2021/12/20 のログ
ご案内:「相談室」に崩志埜 朔月さんが現れました。
崩志埜 朔月 >  
クリーム色の壁にブラウンのソファ。
木目調のローテーブルにはカステラの包み。
ここは個人用の相談室、表には『予約空き』の札。

「……指摘されましたからね、さすがに控えましょう」

先日、設定温度をほんの少しだけ規定よりも高く設定したのですが、
ものの見事に翌日ご指摘いただいてしまいました。

「うっかりは起こるものです……」

明らかに故意にボタンを押した覚えがありますが、
素知らぬ顔もしようというものです。指先が冷えて仕方がありませんから。
今日はしっかり規定通りの温度です。

崩志埜 朔月 >  
広がるアロマの香りはラベンダー。
ハーバルともフローラルとも言えるような少し力強いけれど甘く優しい花の香。

「師走とはいった物ですが……
 一度片付けてしまうと次が来るまで存外ゆとりがありますね」

ゆとりがある、というのが正しいのかどうか。
期限に余裕を持たせた書類を教員たちに回すとおおよそ翌日には提出してくれる人が半数。
もう半数は、言わずもがな。

「――期限の三日ほど前からは急かさないといけませんね」

ため息ひとつ。
それでも今日は予定も急ぎの仕事もありません。

ぼんやりと、温まっていく部屋の中で隅に置いた観葉植物に水をやったりして。

崩志埜 朔月 >  
ハンガーラックにかけた風紀委員のジャンパーが目に留まる。
歓楽街での傷害事件の話などは学園の内から出ずとも伝わってくるもの。

大規模な活動が終わったと聞いて安堵していましたが、
最近でも風紀委員の怪我人は絶えず。

「皆さん、無理をしていなければ良いのですが」

私が積極的に出向いて何ができるという事も無いのは、正直歯がゆい。
年端もいかない子供たちによる自治活動。
言葉の上では健全にも聞こえれば、酷く残酷にも思えてしまう。

まだ、しがらみや責任を負うには若すぎる。
だというのに、代わりに背負ってあげられるほど、私たち大人は強くない。

「……いけませんね、私がナイーブになっては」

崩志埜 朔月 >  
甘い物で無理やり気分を持ち直すというのはあまり褒められた物ではありませんが――

「数日は日持ちするとはいえ、今日作られた物が一番おいしいのは今日ですし」

――これは味見です。
生徒の口に入る物に万が一があってはいけませんから。
えぇ、毒見のようなものです。

「ミルクティー……いえ、ホットミルクが良いでしょうか」

温かいミルクをカステラに染み渡らせるとえも言えぬ美味しさがある物です。
あまり上品とは言えませんが、冬季休校中にそうそうどなたかが訪れるという事もありませんでしょう。

ご案内:「相談室」にシャルトリーズ・ユニヴェルさんが現れました。
崩志埜 朔月 >  
考えが纏まれば動くのは早い物で。
牛乳を注いだマグカップを電子レンジに入れて一分と少々。
軽快な音が聞こえてレンジを開ければムワリと立ち昇る湯気。

「これは……」

普段ホットミルクを頂く時はハチミツを落としていますが、
カステラと一緒にする時にまで入れてはくどいでしょうか。

それでなくとも何とも罪深い気がしてしまいます。

「少し、少しだけ。口当たりを柔らかくするため……」

ヒトは誘惑には弱い生き物です。だからこそ間違う事もあります。
思いながらハチミツを一匙だけ。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
さて、そんな相談室のドアをこんこん、とノックして入ってくる
影が一つ――。

「お邪魔しまぁ~す」

桃色の髪を揺らしながら、ぷかぷか宙に浮かんで入室するその人は
――同僚のユニヴェルであった。
手には煙管を持っており、そこから文字通りの紫煙を
立ち上らせている。
それは魔力の籠もった煙だ。魔薫草と呼ばれる
魔力を回復する為の植物を乾燥させて燃しているのである。
ちなみに無臭である。

「わあっ、崩志埜先生~……ティータイムですかぁ~?」
 
すぱー、と煙を吐き出しながら、何ともゆるい声色、
そして笑顔でそう口にする。
驚くほどゆっくりとした声であるがしかし、
もどかしい印象は抱かせないものだ。

崩志埜 朔月 >  
一秒たりとも抗いこそしなかった罪悪感を抱えているとドアの向こうからノック音。
ビクリと肩を跳ねさせて返事をするかどうかのタイミングで入室してきたのはシャルトリーズ先生。
ドワーフの女性で保健体育等を受け持つ同僚です

「シャルトリーズ先生? ようこそ。
 お嫌いでなければ先生もいかがです? カステラも今日買ってきた出来立ての物ですよ」

魔薫草をふかす煙管に目が行きますが、何という事もなく笑顔で挨拶を。
この相談室に禁煙などの制限はありません。
相談室で、堅苦しく何かを我慢する必要もないでしょう。

相手もいないのにカステラと牛乳を用意して呆けていた事に関しては……巻き込んでしまえば大丈夫でしょう。
どうぞ、とソファを手で指してかけてもらおう。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「カステラぁ~! タマゴを使ったお菓子ですよねぇ~。
 食べたことありますよ、とっても美味しかったです~!
 しかし~、ちょっと遊びに来ただけだったんですが、
 良いんですかぁ~?」

カステラを見れば、目を輝かせて両手をパン、と合わせれば
何度も頷いて見せるドワーフ。

早速煙管を机に置けば、ふわふわと浮かびながらソファへ移動。
ちょうど良い位置で、とす、とソファの上へ。

「崩志埜先生は~、いつもここでお茶を~?」

特に悪意などはなく、率直な質問らしい。
そもそも本人が職員室で酒――
魔昂薬と呼ばれる魔力を回復する薬である。ただ酔っ払いたいだけではない。多分。
――を飲んでいるのだから、
相談室でのティータイムに何ら違和感を覚えていないのだろう。

崩志埜 朔月 >  
「はい、丁度昼食時に外で見かけて美味しそうだったもので。
 相談に来る生徒に、と思って買ったのですが存外量もありますし……
 折角ですので悪くなる前に少しだけ私たちで頂いてしまいましょう」

長さ30センチ弱の丸一本、女性二人がティータイムに突っついた程度では無くなったりはしません。
お気に召していただけそうでなによりです。
アレルギー等が無いかが心配でしたが、この様子でしたら大丈夫そうですね。

「い、いつもは生徒が来たら何かしらお出ししていますが……
 今日は冷えたのでホットミルクでも、と。
 いつもでは、ありませんよ? いつもでは」

えぇ、はい。いつもなのですが。
咎めるような意図は無い事が声色や普段の振る舞いから分かるのですが、
なぜか取り繕ってしまいます。

「何かお飲みになりますか?
 コーヒーや紅茶、ココアくらいなら一通り用意してありますので」

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「ははぁ~、そうですねぇ。
 ここに相談に来る生徒さん達は、
 思い悩んでいる方々も多いでしょうから~。
 甘いものの一つや二つ口にすれば、それだけでも少し気持ちが楽になる、
 というわけですかねぇ~」

なるほどー、と。人差し指を自らの額に当てて見せた。
感心の意を示す仕草らしい。

「さすがは心の専門家~、抜かりないですねぇ~」

ユニヴェルも保健課に属する教員だ。
保健室にも軽い相談を持ちかけてくる生徒はおり、
故にいくらか対応することもある。
とはいえ彼女の場合、あくまで魔術による傷の治療が専門。
カウンセリングはあくまで副次的業務に過ぎない。
心の専門家である崩志埜先生には頭が上がらないのである。

「別にやましいことはないと思うのですよ~。
 教員という立場は~、常に真面目であることとイコールでは
 ないと思いますし~、息抜きすることは悪ではないと思います~。
 まぁ、崩志埜先生は見るからに真面目タイプっぽいですから~、
 そう言っても罪の意識を感じちゃうのかもですが~」

いつも茶を飲んでいる訳ではないと念押しする崩志埜先生を
見れば、ちょっと困ったように笑ってそう口にするだろう。
ゆるゆる、ふわふわとした口調で。


「ほほ~、それではココアをいただきましょうか~」

顎に手をやり、少し天井を見るユニヴェル。
断じて酒がなくてちょっとしょんぼりしている訳ではない。断じて。

崩志埜 朔月 >  
「お菓子とお茶目当てに入り浸る子が出てきてしまうのが玉に瑕と言ったところでしょうか。
 悩みを抱えていた子達が元気に過ごせているのを確認出来て嬉しいといえば嬉しいのですが」

また来て良い? と生徒に言われれば勿論と笑顔を返しますが。
こういった場所に悩みを吐き出す子達にとって、気負わず思いを吐き出せる場所も必要だと思いますし。

「シャルトリーズ先生のように傷の治療をしっかりとできる方には敵いません。
 基礎は頭に入ってはいるのですが、やっぱり実際に傷を前にすると手が竦んでしまいます」

自分にできる事はそう多くありません。
相手とお話して、吐き出して貰って。
ただ相手のお話を聞くだけ。殆どの場合がそうです。
身に迫る危機を取り除いてあげる事ができるシャルトリーズ先生の事は、
畑違いとはいえ尊敬の念も抱いてしまうというものです。

「真面目でありたい、とは思うのですがどうにもこの部屋を私物化しすぎた弊害ですね。
 たまの息抜きと思っていた物が毎日になってくると危機感がありまして……」

毎日捨てているとはいえ、昨日もチョコレートの包みやクッキーの包みでゴミ箱をいっぱいにしてしまいましたし。
あれを人に見られると少しばかり恥ずかしい思いもあるのです。

職員室でのシャルトリーズ先生の振る舞いを思えば気に掛ける必要は無いと言われるのも分かりますが。
こればかりは性分ですね。

「はい、少しお待ちください」

マグカップに粉を入れて、電気ケトルからとぽとぽと。
少し蒸らして、数回に分けてお湯を入れていきます。

「お熱くなっていますので、火傷には気を付けてくださいね?」

保健を担う先生には釈迦に説法かもしれませんが、先日も生徒が火傷しそうになりましたし、こればかりは。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「ああ~、学生たるもの甘いものには目がないでしょうから~。
 ま、それでも甘いものだけではなく~。
 崩志埜先生がこうして生徒に寄り添うように、お菓子を一緒に
 食べてあげられるような先生だから、きっと生徒たちは入り浸って
 いるのだと思いますよ~」

人差し指をピンと立てて、にこにこ笑顔のシャルトリーズ。
そう、お菓子が食べられるとて、それだけで入り浸ることにはなるまい。
ここの主の性質が生徒を受け入れる穏やかさを持っているからこそ、
生徒にとって人気の場所となっているのだろう。

「ま、傷の治療も心の治療も、となると難しいものです~。
 誰もがあれこれできないからこそ専門家がそれぞれ居るのですし~。
 というわけで。また、必要そうであれば、
 生徒にこの素敵な場所の紹介をさせていただきますよ~。
 私は崩志埜先生の腕を信頼しているので~」

ふわふわ笑顔でそう口にしながら、部屋を見渡す。
この部屋の主も含めて、この場所は居心地の良い隠れ家であると、
心底感じていた。
彼女のカウンセリングに関しては、
生徒からも良い評判を聞いている。
此度、ゆっくり同じ空間で過ごしてみて、
改めて彼女の持つ空気や性質を肌で感じ、
その好評が正しいものであるのだろうと感じていた。

「ありがとうございます~。
 でもご安心を、私のようなドワーフは熱さに強いのです~」

そう言って微笑みながら、ココアに口をつける。
甘さが口に広がり、思わず頬が更に緩んでいく。

「ぷは~~~っ、たまりませんなぁ~~」

崩志埜 朔月 >  
「そう言っていただけると嬉しいですね。
 そうあれたら良いな、とまだまだ日々勉強中の身ですが」

飛びっ切りの笑顔につられてこちらもにっこりと。
ふぅふぅと息を吹きかけながら小さく一口ホットミルクを飲み下します。

ここは相談室という名目ですが、答えを出す場所でもありません。
極論、行き詰った書類の整理を半分投げつけるために訪れる教師もいるくらいですし。

「器用貧乏になっては、元も子もありませんからね。
 そうですね、カウンセラーなんて大層な肩書が悪いのか
 思い悩んでいても入りづらいという子も多いですし。
 そんな子にこそ、甘いお菓子と飲み物でもお出ししてのんびり過ごして欲しいのですが」

悩みがありますと打ち明けるのは、酷く勇気のいる事で。
相談室に行くというのは詰まるところ何か悩みがあるのだというアピールにもなってしまいます。

実際は全く用が無くても歓迎しているのですが、イメージというのを払しょくするのは難しいものです。

「ふふっ、良い飲みっぷりです。
 さすがシャルトリーズ先生」

豪快に感想を伝えてくれるのは、淹れた自分も嬉しくなりますね。

シャルトリーズ・ユニヴェル >  
「アルコールが入っていたらもっと凄いんですよぉ~?
 でも、ココアも良いものですねぇ~。こっちに来てから
 初めて飲んだのですが~、結構気に入ってるんですよ~」

うへへー、と酔っ払ったように笑いながら口にするシャルトリーズ。
この世界に来る前など、ほぼ酒しか飲んでいなかったのである。

「んぐ……ぷは~~。疲れが飛んでいきますねぇ~」

婚活真っ只中のドワーフは、ココアを勢いよく半分ほど飲み干すと
空になったマグカップを掲げるように腕を伸ばしてそう口にする。

「これはっ……!! うんまいです~~!」

そうしてカステラに手をつければ、また目を輝かせながら思わず
ほっぺを押さえるのである。

そうして。

「そういえば、実は私も悩みがあるんですよねぇ~。
 ……なかなかいい出会い、なくてですねぇ……
 その辺りの相談も大丈夫なら、ぜひお願いしたいものです。
 崩志埜先生のその辺りの事情もぜひぜひお聞きしたいですし~?
 せっかくですから、お話しましょうよ~」

空になったコップを掲げて、問いかけるシャルトリーズ。
時間はあっという間に、甘いチョコレートのように溶けてゆく……。