2021/12/21 のログ
崩志埜 朔月 > 「ふふっ、気に入って頂けて良かったです。
 そういえば今年は忘年会するのでしょうか。そこでなら存分に本領発揮して頂けますね」

話はチラリと出ていたのだけれど、誰が主導するという所まで進んだ辺りで音沙汰無くなったままの忘年会。
去年は似たような流れでそのまま頓挫しましたが、
今年もそうなったらどこかのお店で小さく乾杯するくらいにしておきましょう。

「……こうするともっと美味しいんですよ?」

ヒタヒタとカステラをマグカップに沈めては、雫が落ちないようにして口に運びます。
そのためにミルクにしたのですが、ココアとカステラも合うかもしれませんね。

「出会い……ですか?
 確かに島の中でとなると確かに少ないかもしれませんね。
 普段会うのも生徒と職員の方ばかりですし。
 ――私のお話の後はシャルトリーズ先生にも話していただきますからね?」

おかわりは何にしましょうか?
そうして密やかに冬の相談室は日暮れまで消灯される事も無く、
最後には『他の方には内緒です』と二人笑いあうのであった。

カステラ、残りませんでしたね。

ご案内:「相談室」からシャルトリーズ・ユニヴェルさんが去りました。
ご案内:「相談室」から崩志埜 朔月さんが去りました。
ご案内:「相談室」に崩志埜 朔月さんが現れました。
ご案内:「相談室」に黛 薫さんが現れました。
崩志埜 朔月 > クリーム色の壁にブラウンのソファ。
木目調のローテーブルにはクリスマス用の飾りが盛りだくさん。
ここは個人用の相談室、表には『予定あり』の札。

来室希望の方はこちらまで、とメールアドレスの記載がされている。

お目付け役の風紀の子が前もって今日、黛さんが訪れるかもしれないと教えてくれていた。

黛 薫 >  
扉を叩く控えめなノックの音。疎らな力加減で
間を置かず2回、僅かな沈黙を挟んでもう1回。

ノックの回数でマナーがどうこうと小耳に挟んだ
朧げな記憶はあるが、正しい答えは覚えていない。
2回ノックしたところで、マナーに反していたら
どうしようと不安になって追加でもう1回ノック。

しかし、3回が正しいところを間違えて2回なら
1回分聞こえなかっただけと主張しようもあるが、
2回が正しいところを3回してしまったとしたら
言い訳出来ないのではないか。

……と、流石にノックの音だけで来客の内心を
推し量れる人なんてそうはいないだろうけれど。
教員のいる部屋を訪問する緊張もあり、黛薫は
ドアを叩くだけでもうじうじ悩むナイーブさを
発揮していた。

因みに今はノックしたドアを自分で開けて良いのか、
相手が開けるのを待つべきか、しかし開けさせると
手間を取らせたことにならないか、などとまた別の
不安に襲われてドアの前で沈黙している。

崩志埜 朔月 > 「はぁい」

控えめなノック音に気が付き立ち上がる。
しかしドアが開く様子も無く、
もう一度聞こえた音にトタトタとドアに駆け寄り開けて外を伺う。

ガラリと開けばそこには車椅子に乗った待ち人の姿が。

「――お待ちしておりました、黛さん。
 外、お寒かったでしょう? さぁ、中へどうぞ」

マナーを問うような場所では無いのだけれど。
教員、カウンセラーなどなど。いろいろな肩書が私をいかめしくも飾り立ててしまうのは、あまりよくありませんね……。

気遣うような、戸惑ったようなノック音の主を笑顔で出迎え、中へと誘う。

黛 薫 >  
ドアに手を掛けるか迷って揺れていた手。
身体が不自由でも不随意の反応は残っているらしく、
目の前で開いたドアに驚いたように肩を跳ねさせた。

「こ、こんばんは。崩志埜先生」

不安気な表情の少女──黛薫は訥々とどもりながら
挨拶を返す。12月も半ばを過ぎ、冷え込みも厳しく
なりつつある今日この頃。にも関わらず防寒らしい
防寒は薄手のパーカーと、いつもより1枚だけ多く
重ねて着たシャツだけ。鼻の頭も耳も、指先も悴み
赤くなっていた。

「あの、コレ……どう、ぞ?」

そんな彼女の膝の上にあるのは膨らんだ肩掛け鞄と
クリスマス意匠の紙袋。差し出された紙袋の中身は
小ぶりなシュトレンだった。手ぶらで訪問するのも
落ち着かずわざわざ手土産を買ってきたようだ。

崩志埜 朔月 > 「あら、可愛い紙袋……ありがとうございます。
 ――シュトレンですか!
 私一人で頂いても勿体ないですし、少し先取りになりますが一緒に頂きませんか?
 何か温かい物をお入れしますね」

赤らんだ耳の端や指先を見て、電気ケトルの電源を入れる。
数分と経たずに湯気が立ち昇り、どこか気の抜けた電子音と共にお湯が沸くだろう。

「私からも、プレゼントです。
 以前お会いした時から少し寒そうと思っておりましたので」

お返しです、と手渡す袋は常世渋谷の有名店の物。
少し長めのマフラーですが、とても簡単に巻けるようになっているものです。
おひとりでも、少しだけ時間をかければ身に付けられるくらいの物。

黛 薫 >  
「えぁ、でも先生に買っ……いぁ、頂きます」

完全に渡すつもりで買ってきたものを一緒にと
誘われ、気後れした様子を見せる。しかし否定の
言葉を言い切るより早く先生はケトルに向かって
いたし、好意を無碍にするのも躊躇われた。

「あの、でもコレ、あーしのお土産より高そぅ……」

と、一旦腹を括って了承したのは良いものの。
代わりに頂いてしまったマフラーを一目見て
早くも挫けそうになっている。

名目上は『お手伝い』だが、黛薫の中では完全に
復学を『手伝ってもらう』形になっている。
その上で手土産(しかも折半)より高そうな品物を
貰ってしまって大丈夫なのだろうか、と。

違反歴を辿れば暴力沙汰を起こした回数も多く、
学外(といっても常世島自体が学園の管轄なので
厳密には『学園の棟外』か)ではキツい物言いも
珍しくない彼女だが……現状は立場への自覚も
相まってか弁えるのを通り越して萎縮して見える。

崩志埜 朔月 > 「この部屋で長く時間を過ごしてきましたが、
 誰かと一緒に頂く方が何事も美味しく感じるもので」

ただの持論なので根拠はありませんが。
ケトルごとテーブルに持ってきて、いくつかインスタントの粉末の包みの入った缶を横に置く。
紅茶、ココア、コーヒーに日本茶。
好みはあると思いますが、どれかは気に入って頂けるでしょうか。

「プレゼントなのですから、お値段の事は気になさらないでください。
これで貴方の冬が少しでも温かい物になるなら、それだけで幸せなんです。

それでも気が引けるようでしたら、私の自己満足に付き合ってあげたと思って頂ければ幸いです」

今年もプレゼントを渡す相手も居なくて寂しかったところだったんですと、嘘か誠か口元に手を当てて小さく笑いながら。
教員から頼まれた『お手伝い』の達成。
その事実が彼女に必要な事を知っていての誘いである事は間違いないけれども、
寒さに震える生徒を放っておけない心根が先に立ってしまったのは性でしょうか。

「失礼しますね……よい、しょっと。
 これでよし、と。
 
 立派なツリーと比べると些か小さいかもしれませんが、
 この部屋に置くには立派な物でしょう?」

ローテーブルの足の横にあるレバーを引きながら押し上げ、
ギリギリまでテーブルの高さを上げる。
ソファに座ると少し高すぎるかもしれませんが、こちらの方が彼女が作業しやすいでしょう。

テーブルの横、嫌でも目に留まる位置に置かれたもみの木。
未だ飾り一つ付けられておらず、淡い部屋の中でひときわ目立つ存在感を放つだけの緑になっていた。

黛 薫 >  
「それ、は……そぅ、なのかも……?」

戸惑い混じりの肯定。誰かと共に卓を囲む経験が
無ければ『分からない』と答えたであろう問い。
経験の乏しさから確信には至れなかったようだが、
否定や不明でなかったのはきっと良い傾向。

インスタント飲料の粉末類を勧められると、
またも戸惑ったように視線を迷わせていた。

バリエーションさえあれば、大抵の人はいずれか
好みに合致するはず。迷うとしたら好きな飲料が
複数あってどちらを取るか決めかねているか……
そうでなければ自分の好みを把握していないか。

「……それ、じゃあ。その。受け取り、ます。
 あのっ、でも。やっぱり、貰ぅだけなのは
 良くなぃと思ぅ、から……何か、あーしに
 出来るコトとか、もしあったら、あ、いぁ。
 今からの手伝ぃとは別で、ですけぉ」

『自己満足』『自分の為』を引き合いに出されると
弱いようで、漸く受け取りを決めてくれた。しかし
それでもなお対価の埋め合わせを考えてしまうのは
性分なのだろう。

会話の傍、本日の主目的……ツリーの飾り付けの
手伝いに意識を向ける。単体で強い存在感を持ち、
しかし部屋から浮いた雰囲気が拭えない樅の木と
テーブル上に用意されたオーナメント。

クリスマスをイベントと捉えるなら、飾り付けも
楽しんだ者勝ちなのだが。黛薫は『お手伝い』を
意識し過ぎているらしく、緊張が伺える。

崩志埜 朔月 > おや……。

此処に来る人は誰かと一緒に、
というもの自体に忌避感を抱いている事も多いもの。
あやふやなようですが、これも
学校に来ていない間も、誰かが一緒にいてくれた事の証左でしょうか。

「私は……ミルクティーにしましょう。
 お嫌いでなければ同じ物になさいますか?」

決めかねる、と言った具合に泳ぐ視線に気が付いて。
選び取ってもらう事をやめて、「はい」か「いいえ」の二択に絞る。
懸念があるとすれば嫌いな物でもそれでいい、と
答えさせてしまいかねない所でしょうか。

「そうですね、学校に来て下さるのが一番ですが……
 何か困った時に、お力添え頂くというのはどうでしょう?」

イベントごとというのは追い立てるようにやってきて。
だけれどもしっかりと受け入れる事で、四季を感じる充足が得られる物でもあります。
今日のような飾りつけに追われる事も、またあるかも知れません。

「あまり思い悩まず、好きに吊るして頂いて大丈夫です。
 同じ物が並んだり、バランスが偏ってしまったり。
 気になる事もあるかも知れませんが、
 そこは一度進めてみてから手直ししましょう」

自分の思うように、飾り付けて欲しいとは思う。
自発的な発想や行動は、きっと彼女の為になる。

自分も袋からオーナメントを取り出しながら、
車いすのままでは手を伸ばしにくい下の方に手を付ける。

黛 薫 >  
「じゃあ……同じヤツ、で?」

自信なさげではあるが、嫌いなものを無理して
合わせている様子はない。やはり自分の好みを
把握出来ていないだけのようだ。

「あーし、あんま助けになれなぃかも、ですけぉ。
 でも、えっと。貰った分くらぃは、返したぃし。
 役に立てるなら……はぃ。声、掛けてくれれば」

言動の端々に覗くのは卑下と自己評価の低さ。

神経質で感じやすく、いっそ善良にも見えるほど
相手の顔色を窺う気弱な姿勢。それに反して多い
違反歴の数々はどこかちぐはぐな印象を与える。

貴女がオーナメントの飾り付けを始めたのを見て、
真似るように幾つか飾りを袋から取り出してみる。
銀色に光る丸い飾り、サンタ帽やリースを象った
マスコット、雪をイメージした白い綿。

後で考えれば良いと言われたバランスが却って
気になってしまい、数の偏りを確かめていく。
何処に何を付ければ良いか迷って、中々最初の
ひとつに手を伸ばせない。