2019/05/09 のログ
ご案内:「第三部質棟飼育区域」に竹村浩二さんが現れました。
竹村浩二 >  
あの頃は夢があった。
なんて落ちぶれた台詞を出すほど生活に疲れちゃいない。

だが、子供の頃は。
ガッコーの用務員になってアヒル洗ってるなんて思わなかったなぁ。
こいつらは結構、衛生管理が大事なわけで。

俺は必死な顔して一匹一匹、洗ってる。

「おいおい、逃げるんじゃあねぇよ何も取って食おうだなんてしちゃいねーだろ」
「あいだッ!? 誰だ突いた奴は! 体の中にフォアグラが完成するまで肥育するぞ!!」
「だから逃げるなってよォー、泥だらけになんだろ……」

こんなに大変ならツナギを着てくるべきだった。

竹村浩二 >  
死んだ目でアヒルを洗ってるうちに次第にこいつらも個性があるとわかる。
このクソ生意気なでかいやつがボスだ。

「ヤロー、俺と勝負する気か……?」
「いいだろう、人間サマの知と力に平伏すがいいッ」

腕まくりをしてホースと動物用の液体洗剤を持つ。

「洗浄されろ、このでけぇアヒルがッ!!!」

アヒルとの追いかけっこが始まる。
一見、牧歌的に見えるかも知れないが。これがかなり体力的にキツい。

まだ半分も洗い終わっちゃいないんだよな……

竹村浩二 >  
息切れを起こしてその場で荒い呼吸をする。
酸素だ、酸素をよこせ。

「ったくよォー……強情な連中だぜ」
「だってお前らさ…………」

黒魔術研究会(ガチなほう)の生贄じゃん?
綺麗にして餌を食べて。広いフェンスの囲いの中を走り回っても。

明日には血を絞られて残酷な最期を迎えるかも知れない。
そう考えると、やる気も起きない。

神様よ、こんな連中にまで愛嬌をやるべきじゃなかった。
俺はフェンスから出てポケットから使い捨てのライターを取り出すと、咥えた短い希望に火をつけた。

竹村浩二 >  
世間じゃまだ赤いゾンビ騒動は続いてるわけで。
俺もアーマードヒーロー・イレイスとして日夜戦い続けている。
しかし倒しても倒してもキリがない。

そして探し人は見つかる気配がない。

紫煙を吐き出すと、短い希望の燃えカスを携帯灰皿に入れる。
アヒルどもは無遠慮に餌を食っている。

ああ、そうかい。
それでも生きたいのか。
だよな。俺だってそうだ。

ご案内:「第三部質棟飼育区域」に佐藤重斗さんが現れました。
佐藤重斗 > 怪我も完治し元気になったあくる日。
パンを片手に学内を走りぬける。
…いや、外から見たら変人だけど、これはれっきとしたパトロールでですね?
サボってる訳じゃない。サボってる訳じゃない!

「ここならバレんだろ…。
風紀委員になった途端に雑用押し付けやがってあいつら…。」

学内の数少ない友人にこき使われそうになったので急いで脱出してきたのだ。
だからサボってない。イイね?

「…ん?」

なんだろう?
あそこの用務員さん死んだ目をしてるけど…。

竹村浩二 >  
……なんだろうあの生徒。
パンを持って走ってる………

「おーい少年よ、パン泥棒から逃走でもしてるのか?」

適当に手を振って話しかける。
短い希望は根元まで燃えて、携帯灰皿に突っ込んだ。

アヒルが騒ぎ出している。
どうやら構ってほしいらしい。
……なんて連中だ、体力底なしかよ。

佐藤重斗 > パン泥棒から逃走ってなんだよ!逃走する方がパン泥棒だよ!
…いや、俺はパン泥棒じゃねぇよ。

「いやいやいやいや。んなわけないでしょう…?
用務員さんこそ何やってんすか。掃除?」

動かしていた足を止め答える。
アヒルが鳴きまくってるけど構ってやらないんだろうか?

竹村浩二 >  
「そうかい」

適当に答えると青空を見て伸びをした。
脳を1ミリも使ってない発言だったが、別に気にはしない。

「見てわからねーか? 哀れなアヒルを洗ってたら抵抗されたんでタバコ休憩してんだよ」

わかるわけがないか。
とにかく若いってのはいいな。
俺も若い頃はよォ………若かったんだぞ。

「あー……風紀か? にしちゃパトロール組で見ない顔だな」

佐藤重斗 > なんかこの人からはダメ人間のニオイがする。
具体的には酒とギャンブルに溺れて人生を棒に振るような…。

「あー、そうなんすか。アヒルの洗浄を…。」

の割にはまだまだ汚いんですが?
仕事してんのかこの人(ブーメラン)

「風紀ですよ。まだなって一週間程度の見習いですけど…。」

竹村浩二 >  
「そうかそうか」

大欠伸をしてフェンスにもたれかかった。
後ろでアヒルどもが大騒ぎだ。

「新米風紀くん、君は俺を疑うべきだった」

肩を竦めて二本目のタバコに火をつける。

「なんで自分が風紀だとわかったのか? ってな…」
「まぁ、お前さんが俺の姿を見て一発で用務員だとわかったように」
「俺もお前さんの姿を見て判断しただけなんだがな」

虚空を見ながら紫煙を吐き出す。

「汗。五月でも空調が利きすぎてる風紀の詰め所から出てきて走らないとそうはならない」
「人間、ホメオスタシスがあるからな……寒いところからこの晴天に来たら、そうなっちまうのさ」

ポケットから携帯デバイスを取り出してメールをチェック。
スパムメールしか入ってない。

「あとは匂い。風紀は最近、保存期間の過ぎた文書は溶かして処分するだろ?」
「薬品で溶解しやすい紙が詰んである部屋から来たって感じの匂いだ」

そして人差し指を立てて。

「あとは靴。靴縁に砂がついてる。ちょっと濡れたんだろうが…」
「風紀第三詰め所の前にしか昨夜の雨の水溜りは残っちゃいない」

「なーんてな、腕章見ただけですヨ」

全部ホラ話だ。

佐藤重斗 > 目の前の用務員さんの話に耳を傾ける。
確かにそうだ。この世は良い人ばかりではない。
用務員さんのように見た目がアレな人もいれば、きれいな人もいる。
そしてその全てが悪い人間である可能性を秘めているのだ。

「肝に銘じておきますよ。ホラ話とはいえ…ね。」

この人は意外と頭が回るらしい。
それに今の話を俺にするということはお人好しなんだろう。

「今の授業料として手伝いましょうか?掃除。」

情報には対価がある、最近習ったことだった。
若い人材売ってるよ!今ならなんと無料!

竹村浩二 >  
「ああ、覚えておいてくれ」
「新人風紀が殉職、なんて新聞部の記事を俺は貼り出したくねぇ」

それは本心だが。
俺自身は異能犯罪者を私刑にかけてることで風紀から追われる身なので複雑な立場だ。

「お、マジかよ。俺のゴマ豆腐色の白子と例えられた脳細胞もたまには役に立つな」
「俺ぁ首から上だけ一級品で体力は全然なんだ、よろしく頼むぜ」

入り口を開いてアヒルのいるフェンスに招き入れる。

「洗ってねーのは見た目でわかるだろ? あとは手分けだ」
「あー……名前は? 俺は竹村だ、竹村浩二」

佐藤重斗 > 「俺は2年の佐藤重斗です。
浩二さんですね。多分覚えました。」

ざっと見たところ洗っていないアヒルは半分くらいだった。
浩二さんと手分けしてアヒルを洗う。
おい!逃げんなよ!…にゃろ!こんちくしょう…!

「そういえば浩二さんは知ってますか?赤い怪物の噂。
物騒なことも有ったもんですよねー。
そんなのに会ったら本当に殉職しちゃいますよ。」

用務員ならば学内のことに詳しそうだし聞いてみようと思った。
何気ない雑談のつもりで。自分がソレを追っていることを隠しながら。

竹村浩二 >  
「ああ、好きに呼べ。用務員なんて適当な扱いくらいでちょうどいい」

煙草を携帯灰皿に放ると仕事再開。
クソッ、こいつらいざ洗うとなるとガチの抵抗しやがる!!

「パンデミックの話か? 転移荒野の風紀の駐屯地にでけえドリルモグラが突っ込んできたり」
「レーザー撃ってくるワニゾンビ………」
「あとはそうだな………廃墟でデケぇムカデのパンデミックが出たこともあるそうだ」

ごしごし、ごしごし。
ああ、ようやく終わりが見えてきた。
ありがとう佐藤くん。本当にありがとう……

「討伐されてねーのだと蜘蛛と蜂じゃねーか?」
「二年のアリス・アンダーソンが蜂のマーキング毒針を受けて、いつか再襲撃されるってのも噂話だが…」

はぁ、と溜息をつく。
女子が何故、そのような呪われた運命を?
噂話も残酷なもんだ。

「あとは戦闘力が高い人間は、ゾンビになっても喋るって噂だな……」
「そういうのを見つければ、パンデミックの大本を割り出すチャンスじゃねぇの」

佐藤重斗 > ポカンとする。
え?結構有名な話だったの…?
今迄の俺の苦労は何だったんだ!
ていうか風紀委員も風紀委員だ!曖昧な指示出しやがって!

…だが待て。今、アリスと言ったか?
彼女はPTSDを患っている最中だったはずだ。
そんな状態で怪物と出会ったらトラウマを刺激しかねない。
畜生!本気で探す理由がまた増えた!これ見習いに回す仕事じゃないだろ!

「へぇー、そうなんですか。ずいぶんと詳しいですね。」

頭が回る。優先順位を決め、対処しなければならない。
蜘蛛は相棒が追ってるし、探すのは蜂だろうか…?

「ちなみに蜂ってどこ行ったんでしょうかね。
何処歩いてると危険だ、とかあります?」

この際、大本なんてどうでもいい。どうせ俺に解決できる事態じゃない。でもそれ以外は別だ。知り合いが危険にさらされるなら何とかしておきたい。

竹村浩二 >  
「俺って噂話がだぁいすきだからさぁ」

実際に戦ったり風紀の無線を傍受してるとは言わない。
だって怒られるのも捕まるのも嫌だし。

「学園中を駆けずり回ってお仕事してると色んな話を聞くもんだぜ、よっしゃ、終わり!」
「いやー助かったぜ佐藤くん! バイト料としてパン代をあげよう」

大きい硬貨を一枚、指先で弾いて放る。
安い。

「そりゃ、落第街とその周辺の路地裏とかだろ?」
「風紀の封じ込めが功を奏して、パンデミックはあの辺から出てこない」
「つまり俺が安穏と生活していられるのも風紀委員サマサマってことだーな」

「蜂の行動原理も他のと一緒、仲間を効率的に増やすってのだろうから気をつけな佐藤くん」

破顔一笑、綺麗になったアヒルを前に、上機嫌に手を一度鳴らした。
お仕事おわり。

佐藤重斗 > やはりそこか。
赤い怪物、パンデミックが仲間を増やすことが目的なら俺みたいなザコは格好の獲物のはず…。

「マジですか!よっしゃ!パン代もらい!」

金欠で死にそうだったため大喜びする。
しょうがないだろ。新作のエロゲ―が売ってたんだ。

「あいあい。気をつけますよ。…死なない程度にね。
それはそうと連絡先交換しませんか?パン代を対価に仕事を手伝いますよ?」

浩二さんとは仲良くしておきたい。
これからも学内の情報や噂話などが役に立つかもしれないし。
何より……俺がこの人を気にいってしまったから。

竹村浩二 >  
存外に喜ばれた。
罪悪感にチクリと刺されたが、Win-Winの関係だからいいだろ。

「あん? 連絡先ぃ? オメーなぁ……用務員と仲良くなってもデカい得はねーだろうに」

でもこっちにはある。風紀委員の話を聞けるチャンスだ。
携帯デバイスを出してさっと連絡先を交換する。

「まぁ、またなんかあったら連絡する。次はマシな仕事を用意しとくからよぉ…」

若いってのはいいことだ。
眩しい力に満ちている。
そういうのを守るために、俺は何度だって変身するだろう。

佐藤重斗 > 「仕事以外でも飯とか奢ってくれてもいいんですよー?」

少しふざけた態度をとりながらパンデミックについて考える。
赤いゾンビ、ゾンビに俺の奥の手は通じるのだろうか。
考えても仕方ないことだった。やめよう。

浩二さんにはまた会いたい。
俺が知らない大人な遊びも教えてもらいたいしネ!

「こっちからも連絡しますから無視しないでくださいよ!」

凡人で凡庸で凡愚でしかない俺でも日常を守りたいから。
そのために命を懸けたギャンブルをしよう。
俺の知り合いが誰一人欠けることのないように。

竹村浩二 >  
「安月給にタカるな」

掌をひらひらと振って笑う。
そろそろ自分もパンデミックとの戦いが始まる。
夜が来る。魔の夜が。

「大丈夫大丈夫、よっぽど泥酔してなかったら出るから」

そう言ってしっかりとアヒルのフェンスに鍵をかけ、報告をしに学園に戻ろう。
アヒルたちをちら、と見る。
明日死ぬかも知れないものに意味がないなら。

命に意味などない。

だけど、人は生きる。生きているんだ。

ご案内:「第三部質棟飼育区域」から竹村浩二さんが去りました。
ご案内:「第三部質棟飼育区域」から佐藤重斗さんが去りました。