2021/10/18 のログ
イェリン > 「戦士、戦士ね。まっとうなスポーツマンとかよりはよっぽど鍛えてるわよ?
お世辞じゃないなら猶更ありがたいわ。
霊感で左右されるなら触れそうね、物は試しっと」

普通、初対面でハグすることなどそうそう無いが、
全くないという訳でもない。
変な所に触れようものなら突き飛ばすだろうが。

軽く手を伸ばすと何もないように見える空間に触れた感覚がある。
手を回そうとすると相手も手を広げていたせいか、何かに空中で当たる。
それを避けるようにして軽くハグをする。
ちょうど人ひとり分の空間、確かな質量を感じる温もりがそこにはあった。

「ん、ほんとに触れる。
消えてる、というよりは他人の目から認識できない状態を自分に維持してるって事なのかしら。
なんにせよ、複雑化させた魔術って対価の大きい物よね。
私も誰も読めないようにって自分で文字を作って魔法を組み立てたら反動で脳が新しく文字を学習しづらくなってたわ。
実体が無い。だから確かに存在している精神的なあり方に、存在そのものが引っ張られてしまう。
ひとり遊びでもいたずらでも、あなたがあなたを否定しなければ、きっと大丈夫よ」

深見 透悟 > 『術師なのにフィジカルも鍛えてるんだ……俺には真似出来ねーな。体無いし。
 はっはっは、どうせすり抜けるだけだか…ら?』

スケベ心が無いと言えば嘘になるが、それでも半ば無理だろうと思っていたハグ提案。
少しだけ相手の胸に心地悪さとか、悪寒の様なものを残せればそれでいい、くらいに考えていたのだが。

広げていた腕に軽く触れた感触があった。
久しく忘れていた感覚に、戸惑いを覚える暇も無く。
気が付けば軽くとはいえ抱き締められていてしまい、
一肌の温もりが全身に、そして顔には女性特有の膨らみによる柔らかさ。

『~~~~~~~~ッッッ!?!?!?』

自分で提案したくせに、成功してしまうと途端に硬直してしまう。
助平な割に女性に免疫がない、いわゆる童貞特有の矛盾が顕著だった。

『アッハイ、ソーナリマスカネ。
 肉体があればまた術式を組みなおして、解いたり出来ると思うんデスガ。
 イェリンさんも苦労ナサッタンデスネ、魔術の道は険しいデスモンネ。
 ……あ、えっと。あざます。でも現在進行形で俺はちょっと自分を見失いそうというか、は、離れて頂いて良いっすか……?』

言葉のイントネーションがちょいちょいおかしくなるくらいには動揺全開だった。せっかくの話の半分くらいは頭に入って来ない。

イェリン > 「そんなに触れるのが意外だった?
霊感が強ければ触れるって言ったのあなたじゃない」

しかし元より抱きしめるのが目的ではないので、離れてと言われれば素直にそうする。
イェリンからすれば普通にハグしたつもりだが、文化がそもそも違うので距離感が近すぎたかと勘繰る。

「肉体があれば、ね。
仮初の物を用意してあげる事はできるかもしれないけれど、
そのものとなるとここにあるのかも分からないし、難しそうね。
でも見えないっていうのも不便だし、これだけ渡しておくわ」

言って、取り出すのは吸い込まれるような黒一色の小さな石粒。
何が刻まれているわけでも無い、無地の状態の触媒。

「何に使える、っていう物でも無いけど、
誰かが触れればその場所くらいは分かるから、話相手に困ったりしたらそうして。
砕いてくれればそこにパスを繋ぐくらいの材料にはなるから、
緊急の時は砕いて。
そうならない事を祈っているけれど」

深見 透悟 > 『いや、言ったけど!言いましたけども!
 本当に触れれるとは……思ってなかったというか……
 その、イェリンさんのお胸にですね、顔が当たってしまって……』

ハグから解放されれば更に数歩後ろに下がって瞬時に土下座の体勢。
狙ったことは狙ったが、上手く行ってしまってむしろ後悔するとは思ってもみなかった透悟なのだった。

『まあ肉体があったところで術が掛かってるのは俺の本体の方なので……あ、つまり俺の死体ね。
 そっちも見つけないとだから……へ?これ?』

差し出された石粒。
それをそっと右手で受け取る。ボールペンが人差し指になってるので手の位置は何となくわかるはずだ。

『は、はぇぇ……何かすっげえ便利そう。
 そんな貴重そうなもの貰っちゃって大丈夫?あとでお金請求されたりしない?
 まあ、ありがとうイェリンさん。何かホント、何から何までありがとう……』

石粒をしばらく眺めてから、慎重にそれを仕舞い込む。
幾らくらい請求されるのかな、と未だに半信半疑で考えたりしつつ。

イェリン > 「……あぁ。そういう事、ね。
悪気が無かったなら怒ったりしないわよ。見えてないのは私だし」

言いながら、クルリと背中を向けたかと思えばうろうろと歩き回る。
至って普段通りに、振るまう。
ゆらゆらと揺れる長い黒髪の奥では恥ずかしそうに赤らめた顔があったが、気取られないようにと。

「……見つかると良いわね、自分の身体。
請求なんてしないわよ。魔術だってお金目当てで身に付けた物じゃないし。
こっちに来てからまだ日が浅いけど、一人の時間って退屈だったのよ。
友人の証みたいな物と思って受け取って頂戴」

深見 透悟 > 『思ったより大き……いや、柔ら……じゃない、とにかく驚いてすいませんっ!
 ……悪気、ああ、えっと。ういっす。』

悪気はなかったけど下心はあった。正直に言ったらきっと怒られる。
……ので、反省はしつつも黙ってることにした透悟であった。
やっぱり見えてないってのもそう悪くない、と思う程度には反省が浅いけど。

『見つかる……かなあ?ま、とりあえずもう少し落ち着いたら探してみようとは思ってるんですけどね。
 友人の……証。 っ!て事はイェリンさんと俺が友人……!?
 何つーか畏れ多いっすけど、嬉しいもんだなあ。ダチが増えるのって。へへ。』

ひょい、と正座の状態から立ち上がると、少しだけ小躍りしつつ。

『あ、そろそろ外も本格的に夜っすね。
 見回り、結構厳しいから帰っといた方が良いすよ、友人としての忠告すわ。』

イェリン > 「……ッ! 感想はっ、言わなくていいから!」

声を荒げるが、どう見ても怒りではなく照れ隠しのそれだ。

「友人は多ければ多い程良いものだもの。
また時間があれば話でもしましょう。身体捜しも手伝うくらいはできるから。
私もそろそろ帰らないととは思ってたところ、寮の管理人さんに怒られそうだし」

実際、日暮れ時に来てからもう夜更けだ。
そろそろ帰らねば、来て早々に心配をかけることになりかねない。

「それじゃ、また今度。
――見つけるのに苦労するから、無くさないでよね、それ」

そういってヒラヒラと手を振りながら、イェリンは非常灯に照らされた廊下の中を、玄関に向かって歩き去っていった。

深見 透悟 > 『口が滑りやしたぁ!マジサーセンっしたぁ!!』

言わなくていいことを言ってしまう程度には根が正直者。
如何せん相手は自分に触れられる、つまり物理的に攻撃が出来るので即行で謝る幽霊である。

『まあ、多いに越した事は無いすけど、確かに。
 ……さ、さすがに身体捜しまで手伝ってもらうわけには……っ!お話しは、大歓迎だけども!
 と、とにかく気を付けて帰るんすよ、俺は学校棲みなんで。』

夜間の女性の一人歩きは何かと物騒だが。
さっきスポーツ選手より鍛えてると言っていたから大丈夫かもしれない、と内心で思う。

『あ、はい。じゃない、友人だし、おう!
 大事に持っとく、ありがとうイェリンさん!』

見えてないのを承知の上で、手を振り返しながら去って良く背中を見送るのだった。

ご案内:「第三教室棟 廊下」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 廊下」から深見 透悟さんが去りました。