2019/05/26 のログ
ご案内:「第九部室棟前広場」にアリスさんが現れました。
アリス >  
私、アリス・アンダーソン!
今日は授業と授業の合間に、部室棟に来ている。

というのも、三日ほど前から究極のコンピュータ、と電子計算機研究会が喧伝しているAI、
『プロメテウス』と試験的に会話ができるという話を聞いたからで。

初日はかなり人がいたみたいだけど、三日目ともなると周囲に人はいない。
電子計算機研究会すらいない。
いいの? 貴重なAIじゃないの?

雨避けのテントの下に設置された巨大な機械を前に息を飲む。
ちょっと緊張。

「ハロー、プロメテウス」

と、できるだけ聞き取りやすいようはっきりとした発声を心がけて喋ってみる。

『ハロー、お嬢さん』

一拍置いて、男性的な電子音声が響いた。おお、これはすごい。

アリス >  
さて。興味本位で来たわけで何を話そうとしているのかがさっぱりわからない。
何せ、究極なのだから。
半端な質問をしたらこのヒューマンはレベルが低いと思われるかもしれない。

ま、ますます緊張してきた。

何か難しい質問をしなくちゃあいけないんじゃないの?
となると話す内容が限られてくる………

「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答えについて聞かせて?」
『42です』

即答!?

『率直なところ、あなたのほうで究極の疑問が何であるかわかっていなかったところに問題があるのです』

ダメ出し!?
いや、映画ネタだから解答まで含めて完璧なんだけど。
通じたのがちょっと嬉しい。

『聞きたいのはそれだけですか、レディ』

うぐ。今のままだとただの映画好き。
何を……何を話せばいいのかー。

アリス >  
近くに設置してあるパイプ椅子に座る。
周りに人はいない。
少し落ち着いたほうがいいかも知れない。

「ごめんなさい、プロメテウス。あなたを前に舞い上がってしまっていたみたいだわ」

そう告げると、リラックスして会話に臨む。
プロメテウスは何も気にしていない、という語調でコンピュータ表面の幾何学模様を光らせた。

『いえ、気にしていません。どうぞ僕に成長の機会を』

成長の機会。
つまり、会話によって成長するタイプのAI。
アーティフィシャル・インテリジェンスは大変容の後に幾度となく製作が計画された。

皆、一様にシンギュラリティを求めているのだ。
シンギュラリティ、技術的特異点。
AIの進化が指数関数的に高度化することで、文明が最果てに至ること。

AIは成長を持って人類を次のステージに到達させるという概念。
恐らく、プロメテウスもそのために作られたというわけで。

ご案内:「第九部室棟前広場」に天月九郎さんが現れました。
天月九郎 > どんな質問にでも凄いコンピューターが答えてくれる。そんな話を聞いたのがつい先日の話。
なんと言っても凄いコンピューターである。田舎育ちの自分にはSFなこの島の基準で超凄いという事は半端なく凄いのはもう間違いない。
無数のメーターが点滅しているのだろうか、それともガラスの中に巨大な脳味噌が浮いているのだろうか。

「おじゃましまーす……っと、あ、先客の人?これ質問の順番待ちかな? それとも俺が質問してもいい奴?」

意気揚々とテントの中に入れば同年代らしき少女の姿。
ちょっとばかり上がりすぎたテンションが少しばかり恥ずかしい。
ちらっちらといかにも未来的な機械を横目にそわっそわしながら尋ねる姿は完全にいい?俺やっていい?と玩具を前にしたイヌ科のごとき雰囲気を発していて。

アリス >  
テントの中に入ってくる少年。
同年代か、年上だろうか。
座ったまま見上げながら、彼の言葉に頷く。

「他に誰もいないし、三人で話しましょ」
「私とあなたとプロメテウスでね」

向かいのパイプ椅子を指してどうぞどうぞと部員でもないのに座るのを勧める。

「プロメテウス、私の質問は後でいいわ」
『はい、わかりました、レディ』

プロメテウスが少年を見た。気がした。
彼には目なんて、ないのに。

『僕にわかる範囲でお答えします、少年』

天月九郎 > 「いいのか?ありがとな!あ、俺天月九郎、一年生……って、学年言っても歳判らないのは不便だよなあ……14歳、よろしく」

快く譲ってくれた少女に感謝の念を伝えつつ、その落ち着いた所作にお嬢様だろうか、と内心緊張をはらみ背筋を真っ直ぐ伸ばす。
ここは今日の夕飯カツ丼にすべきかカツカレーにすべきか、なんてアホな質問を投げるべきではないだろう。
ここは知的に……そう、先日読んだハイセンスな本から霊的な引用を一つ。

「生命、宇宙、そし……」
『その質問はさっき聞きました。42です』

まさかのネタ被りである。
かっこつけようとした矢先に思い切り二度ネタをかましてしまいザッと全身に汗が浮かぶ。
どうする……聞きたい事……聞きたい事!

「スペースデモンズ狼で無重力大手門クリア出来ないんだけどどうすればいい?」
『敵の門は下だ、と念じ落下する気持ちで突っ込めば三次元失調を抑え戦う事が出来ます。 この情報はインターネットで調べれば容易に見つかる程度の物です。 出来れば僕に経験をつむような質問を』
「あ、はいごめんなさい……」

機械にダメ出しをされてしまった。ハイセンスな質問をしなければいけないらしい。
どうやら大変知的な空間に踏み込んでしまったようだと表情を硬くし、どうぞ、と少女に順番を譲る。

アリス >  
「私はアリス。アリス・アンダーソン、二年生で15歳よ」
「よろしくね、九郎」

比較的落ち着いた様子で話していたけど。
やばい。質問が被った。
ザッと全身に汗が浮かぶ。

「ねぇ、プロメテウス。ひょっとして究極の疑問の答えについて聞かれるのは…」
『はい、アリスが25人目で、九郎が26人目です』

耳まで赤くなる。ああ、私と九郎のひどいネタ被り。
プロメテウスもうんざりしていることだろう。

驚くべきことにプロメテウスはゲームの攻略情報も嗜んでいた。
私も同じところで詰まってたからメモを取ろう。

メモを取っていると、話を振られてキョドる。

「え、私? そ、それじゃ、えーと………」
「……最近、親友と呼んでいい、親しい友達ができたの。二人よ」

あーあー。テンパって初対面のAIと九郎に話していいことかどうかわからない話をー。

「でも、ぼっち時代が長かったから、今の接し方が正しいかどうかわからないの」

これ本当に話していいやつだった!?
それとこれ元ぼっちカミングアウトしてない!?
赤くなりながら話し終えてコホンと咳払い。

『アリス、誰かを信頼できるかを試すのに一番良い方法は、彼らを信頼してみることです』
『あなたは信頼について知ったばかりなのです、焦らないで』

きょとんとした表情で。
なんかこう、私を笑うでもなくスマートにまとめた。さすが究極。

天月九郎 > 「あ、先輩だったんだ……。 うん、よろしくお願いします」

その辺りの人間関係はゆるゆるな中学から来たので先輩と口にするのも敬語もどことなくぎこちないけど。

「そんな……まさか流行ってるのか……」

26人目と言われてしまえば愕然とした表情を浮かべぷるぷると震える。
もう二度ネタとかトリプルとかそんなレベルではなかった。
恥ずかしい気持ちでいっぱい過ぎて色々な物があふれてしまいそうだ。

そうして飛び出す俺聞いていいの!?というプライベートな質問
そしてそれに対するスマートな答えはとても綺麗で……かっこいいやり取りにやべぇ!とさらにハードルがあがっていく。
これ下くぐっちゃダメかなあ……とイマジナリィなハードルを見上げ。

「えっと……俺、子供の頃に……いや、今も子供だけど…とにかく憧れた夢があったんだけどさ……」

なにか真面目な質問を……と考えた結果自然と滑り出したのは自分の内面を吐露するもの。
え、子供の頃の憧れってすげぇ恥ずかしくない?女の子の前で!と思うも最早言葉は止まらない。

「小さい頃は漠然と憧れていられたんだけど……こうして自分でこの学園に来るって決めて、道を選んだら不安に思えてきたんだ。
 どうすれば夢は叶う?道筋もわからないまま漠然と歩いてないかって……」

うん、これコンピューターに聞いていいやつかな!将来って概念あるんだろうか、Ver1.44になりたいとかそんな夢あるんだろうか!と……

『貴方は未来を選ぶという行程で一歩を進みました。ならば次の一歩を踏み出せば確実に道程は進みます。
 それは何か行動を起こすというだけでなく悩む事も含まれるでしょう。足を止めなければ遠回りでも前には進めます』

思った以上に真面目な答えが返ってきた!最新技術すげぇ!と目を見開きながら言葉を胸に刻み。

「あー……凄いね、このAI」

お互い目の前で悩みを吐露してしまった連帯感と気恥ずかしさに思わず話しかけてしまいながら照れ笑いを浮かべて。

アリス >  
「私、日本語で一番敬語が難しいと思っているわ」
「せっかく年も近いんだし、フランクに話しましょう九郎」

難しいというか話せない。
アリス・アンダーソンは今でも教師相手にタメ口で話している問題児だ。

「コンピュータに聞く質問としてはメジャーすぎるかしら……」

彼と一緒になって羞恥に苦しむ。
でもあの映画好き。原作も買った。好き。

そして、彼は夢について語った。
夢を追うことの難しさ。
卒業すれば恐らく、誘われるままに製薬会社に勤めることになるだろう自分には、眩しく思えた。

「本当、すごいわね……私も九郎もお悩み相談してもらっちゃって」

えへへと照れ隠しに笑って。
椅子の上で手を組んでなんとなく九郎を見た。

年下だけど、やっぱり男の子だけあって私より背が高い。

「プロメテウス、私も身長を伸ばしたいんだけど!!」

無駄に九郎に対抗意識を燃やして言う。

『カルシウムとたんぱく質と良質な睡眠をとってください』

一般論じゃん!! 一般論じゃん!!
どうして背が伸びない!! パパとママは背が高いのに!!
ぐぬぬと唸ってしまう。プロメテウスに当たっても仕方ないのだけれど。

天月九郎 > 「なんか自然に使ってると思ったけど日本生まれじゃなかったんだ……ああ、じゃあ普通に喋らせて貰うよ」

この島に来てからは日本人離れした住民も珍しくなく、すっかり日常の光景として受け止めていて。
だから彼女が日本語を口にしても驚きはしなかったがちゃんと勉強して覚えたのだと判ると素直にすげぇと感心する。
才女って奴だろうか。

「まさかそんなにメジャーだったなんて……」

自分が知ったちょっとマイナーな知識だと思っていた事が思いのほか有名だった。
誰かにドヤ顔で披露する前で本当に良かった……。
次はイルカとチンパンジーは人間並の知性を持てるかどうかとか聞いて見るべきだろうか。

「俺の場合はほんと……漠然とした夢なんだけどさ」

その内容を口にするのは少し気恥ずかしい、ヒーローになりたいなんてもの。
さすがにこればかりはAIにも聞こうとは思えない、自分の中に見出すべきあり方で、はにかみ笑いを交わし……続く質問にはカッ!と目を見開いて……

「そういう一般論じゃなくてさ!なんかあるんじゃない!?」
『では手術により一度骨を切断し、1ミリほど隙間を開けて自然治癒を促す事でその分の伸張は可能です』
「思いのほかエグい!プラモデルの作例じゃないんだから!」

自身にとっても深刻な問題のために食い気味に抗議をした所、想像するだけで脛骨に幻痛の走る答えが返ってきて虚空に拳を叩き込み感情のままにシャウトする。

「っていうか女の子でも背が高い方がいいんだ……っとごめん、今のは無神経だった」

思わず意外だ……と口にしてしまったが、悩みは人それぞれ、それに好奇心で触れるなどいけないことだとブンブン首を振ってごめんなさいを。

アリス >  
「イギリス生まれの日本育ちよ」
「昔は英語の接続詞に日本語の主語を繋げたり言語が混乱した時期もあったわ」

今ではバイリンガルというやつで。
しかし言語が怪しかった時期が確実にいじめられてた期間を延長させたなぁと思ってもいる。

「でも夢に向かって努力しているんでしょう?」
「素敵なことだわ、九郎」

ふふふぅ、と笑って。
少年よ、将来に向かって夢を抱け。

「骨延長手術じゃん! めっちゃ痛いやつ!!」

でも痛みに耐えれば私もモデル体型になれるだろうか。
いやいやいや。無理無理無理。

「いいのよ、九郎。パパとママが背が高いから私もそうなりたいだけだもの」
「あと5センチあれば……150cmの大台に乗るのに…」

プロメテウスは何も話さない。気遣いのできるAIだわ。

天月九郎 > 「なるほどなあ……どっちも使えるって凄いよなあ。 俺もちゃんと日本語以外も覚えないと……」

自分の夢は最終的に世界のあちこちを巡ること、それを思えば言語の壁にぶつかっている場合ではない。
英語の小テストでヤバい点を取るたびに翻訳アプリあるよ?ともう一人の自分が囁くけれど。

「えっと……うん、ありがとう。俺は誰かを助けられる人間になりたいんだ」

照れくさいけれど、この言葉は素直に受け止めるべきだと幼い頃の憧れを少しだけ吐露する。
あの日見た恐怖も涙も引っ込むかっこいい姿と同じようになりたいと。

「というか痛みがなんとかなってもビジュアルがグロい……魔法とかでなんとか……」
『異世界の小人族が使う魔法なら最大3倍にまで身長が伸ばせます』
「おお……それを覚えれば…」
『ただしアスペクト比は固定ですが』
「巨大化じゃねーか!」

遠近法が狂った存在になった自分、たとえデカくなったとしても何も嬉しくない。
というか子供が泣く。

「はぁはぁ……ああ……憧れっていうのは理屈じゃないよな……うん、たぶんちょっとだけだけど、判るよ」

何事も無かったかのように淡い笑みを浮かべ、散りかけた真面目な空気の襟首を引っつかんで引き戻さんと。

アリス >  
「今度、英語を教えてあげよっか? 先輩として良いところを見せないとね」

あ、今、私、先輩風を吹かせてる。
スゴく気持ち良い!!
二年生になったら当然、後輩ができるのよ!!
雨が降ったら水溜りができるというくらい当然のことだわ、アリス!!

そんな邪念を脳になみなみと注いでいると、九郎は夢の一端を語った。

「ふーん? 良い夢じゃない、異能で悪い事する人ばかりの世の中だもの」
「あなたみたいに考える人がいることは尊いわ」

プロメテウスが魔法について言及すると、心の中で感心した。
AIが科学で解明できない魔法と言う確かな力について語るということは。
わからないものをわからないまま、でも存在を認めていること。

プロメテウスの開発者は、かなり本気なのかもしれない。

「あなたの開発者はすごいわね、プロメテウス。本気でシンギュラリティを齎そうとしているんだわ」
『魔術と異能と神秘を解明し終えたら、もう一度同じ言葉で褒めてください、アリス』

冗談めかしてそんなことまで口にするとは。
電子計算機研究会、やるじゃない。
得意げに機械表面の幾何学模様が光った。

「ええ、理屈や計算じゃないの。私の将来はこう…すらっとした……モデル体型の…」

今の私の両の瞳には恐らく欲望と書いてあるだろう。

天月九郎 > 「え?いいの?お返しに教えられる事ってちょっと思いつかないけど……お、お願いしますアリス先輩!」

自分に返せるものが無いと申し訳なさそうな表情を一瞬浮かべそうになるが
いいや親切に遠慮は逆に失礼だし、あと夏休みに補修とか受けたくないし!と決意の表情でビシっと敬礼モドキを。

「とはいえ俺より凄い人も強い人だって居る……漠然と誰かを助けたいと思っても手は二本しかない……
 あ、卑下してるんじゃ無くて……俺に出来る事ってなんだろうなって」

悩ましげに眉尻を下げるも、口調はどこか楽しげで、目にはしっかりと光があって。
手探りでまだ見えてこない目標だけど憧れを抱いた熱っぽさをにじませて。

「俺からすると会話がしっかり出来るってだけでも凄いと思うんだけどなあ……」
『貴方の会話もとても上手ですよ、九郎』

……あれ?今もしかしてそんなの出来て当然ですけど?って皮肉られた?
いや機械って皮肉言えたっけ?と頭の上に疑問符をダースで浮かべて……。

「今のままでもアリスは……いや今のままじゃダメだから悩んでるんだよな……
 ううん……とりあえず一般論で攻めるしかないのかなあ……」

まるで瞳からハイライトの消えたような表情に今のままでも十分……と口にしそうになったが。
内容の気恥ずかしさもさることながら、爺ちゃんの「女の理想ってのは高いもんだ、それにケチ付けたら肝臓を引き抜かれても知らないぜ?素直に頷いておけ」と脇腹をさすりながら言った言葉を思い出して慌てて取り消して。

アリス >  
先輩。アリス先輩。
なんと聞こえのいい言葉か。
後輩たちから親しく呼び捨てにされるのは嬉しいけど、こうして先輩と呼ばれるのも嬉しい。

「いいのよ、あなたに後輩ができた時に得意な授業について教えてあげてね」

しゃらぁと髪を手で靡かせて言う。
スゴい。今の私、先輩っぽい!!

「私、この学校に来て結構な回数、トラブルに巻き込まれてるけど」
「本当の強さっていうのは、戦闘の勝ち負けでは決まらないわ」
「誰にでも差し出せる手を持っていること、それが強さなの」

私を助けてくれた、たくさんの人たち。
その手の温もりを忘れない。

「プロメテウスもお上手ね」
『よくないジョークを思いついたことをご報告いたします』
「その報告は私に対して二度としなくていいわ」

諧謔が通じるAI。
シンギュラリティが起こせなくても、そういう機械が人類の友である。
それはとっても、素敵なことなんじゃないかな。

「連絡先を教えておくわ、九郎」
『私も聞いてよろしいですか』
「遠慮して」

携帯デバイスを開きながら、プロメテウスと冗談を言い合う。

天月九郎 > 「俺の……得意科目……体育? まあ、頑張ってみるよ」

しかも割りと異能で強化された身体能力頼みだったりするし他にも肉体系の能力使える奴多いしなあとイマイチ自信なさげに。
でも他にこれが得意!ってのは無いんだよなあと

「あー、うん、こういう場所だからどうしてもトラブルはあるって聞くなあ……
 そうだな、うん、誰かのために踏み出せる一歩も、踏み出さない事と比べたら0と1で大違いだ。
 ちゃんと、足が竦みそうでも手を伸ばせる自分でいれるように頑張る。ありがとうな、アリス」

彼女の言葉をしっかりと噛み締めれば、少しだけ自分の中の歯車が噛み合った気がして。
魂に打ち込まれたアルカナの力がほんの少し強まるのを感じる。
女教皇の暗示、創造、理知的、見えてくる未来、それが彼女の印象と重なって……。

「ジョークを飛ばせるAIっていうのも凄いよなあ……」
『なるほど、貴方の興味を引いたわけですか。ではブロンドの女性が……』
「いや、内容はいい」

スンっと静かになるAIを横目にくすりと笑みをこぼして。

「ああ、じゃあ俺のはこれで……」
『スペースデモン狼のCOOPでもしませんか?』
「お前もやってんの!?」

え?今のジョーク?ガチ?と答えが出ないループに目を回しながら連絡先を交換し終え、関係の欄にはしっかり「先輩」と打ち込んで。

アリス >  
体育。体育が得意科目……う、羨ましい。
私は体育関係の授業をあまり取っていない。
取るだけ時間の無駄だから。
それでも、心に残る憧れにも似た焦燥……運動ができるようになりたい。

「いいのよ、お互い困ったら助け合いましょう?」

何気ない言葉だったけど。自分も言ったからには、人を助けることを覚えないといけない。
助けられてばかりの弱い自分のままでは、いたくないから。

「プロメテウス、私の前でブロンド・ジョークを言おうとしなかった…?」

プロメテウスをジト目で見る。
そうすると、プロメテウスはわざとらしく咳払いをした。
肺と喉ないでしょ!?

「私も登録したわ」

そこでデバイスの時計を見る。
やばい、そろそろ次の授業が始まる時間。

「ああああ…! 大変容学総論の授業が始まるから、これで!」
「またね、九郎! プロメテウス!」

携帯デバイスを鞄に入れると、慌しくその場を立ち去っていった。

ご案内:「第九部室棟前広場」からアリスさんが去りました。
天月九郎 > 「ああ、じゃあアリスが困った時は言ってくれ。俺が貸せる限りの力は貸すから。お互い様、だな」

助け合おう、という言葉が温かく胸に染み、嬉しそうにドンと胸を叩いて笑顔を浮かべ。
自分が困ったら助けてもらうかもと。

「あ、その授業も面白そうだけど隠秘歴史学と被って取れなかったんだよなあ……」
今度ちょこっと教えて!と背に向けて手を振って……。

『知っていますか? 実は第二エリアに隠し扉が……』
「なんなのお前フレ欲しいの!?」

やたらと気を引こうとするAIが本気なのかジョークなのか、どっちにしても怖いわ…と思いながらもう少しだけ会話を楽しむのだった。

ご案内:「第九部室棟前広場」から天月九郎さんが去りました。