2021/10/26 のログ
深見 透悟 > 『ひゃぁ!?
 だだだだだだ誰、いきなり!!
 い、イェリンさ……あぁぁぁぁぁぁぁ』

突然声を掛けられて、声が裏返える程に驚いた透悟。
慌てて振り返ると、霊を感知出来る友人の姿を見つけて

……振り返ったせいで見事にバランスを崩してフェンスから落ちた。
汚い悲鳴が後を引きながら屋上からどんどん下降して行き、


『急に声掛けられてびっくりしたわ。落ちたし。
 あー、死ぬかと思った。心臓に悪いわ。もうとっくに止まってるけど!』

途中で止まって引き返してきた。
フェンスの外側から緊張からか少し上ずった声がする。

イェリン > 「えっ!?」

気配が消えた。
ろうそくを消した時のように急速にそこにあった熱量が消えたよう。
慌ててそこに居るはずの透悟を探してフェンスに駆け寄る。

屋上を駆け抜ける風が大きくスカートとジャケットの裾を揺らす。
手すりにまで駆け寄って見下ろすが、何かが落ちているような様子も無く、
ただ、覚えのある声の霊体ジョークが耳に入る。

「驚かないでよトーゴ、次やったら地面に縛るわよ」

驚かせたのは自分なのだが、未だ満月の面影を残す月の下で
イェリンは不満げに声を漏らす。

深見 透悟 > 『いやーいやーご心配をお掛けしまして。
 とはいえこの高さから落ちるのは幽霊でもだいぶビビるんで……すわ……』

フェンスの向こう側、イェリンの眼下に広がる夜の学校敷地内から声がする。
校舎の壁伝いにふわふわ上昇していた透悟だったが、当然視線は上方へ向けられているわけで。
そんな視線の先にスカートのイェリンが居れば、まあ、推して知るべしである。

『いやあ、えと、その気を付けます……』

やや理不尽な怒られ方をしている気もするが、素直に謝罪の言葉を口にする透悟。
多分見えない顔が真っ赤になっている。

イェリン > 「まぁ、急に声をかけた私も悪かったわよ」

屋上に帰ってきた声を前に頬を膨らませながら、目を逸らす。
実際心配と驚かせたのだろうという申し訳なさがないまぜになっているらしい。
目を合わせづらいというのが本音だが、合わせる目線がどこに向いているのかも分かっていない。

「で、こんな時間に何してたのよ」

気まずさは話を逸らす事でやり過ごそうとする。

深見 透悟 > 『じゃあお相子って事で、そうしとこそうしとこ。』

そうすれば眼福な分、透悟にプラスである。
進行形でプラスが加算されていくだけである。
いやー屋上から落ちてみるもんだなあ、とほわほわした顔になってるまである。

『何って……ここからだと結構眺めが良いから。
 まだ行ったことない場所とかどれくらいあるかなーって確認をしてたんだけども。
 そういやイェリンさん今日は制服なんすねえ。』

呑気に返す声はイェリンの足元、ちょうど屋上のへりに掴まっているようなところで止まった。
どうやらそこがベストポジションらしい。何のかは透悟のみぞ知る。

イェリン > 「行ったことの無い場所……?
というかトーゴって別に学校にしかいられない訳じゃないのね」

学校でしか会った事が無いが、口ぶりを聞いている限りでは他の場所にも行っているらしい。
妙に低い位置から聞こえる声に思案するように首を捻りながら。

「ん、学校施設に私服で入ってるの、ダメってわけじゃないはずなんだけど、
事あるごとに他に服は無いのかって言われるんだもの。
これなら文句も出ないでしょ?」

惜しげも無くスカートからタイツをのぞかせながら、そういって見せる。
折ってすらいないというのに膝上10センチそこらなのでこれで怒られては困るのだが。

「そもそもトーゴってどうやって移動してるのよ」

深見 透悟 > 『前に友達にカラオケやダーツに連れてってもらったんで、その辺は行ける感じ。
 それ以外は全然だけど。ほぼ学校に居ると思って貰って全然問題は無いスよ』

一番遭遇率が高いのが学校、次いで学生通り。というか現状はその二択。
もっと行ける範囲を増やそうかどうしようかと考えていたのがついさっきまでである。今はもうそんな事吹き飛んでいるけれど

『まあぱっと見寒そうだし、肌の露出多いと目のやり場にも困るし……嫌いじゃないけど。
 でも制服は制服で、何と言うか初々しさがあるというか、これはこれで良いのではないでしょうか。
 俺は全然文句なんて。むしろありがとうございます的な。』

ありがたやありがたや、と手を合わせて拝みたくなるところだけれどさすがに耐える。
手を離したらまた落ちそうな気がしたので。落ちないけど。
てゆーかイェリンさん足長ぇんだなあ、と感心したり

『基本は道行く人の肩にひょいっと乗ってお任せで。
 行ったことある場所とか学校内ならふわふわーっと漂ったり?』

他人を交通手段として利用する以外は割と普通である。

イェリン > 「学生街の方までは出歩いてるのね、安心したわ。
ずっと学校にいるんじゃ、息が詰まるでしょう?」

授業を受けるわけでも無く、ここにいるのではあまりにも寂しいだろう。
しかし、自由に出歩くにしたってこの島は規格外が多い。
下手を打てばイェリンのように感じる、触れるどころか超常の視覚で透悟を視認する者もいるかもしれない。
誰もが誰も、霊体に対して友好的か否か等、考えてはくれないのだ。

「制服なんて初めて着たわよ。こんなの故郷には無かったし。
でも、場所を問わずこれさえ着ていればフォーマルっていうのはなかなかズルくて素敵よね」

――楽で良いわ。
そう言いながらしゃがんでみせる。
いつまでも声が下の方から聞えるせいだ。
当然、見られて困る事のないようにスパッツを履いている。

「人の肩に乗るってまた自由ね…
手段は問わず訪れた場所は行き来できるようになる、と。
どこか行ってみたい所や会ってみたい人だったりはあるのかしら」

深見 透悟 > 『あー……退屈なときは退屈だけど。
 これが意外と飽きないんだよねえ、この学校。
 広い所為か色んな教室があるし、図書館もあるし、たまーにこうやって学校に残ってる生徒にも会えるし。』

ね、と該当する相手へと同意を求める。
まだ精々職質止まりの被害しか受けてないが、もしかしたらもっと悪い事態に遭遇するかもしれない、
なんて事はさっぱり考えていない。幽霊の自覚が若干薄いのだ。
イェリンの心配をよそに至って気楽な、陽気な声が返ってくる。

『良いじゃん、似合ってるし可愛いっすよー
 ま、そのフォーマルな制服でも俺着れないんすけどね!いや、着れるけど変なことになるんすけどね!
 うらやまー……ぶっ!い、イェリンさんさすがにそれは不用心というか大胆で……あ、スパッツ……』

しゃがんだイェリンへと思わず声を掛け、はたと現実にぶち当たった。
世の中そんなに甘くない、ということを思い知ってへにゃへにゃとテンションがダウンする幽霊

『幽霊のオーソドックスな移動手段でしょ、肩乗り。
 そうそう。逆に言えば行ったことない場所は何が何でも行けない。
 何があるか分かんないから、本能的に防衛が働くというか。概念よりな存在なんで、未知には勝てないんすよね……
 行ってみたい場所や会ってみたい人かあ……んー、急を要する場所はとくに無いかなぁ。』

イェリン > 「図書館、ね。
あそこ、得体の知れない気配があるから奥の方は見てないのよね。
それに入れてって言って入れてくれる物でもなさそうだし」

禁書庫、というらしい。
危険を伴うような書物なら焼いてしまえば良いとも思うが、
おいそれと焼けるような代物でも無いのだろう。

「……えっちね」

透悟から漏れた言葉に思い至り、太ももで裾を挟むようにして言う。
見られて困る物では無いが、見てますと言われると途端になぜか恥ずかしくなる。

「人類は幼少期に卒業する物よ、その移動手段…
逆に誰かの手引きさえあればどこへでも、という訳ね。
踏み入れてしまえば帰りは自由、と。
行きたい所が無いなら、良いのよ。
本能的にそう言ったものがあるなら、そこに何か手がかりがあるんじゃないかと思ったの、
でもそもそも異界にあるのよね、あなたの」

何が、とは言わない。
手を貸す必要は無いと言われていたが、気がかりではあったのだ。

深見 透悟 > 『そうそう、図書館。
 あの奥の方なー、俺もちょろっと覗いてみたけど封もキツいし、中は得体が知れないしで俺も近づかないようにしようって。
 ただ魔術師としてはどうも惹かれるんだよなあ……何があるんだろ。』

さすがにあからさまに危険な場所には透悟も近寄りたがらない。
あの場所の空気が自分にどう影響するか皆目見当もつかないからだ
一度入ってしまえば最後、今のままで出て来れる自信も無い。

『あっ……あはは、言い逃れのしようもない……』

否定はしない。今更無い見栄を張っても仕方ないからだ。
そもそもそういう見栄は生きてる人間が張るものだと思う。
ただまあ、友達失くさない様には留めておきたいと思う透悟なのだった。

『しょーがないでしょーよ、まさか手を引いてもらうわけにもいかないし。
 たいていの人は俺が声掛けたら腰抜かすくらい驚くし。もう黙って肩借りるしかないじゃない。
 踏み入れてしまえばねー、危険が無いと分かればあとはフリーダムよ。
 ……うん?手がかり?
 異界にある……え、あ、まさか俺の身体のこと?』

そこまで気にしてくれてたの、といい加減しゃがませているのも悪いかと、ふわふわ浮上しつつ訊ねる幽霊。

イェリン > 「そうね、魔術師なんて好奇心の塊なんだもの。
ただ、命の危険を天秤にかける程の物かが分からなくってね。
手段を選ばなければ入る方法はあるけど、ただの泥棒なのよね、それって」

しかも魔術の犯罪目的での使用というおまけつき。
焼かれても文句は言えない。

「――寮のお風呂に結界でも貼っておこうかしら。
さすがにそんな所に魔術使ってまで来るようなことしないでしょうけど」

魔術師をやっていると、欲の話はよく出てくる。
三大欲求や七つの大罪、直接影響するわけでは無いが、原動力としては強い力を持っているのも確かだ。

「そ、身体の事。
どうなってるかなんてわからないけれど、ね。
依り代くらいはあった方が良いのか、それとも元の身体の適正を保持するために器には入らない方が良いのか」

色々悩んだのよ、と。
ぼやくようにイェリンは言った。

深見 透悟 > 『そうなんだよなあ……命を賭けるにはちょっと分が悪いというか。
 まあ、気にはなるけど、気になるなあくらいで留めとけば害は無いっしょ。
 機会があったらちゃんと図書委員の人同伴で入れて貰えるかも、だし。何かそんな感じらしいよ。』

図書委員ってすげーよなあ、と生徒の話を立ち聞きして得た情報を伝える。
さすがに図書委員同伴でも自分は中に入れない事は重々承知だ

『心配しなくても、お風呂とか更衣室とか、そういうところは“見せない”って念が強過ぎてダメだから。
 人の気持ちとか意思って、思ってる以上に幽霊に効くんだよね……』

そもそも死んでしまった切っ掛けが切っ掛けである。
現在の動力源となっているかと問われれば、一概に否定は出来ないものがある。

『………え。
 いや、マジでそんなに考えててくれてたわけ?
 あ、やべっ泣きそう。うわーーーん、イェリンさーーーん!!』

思わぬ優しさ、気遣いに触れ感極まる透悟
勢いあまってイェリンに抱き着きにかかる。え?下心?
……まあ、えっちな幽霊ではあるので。

イェリン > 「他には海底遺跡なんかも気になってはいるのだけど、
あそここそ用意も無く出向くのが自殺行為なのよね…
水中で使う前提で使える手札なんてろくにないのよ」

対空という物は、視野に入れて考える事も無くはないが
水中となるとそもそも対処ができる物でも無いように思える。

「拒んでも寄り付く分生者の方が厄介なのかもしれないわね…
まぁ、結界っていうのは冗談よ、変に拒むような術式に触れて摩耗されたら困っちゃうもの」

透悟の死のきっかけこそ知らないが、探求心の一端を担うくらいの物ではあったのだろうと、想像で結びつける。
特段の悪さが今の彼に働けるとも思ってはいないが。

「っ! ちょっと、もう…
心配くらいするわよ、知った事からは目を逸らせないもの」

衝撃というには、あまりにも軽く。
ぬるい空気に包まれるように自分の身体に抱き着いたのであろう透悟を突き放そうとして、
――悩んだ果てに諦めたように頭部にあたるであろう所に手を伸ばす。
見えずとも、感じる。
少し硬い髪のような感覚。
ゆっくりとあやすように、撫でる。

「友達の事を案じるのに、理由なんていらないでしょう?」

深見 透悟 > 『あ、海底遺跡なんてあるの。
 そっちの方は行けたら行ってみたいなー、水の中でもあんまり関係ないし、俺は。
 魂喰いとか居たらちょっと困るけど。いやかなり困る。』

何が居るか分からないなら、やっぱり行かんとこか。
大抵の物理攻撃は無効化できる幽霊でも、完全無敵というわけではないのだ

『それは言えてる。むしろ生者の方が亡者っぽいまである。
 俺もそんな事ですり減りたくないーっ!怖っ、肝に銘じとこ。』

死のきっかけであり、現在進行形の未練でもある。
でもだからと言って己の全てを賭して敢行するかといえば、しないし、そもそも出来ないだろう。
助平だけどヘタレでもある。

『うわーん、イェリンさんマジ天使……
 いや女神か?ここまで来ると女神か?』

質量がほとんど無いためそよ風に吹かれた程度の衝撃だろう。
前回のハグ同様、柔らかなとこに顔が当たり、突き飛ばされることも覚悟した透悟ではあったが
思いの外受け入れられ、しまいには頭まで撫でられてしまい。

『いや、聖母か……ううう、イェリンママ……マジありがたや……』

イェリン > 「結局は相性の問題なんだけど、それが大きいのよね…
例えば霊体や神秘の対策術式はあっても百戦錬磨のシリアルキラーが相手になったら私も用意なんてないもの」

冒険するほどの物があるとなれば話は別だが、お散歩程度に命は張れない。

「根が元気なせいなのかしら、忘れそうになるけどホントに些細な事で致命傷になりかねないのよね、あなた。
邪悪だろうと何だろうと、お構いなしの除霊なんてそこら中にあるんだし」

なんなら塩を撒くだけでも弱りそうだ。

「……私は死んだことが無いから、分かってあげられない。
アナタのお得意の霊体ジョークも、校舎で過ごす夜の時間も。
私が生きていて、貴方はそうでない。
勝手に私が罪悪感でも感じちゃってるのかしらね」

友人だと、思っている。
言葉を交わせて、触れられて。
だけど決定的に違うからこそ、何でも助けになりたいと思ってしまう。

「……でもママはやめて、私まだ未成年よ」

深見 透悟 > 『なるほどなあ。
 まあ危ない橋を渡るときは十二分に準備して、ってことかねぇ』

幽霊の場合何を準備すれば良いのか分からないのは置いといて
けっきょくのところ、君子危うきに何とやら、ということなのだろう。

『そーなんだよねー、俺も忘れそうになるけど。
 致命傷まで至らなくとも、動きが制限されたりとかちょくちょくあるし。
 まったく、こっちは善良な幽霊なんだから優しくして欲しいもんよ。』

実際盛り塩で効果があった事があったり。ナメクジみたいでちょっと哀しい。

『ママは止めるけども、それならええと……イェリンさんもさ、そこまで罪悪感とか感じないでよ。
 そんなに深刻でも無いんだぜ、俺ってば。ほら、え、えっちだし!
 ……ああもうっ』

いっそ平手の一つでも見舞われるくらいが丁度良い。
そんな風に思っていたが、予想以上にこの友人は情が深いようで。
困ってしまった幽霊、あたふたと焦った挙句暴挙に出る。
これまで何となく体の一部として認識して触れていた相手の衣服を、すり抜け対象にしようと試みる。
つまるところ、ダイレクトアタックである。さあこい平手打ち!

イェリン > 「そうね、あなたの場合一人で橋を渡らない方がよっぽど重要そうだけど」

そもそも渡れもしなさそうである。

「痛みを感じるような事があったら、即刻退散するのをお勧めするわ。
気づいたら祓われてましたなんて、笑えないもの」

言いながら、小さく笑う。
笑えない話なのだが。

「ひゃんっ」

何かが、いや確実に指や手の類が肌に直に触れた感覚。
不意を突かれたというのもあるが、素っ頓狂な声が出てしまう。
カッと赤くなる顔を長い黒髪で隠すようにしながらワナワナと震えて透悟を突き飛ばす。

「~~っ! 弁明の言葉は! あるかしら!」

あったとしても聞く気は無いらしいイェリンの平手が秋空の下振るわれる。
音も無く、ただしっかりと何かを叩いた感覚が帰ってくる。
祓魔師渾身の一撃が、助平への制裁として見舞われた。

照れ隠し反面、これだけ元気なら大丈夫だろうという一抹の安心感もあり、もやもやとした心境のままイェリンは頬を膨らませて寮への帰路を辿るだろう。

深見 透悟 > 『俺だって元自称天才術師なんだから一人でも……うん、たぶん無理』

生前でもきっと無理。お察しの通りである

『そりゃあ勿論。死んでまで痛い思いはしたくないからね!
 ……あ、あはは。そりゃホントに笑えないわ。』

涼しい顔して怖いこと言わないで頂きたい、と真顔になってしまう幽霊である
自分でも知らぬ間に昇天してたら末代までの恥だろう。上塗りである

『ふっへっへっへ、助平甘やかすとロクな事が無いんだぞぉ!』

手どころか顔まで行ったらしい幽霊。
してやったり、といった表情だが見えない。しかし感じ取れるほどに声は張りがあった。

『無いです!!強いて言えばありがとうございましぶっはぁ!?』

渾身の平手は幽霊が想定していたよりも強烈だった。
グーなら祓われてたかもしれない、と後に透悟は語ったが、今は
錐もみしながら吹っ飛ばされ、フェンスを通り抜けて再度空中へと投げ出されて

『それじゃあイェリンさん、またね!
 あぁぁぁぁぁぁ』

本日二度目の屋上からの転落だった。
今度は浮上することなく、しっかり地面まで落ちたという。
彼なりのけじめだったのかもしれない……

ご案内:「第三教室棟 屋上」からイェリンさんが去りました。
ご案内:「第三教室棟 屋上」から深見 透悟さんが去りました。