遊ぶならこんな風に、ね」

掌の上で高速回転する球を親指、人差し指……五本の指に往復させてゆく。
目を輝かせる少年のその手に返したのならば。

「ね?投げなくても遊べるでしょ?」

微笑みを浮かべて今度こそボールを返して。
去りゆく背に小さく手を振って見送った。

矢那瀬陽介 > 昼休みの終わりを告げるチャイムの音にかろやかに立ち上がった少年はそのまま教室へ続く廊下へ消えていった――
ご案内:「第三教室棟エントランスホール」から矢那瀬陽介さんが去りました。