2019/02/02 のログ
ご案内:「休憩室」にさんが現れました。
>  休憩室の窓際の席を選んで座り、自動販売機で買ってきたチョコバーを噛る。勉強で疲れた脳味噌にはこれぐらいの高カロリーパンチがいいのだ。
 味は勿論、ビターではないミルクチョコレート。
 この甘さがたまらない、ともう一口。
 
「この前の小テストの結果は散々でしたからねぇ。もうちょっと頑張らないと、です」
 薄水色の癖っ毛に紅の瞳。
 眼鏡をかけた少女は机に教科書やノート、辞書を広げて勉強を再開する。
 
 シャープペンシルが紙の上を走り、文字を描く音が静かな室内に響く。時にスムーズに、軽快に、そのリズムが刻まれれば、時にはぴたりと止まって静寂のまま。
 彼女のノートは楽器だったのだろうか。
 人気のない休憩室でひとり、少女は自習というセッションを楽しむ。

>  チョコバーを口に咥えたまま、ノートにあれこれ書き写していく。かなりお行儀が悪いが、周りに人がいないので気にしない。
 チョコバーだから大丈夫。カロリーと同じく、女子力はそこそこ高い方だろう。多分。だってチョコレートだし。
 
「……おろ。この単語、何でしたっけ」
 右手が止まり、それと同時に顔を上げる。
 チョコバーはもう半分は食べてしまった。甘いものはがっつきたくなるものだから仕方ない。

ご案内:「休憩室」に白鈴秋さんが現れました。
> 「ふっ……しかし縹は、自分が馬鹿なのを理解してますからね。ちゃーんと辞書を持ってきているのですよ。マイディクショナリー、うぉ……?」
 誰もいないのに、聞いてもいないのに解説を始めつつ、先に広げていた辞書を手に取る。得意顔でページをめくっていたが、何かが違う。

「あ、あれ。これ、英語の辞書……古語辞典じゃなかったです!?」
 慌てた拍子に口からチョコバーが落ちそうになる。大事な大事な食料がこんなにも容易く呆気なく床に落ちてしまって良いものか――。
 
 これは死守せねばならぬと、縹はチョコバーをしっかりと握り締めた。勢い余ってチョコレートがべっとりついてしまったが床に落とすよりはましだ。

白鈴秋 >  ドアが開く、それなりの数の本を抱えて入ってくる一人の生徒。両手にそれなりの数の本を抱えている。
 窓際が好きな事に変わりはない為、同じく窓際の席に、必然彼女とは同じ列になるわけだが……
 とにかく適当な席に座ると彼もまた勉強を始める。行うのは2年の予習。自身の一般の学問の分野が弱い事は自覚しているので前もって予習しておこうという魂胆だ。
 だが要領がいいのか悪いのか。かなりの数の参考書を持ち込んだ上にコーヒーまで持ち込んでいる。
 と勉強を重ねていると後ろから聞こえる声。自身の手元を見て。

「使うか?」

 少しそちらに視線を移し手元の辞書を見せる。
 彼女の勉強しているレベルに合うかはわからないが古典の辞書である。もっとも彼女が3年の予習だとかそれ以上の勉強だとかをしているのなら無意味なわけだが。

>  慌ただしい自分の声とは違う、落ち着いた声。
 差し出された辞書を見て、差し出したその人物を見て。自分の持っている英語の辞書を見て。
 忙しなく動かした視線だが、もう一度目つきの鋭い青年を見て笑顔を見せた。
 
「いいんですか! ありがとうございます、助かります!」
 よほど嬉しかったのだろう。その声はかなり……というより、相当大きい。
 本人もしまったという顔をして、すぐに片方の手を口に当てた。
 
「ありがとうございます……お言葉に甘えて、お借りします」
 使わない英語の辞書を急いで机に置いて、両手で辞書を受け取る。受け取った辞書をまるで宝物ように抱えて「えへへ、とっても親切な人に会えちゃいました」と笑顔を見せた。

白鈴秋 >  一瞬大きな声に驚いて目を見開くが、それから少しだけ笑い。

「かまわねぇよ、俺も何か足りねぇ時借りるから。ただチョコつけねぇようにしてくれよ」

 と既に抱えた時点でついているような気がしないでもないが、そう付け加え自身の勉強を再開、したのはいいが。
 はぁと大きな溜息を吐き出す。

「……悪いが早速だ。つかわねぇなら英語の辞書貸してくれ。俺の奴に知りたい単語乗ってねぇ」

 と声をかける。彼の手元にあるのはあまり良い出来ではないと評判の辞書。
 安さだけはピカイチだが落伍単語もピカイチな辞書である。
 言った傍から借りるというのに少しだけ罰が悪そうな顔を浮かべている。

> 「……っみ、見られてましたか」
 袖の長いパーカーを着ていたので、チョコレートは青年の辞書には付かなかった……筈。慌ててチョコレートのついた手をハンカチで拭く。ちゃんとハンカチとティッシュを持ち歩いていて良かったと思いながら。
 
「大丈夫ですよ、汚さずに返しますからね」
 にこにことご機嫌に笑う。
 改めて自分の机に向かおうとしたところで、不機嫌なのか怒っているのか分からない青年の声。
 もう一度、振り返る。
 
「困ったときはお互い様じゃないですか。縹の辞書、未使用なくらい綺麗ですから! どうぞ使ってください」
 そう言って、自分の英語の辞書を差し出す。そこそこ有名な出版社の、そこそこいい辞書だ。
 彼女の言葉通り――折れ目も、マーカーで線すら引いてない新品同様だ。

白鈴秋 > 「口元や手元を見ればなんとなくな」

 丁度握りつぶした後だったのもあり、結構な状態の時に見つけてしまったのである。
 拭いたのや汚さずにという言葉に少しだけフッと笑い。

「気にするな、言っただけだからよ。別に汚れても読めれば気にしねぇって」

 と言葉を返す。そして差し出された辞書を受け取った。
 パラパラとページをめくる。

「これかなり良いやつじゃねぇか、やっぱりこっちにしておくべきだったか……俺の方こそ汚さねぇようにする」

 そういうとガサガサと整理を始めたコーヒーを人がいないのをいいことに隣の席に置き徹底的に汚れる要因を排除した。
 さて、そうして開始するが。案の定というべきか辞書と参考書だけでどうにかなるわけでもなく。

「……なんでこの文章だと文法がこっちでこっちだとこれなんだ」

 一人愚痴るように言いながらサラサラとペンを走らせる音。ただでさえ苦手な英語、その上2年の予習というのもあってかなり苦戦している模様。

> 「あははー。大丈夫ですって。墨汁垂らされても全然平気ですよ」
 あっけらかんとした様子で、此処にはない墨汁を喩えに出す。本当に気にしない性分なのだろう、もう一度「大丈夫ですからね」と小声で伝えて、席に戻る。
 
 開きっぱなしのノートと教科書。
 乱雑に散らばったシャープペンシルと消しゴム。そこに加わった借り物の辞書を開いて、早速さきほど分からなかった単語を調べる。
 成程、こんな意味だったのか。
 青年が貸してくれた辞書は自分の使っているものよりも分かりやすく、単語も大きく載っているのでとても見やすかった。
 
 この辞書なら古典がもっと好きになれたかも、とノートに書きくだし文を書いたところで。
 またもや後ろから低い声。恐る恐る席から立って、そっと後ろから青年の様子を窺ってみる。英語だけどはたして自分に分かるかどうか……とそこでようやく、彼が二年生の予習をしていることに気が付いた。
 
「……えらいですねぇ」
 そんな言葉がしみじみと出てしまう。

白鈴秋 > 「それやると読めなくなるだろうが」

 相手の冗談に少し笑って答える。もし本当にあったとしてもやるつもりは無いが、まぁそれだけ心が広いということだろう。
 さて、勉強を始めており、いつもなら気がつくであろう行動だったが今はある意味で凶器をもった人間より余程強力な敵を目前にしている状態。気がつく事は無かった。
 相手が声を出して初めてあ?という声とともに振り返り。

「見てたのか」

 少し気恥ずかしくなるが、少し間が空き、ポツポツと。

「……どうしてもこういう一般教養が苦手でな、早めに予習しておかねぇとぜってぇ留年すると思って。別に勉強したくてしてるわけじゃねぇよ」

 と言うと相手の机に視線を向ける。
 そこには乱雑に散らばっているノートなど、言い換えれば勉強をしている跡がしっかりと残っている。

「それに、偉いっていうならちゃんと勉強してるあんただって十分偉いと思うが」

 と続けた。話している間は辞書から離れる為コーヒーを少し飲む。 

>  少し間が開いて、ぽつりぽつりと話し始めて。
 もしかして照れ臭いのだろうかと小首を傾げたものの、青年の話を一通り聞いてもやはり。
 
「予習をちゃんとしてる時点で、えらいですしすごいですよ。しかも……これ、二年生のですよね。お兄さん、まだ一年生でしょう? 授業よりも先に自分から勉強するなんてとってもえらいですよ。花丸あげちゃいます」
 それはすごいことで、偉いことだと縹は思う。
 だから、人差し指で空中に花丸を書いて見せた。子供っぽいと笑われるだろうか。
 
「うーん、縹はえらいというよりは、出来が悪いというか……予習までいつも手が届かないので、復習が精一杯ですよ」
 ちらりと視線を自分の机に向けて、年頃の男の子にこんな汚い状態を見られたのかと思うと流石にこっ恥ずかしくなる。
 笑いながらそそくさと机を片して、取り敢えず綺麗にして見せた。少しずれた眼鏡を直して「勉強が大好き!
 なんて真面目な学生なんて、そうそう居ないですよ。縹だって、勉強は……そんなに好きじゃないですし」とコーヒーを飲む青年を見て苦笑した。

白鈴秋 > 「やめろやめろ恥ずかしい」

 褒められるのに色々となれていないのもあり、子供っぽいとも言えるその行為に逆に少し恥ずかしそうにやめろやめろと手を振るった。
 それから相手の話を聞くと少しだけ笑ってしまう。

「結局似たような事やってんじゃねぇか。お互いに出来が悪くてやらないとヤバいから勉強してるって話だ」

 結局要約するとそういう事になるのだろう。
 
「まぁ、そんな学生はほとんどいねぇわな……白鈴秋だ。お兄さんなんかじゃなくてそっちで呼べば良い。お前の名前は……自分で言ってるし縹で良いんだよな?」

 それなりに話すようになったのもあり、自身の名前を告げる。ついでに相手の名前の確認をした。

「……で、先輩と。なんか最近先輩相手に初見でタメ口ってパターン多くねぇか俺」

 相手の復習という言葉と相手が片付けた机の上の参考書などを見て2年だと思ったためそう呟き軽くうな垂れる。

> 「あはは、まったくもってその通りです。縹も、お尻に火がつかないと勉強頑張らないですし」
 青年の言葉にうんうん、と大きく頷く。
 しかしすぐにはっとして「あ、でもお尻は本当に燃えてないですからね!」と慌てて両手を振った。
 
 ちょっと……いや、かなりのボケなのかもしれない。
 
「はい。縹は……糸に票。投票の票ですね。で、縹といいます。縹色の、はなだですよ」
 ノートにささっと文字を書いて、青年に見せる。
 あれだけ机を汚く使っていたが、驚いたことに文字はそこそこ整った綺麗なものだった。
 
「あぁ、それもそうですね。でも白鈴さんの方が落ち着いてて年上っぽいですし、貫禄もあるから、タメ口大丈夫ですよ。縹は、こういう喋り方なので敬語が抜けませんが」
 にこにこと笑いつつ。
 
「あ、でもさっきの白鈴さんの恥ずかしそうな照れ臭そうな感じは可愛かったですよ。素直でいいなぁって思っちゃいました」
 初対面なのに、この図々しさ。
 黙っていればいいのに、思ったことを、感じたことを、馬鹿正直に伝えてしまう。