2020/08/20 のログ
ご案内:「第三教室棟 保健室」にビシュクさんが現れました。
■ビシュク > 「…………………」
静謐に、クーラーの音色だけが聞こえる清涼感ある保健室。
遠く遠くを、どこか見るような形で瞳孔を開いていて……
「…………ふぅー………」
深く、深く溜息……見下ろす行く末を憂うように、指先を艶やかな額に宛がい、頭を左右に振る。
■ビシュク > 「………今度理央くんに聞かなきゃいけないことも増えたわね…アレが別のタイミングで発現しているとしたら、ピースは増えていく…けど、望ましいカタチではないわねぇ…」
サラサラと、手元のカルテに情報を書き加えていく。
今回のスラムで起きた事象、推測できる問題、etcetc…
「…ヒトはヒトの力で未来を切り開いていく…というのは分かっているんだけど、直接介入できないのはなかなかに歯痒いものがあるわね…」
はぁ~~……ともう一度溜息。
何度も介入に心動かされるが、基本座して動かず。それが未来を見守る姿勢が、狐人のスタイルなのだった。
■ビシュク > 「…あの黒狐が来たら、嗤うでしょうね…」
この島は酷く歪で、不安定に満ち満ちている。
幾度となく思ったことであり、それで悩みは尽きないことであり、これから先も、同じような形で苦労することだろう。
「それでもね、窮戯。
私は、ヒトが好きなのよ。」
手の焼ける行動もまた、人間性の発露。
それが半ば毀れかけだとしても、毀れても直そうとする。
それが、狐人の矜持であった。
ご案内:「第三教室棟 保健室」に水無月 沙羅さんが現れました。
■水無月 沙羅 > 一度家に帰った後、その翌日。
ほとんど人のいない時間にそっと保健室の扉を叩く。
「あの、ビシュク先生、いらっしゃいますか?」
聞こえるのは、ビシュクを悩ませる一人の少女の声。
ノックする音は何処か小さく、力がない。
声もどこかうつむきがちに聞こえるだろうか。
■ビシュク > 「ふぅー…さ・て、っと…
今日はイヴくんがお夕飯作ってくれるみたいだから頑張りましょっと…」
肩をぐいーっと伸ばして、カルテに向き直り…
「――あら、いらっしゃい。沙羅ちゃん。
どうしたのかしら、定期手術の日はまだ先だけど何か相談事?」
入り口が開いた気配を感じ、先刻まで『観ていた』少女へ出迎えの挨拶。
力無いか細い声も、疲れきった様子にも原因は気づきながらも、おくびにも出さず。
■水無月 沙羅 > 「相談というか……確認というか。
すこし、視てもらえませんか?
私の事。
スラムで、ちょっといろいろあって……。
約束破ったかもしれないから……。」
ガラガラと扉を開けて、そっと音がしないように静かに閉める。
以前来た時よりも憔悴しきった顔は、明らかに普段の沙羅とは違っている。
如何したらいいのかわからない、そういった雰囲気を感じるだろう。
■ビシュク > 「また無茶しちゃったのね。
分かった、見るわ。」
憔悴して、倒れる寸前といった体の沙羅を目前に招き、
椅子に座らせる。
そして、少女の各所を触診。
「―――相当無茶しているわね。修復した神経箇所が断裂しているところがほとんどね。
他にも骨、内臓の一部、幸い心臓は血管部位のみだけど。
『かもしれない』ということは、何をしたか覚えてないの?」
触診と、一先ず応急処置の『薬血』を流し込みながら、俯く沙羅に語り掛ける。
沙羅の告解を聞くかのような姿勢。
■水無月 沙羅 > 「……はい、記憶……なくって。
スラムに行ったことまでは覚えてるんです。
でも、そこから記憶がおぼろげで……。
すごく嫌な感覚が、胸に残ってるのだけは覚えてます。
怒りとか、憎しみみたいな、そういう感情。
そしたら……気が付いたら、先輩が血だらけで倒れてて、すごいけがで。
私……仲間を傷つけちゃったかもしれない……。
どうしたらいいのか、もう判らなくて。」
感情は告解を続ける間にも渦巻いて、負の方向へスパイラルを始めていく。
ストレスという名の負荷は、いやがおうにも心拍を早めていく。
これからどうなってしまうのかわからない不安と、どう償っていけばいいのかという焦りが、少女の中で積み重なってゆく。
■ビシュク > 「…一つ一つ、追っていきましょうか。
まず一つ、なぜ沙羅ちゃんがスラムに向かったのか。
風紀委員がスラムに向かうには、それなりの理由があるはずよね?
ひとつ、事件を調査するため。ひとつ、事件の後処理をするため。…ひとつ、誰かを助けるため。」
不安とストレスで負荷が過熱する沙羅の血脈へ、鎮静剤たる血の霊薬を流し込みながら。
「所謂、喜びとは真逆にある感情の発露の後から、記憶が朧気…ということよね。
その記憶が曖昧になる直後にあったことは…覚えてる?
あと、その先輩は何処に行ったかしら。近くの病院とか?」
一つ一つ、沙羅の記憶を辿る質問。ココロに負荷がかかりすぎないように、最悪の場合の場合は即シャットアウトできるように注意しながら…
■水無月 沙羅 > 「スラムに向かったのは……、あの場所で、理央さんが戦闘をしている……って無線が入って。
正確には、理央さんとは言ってないんですけど、無線の内容で、理央さんってわかったんです。
周囲への被害がすごくて、応援が必要だってきいて。
あの人なら大丈夫だって、言い聞かせてたけど、やっぱり不安になって、見に行ったんです。
そしたら、もう誰もいなくて。
破壊痕と、血痕だけが残ってて。
残された情報で、整理しようと思って、悪い方向ばかりに推測が進んで。
気が付いたら、記憶が無くて。」
ゆっくりの様で、口の周りは早い。
説明することに必死なのがビシュクには伝わるだろうか。
自分を落ち着かせる様に、おきく息を吸って、吐いてを何度か繰り返した後。
つばを飲み込む音が保健室に響いた。
「山本先輩が……傷だらけになってて。
あちこち、私の周りに破壊の痕跡があって。
流れていたのは、山本先輩の血じゃなかったから、あれは、きっと。
わたしの、だから、わたしが、魔術を使って……っ」
ここまで話したところで、息がどんどん早まっていく。
ヒュゥっと音を立てる、過呼吸がはじまって、思考も混乱して行く。
■ビシュク > 「成程、想像が先走って頭が真っ白になってしまったのね?
で、恐らくは理央くんが戦闘の結果、とても良くないことになってるんじゃないかと悪い妄想が暴走してしまって…プツン、っとしちゃったのね?」
起こった事象の再確認を、カルテに明文化。
『神代理央の危機に際すると、暴走の可能性極めて高し』
『情報のみの想像であっても、想像力と頭の良さが悪方向に転じて可能性大』
『その他、大切に想う対象であっても同じことが起こりうる可能性高し。要交友関係の情報』
『瞳が黄金に輝く現象に依る、精神網の著しい断裂。異能に依る現象と推測。』
書けば書くほど、悪い情報ばかりだ。
「分かった、一度喋るのを止めましょ。
――うん、治療し始めなのは不幸中の幸いだったわね。
また、治せばいいでしょ?
それに、山本くんっていう子も、致命傷ではないのでしょ?
…あとね、理央くんは無事よ。さっき学校に連絡があったの。だから、そっちは大丈夫。安心して?」
『薬血』に依る治療と鎮静を続けながら、ぎゅぅっと情緒を震わせ怯える少女を抱きしめる。
そして、今の沙羅には最たる懸念ごとの一つを解決する言葉を囁き、背中をぽふ・ぽふ・ぽふ…最も、学校に連絡があった、というのは嘘だが。
嘘も方便である。
■水無月 沙羅 > 「……無事、無事、なんですね……? よかった。
あぁ、でも、如何しよう、わたし、山本先輩に、酷いけがを負わせて。
命に別状は、ないと、思うけど、たぶん……いろんな処分が待ってる。
彼も、理央さんも、いろんな人に迷惑かけちゃう……。」
薬血によって、ゆっくりとだが容体は安定し、呼吸も穏やかになってゆく。
今朝は不安で眠れていなかったのだろう、緊張の糸がほぐれたのか、瞼がゆっくりと落ち初めて来る。
背中を叩かれることに、やすらぎを感じて今にも落ちてしまいそうだ。
■ビシュク > 「そうね、そこは沙羅ちゃんがやってしまったという自覚があるのならば仕方のないこと。
過去も、行動による業も変えられないもの。
…その山本くんの怪我に関しては、何かあってもセンセーが頑張るから、今考えるのはおやめなさいな。
理央くんたちへの負担を考えることも、今は止めておきなさい。」
ぽん、ぽん、ぽん、ぽん……
負担に負担が重なって、異能以外の面でも心身へのストレスがかかりすぎている少女を、長身の肉感が包み込み、眠りに誘うような狐人の芳香と、抗い難い陽だまりめいた温もりが沙羅を包む――
「疲れているときに懸念事に向かい合っても、悪い方向にしか考えは進まないわ…今、貴女へのお小言を言うとしたら、それだけ。続きはしっかり休んでから……ね。」
追加の催眠薬血を流し込み……愛情と業深い少女を、眠りに導く。
■水無月 沙羅 > 「休んで……いいのかな、しぃ、先輩も……よく、いってた、けど……。
休んだら、おいて、行かれそうで……また、ひとりになるのは……。
こわい……か、ら……。」
あらゆることが限界に達していた少女は眠りにつく。
眠りについて尚、少女の体も心も傷だらけだ。
この傷は、一生癒えることはない、過去の呪縛。
愛深き故に、自らの業に耐えきれない少女は、不安を抱きながらも一先ずの休息につく。
彼女に、本当の意味で安息が訪れる日が来るのかどうか、それは誰にも分らない。
ゆっくりと、少女は子供らしく寝息を立て始めた、
■ビシュク > 「……むしろがんばりすぎなのよ、あなた『たち』。
少しは休んで青春しなさいな…もう。
風紀委員の強制休養日とか作ってもらおうかしら…」
すぅ…すぅ…と、疲れきった寝息を立てる、過去に囚われたままの少女をお姫様だっこし、一人口中でごちる。
この島の現状から、早々そんなものを制定できるとは思えないと分かっていながらも、そう言わずにはいられない。どうやら、他の風紀委員の面々も次々と戦闘不能になっている様子だし、負担が大きすぎる現状を嘆くきつねびと。
「…ただ、今は休みなさいな。
子供たちの厄介ごとは、見守るのが大人だから…ね。」
そのまま、ビシュクが就任してから、常にふかふかに保っている寝心地安らかなベッドへ沙羅を横にして……
「♪…♪……♪……♪……」
深く、深く寝入る少女の傷ついた手を握りながら、異世界の子守歌を、柔らかく歌い奏でるのだった―――
ご案内:「第三教室棟 保健室」からビシュクさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 保健室」から水無月 沙羅さんが去りました。