2020/08/12 のログ
ご案内:「第三教室棟 教室」に絵描きさんさんが現れました。
■絵描きさん > 「うん…時間になったね。
それじゃあ、今日の集中講義第一回をやっていこうか。」
真夏の真昼間。
この教室では夏季に集中して行う授業である、集中講義が行われている。
教壇には優しそうな魔法の先生が立ってにこやかに語り掛ける。
■絵描きさん > 「知っての通り、『現代生活と魔法』が、この授業の名前だ。
初回だから、まずこの授業の目的について、お話しようと思うんだ。」
魔法の先生が授業の名前を囁けば、ホワイトボードに黒色のマーカーが浮かび上がり、
授業の名前をそのままに丁寧な字で書きだす。
現代生活と魔法………と。
「ああ、それから…ボクの事は絵描きさん、と呼んでくれると良いよ。
絵描きと魔法の先生をやってるから、よろしくね。」
その下段に、もう一つマーカーが浮かび上がり、絵描きさん、との名前が書きだされた。
■絵描きさん > 「さて、この授業では、大きく分けて二通りの生徒を取っているんだ。
一つは、魔法が使える生徒。
もう一つは、魔法が使えない、魔法が全く分からない生徒。…そうだよね?」
ふむ、と一呼吸おいて。
「確認してみようか、魔法が使える子は、手を上げてくれるかな?」
控えめに手を上げる生徒が、数名。
■絵描きさん > 「ふふ…じゃあ、魔法が使えない子は?ほら、手を挙げて。」
控えめに手を上げる生徒が、これまた数名。
「じゃあ、今手を上げなかった子は、どっちでもないって事かな。」
「シャイだねえ、皆。………良いかい?挙手してくれなきゃあ、お話が進まない。
積極的に手を挙げるくらいは、やってごらん。これは別に魔法に関係ないけどね。」
■絵描きさん > 「ともかく、この授業では、魔法が使える子、魔法が使えない子の両方がいるんだって事は、分かったと思う。
どうして、魔法が使えない子まで、魔法と生活を学ぶ必要があるのか?
なぜ、魔法が使える子が、魔法が使えない子と共に学ぶ必要があるのか?
それは、当然の疑問だよね。………理由を答えよう。」
「それはね、魔法はこの世界において、徐々に『非日常』のものから、『日常』のものへと変化しているからだ。」
魔法は、非日常から日常に変わりつつある。
先生が囁けば、再びマーカーが浮かび上がり文字を書き出す。
新たに一人でに浮かび上がったマークが、非日常と、日常の文字に真っ赤な下線を書き出して。
■絵描きさん > 「それだけじゃあ、どういう事か分からない?うん、そうだろうね。
詳しく説明しよう。」
「魔法は便利だ。………そう考える人は、多いだろう?
実際、魔法は便利だからね。そして、魔法は多くの人が扱う事が出来る、
現代の生活に密接に変わるものとなりつつあるんだ。」
「だって、便利なものは誰だって使いたいからね。」
魔法は便利、その文字をまたホワイトボードに、書き出されていく。
先生は前を向いて、ホワイトボードに見向きもしないのに。
「ごらんよ。今だってそうだ…ボクはこうして手を動かさず、振り返る事もせず、こうして字を書き出せるんだから。」
■絵描きさん > 「そう、魔法は便利なものなんだ。魔法が使える子も、使えない子も…それは、何となくわかると思う。」
「そして、便利なものは使われる。便利なものに合わせて、生活も社会も変わっていく。
それは、その便利なものが使える者も、使えない者も例外ではない。」
■絵描きさん > 「いい例を挙げようか。ボクもこの世界を見て驚いたものがある。
なんだか分かるかい?」
「ボクは異世界が出身なんだけどね。その世界にはなかったものだ。
そして、世界はそれに合わせて大きく変わっているように感じたものだ。」
■絵描きさん > 「それが何だか…分かる子いるかな。別にはずれたって良い、
ちょっとしたお話だよ、手を挙げてごらん?」
先生が緩く生徒に語りかけるが、やっぱりシーンとしている。
■絵描きさん > 「………正解は自動車、だよ。」
3分程先生が黙った後、口を開く。
「どうかな、分かるかい?」
「自動車に合わせた大きな通路、そして法律…そういったものが、この世界には出来ているよね。」
■絵描きさん > 「そして、自動車に乗る人も、乗らない人も。
生活には少なからず自動車というものの影響を受けるんだ。」
「何故なら、自動車は便利だから。人に出来ない移動速度をもたらすから。」
■絵描きさん > 「そして、それは魔法も同じ事…。
魔法なしで、人に出来ない恩恵をもたらす。
そんな便利なものは今後どんどん普及していく。そして、多くの人に影響を与える。」
しみじみとした表情をしている先生。
「そのことを知ってもらうのが、この授業の目的なんだ。
だから、魔法を使える子も、使えない子も授業を取れるようにしてるってわけだね。
分かったかな?」
■絵描きさん > 「さてと、ガイダンスはこんなものでいいかな。
簡単な課題を出そう。」
プリントの束を指先で弾き上げると、それが消える。
そして………それぞれの生徒が座る机の上に姿を現していく。
「次の講義までに、やっておいで。今日の授業を聞いてれば、答えられる簡単なものだよ。」
今日の授業でホワイトボードに描いた事と、
それから「あなたが魔法にどういうイメージを持っているか」を問う、それだけの課題だ。
■絵描きさん > 「………最後に、質問を取ろうか?
聞きたいことは、何でも良いよ。魔法についてでも、なんでも。
お互い何を考えているかの意見交換にもなるしね。」
最後に、と先生は切り出してまた目を向ける。
やっぱり、シーンとしているのは変わらない。
■絵描きさん > 「………うん、なさそうだね。」
しばらくしたら、
マーカーのケースにズラッと宙を浮かんだマーカーが滑り込み、
ホワイトボードに描かれた字がひとりでに消えていく。
「課題は、次の講義まで。そして次回の講義室もこの教室だよ。
それじゃあ、暑いけど元気でやっていこうね。今日はこれで終わりだよ。」
そう言い残して、先生は教室を去った。
ご案内:「第三教室棟 教室」から絵描きさんさんが去りました。