2020/07/21 のログ
■セシル > 休憩時間が刻まれていくにつれ、ちびちびと舐めるかのように消化されていたコーヒーが、また普通に「飲む」形に近づいていく。
そして、それが空になるとセシルは席を立ち、残った容器をゴミ箱に放り込んだ。
「………夏休みは人手が欲しいだろうし、久しぶりに委員会に顔を出すか」
ポツリと呟くと、セシルはロビーを後にした。
ご案内:「第三教室棟 ロビー」からセシルさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
■紫陽花 剱菊 >
常世学園第三教室棟、屋上。
既に日は落ち掛け、空は茜色に染まる逢魔時。
くびれたコートを身に着けた男は、自然とそこに足を運んでいた。
「…………。」
己が転機となり得たこの屋上。
思えば、あっという間だった気がする。
本当に色々あった。あって、迷った。
だが、いよいよ以て日は近い。
世間はそろそろ、夏の催しが賑やかしい頃合いか。
男は静かに、夕日を眺めて佇んでいた。
ご案内:「第三教室棟 屋上」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」に水無月 沙羅さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
過ぎ去る風を阻むものがない屋上
梅雨の終わりを告げるような、爽やかな風が撫でる中
一際…といってもちょっとばかり、強い風
「わっ…」
その風れに驚いたような声をあげたのは、
長いポニーテールを靡かせ、制服のスカートはためかせる少女
そんな少女の声が、背後から聞こえた──かもしれない
■水無月 沙羅 > 遠巻きに、時計塔から見えた見知った人影に興味を覚え扉を開ける。
いつぞやの、少年と対峙し一杯食わせて見せた公安の剣士の姿が見えた。
せっかくだから話を、と思ったけれども、どうにも更なる先客が居たらしい。
「伊都波先輩……まで?」
懇親会の続きみたいだな、と少しだけくすりと笑みが零れる。
「こんばんわ。」
とりあえず、目上の人にはあいさつが必要だろう。
■紫陽花 剱菊 >
……最初であったのは、あのスラムだったか。
落第街であった時から不思議な魅力を感じていた。
人とは違う、魔力と言うもの。
だが、そう見えるだけのか弱い少女。
夜の奥に手を伸ばして、幾度の迷いを得て再び此処に舞い戻った。
「……あかね……。」
夏の涼風に、紛れて消えた。
黒糸のような髪が細かく揺れる。
背後に感じるのは、あの懇親会にて感じれた気配が二つほど。
剱菊は静かに、振り返る。
眩いばかりの茜色を背にし、二人を見て口元を緩めた。
「……どうも。先に失礼させて頂いている。女子(おなご)二人の密談とも成れば、身を引くが……。」
会釈と冗談を、一つ。
■伊都波 凛霞 >
「こんにちわ、二人とも」
会うのは、懇親会以来かな、と笑う
「あはは、密談ってわけじゃなくて、多分ブッキング、かな
私は校門のほうから貴方の姿が見えたから、久しぶりにお話でもと思ったんだけど…」
保健室ではちょっとしたお世話になったりもした
あの時に感じた雰囲気に比べて、どこか青年の帯びている雰囲気が変わったような気がする
「だから沙羅ちゃんと此処で会ったのは偶然、だね」
心地よい風に撫でられながら、二人へと視線を交互に交わす
■水無月 沙羅 > 「いえ、別にそういうわけでは、ただの偶然です。」
首を振り男の言葉を否定してから。
零れる言葉に少しだけ眉を動かした。
あかね、最近よく耳にする名前だ。夕焼け空をみても脳外に呼ぶのなら、女の名前だろうという事はなんとなく想像はつく。
屈強な剣客、というにはあまりにも儚げに見えるその背中に、何処か違和感を覚えてしまう。ともすれば少女の様な。
いやあれが少女は無いだろうと自分に苦笑するのだが。
「えぇ、ブッキングですね。 私は時計塔の方から見かけたものですから。 話を聞けたらと思ったんですが。 お邪魔でしたかね。」
それこそ、こちらからしてみれば二人の方が密会に見えるというもので、指先でかりかりと頬を掻いて見せる。
「えぇ、すごい偶然、ですね。 なんと言いますか、この二人を眼にしてると思うと足がすくみますよ。」
無論冗談だけれど、緊張はする。
どちらも島においては随分と有名な人物だ。 自分等あらゆる意味で足元にも及ばない。
■紫陽花 剱菊 >
「左様か……。」
面白い偶然もあったものだな、と思った。
然るに此れもまた有難い縁の一つか。
大袈裟やも知れないが、今なら其れのありがたさがひしひしと胸に熱として伝わってくる。
「……私の様な男で良ければ、暇を潰す程度には囀ろう。
不如帰(ほととぎす)の様に行くかはさておき……。」
確かに男は静かな雰囲気だが、いつも以上に其の声音は穏やかで
何時も仏頂面を浮かべていた表情は、優しげな笑みを浮かべたままだ。
口も幾何か軽いようにも見受けられる。
端的に言えば、"かなり前向きで明るく見える"だろう。
「……生憎、露ばかり程度の身の上故に、其れは屏風の虎に怯えるようなもの。買いかぶりだ。」
小さく頭を振った。
黒糸が、小さく揺れる。
「……其方等は、息災で何よりだ。大事は、ないだろうか……?」
■伊都波 凛霞 >
「大事があったのは、むしろ貴方のほうじゃないですか?紫陽花剱菊さん」
穏やかな笑みに、柔和な微笑みを返しつつ、そう言葉を返す
逆光が、より強く青年の姿を印象づけている
「保険室でのお礼をどこかでできたらな、と思っていたんですけど、
気がつけば渦中の人。…あかね、って日ノ岡あかねさんのこと、だよね」
不躾と知りながら、問いかける
かつて落第街で話した彼女
自分が私事であくせくと動いている間に、大きな流れが出来上がっていた
──なぜそうなったのか、知らずのまま…という気分にはならない
一方で、沙羅の方に対して目配せ
邪魔なんかじゃないから、気にしなくていいよ、と──
■水無月 沙羅 > 「な、なんというか……独特のお言葉を使うんですね。
以前お見かけした時も思いましたけれど。
あぁ、いえ、意味合いはなんとなくわかりますのでお気になさらず。」
公安のやばい人、みたいに聞いていたのでそこそこに警戒していたのだが、あまり必要もなかっただろうかと肩の荷が下りる。
其れにしたって随分と、刃の割に人間臭い。
以前感じたソレとは随分雰囲気が―――気のせいだろうか。
「そうですね、私も気になっています。 日ノ岡あかね。
理央さんには手を出すなと言われているので、必要最低限の調査に抑えていますけど。
貴方も関わっているんですか、随分人気者なんですね彼女。」
うらやましいとは思わないが。
伊都波さんが話題に出してくれるならこちらも乗ってもかまわないだろう。
この人が何の目的で聞き出そうとしているのかは少し気になるけれど。
「……。」
目くばせに気が付いて、少しだけ会釈を。
なんというか、やりずらい。
この二人、独特すぎる。
■紫陽花 剱菊 >
「……そうだな、色々あった。本当に、色々……。まさに束の間、多くのも迷ったものだ……。」
あっという間に過ぎていった濃密な時間で在り
己の、"紫陽花剱菊"としての在り方を再認識出来た時でも在った。
此の生き方の、『選ぶ』選択を今、至った。
「……私は、人に礼を言われる程出来た人間では無い。
人間としては、未熟も未熟。『日ノ岡 あかね』へと手を伸ばし、彼女の事を此の屋上で識り
惹かれ、"愛した"。故に、多くを迷った。彼女やるべきことに手を貸すべきか、或いは止めるべきか。或いは、と……。」
大きな夕暮れを背に、男は静かに語り始めた。
あの宵闇の少女に惹かれた己と、己の未熟さを。
「……私はな、此の幽世とは違う世界より誘われた異邦人だ。
乱世の世で、多くを斬り、在るがままに人を斬り続けた、卑しき身分だ。
……如何に卑しいかと言えば、女性(にょしょう)一人の扱い方も心得ておらなんだ。」
「少し、強引に迫り、良い平手を受けた。後にも先にも、在れ以上に痛いと思ったことは無いな。……いや、面映ゆい。」
語るには余りにも恥の上塗りである体験談。
其れすら今、口に出せる心に余裕が在る。
「……私なりに、愛した女性を失わぬ術を考え、迷い、迷いに迷っている。
其れは、此の先変わらぬだろう。……所感で結構……。」
「其方達にとって、『日ノ岡 あかね』は、如何様な少女に見えた?」
■伊都波 凛霞 >
その言葉をただ静かに聞いていた
短い、文字通りは夏が来るまでのほんの短い間の話、だったのだろう
雰囲気も変わって見える筈
男子三日会わずば刮目して見よ、という言葉通りの…
──問いかけには、一泊置いて静かに語り始めた
「私が彼女に会ったのは、彼女がトゥルーバイツを立ち上げる少し前…。
その時はそんな話題の中心になるような人物とは思わなかった…ていうのが本音かな」
出会った時のこと、交した話の内容を思い出しながら、話す
「不思議な女性だと思ったかな…なんだか色々、見透かされてるような。
それでいて、お話しててイヤな気分にならない、そんな感じの子だった」
視線を空へと映す
その出会いがあったからこそ、余計に今、彼女のことが気になるのかもしれない──
■水無月 沙羅 > 「日ノ岡あかねを好きになって強引に迫った……!? あ、愛って色々あるんですね。」
驚愕も驚愕、吃驚を通り越して唖然。
あの人を好きになる人、居たんだなぁ。 私は多聞な先入観が合った故に毛嫌いしているが、そういうのが無ければ魅力的な人に映るモノなのだろうか。
確かに美人だとは思う、うん、私よりは圧倒的に。
スタイル的にも、いろいろな意味で。
自分も人のことは言えないだろうというのは隅に置いておくことにする。
「まぁ……なんというか、猫みたいな人です。 あと、怖い人。
全部を見透かしているようで、好きではないです。
あとは、まぁ……自分勝手な人だな、とは、想いますよ。
今更門を開けて……以前の二の舞を起こそうなんて、私には考えられません。」
正直な所感を述べる、好きになれない。
門を開けようとするなんて正気の沙汰とは思えないからだ。
今の人類科学では予想もつかないトラブルが起きたっておかしくはない。
その裏にどんな決意があったとしても、沙羅にはそれが許容できなかった。
■紫陽花 剱菊 >
「……然り。否、そうならざるを得なかった。些か、皆燥ぎ過ぎなだけと言えば其れ迄。」
己も其れは今に至って思っただけに過ぎない。
事実、全てを知る前の己でさえ、彼女達と同じように思っていた。
「……あれは、『唯の少女』だ。其方達と変わらない、普通の女性。猫の様な気質は
……まぁ、恐らく性分やも知れぬが……。」
「故に、"然もありなん"だ。……女性の気丈さとは、侮り難し。其れは、同じ其方等が良く知ってるはず。」
「……私から言えるのは精々此れ迄。御免。」
後はきっと、当人が語るか、語らず終いで終わりか。
何にせよ、今思えば其れは自分だけが知っていれば其れで良いと思う程だ。
ただ一つ、理解して欲しいのは、『日ノ岡あかね』はただの少女に相違ない、と言う事のみ。
「……自分勝手、か。『願い』を叶えるのは、自分勝手か?
ただ、たまたま。『其処にしか叶えるものがなかった』……其れだけの事。」
不足した足に義足をつけるが如く、其処にしか存在しなかった。
自分勝手、我儘と言われればそれまでだ。
肩入れしていると思われているかもしれない。
だが、そうまでして叶えたいものが、彼女にはある。
剱菊は静かに、双方を見やり、笑った。
茜色の夕暮れに負けない、穏やかな笑顔。
「……何、問題は無い。私がいる。誰一人、死なせはしない。あかねも、皆も。……此れはただの、『願い』故に……。」
「全てを『死』を、私が退ける。」
まさに、豪語してみせた。
■伊都波 凛霞 >
「…願いを叶えるため…かぁ」
なんとなく反復して言葉を漏らす
「何か力になれることがあれば…なんて、思ってたんだけど…いらないみたい、かな?」
言葉にも、その立ち振舞にも迷いは見えない
それは覚悟に塗り潰されているだけ、かもしれないけれど──
「園刃さんとか、いろいろな人が関わってるみたいだから心配だったんだけど…」
そこまではっきりと、言ってくれるのだとは思っていなかった
おかげでやや面食らってしまったところも内心あるけれど
「じゃあ、私は紫陽花さんの言葉をただ信じることにします」
全ての思いが最後の言葉に集約されている、そう感じ、
それでも必要なら手を借りてくださいね、と一言付け加えて
■水無月 沙羅 > 「只の少女……、免罪符みたいですね。だから許せ、というわけではないんでしょうけど。
きっと、それを決めるのは彼女じゃなくて他人です。
歴史の偉人が、うつけだったり天才だって言われるみたいに、結局他人から与えられる称号でしかない。
私は、そう思ってます。」
私が、伊都波 凛霞が、紫陽花 剱菊がどう思っていようと。それは周りには一切関係のないことで、どんなに願ったところで本人への評価は変わらない、『事件』を起こし、また同じ事を繰り返そうとしている。
普通ではない、と思われても仕方ないことだろうと、目を細める。
「願いをかなえるのは、自由です。
でも、だれかを巻き込むなら……いいえ、結局、私がそれを飲み込めないだけなのかもしれません。」
だれだって同じことをしている、ただそれが大きいか小さいかだけの話。
彼女にとってはきっと、同じこと。
「私は、手を出すな、といわれてますから。
何もするつもりもありませんよ。 心配も別に、していません。
何かあれば、風紀委員として対処する、それだけです。」
それ以外は、何も感知しない。好きにすればいいと言外に。
「それであなたまで命を落したら、ダメですからね。」
最後にそこだけ念を押した。 すべてに自分も入れておけと。
■紫陽花 剱菊 >
其れは凛霞の察し通りかもしれない。
覚悟で如何なる迷いを塗り潰しているだけの強がり。
其れでも、『決めた』からこそ進む。
其れは己が愛した女と同じ。
無論、其れを真似た訳でも無い。ただ、其処に至ったのが必定である。
「……感謝を、凛霞。だが、如何様に力添えしても、拭えぬ不安がある。
……今の私は"弱い"。故に、何か在れば遠慮なく、手を貸してくれ。私は皆を、救いたい。」
あかねを、華霧を、其処に集いし同胞を。
『死』を斬ると言う荒唐無稽を豪語する強さと、実現出来る自身は無いと言い切る弱さ。
何方も認めるからこそ、今迄は違う形で遠慮なく人を頼る。
其れほどのものを相手にするというのも在るが、そうでなくても
この様に遠慮なく、頭を下げるだろう。
夕暮れの光に、黒糸が乱反射する。
頭を上げると、沙羅を見やった。
水底の様な深い黒。其処に宿る、一筋の光明。
剱菊の笑顔に、苦味が混じる。
「嗚呼、そうと言われれば、返す言葉も無し。」
彼女の言葉を、的を得ていた。
だからこそ剱菊は、其れを否定しない。
静かに、頷いた。
「……私とて、全てを呑み込めた訳では無い。私は、多くの戦を経験した。当然、負け戦も……。
だが、個人を愛したが故に、"今でも喪失を恐れている"。」
そう、所詮上塗りでしかない。
張り子の虎と言われればそれまで。
凛霞の察した通り。其れでも、尚。
「……全てを『絶対に生かす』と決めた。其れが、私の『選択』……。」
其れこそ、無責任な言葉だ。
だが、最早出来る出来ないの領域では無く
"やるだけ"。其れだけの事。
「……故に、今を無理に呑み込む必要は無い。
……其れは人に必要な欠損成れば、求めるのは必然……。
あかねはただ、其れだけだった。『人と違う世界』に、降り立ってしまっただけの、『唯の少女』……。
それだけだ……其方にも、何れ分かる。唯、其方と"相違ない"。」
「彼女はああ見えて、人を人並みに愛し、人並みに憤り、人並みに悲しめる女性だ。
……もし、今一度相見えたら、ほんの少し、味方を変えてやってくれ。」
「あかねも、喜ぶ。」
そう、彼女と何も、変わりはしない。
あれはただの、少女だ。何一つ変わりはしない。
「其れは無い、死ねない約束をしている。
然るに、案ずる必要も無し……差し当たり……。」
「其れこそ、死ぬように見えるか?余程、凛霞のが野太いぞ。」
あ、デリカシーの無いジョーク言ったぞコイツ!!
■伊都波 凛霞 >
「私も園刃さんや風紀のみんな、もちろん紫陽花さんや日ノ岡さん。
死ぬなんて、その言葉だけでも聞くの、ヤですからね」
手を貸して欲しいという言葉には当然だと言わんばかりに快く、笑顔で頷きを肯定に変える
色々と事情はあるのだろう、それぞれ各々の考えもあるのだろうと思う
けれど誰かが死ぬのが、特に知った顔がいなくなるのは──それだけでイヤなのだ
「──沙羅ちゃんの言うことは、もっともだよね。
それはきっとみんな考えることで、その上で迷ったり、ブレたり、
異なる視界を、頑張って補正しようとしてみたり──
そうしている内に動けなくなっちゃうから、無理矢理に気持ちを固めて」
「覚悟に、変換する」
「決めたらもう一直線。
迷わないブレない、脇道は見ない……自分に言い聞かせるだけ」
自分の幼馴染も、そうだったな──
内心浮かび上がった記憶を懐かしむようにして、視線を二人へと戻す
「伊都波家では、覚悟を決めた男性の征く道に水を差さぬ女であるべし、と母様に教えられていますので」
私はそうします、と満面の笑みを向けた
「でも野太いは聞き捨てなりませんね?」
笑顔のまま、そうつけくわえた
生まれて初めて言われた、そんなコト
■水無月 沙羅 > 「……殺すことより、自己犠牲より、死ぬことより、守ることの方が数段難しい。 私の師がそう言っていました。 私には未だ届かないその境地に、貴方が立てるというのなら、何も言いません。 お祈り申し上げる……だと固いですかね。」
根負けした、というように苦笑いを浮かべて肩を落とす。
彼にしか見せない、日ノ岡あかねの表情がきっとあるのだろう、自分のように、泣いたり怒ったり笑ったり悲しんだり、そういう側面が。
きっと私は見ていないだけの事、知らないだけの事。
見せるつもりが無いようにも見えるけど、それは胸にしまっておくべきだろうか。
「わたしも、『少女』をやり直し始めたばかりですから、少しだけ、わからなくもないですよ。」
自分もきっと、少し前まで彼女と同じだったに違いない。
そう自嘲して笑った。
「私は、男が覚悟をきめてようが間違ってたら引っぱたいてでも止めますけどね。 えぇ、うちの理央先輩は間違ってばっかりの朴念仁ですから。 ちゃんと教えてあげないと。
伊都波先輩くらい物分かりが良ければいいんですけど。」
周りの男性陣を思い浮かべて、どうしてこう、真っすぐなバカしかいないんだろうと頭を抱える。
まぁ、目の前の男もそうなんだろうけど。
「紫陽花さん……女性に太いはちょっと、言葉選びとしては最悪の部類かと。」
場を和ませようとしているのは分かるが、伊都波先輩があまりにかわいそうではないか?
彼女だって別に太っているわけではない、ちょっと肉付がいいだけだ。
私が細過ぎると言い換えてもいい……男性ってやっぱり伊都波先輩みたいな人の方が好きなんだろうなと、やっぱり肩を落とした。
■紫陽花 剱菊 >
「……防戦の心得も持っている、と言いたいが……些か、違うか。」
「……忝し……。」
本来で在れば、止めさせるべき所業である。
自殺と言われれば相違なく、見込みがないから誰も止めない。
『諦めさせる』事こそ、最善だが、其れは『死』と何が違うのだろうか。
無論、そうで在っても生きて欲しいと願うべきだろう。
其れでも──────……。
覚悟を汲んで何も言わぬ二人にただ、頭が下がるばかりだ。
良き縁に、此度は恵まれた。
「……私は……。」
太平の世に、人のために、疎まれながら、"天災"と誹られても尚刃を振るい。
流されるままでは無く、人として刃を蘇らせてくれた、多くと輩。
そして、辿り着くは……────。
静かに振り返り、時期に沈みかけている夕日を見据えた。
何れ此の島にも、夜が訪れる。
「……此処に来る事、即ち生きている意味が在った。」
人として生きる意味を、今一度確認した。
其れこそ儚く散りかけない生き甲斐で在ろうと
未だ悩み、悔い、そして嘆くだろう。
如何なる『選択』をとっても其れは同じ。
だが、"迷い"だけは、其処に無い。
彼女との"約束"を、己だけではない。
数多の『帰る場所』へと皆を帰す為、刃を取る。
其れこそ刃の様に鋭い眼光が、沈むさまを一瞥した。
二人に向き直る頃には、穏やかな表情に戻っている。
「……ありがとう。其方等はやはり、良い女だな。男が放ってはおくまい。……ん?」
「成る程、理央の本妻か……あれの趣味は君か……否、悪くないとは思うが……ふむ……。」
「私は凛霞の方が好みでは在るな。飽く迄、"体つき"の話をすれば、だが……嗚呼、だが」
「其方の様な良い女を、放っておく男もいまい。其方とて、殿方の一人位と付き合いが在ろう、凛霞。」
……とまぁ、本人滅茶苦茶当たり前のように話しているけど
此処迄デリカシー無ければ、引っぱたかれて当然なんですわ。
■伊都波 凛霞 >
守る、ということは
守られる側が、守られることを受け入れないと成り立たない
殺すのは一方的に、自己犠牲は自分本位に、死ぬことは自分勝手に極めることが出来る
けれど──
「守る、っていうのは相互理解が必要だからね」
難しい、というよりも、比較すべくもない
沙羅のひっぱたいてでも…という言葉に思わず苦笑する
それもまた彼女なりの覚悟なのだろう
常に一歩引いて物事を見る自分と比べて、非常に強かに見える
自分だったら、そう…間違っているかどうかは最後までわからないから、ただ後ろに控えて、見守るだろう
否、そうしてきたし、これからもきっとそうする。それもまた、覚悟
自分の行動に追随する全ての結果を受け入れること。人はそれを"覚悟"と呼び、他人はそれを"責任"と呼ぶ──
さて、自分のことを野太いと評した彼、続く言葉を聞いていればまぁ、なんとなしではあるものの、ズレてるんだなーという感想に落ち着いた
異邦人が、少しずつ此処、常世の島で居場所を、生き方を見つけて、恋をして……
そういうのは素敵だな、と…口には出さず思ったりした
「あー、はは…お、お褒めに預かりどうも…?」
なのか?本当に?
「今は、いないよ。でも」
「───私は、そういうのは、当分いいかな…」
やや目線を遠くに投げつつ、ほんのり切なげにそう零した
……というか沙羅ちゃんが本妻?ん?誰の?理央くんの?あの?ん???
■水無月 沙羅 > 「どうしてみんな、そうやって死に場所を求めるんですかね……。
いえ、人のことは、言えないんですけれど。」
誰にも死んでほしくないのは、沙羅とで同じこと。 ただ、方法論が違うだけ。
そこに命を懸けるなら、せめて一言だけでも送ろうか。
「あかねさんに言伝を、『死を畏れ、死を想え。安寧の揺り籠は死と共にある』意味は自分で考えてください。 できれば紫陽花さんも。」
……ん? 今本妻って聞こえたか?
「待ってください紫陽花さん、今本妻って言いましたよね? まるで別に奥さんが居るみたいな言い方に聞こえたんですけど気のせいですよね? 気のせいですよね!?」
思わず服を掴んで揺さぶる、嘘だと言ってよ!?
「やっぱり男の人はみんなおっぱい大きいほうがいいんだー!!!
理央さんも伊都波さんの方がいいに決まってる!
この前だってデレデレしてたし!!」
思わず涙目になる少女一人、女心は難しからずや。
■紫陽花 剱菊 >
「…………。」
人の心に機敏な訳でも無い。
ともすれば、鈍い方だ。
其れでも、彼女の、凛霞の笑顔を見れば如何なるものかは理解出来た。
今だからこそ、かもしれない。
"当分良い"。其処に何か、きっかけが在るのやも知れない。
「……慰めになるかも分からない。唯の気休めやも知れぬ。」
「女性の涙は忍び無し。私は必ず『皆を連れて帰る』
……まぁ、数名、もしや私を含めて『牢の中』かもしれないが……。」
「今度は私が、凛霞を助けるよ。」
刃としてではなく、一人の人、紫陽花剱菊の『選択』として、必ず其の悩みを断つ。
口で言うには軽すぎる約束かもしれない。
だが、其れを口にし、実行するだけの気兼ねは確かに在る。
先にある苦難を越え、また七難八苦待ち受けようとも
────"知るか、そんな事"、だ。
「……一つだけ、訂正させて頂く。『死に場所』ではない。偶然、死中にのみ、『始まり』がなかっただけ。ともすれば……。」
「求める先は、『生き場所』だ。」
其れだけは断じて違う、と強く否定した。
皆生かして返すという覚悟、そして、少女の、あかねは決して死にたくは無いだろう。
皆、其れは同じ。だからこそ、『生き場所』なのだ。
「……護るための相互理解、か。然り……ともすれば……否、止めておこう。」
其の程度で考えるな。
今は、成すべきを成す。
何気なくまた、景色の方に視線をやった。
もう日は落ち、夜に差し掛かる頃合い。
宵闇が、やってくる。
「…………。」
「『死を畏れ、死を想え。安寧の揺り籠は死と共にある』……、……。」
何か、似たような言葉を誰かから聞いた事が在る。
暗闇の空の向こう、何かが……。
<……見る───────>
「……!」
それは、紫陽花剱菊にのみ見えたであろう、一瞬の幻視。
夜の帳が下りたはずの空に、一面の蒼天。太平の世が、見えた。
あれはいったいと思った矢先……。
「……ん。」
掴まれた。服を。
「あ、いや……」
ゆっさゆっさ。めっちゃ揺れる。
黒髪がばっさばっさ乱れる。
「言葉の綾……と言うよりも、其方が……」
ゆっさゆっさ。
「本妻足れば、必然的表現」
ごっ!!
「ウッ」
思いきりフェンスに後頭部をぶつけて悶えた。
……天誅!
■伊都波 凛霞 >
「それ、約束ですよね?」
にこり、と笑顔を深めて、言葉を受け取る
じゃあ…守ってもらわなければ
それもまた覚悟、そして責任
どんな縁でもいい。手繰り寄せる糸は、多いほうが──
なんてことを思っていたら、目の前でぐわんぐわん沙羅ちゃんに揺さぶられる紫陽花さんの姿
どうやら本妻、という言葉が火種だったようだ
確かに言われて見ればそういう意味合いにもとれる気がする…
でも、彼のいた世界だとそういうのが当たり前の意味として使われていたんだろうなあ、なんて思って
ちょっとかわいそう、と思いつつもやや微笑ましく、その様子を見てしまう
っていうか、そんなことよりも
「へぇー…神代くんが……へぇー…」
そういえば懇親会にも一緒に来ていた
まさかそういう関係だったとは…彼の性格上、色恋沙汰に興味があまりないのかと思ってしまっていた
これは今度会った時に根掘り葉掘り…いやそれはさすがに無粋である
ちょっと触りを聞いてみたりしても、いいかもしれない
「ほらほら沙羅ちゃん、危ないから…って、ああ」
後頭部を強かに打ち付ける様子を見てしまい、絶句
■水無月 沙羅 > 「あっ……」
思わず必死に聞き出そうとした結果であって、わざとではない。
決してわざとでもなければ憂さ晴らしでもない。
「ちょ、紫陽花さん!? まだ言葉の真意聴いてないです!?
居ないんですよね!? 側室とかいませんよね!?
別に結婚はしてないけど同棲はしてるんですよこっちは!!
懇親会の後に操だって捧げちゃったんですよ、起きてください紫陽花さーん!!」
少女必死、もはや伊都波先輩に聞かれることに恥も外聞もなく。
「伊都波先輩、理央さんとそういうのじゃないですよね、ね!?」
捨てられた犬のような眼で見てくるわけである。
■紫陽花 剱菊 >
「───────……。」
「……蒼天の靂 なべて世は事も無し 太平の世……。」
チーン。
如何やら本格的にダメなようだ……!
暫くすればきっと生き返るからそっとしておこう……。
ご案内:「第三教室棟 屋上」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
■伊都波 凛霞 >
「あああ…落ち着いて、落ち着いて沙羅ちゃん…。
私と神代くんは何にもないから、大丈夫だから…」
あわあわ、同棲してるとか操を捧げたとかプライベートワードがどんどん出てくる
この子がこんなに必死になるんだ…というのを考えると、微笑ましくもあるのだけど
色々な情報が漏らされた神代クンがやや可哀想になってきた
「いやいやちょっとそんな辞世の句みたいなの読まないで…。
貴方今絶対に守って生きて帰ってくるみたいなこと言ったばっかりだってば…」
はぁ…と、暮れ泥む屋上で額に手をあて、小さく溜息を吐くのだった
■水無月 沙羅 > 「あー、うー、伊都波せんぱぁい……うぅ。
どうせあのエインヘリヤルとかいう美人さんとも仲がいいんだ。
私なんてどうせどうせ……。」
卑屈になっていく少女、自分に自信がないとこうなるわけで。
男性はもっと女性を褒めるべし。
彼氏の周りに女の子ばかり居ればこうもなるだろう。
これでも我慢してきたほうなのだ。
ちょっと、今回は糸が切れてしまっただけで。
「理央さんの、ばかーーーーーー!!!」
少女の悲しい遠吠えが響くのだった。
ご案内:「第三教室棟 屋上」から水無月 沙羅さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」から伊都波 凛霞さんが去りました。