2020/09/12 のログ
ご案内:「第6実験室」に藤巳陽菜さんが現れました。
藤巳陽菜 > 魔女が大釜を使って薬を調合していたのなんて今は昔の時代の話。
伝統を重んじる魔女であればそんな大釜を使うだろうが藤巳陽菜は魔女ではない。
魔女が用いる魔術や薬学についての講義を受けてはいるが魔女ではない。

体質を変質させ、感情を操り、時に姿さえも変えて見せるそんな魔術に希望を求めて受けた講義もこれで3年目。

楽しくないことはないし、向いていないこともないが陽菜の目的は果たせていない。

「ふう…こんなものね。」

傍らのカセットコンロにはステンレスの鍋が置かれている。
エプロンと三角巾をしたその様子はまるで料理でもしているよう。

ただ少しばかり置いてあるものが物々しい…。

藤巳陽菜 > 黒いな植物の枝のようなもの…何か生き物の卵…ビーカーに入った白い生臭い液体…そして白い粉末。

一番初めにその植物の枝のようなものを開くすると中には黒い粒のようなものがびっしりと。
その黒い見た目からは想像も出来ないくらいの甘い匂いが漂う。

「これ、こんな量なのに凄い高いのよね……。」

値段に対して文句を言いながら別の容器に移して…使わない分はジップ付きのビニール容器へ…。
……白い液体を鍋に注いで火をつける。

ある程度温まってきたらそこに白い粉末と黒い粒を加える。

ご案内:「第6実験室」にセレネさんが現れました。
セレネ > ――何だか、凄い匂いがする。
鼻に突く異臭は何かとたまたま通りかかった実験室の前で足を止める。

換気の為か扉も窓も開けられており、実験室には一つの人影…いや、正確には下半身が蛇の人物が居た。
蒼を静かに数度瞬かせると、室内へと入っていこう。

「藤巳先輩、一人で実験でもなさっているのです?」

きちんとエプロンと三角頭巾をして、結構似合っているななんて感想を抱きながら。
問いを投げかけつつ調合中の彼女に声を掛け傍まで歩み寄ろうとする。

藤巳陽菜 > 「あっ!セレネさん丁度いいところに……。」

先に溶いていた何らかの卵と白い液体を混ぜ合わせて、茶こしでこして事前に用意していたコップに移していく。
……それを別に用意していた鍋に入っていた沸騰したお湯にコップごと入れて、蓋をして弱火で蒸していく。
……ある程度の時間が経てば火を消してしばらく待つ。

知識があるものなら既に何を作っているか分かるだろう。

「課題の調合をしちゃおうと思って……この部屋借りたのはいいのだけど少し時間が余っちゃって……。」

ちらりと机の上に置かれているビンに目をやれば植物の根が褐色の液体に浸かっているのが見える。
それの上にはキッチンタイマー後1時間ほどで鳴る設定。

セレネ > 「…?丁度良い、とは…?」

相手の言葉に緩く首を傾げる。
そうしながらも、彼女の手捌きを見ながら思考を巡らせて。

――あぁ、これは。

成程この為だったかと内心納得。
漂う香りもよくよく考えれば甘さを感じるものだ。

「蒸し終わるまでの時間、一人だと暇ですしねぇ。
お話相手にでもなりましょうか。」

キッチンタイマーを見れば一時間の設定。
一人で潰すには確かに余りそうなもの。
微笑みを浮かべながら問うた。

藤巳陽菜 > 「本当?出来たら一つあげるわね。いっぱい作ってるから。」

陽菜に身体は普通の人間よりもずっと大きく、ずっと長い。
実際の蛇であるならば体温も低く動かないためにあまり食べずに活動できるらしいが陽菜の身体はそうもいかない。
かなりの量を食べないとこの異形の身体は満たされない。

「そういえば結局夏休みいかなかったわね…ごめんなさいね。」

甘いものを食べに行くという約束。
お盆を開けたら……とか、自分が忙しくなくなったらとか、もうちょっとおいしい店を見つけられたら…とか
色々あってあれよあれよと伸びていって結局行くことが出来なかった。

申し訳なさそうに伝える。

セレネ > 「あら本当ですか?
嬉しいです、有難う御座います。」

甘いものは大好きだから、相手のその言葉はとても嬉しいもので。
しかし己は食べれば食べる程、凸の部分が育っていくからなるべく食べないでいたいと思うけれど。
…最近、あまり食べないようにしていても育つのは何故だろうかと人に言い難い悩みを抱えてたりするのだが。

「いいえ、お気になさらず。
一年生と三年生では時間も違いますもの、仕方ないですよ。」

今日明日で互いが死ぬ訳ではないし、地球が滅亡する訳でもないのだ。
偶々時間が合わなかっただけだと、気にしていないと微笑んで答える。
彼女が良さそうな店を見つけようと色々探していたという行動も知れば、
そこまでする必要はなかったのにと逆に申し訳なく思うに違いない。

藤巳陽菜 > 「そういってくれるとありがたいわ…また、機会があったらいきましょう。」

甘いものを一緒に食べに行きたいとは思ってる。
いずれ、お互いに時間がある時にでも。

そろそろだろうか鍋からコップを取り出してそれの周りにチョークでササっと魔法陣を書く。
後で、文字は消しておけば特に問題は無いここではそういう実験も普通に行われている。
この部屋に冷蔵庫はあるのだが中身があまりに実験的というかなんというか…これを一緒に入れるのは憚られた。

「そういえばセレネさんは夏休み何してた?
 私はだいたいバイトしたり温泉行ったりしてたわ。」

式に何か文字を書き足しながら尋ねる。
範囲や温度の調節だろう。

セレネ > 「えぇ、是非。
大体は暇ですからお時間は其方に合わせますので。」

一年の大体の科目は基礎だし、このご時世講義はリモートが主だ。
だから合わせようと思えば出来るとだけ伝えておく。

チョークで陣を描く相手に手慣れているなと思う反面、流石三年生だとも思い。

「はぇ、夏休みですか?
…海やプールに行ったりだとか、図書館で勉強や読書をしたりだとか…後は先輩と同じくバイトしたりとかしてましたね。」

夏祭りとかあったけれど、己は人混みは苦手だし誘いたい人は忙しそうだったからまた来年頑張るとして。
式を書く彼女を眺めながら。

藤巳陽菜 > 「大体、似たような感じね。
 でも、プールとか海かあ……この身体になってから行けてないなあ。」

自分の蛇の下半身を見て恨めしそうに。
…水着も恐らく異邦人街や百貨店とかには売ってるだろうけど……流石に一人で海とかプールは…。
祭りなどの人込みはは論外でこの身体で行けば多くの人に踏まれるのが目に見えている。

「よし…っと」

式に満足がいったのかチョークを置く。
温度を下げる魔術の方が火に頼らずに冷めたものを温める魔術よりは簡単なのだ。

セレネ > 「……この身体になってから、ということは。
以前は別の身体だったという事ですか?」

元からラミアではなかったのか、と。
蒼を瞬かせて相手を見た。
来年また行けば良いと言おうとも思ったが彼女は来年は最終学年となる。
来年が最後になってしまう。そう考えると、言い出せなかった。

「そういえば。貴女は卒業後の進路は考えていたりするのです?」

ふと気になった、素朴な事。
しかしかなり重要な事。
それを何の気なしに尋ねてみる。

「――へぇ。」

文明の利器である冷蔵庫や、氷属性の魔術を使わず
温度を下げる術式の陣を描いた相手。
目に視えるのは漂っている魔素によりどんどんと陣の中の温度だけが下がっていく様。

藤巳陽菜 > 「これ私の異能でね、3年前の朝起きたらこんな身体になってたの……
 初めの頃は前に進むのにも苦労して杖ついて歩いてたのよ。今はもう慣れちゃったけど。」

蛇の尻尾は動かない、その一番先までも陽菜の意志で動かせる。
慣れてしまった異形の身体。

「この身体が何とか出来てから考えるって散々言ってたけどちょっともう難しい時期よね……。
 ……流石にこの身体で本土の方で生活するのは無理でしょ?そろそろ決めないと……。」

未だに決まっていない。自らの異能に慣れるには十分でも、受け入れる事には短い4年間。
この学園の性質上卒業の時期を幾らか伸ばすことも可能ではあるがそれでも目を背けてはいられない。

「……カラメルも作っちゃおう。」

逃げるように話を止めて白い粉と水を火にかけて混ぜ合わせる。
直ぐにそれの色は茶色く変わって……。

セレネ > 「……突然変異?」

魔術の事ならいざ知らず、異能についてはまだまだ勉強中。
…そういえば、読んでいた論文に異能は病であるという論文を書いていた人が居たな。
彼女もそれに近いものなのだろうか。
相手の身体を見る蒼が少し険しくなる。

「――んー。
私で良いのなら進路相談に乗りましょうか?」

後輩で、更に言えば教師ですらない己だけれど。
このまま悩み続ける相手を見ているのも忍びない。

甘く香ばしい香りを放つ、焦げ茶色のカラメルを作り始める彼女を見つつ蒼をゆるりと細め。

これは己の身勝手で、世話焼きな気質からだ。
もっと信用を置ける人物に相談するのであればそれでも一向に構わない。

藤巳陽菜 > 「……ここまで変わっちゃったらホントに突然変異って感じよね。」

異形のような肉体に変質する異能なんて言うのはこの3年間常世学園にいても数名しか見かけたことがない。
…もしかしたら気が付いてないだけで異邦人と思ってるものの中に紛れているかもしれないが……。

「……流石にそこまでは悪いわ。
 確かにかなり悩んでるし、嬉しいとは思うのだけど……そこまで面倒見てもらうわけには。」

本来ならば藁にでもすがりたいような状況。
自分よりもしっかりしてそうな後輩が相談に乗ってくれるのであればとても助かるだろう。
恐らく実際に参考にするにしてでも、精神的な面においてでも陽菜は助かる。

それでも、出会ったばかりの後輩に迷惑はかけられない。

「……よし、完成よ!」

コップに入った容器の上にカラメルをかければ完成する。
そう、これはプリンだ。
行われていたのは特に実験ではなく、特に調合ではない。料理もある意味調合みたいなものではあるかもしれない。

セレネ > 「……。」

思考が切り替わる。
胸の下で腕を組み、片手を顎に添えて考え込む。
何の前兆もなく突然そうなったのか。又は呪術の類で誰かに恨まれるようなことがあったか。
可能性はあれど、確実要素は一つもない。そもそも情報が少ないのだから結論付けるのは早計過ぎる。
小さく息を吸って吐けば回していた思考を止めて生徒らしい振る舞いへと戻り。

「――そうですよね。
失礼しました、出過ぎた真似を。」

相手の気持ちもご尤も。だからその答えは当然であると受け入れる。

「ただ。自分が後悔しない道を選んで欲しいと。それだけは。」

己は一度、行った道を悔いたから。
それだけ伝えれば

「――まぁ、美味しそうなプリンが出来上がりましたね!」

後は普通の話題へと移ろう。
料理は一種の化学である、とは誰かが言っていた気がする。

藤巳陽菜 > 「気持ちは凄い嬉しいのよ?ありがとうね。」

自分の事について考えてくれる人がいるというだけでも嬉しい。
ありがたいと思っている。

「……後悔しない道なんて……そんな道…。
 ……出来る限り後悔しないようにするわ。」

後悔しないなんてそんな事はあり得ない。
一つの道を選ぶなら一つの道は通れない。
通れなかった道にあった素晴らしいもの夢想して後ろ髪を引かれながら進むしかない。

「任せて、プリンなら完璧よ。」

欲望に身を任せてボウルで丸ごとプリンを作った事もあるほどのプリン好きだ。
途中で味に飽きて少し後悔したがそれは何とか食べきった。

「はい、どうぞ。」

マグカップに入ったプリンと小さなスプーンを手渡して。
自分の分も手に取って……。

「いただきます。」