2020/08/21 のログ
ご案内:「第三教室棟 保健室」に神樹椎苗さんが現れました。
■神樹椎苗 >
日も高くなり暑さがピークを迎える時間。
椎苗は保健室で肌着だけになっていた。
「まったく、こう湿度が高いと蒸れちまうのが困りますね」
机の上にはいくつもの新しい包帯と消毒薬のボトル、傷口を保護する医療用の透明なフィルム。
この保護フィルムは傷口に雑菌や汚れが入るのを防ぐと同時に、自然治癒を妨げる事がない便利な医療品だ。
薬剤を使用していないから魔術や異能にも干渉しない、戦場でも利用されている優良な品だ。
片腕での処置もようやく慣れてきたので、手際よくいくつかの包帯とフィルムを変えていく。
問題は傷口が開いてしまった左の大腿部だ。
フィルムの縁から溢れて包帯に血が滲んでしまっている。
「昨日はちょっと動きすぎましたね。
ええと、ホチキスはどこでしたか」
棚の引き出しを開けて、医療品のホチキスを取り出す。
縫合が容易で数日ほどで針も分解される、便利な道具だ。
椅子に座り大腿部の包帯を剥がす。
血が染み込んだ包帯を外すと、未だ出血が止まっていないらしい傷口が、フィルムの下にあった。
フィルムを剥がせば当然、血が溢れ出す。
消毒薬で洗い流すようにして、何枚ものガーゼで拭き取っていく。
綺麗になった傷口は、ぱっくりと裂けた皮膚がよく見える。
ゴムチューブで傷口の上を締め付け血流を止めて、出血が減っている間に、ホチキスを使って傷口を縫合した。
その上からフィルムを貼り、包帯を巻いてからゴムチューブを外す。
これで取り敢えず、激しい運動でもしなければ大丈夫だろう。
「はあ──つくづく不便な身体ですね」
そうして一通り処置を終わらせれば、血のついたフィルムや包帯を医療廃棄物用のダストボックスへ放り込む。
机の上に広げた道具を元の場所へと片付けると、やっと一息つくように丸椅子に腰掛けた。
「ふう。
やっぱり人が居ないと楽でいいですね」
保険医や委員がいると、一人でやれると言っても中々退いて貰えないのだ。
あまり、自分の『古傷』は人に見られたくない。
だから自室でも、娘に見られないよう浴室で処置しているくらいなのだ。
淡い桃色の肌着一枚で、エアコンから流れる冷たい風に吹かれながら目を細める。
暑さには強い椎苗だが、湿気は嫌いだ。
程よい冷風が心地よいのは、普通の人間と変わりない。
「少し休んでいっても、いいかも知れねーですね。
どうせ誰もこねーでしょうし」
そんな調子で、肌着だけというのに鍵もかけずだらけている。
夏季休暇中に、保健室に飛び込んでくるのうな生徒も居ないだろうと。
まあ来たら来たで、椎苗の様子を見たら逃げ出しそうなものだが。
見えているだけで、右腕は肩口からやけに細くなっていて指先まで包帯だらけ。
左腕も二の腕と手首の上、両脚も太ももや脹脛に包帯が巻かれ、首にも包帯だ。
顔にも包帯の代わりにガーゼが貼られているわけで。
普段より布面積が少ない分、その怪我の多さは目立って見えるだろう。
ご案内:「第三教室棟 保健室」にマルレーネさんが現れました。
■マルレーネ > 暑い暑い。
いくら水着が気に入ったと言っても、流石に普段から常用するようなことはない。
というか、普段着はあくまでもこちらだ。
汗を流しながら、毎日朝から晩まで働くのが、当たり前になってきている女。
今日は施療院の認可の是非について調べるために学校にやってきたのだけれども。
………くらり、と立ち眩み。
医療については理解はしていると思ったが、この平和な島であんなに怪我人が増えるとは思わなかった。
いや、むしろ平和な島だと誤解していたのかもしれない。
睡眠不足がモロに響いて、その場にしゃがみ込みそうになって。
なんとか、保健室に滑り込み。
「………? どこか新しく怪我でもしましたか?」
そんなところであっても、知った顔であれば平気そうな顔をして声をかける女。
■神樹椎苗 >
完全に気を抜いていたところに開かれる扉!
滑り込んでくる人影に一瞬身を固くして。
それが知っている相手だとわかれば、ほっと一安心。
「古傷が開いてしまったので、ちょっと処置してたのです。
それより、姉の方はどうしたのですか。
随分と調子が悪そうに見えましたが」
さすがに平気そうな様子でも、入った瞬間の疲れた様子は確認できた。
肌着一枚の姿だったが、姉であれば構うまいと丸椅子から飛び降りて。
近づいていくと熱を測る様に背伸びして手を伸ばす。
■マルレーネ > 「……大丈夫なんですか?」
もう、なんて心配そうに眉を寄せながら近寄って………。
自分の体調を指摘されれば、ふっふっふ、と汗を拭う。
「なーに、ちょっとだけ暑かっただけです。
ほら、普通ですよね………エアコンがきいてるから、少し手が冷たいかな?」
額はすっかりぽかぽかと暖かい。
顔色は赤いまま、それでも笑顔を向けて、ほらほら、けが人はこっち、なんて抱きかかえてベッドまで運ぼうとし始める。
■神樹椎苗 >
「しいは平気ですが――姉の方は完全に熱がありますが!
って、しいを抱き上げてる場合じゃねーですが!」
と、じたばたするものの、結局ベッドに運ばれてしまうのだ。
体格と腕力の差はいかんともしがたいのである。
「もう、はこっちのセリフなのです。
そこの冷蔵庫に氷枕と経口補水液が常備されてるはずです。
しいに面倒見させてくれないなら、ちゃんと自分で対処するのです」
むすーっとした様子で、強がる姉にぶつくさと。
ベッドの上に転がされながら、足をバタバタと不満そうに動かす。
■マルレーネ > 「あはは、ちょっとだけ日に当たり過ぎただけですから、大丈夫、大丈夫。」
言いながらもベッドに運んでしまえば、その隣に腰掛けて、ふう、っと一息。
これだけで休憩をとるのは、ちょっとだけ疲れている証拠。
「………氷枕ですか、そうですね。 それで少しだけ休みましょうかね。」
よいしょ、と声をかけて立ち上がれば、冷蔵庫に手をかけて。
顔色は相変わらず赤いまま、ある意味よろしくない状況のまま。
■神樹椎苗 >
「ちょっとだって、熱中症にはなるのです。
姉はどうも、自分の体力を過信しすぎてるのですよ」
もう、もう、と手助けさせてくれそうにない姉に、見るからに不満げ。
「――妹にも甘えてほしい時くらいあるのです」
冷蔵庫に向かう姿を見ながらぽつりとこぼす。
「ちゃんと休むのですよ?
ベッドはどれも空いてますし、ここなら薄着になっても文句は言われねーですし。
ほら、ちゃんと飲むモノも飲むのです」
カーテンを閉めればわざわざ入ってくる相手も滅多にいない。
姉の後ろからあれこれと、ベッドの上から口出ししていく。
■マルレーネ > 「そうですね、頭………ちょっと頭がふわっとしますから、確かによろしくない、ですかね。」
首を緩く振って、氷枕を取り出して。
「何言ってるんですか。
この程度でどうこうなるような鍛え方はしていませんよ。」
あはは、と笑いながらもベッドに氷枕を設置して。
言われるがままに修道服を脱いでシャツとスパッツの薄着になっては。
どさり、っと隣に倒れるように横になる。
■神樹椎苗 >
「鍛えたくらいで自然の猛威に勝てるわけねーのです。
――って、なんでしいの隣に来るのですか!」
もちろんベッドは他にいくつもあるのだが。
なお、椎苗は体格的には七歳程度でしかない(身長123cm)ので、ベッドはスカスカである。
二人で並んでも、1.5人分くらいにしかならないだろう。
「もう、足元が冷えたら悪化するのですよ。
気持ち悪かったり、目が回ったりしてないですか?」
そう言いながら、倒れこんだ姉の足元にタオルケットをかける。
その様子はお姉ちゃんの世話が焼けて嬉しそうだ。
もちろん、口調は心配そうだが、拗ねていた表情がご機嫌になっている。
■マルレーネ > 「んー………?
だって、甘えてほしいんですよね。」
少しだけ微笑みながら目を細めて、氷枕に頭を置けば、ふぅう、っと小さく緩く吐息。
「………どっちも、ちょっとだけ。
でも、大丈夫ですよ。
これくらいで負けませんからね。」
ふう、ふう、ふうう、と吐息は弱々しいまま。
目を閉じては、開いて、時計を何度も見やる。
■神樹椎苗 >
「甘えてほしいとはいいましたが――ああもう、しっかり弱ってるじゃねーですか!」
ベッドを飛び降りて、経口補水液にストローキャップを付けて持ってくる。
「ほら、しっかり飲んで少し休めばすぐに楽になりますから。
横になったままでいいですから、ゆっくり飲むのですよ」
と、姉の口元にストローを持っていく。
世話が焼けるのは嬉しいけれど、『大丈夫』というヒトほど大丈夫じゃないのは世の常なのだ。
と、心配しつつ、いつもされるように姉の頭を撫でる。
■マルレーネ > 「大丈夫ですってば。この程度は少し休めばすぐに良くなります。
ほんの少しですから………。」
それでも、ストローを口元に持ってきてもらえれば、目を細めて笑って。
「あー、でもこりゃ楽ですね。
これから、こうしてもらうのもいいかなぁ。」
あはは、と甘えたことを言いながら、よしよし、と目の前の少女の頭を撫でる。
■神樹椎苗 >
「そうですよ、たまにはこうやって、助けてもらう側になるのも大事なのです」
お互いに撫であってても仕方ないので、手を離してボトルの方を支えた。
「それにしても、こんな暑い日になにしてたのですか。
しいは課題提出に来たついででしたが――姉は補習でもあるのですか?」
と、学園に登校してきている理由をたずねて。
■マルレーネ > 「ちょっとした調べもの。
学校の図書館が、一番詳しいかなって。」
ふふ、と笑いながら目を閉じる。
認可について脅されている、なんて口が裂けても言わない。
「………ほら、いろんな場所に出入りしてますからね。
ちゃんと許可を取っておかないと、後でひどい目にあいますからねー。」
■神樹椎苗 >
「それはまあ、確かに調べ物には図書館ですが。
――なるほど、正規の学生が大手を振って出入りするには、ちょっと厄介ですからね」
と、姉が立ち上げた施術院を思い出し。
『やりたい事』のために奔走する姉が、なんだが誇らしかった。
それが誰かのための行いだというのだから、なおさらだ。
「しいもなにか手伝えたらいいのですが。
あんまり顔を出すと、むしろ邪魔になってしまいそうですからね」
場所が場所だけに、幼い子供がいるというだけで付け入る隙になりかねない。
姉の力にはなりたいが、気持ちが先走って足を引っ張ってしまうのはよくない。
■マルレーネ > 「………そうなんですよね。
そういう意味では、私が元居た場所は楽、ではありましたけどねー。
怖い人を一発黙らせておけば簡単ですからねー。」
てへ、と舌を出すシスター。今はもうラフな格好だからシスターらしさは薄いけれど。
土地をしめている権力者だけを押さえておけば、ルールなどは何もない。
「…………こうやって時々、私が気持ちを抜くときに一緒にいてくれればいいですよ。
何より、貴方には貴方の守るものがあるんでしょう?
邪魔だなんて思いませんけれど、あそこは、一人で立ち入る場所ではありませんからね。」
自分をいつまでも棚に上げて、そんなことを言う。
■神樹椎苗 >
「一応法治国家ですからね。
色々とルールがややこしいのは仕方ないのです」
怖い人を黙らせると言う姉の言葉は、意図的にスルーしておく。
「――お姉ちゃんが気を抜いてくれるなら。
またいつでも遊びに行くのですよ。
ああ、修道院の方にですけど」
その守るもの、守りたいものにこの『姉』も含まれているのだけれど。
それはなかなか、言っても簡単に伝わるモノでもなさそうだ。
「それにしても、ですが。
そうして姉が一生懸命なのは、やっぱり教義とかが関係してるのですか?
信仰してる神の教えとか、そういうのが」
と、姉の行動原理についてたずねてみる。
そう言った教義等に関しても興味があったのだ。
曲がりなりにも、椎苗も神に仕える身なのだ。
■マルレーネ > 「何時でも来てもらっていいんですよ。 困っているときだって、いつでも。」
「………ああ、一生懸命、ですか。
そんなつもりはないんですけどね。」
横になったまま、軽く引き寄せて。
ぱふん、と相手を己の胸に埋める。
「教えも当然ありますけど。
………その教えも、こちらの世界に来てから見返すことも無くなって、ぼんやりしてきて。
………そうしていることが、唯一私が昔からしていることっていうか。」
目を閉じながら、まるで子守唄でも歌うかのように呟く。
■神樹椎苗 >
引き寄せられるまま、抱き寄せられて。
まだ体温が高いな、なんて思いながら身を任せる。
「昔から誰かのために生きていたのですか?
やっぱり姉はすごいのです」
あのような事を昔から続けていたと聞けば、それは教えや信仰ではなく。
きっと姉自身の信念のようなものなのだろうと。
「――ああでも、姉もこの世界では独りなのですね。
同じ神を信じる者がいない。
しいも同じです、信じてるのはしいだけです」
椎苗はまだ、その信じる神自身が寄り添ってくれているからいいが。
信じる神からも引き離され、その教えすら振り返ることができない。
それはとても、怖いもののように思えた。
「その、心細くなったりとか、するのですか。
自分が何を信じていたか、わからなくなったりとか」
■マルレーネ > 「……そう生きることしか知らないんです。
そのために育てられたようなものですからね。
すごい、と言われますけど、きっとそんなこともありません。」
相手の言葉をゆっくりと聞きながら、目を閉じて。
「だから、一生懸命なんですよ。
全力で追いかけないと、見えなくなってしまうから。
見えなくなることが怖いから。
後悔することが無いように。」
静かにぽつりぽつりと言葉を落とす。
その言葉は、ずっしりと安定した何時もの言葉ではなく、ふわふわとどこかに飛んで行ってしまいそうな儚いもの。
■神樹椎苗 >
姉の言葉に、きゅっと胸が締め付けられる。
姉がどこにもいかないように、小さな左手でしっかりとしがみついて。
「すごいです。
お姉ちゃんはすごいのですよ」
と、妹は繰り返す。
「少なくとも、しいはその生き方に救われたのです。
きっとほかにも、救われたヒトはたくさんいるのです。
それは、そう育てられたからって、簡単に続けられることじゃないのですから」
それしか知らないとしても――やめる事はいつだってできたはずなのだ。
折れそうになったり、逃げだしたくなったことだって、なかったはずはないのだ。
それくらい、『ヒト』を助けるというのは難しいのだから。
「大丈夫――なんて簡単には言えないです。
でも、姉が信じたものは、間違いなく残っているのですよ。
その行動や言葉、生き方――きっとその全部に、残っているのです」
姉がいつも笑顔なのに、どこか必死に見える理由。
信じてきたものこそが、今、姉を苦しめているのだろうかと思うと。
どうにも遣る瀬無い気持ちになった。
■マルレーネ > 「あはは、そうなんですよー、すごいんです。
ですから、もっと頼ってもいいんですよ。
頼ってもらえている間は、私は私でいられるわけですし。」
にひ、と笑って頭を撫でる。
「そうだね、………きっと、残っていると思う。
どこまで残るか分からないけれど、後から振り返った時に後悔しない程度には。
残しておけたらいいな?」
目を閉じながら、んふふー、っと楽しげに笑う。
いつか消えることを許容しているかのような言葉を漏らしたまま、よしよし、と頭を撫でれば、少しだけ腕を離して。
■神樹椎苗 >
「前も言いましたけど、頼ります。
いっぱい頼るし、甘えますから。
姉も疲れた時は、こうして甘えてほしーのです」
撫でられて、目を閉じて。
「それくらい、妹は単純なのです。
妹のために、たまには妹を頼るのですよ」
手を離されればゆっくり、少しだけ体を起こして。
「ふふ、姉は本当に、立派な修道女なのです。
しいも神に仕える身として、見習わなくちゃいけませんね」
その一挙手一投足に、信じたものを残して置けるように。
何時かまた、神が去ってしまっても、後悔なく信じたものを誇れるように。
■マルレーネ > 「………私は、いつだって甘えてますよ。
いつだって頼ってます。」
言いながら、こちらもむくりと身体を起こして、吐息を一つ。
「………立派。
立派じゃないとね、うん。
まあ、自慢できる姉であるようにがんばりますからね。」
えへん、と胸を張ってぽんとそれを叩き。むくり、とベッドから起き上がろうとする。
こまめに時計を見ていたのは、時間を確認していたのか。
■神樹椎苗 >
「そうやって、頑張りすぎるのはダメですからね」
胸を張る姉に笑って返して。
けれど、起き上がろうとすればむむ、と眉をしかめて。
「もう少し休んでいた方がいいと思いますが――なにか予定があるのですか?」
時間を気にしていた様子に首をかしげる。
本当ならベッドに縛り付けても無理やり休ませたいところではあるのだけれど。
「その調子で出歩くと、今度は倒れかねませんよ。
何か用事があるなら、しいが付き添いましょうか?」
と、姉の体調を気遣うように。
■マルレーネ > 「ん、ほら、今日は今日で施療院を開ける予定がね。
昨日、ちょっといろいろあったらしくて、怪我人が数人来たから。」
むくりと起き上がりながら、んー、っと伸びを一つ。
薄着だからか、少しだけおへそを見せて。
「ああ、大丈夫大丈夫。
少し休めたので、身体は元気になってきました。
それこそ、そちらの怪我は大丈夫なんですか?」
こっちはにへ、と笑顔を向ければ、大丈夫ですよ、とばかりに腕をグルグル回して見せる。)
■神樹椎苗 >
「ああそういえば――娘が慌ただしくしていましたね。
落第街の方も騒がしかったですし。
むう、そうなると手伝いもできないし、もどかしーです」
と、少し残念そうに見えたおへそに指を伸ばして突っつこうと。
「ほんとですか?」
訝し気に見つつ体に触れて見れば、確かに熱っぽさは引いていそうだ。
そして自分の様子に触れられれば、ちょっと申し訳なさそうに視線を逸らして。
「ああえっと、しいのこれはどれも古傷なのです。
数が多いので見た目はちょっと見苦しいと思いますが」
そう言いながらちょっと気まずそうに、太ももを撫でてみて。
「どれも、もう二年くらい前の傷ばかりなのですよ。
薬も魔術も効かないし、中々治らないのが厄介ですけど。
――あ、右腕だけは最近ですね。
ちょっとだけ、無茶をしないといけない事があったので。
大丈夫です、痛いとかは、全然ありませんので」
そうしてこちらも何ともないというように左腕を上げ下げ。
さっきまでの様子を見ても、痛がっているようには見えなかっただろう。
■マルレーネ > 「……娘。」
娘ねぇ、と唸る。 母親になるような年齢ではない気がしていたけれど、この島ではそうなってしまうのかもしれない。
いやいや、目の前の少女はそれでも小さすぎるだろう、なんて思ってしまうが。
「………古傷、ね。
今まではそうかもしれませんけど。」
自分の頬をぴしゃ、っと叩いて少しだけ意識をはっきりと取り戻す。
強く己の気持ちを持ち直すような、ぎゅ、っと真剣な表情になって。
「貴方が無茶をしなくてもいいような世界にしないといけない。
そうしたら、ゆっくり休みますよ。」
痛がらないことを批判はしない。
悲しんだり、間違っているとも言わない。
けれども、そうしている間は休まない。 そう告げる。
■神樹椎苗 >
「ああ――娘と言っても、えっと。
義理と言うか、愛称みたいなものといいますか」
娘みたいに可愛がっている少女と言うだけなのだが。
そもそも、実際の親子と言うのもよくわからないので、うまく説明できなかった。
「――それならしいも、お姉ちゃんが安心して休めるようにしないとですね。
大丈夫です、もう無茶をしたりはしないですよ。
娘を叱っておいて、しいがやってたんじゃ恰好が付かねーですからね」
はっきりと言う姉に、椎苗は笑って答える。
傷が治るのはいつになるかわからないが――姉や娘に心配させるのも、嫌だと思った。
「それに、そう、姉にはたくさん甘えて、頼りますからね。
辛かったり苦しかったりしたら、すぐに頼ります。
困ったときは、すぐに相談しますよ」
だってこんなに頼もしい姉なのだからと。
ちょっと頑張りすぎるところはあるけれど。
頼ったり甘えたりする事が活力になるなら、変な遠慮をする気はなかった。
■マルレーネ > 「うん、それは、……いやもちろんわかるんだけどね。」
本当に娘だとしたらいろいろと頭の中が整理できなくなるところだった。
まだまだ、謎が多い少女であるとも言える。
「………ならよろしい。
私にできることなら、何でもしますよ。
できないことはできないって言いますけどね。」
この島では、できないことの方が多そうなんですよねぇ、なんてぼやきながら、頭をぽりぽりと掻いて。
「……なあに、妹の前で情けない姿、見せられませんからね!
いつも通り、元気に頑張ってきます。」
なんて、指でピースサインを作りながらウィンク一つ。
■神樹椎苗 >
「それは、そうですよね、うん。
そのことも、そうですね。
そのうちちゃんとお話ししてーです」
無茶してばっかりで大変な娘なのだ。
愚痴の一つでも聞いてもらいたいところでもある。
――それでもつい甘やかしたくなってしまうから困り物なのだが。
「ん、じゃあ妹はそんな姉をしっかり見送らないとですね。
いつまでも独り占めしてたら、姉を待ってる人たちに恨まれるのです」
と、いつも姉がするように舌を出して笑って見せて。
もっと独り占めしたかった気持ちはちょっとだけ我慢。
ベッドから降りて、姉が脱いだ修道服を手に取り、差し出した。
ご案内:「第三教室棟 保健室」から神樹椎苗さんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 保健室」からマルレーネさんが去りました。